87 / 110
85話 ユシリス様との再会編
しおりを挟む
夏休みまではあっという間だった。
お父様はわたしを南の領地にやることをとても心配した。
そのため、付き添いとしてユン、ミリア、ブラッドがピッタリとくっついてきた。
本当にピッタリとだ。
馬車に荷物はお願いしてわたし達は列車に乗った。
馬車で襲われるより列車の方が安全だと言うことになった。わたしの両端にユンとミリア。
前にブラッドが座った。
個室を三部屋取ったのでそれぞれゆっくり出来るのに、狭い個室に四人で座った。
「ねえ?もう少し離れてもいいと思うの」
「もし何かあったらどうするのですか?わたしはもう二度と後悔はしたくありません」
ユンが真剣な顔で言うので
「はい、わかりました」
としか言い返せなかった。
こうしてわたしの初めての遠くへの旅行は、親しい人たちと楽しく行くはずがただただ窮屈な旅となった。
寝る時は流石にブラッドは外に出たが、数人の護衛が交代で扉の外に立っていてくれた。
部屋にはユンがミリアが泊まる。
わたしが一人になることはなかった。
そして3日かけて南の領地に着いた。
夏なので暑くて当たり前なのだが、とにかく暑い。
いや、日差しが痛い。
駅を出ると、レンス殿下が馬車で迎えにきてくれた。
街中は木が多く、日陰が多いので思うほど暑くはなかった。
わたしとレンス殿下とブラッド。
ユンとミリアは別の馬車に乗った。
レンス殿下はブラッドを見ると、笑顔で
「久しぶりだね」と挨拶をした。
ブラッドは元王家の影。
知っていて当たり前なのか。
「エリーゼ様、彼はとても優秀で幼いぼくでも知っていました。貴女を守るために王家をやめて公爵家へ行ったのです。そして今も守っているんですね」
「ブラッドは今回ずっと見守ってくれたの。わたしがマリーナ様に拐われた時も。あ、今回の前の時ね。ブラッドは今の時もマリーナ様に拐われた時も助けてくれたらしいの。そしてユイナ・ミレーヌ様の時も助けてくれたの」
「彼の前で話していいのですか?」
「ユンとミリアとブラッドには話しているの。信じてくれているかはわからないけど、先の出来事をいくつか話したら、当たっているから少しは信じてくれていると思うわ、ね?」
ブラッドは頭を縦に頷いた。
「信じられませんが、旦那様もスコット様も同じ事を話されましたので今は信じております」
「エリーゼ様はいいね、信頼できる家臣が居てくれて」
「違うわ、みんなお友達なの。わたし前回は友達すらあまりいなかったの。だから今は心を許せる人達がいて幸せなの」
「僕も貴女達のような信頼出来る人がいてくれるといいのに……」
「あら?わたしはレンス殿下を信頼しているわ。わたしはクロード殿下とは駄目だったけど、貴方は兄として彼とも良い関係なのでは?」
「…僕のことを信頼してくれているのですか?嬉しいです……兄上とは今、やっと少し打ち解けられています。前の時があるので、僕の記憶が仲の悪かった時と仲良く育った時が混ざって気持ちがついて行かない時があります。でも兄上は誠実で優しい人です。前回の時の兄上は愚かでした。でも今の兄上は、あの愚かな時を忘れるくらい素晴らしい人です……
エリーゼ様には聞きたくない話ですね……すみません」
レンス殿下と話すとどうしてもクロード殿下の話が出てしまう。
わたしは気にしないようにしているが、彼は全てを知っているのでお互いが気を遣ってしまう。
「レンス殿下、自然と出てしまうのは仕方がないこと。敢えて避けるより自然の中で出る話はそのままで気にせず行きませんか?」
「わかりました」
レンス殿下も納得してくれて、これからのことを話した。
「エリーゼ様が泊まるのは、僕のお父様の従兄弟であるバルド侯爵の別荘です。今は管理人と使用人が屋敷の管理をしていて主人はいません。もちろん許可は得ています。なので安心して過ごしてください」
「わかりました、ありがとうございます」
わたしは主人がいない事に少しだけホッとした。
やはり人に気を使うのは疲れる。
「護衛はうちの公爵家からもそちらの別荘に配置させています。王都ほど犯罪は多くありませんがもしもの事があるのでブラッドもよろしく頼むよ」
「かしこまりました」
「お母様に会うのは医師の許可がおりた日になるので突然になるかもしれません、お母様の状態が良い時に連絡があります、それまではゆっくりしてください。こちらは田舎なので王都ほどではありませんが、街もそれなりに賑わっていますし、海があります。ぜひ一度海を見てもらいたいです」
「わたしも海にすごく興味があります。お水が塩っ辛いとは本当ですか?」
「ふふ、僕も初め信じられなくて舐めてみました。本当に塩っ辛いので驚きました、ぜひ体験してみてください」
「楽しみにしております」
お父様はわたしを南の領地にやることをとても心配した。
そのため、付き添いとしてユン、ミリア、ブラッドがピッタリとくっついてきた。
本当にピッタリとだ。
馬車に荷物はお願いしてわたし達は列車に乗った。
馬車で襲われるより列車の方が安全だと言うことになった。わたしの両端にユンとミリア。
前にブラッドが座った。
個室を三部屋取ったのでそれぞれゆっくり出来るのに、狭い個室に四人で座った。
「ねえ?もう少し離れてもいいと思うの」
「もし何かあったらどうするのですか?わたしはもう二度と後悔はしたくありません」
ユンが真剣な顔で言うので
「はい、わかりました」
としか言い返せなかった。
こうしてわたしの初めての遠くへの旅行は、親しい人たちと楽しく行くはずがただただ窮屈な旅となった。
寝る時は流石にブラッドは外に出たが、数人の護衛が交代で扉の外に立っていてくれた。
部屋にはユンがミリアが泊まる。
わたしが一人になることはなかった。
そして3日かけて南の領地に着いた。
夏なので暑くて当たり前なのだが、とにかく暑い。
いや、日差しが痛い。
駅を出ると、レンス殿下が馬車で迎えにきてくれた。
街中は木が多く、日陰が多いので思うほど暑くはなかった。
わたしとレンス殿下とブラッド。
ユンとミリアは別の馬車に乗った。
レンス殿下はブラッドを見ると、笑顔で
「久しぶりだね」と挨拶をした。
ブラッドは元王家の影。
知っていて当たり前なのか。
「エリーゼ様、彼はとても優秀で幼いぼくでも知っていました。貴女を守るために王家をやめて公爵家へ行ったのです。そして今も守っているんですね」
「ブラッドは今回ずっと見守ってくれたの。わたしがマリーナ様に拐われた時も。あ、今回の前の時ね。ブラッドは今の時もマリーナ様に拐われた時も助けてくれたらしいの。そしてユイナ・ミレーヌ様の時も助けてくれたの」
「彼の前で話していいのですか?」
「ユンとミリアとブラッドには話しているの。信じてくれているかはわからないけど、先の出来事をいくつか話したら、当たっているから少しは信じてくれていると思うわ、ね?」
ブラッドは頭を縦に頷いた。
「信じられませんが、旦那様もスコット様も同じ事を話されましたので今は信じております」
「エリーゼ様はいいね、信頼できる家臣が居てくれて」
「違うわ、みんなお友達なの。わたし前回は友達すらあまりいなかったの。だから今は心を許せる人達がいて幸せなの」
「僕も貴女達のような信頼出来る人がいてくれるといいのに……」
「あら?わたしはレンス殿下を信頼しているわ。わたしはクロード殿下とは駄目だったけど、貴方は兄として彼とも良い関係なのでは?」
「…僕のことを信頼してくれているのですか?嬉しいです……兄上とは今、やっと少し打ち解けられています。前の時があるので、僕の記憶が仲の悪かった時と仲良く育った時が混ざって気持ちがついて行かない時があります。でも兄上は誠実で優しい人です。前回の時の兄上は愚かでした。でも今の兄上は、あの愚かな時を忘れるくらい素晴らしい人です……
エリーゼ様には聞きたくない話ですね……すみません」
レンス殿下と話すとどうしてもクロード殿下の話が出てしまう。
わたしは気にしないようにしているが、彼は全てを知っているのでお互いが気を遣ってしまう。
「レンス殿下、自然と出てしまうのは仕方がないこと。敢えて避けるより自然の中で出る話はそのままで気にせず行きませんか?」
「わかりました」
レンス殿下も納得してくれて、これからのことを話した。
「エリーゼ様が泊まるのは、僕のお父様の従兄弟であるバルド侯爵の別荘です。今は管理人と使用人が屋敷の管理をしていて主人はいません。もちろん許可は得ています。なので安心して過ごしてください」
「わかりました、ありがとうございます」
わたしは主人がいない事に少しだけホッとした。
やはり人に気を使うのは疲れる。
「護衛はうちの公爵家からもそちらの別荘に配置させています。王都ほど犯罪は多くありませんがもしもの事があるのでブラッドもよろしく頼むよ」
「かしこまりました」
「お母様に会うのは医師の許可がおりた日になるので突然になるかもしれません、お母様の状態が良い時に連絡があります、それまではゆっくりしてください。こちらは田舎なので王都ほどではありませんが、街もそれなりに賑わっていますし、海があります。ぜひ一度海を見てもらいたいです」
「わたしも海にすごく興味があります。お水が塩っ辛いとは本当ですか?」
「ふふ、僕も初め信じられなくて舐めてみました。本当に塩っ辛いので驚きました、ぜひ体験してみてください」
「楽しみにしております」
114
お気に入りに追加
4,844
あなたにおすすめの小説

愛されなかった公爵令嬢のやり直し
ましゅぺちーの
恋愛
オルレリアン王国の公爵令嬢セシリアは、誰からも愛されていなかった。
母は幼い頃に亡くなり、父である公爵には無視され、王宮の使用人達には憐れみの眼差しを向けられる。
婚約者であった王太子と結婚するが夫となった王太子には冷遇されていた。
そんなある日、セシリアは王太子が寵愛する愛妾を害したと疑われてしまう。
どうせ処刑されるならと、セシリアは王宮のバルコニーから身を投げる。
死ぬ寸前のセシリアは思う。
「一度でいいから誰かに愛されたかった。」と。
目が覚めた時、セシリアは12歳の頃に時間が巻き戻っていた。
セシリアは決意する。
「自分の幸せは自分でつかみ取る!」
幸せになるために奔走するセシリア。
だがそれと同時に父である公爵の、婚約者である王太子の、王太子の愛妾であった男爵令嬢の、驚くべき真実が次々と明らかになっていく。
小説家になろう様にも投稿しています。
タイトル変更しました!大幅改稿のため、一部非公開にしております。

虐げられた皇女は父の愛人とその娘に復讐する
ましゅぺちーの
恋愛
大陸一の大国ライドーン帝国の皇帝が崩御した。
その皇帝の子供である第一皇女シャーロットはこの時をずっと待っていた。
シャーロットの母親は今は亡き皇后陛下で皇帝とは政略結婚だった。
皇帝は皇后を蔑ろにし身分の低い女を愛妾として囲った。
やがてその愛妾には子供が生まれた。それが第二皇女プリシラである。
愛妾は皇帝の寵愛を笠に着てやりたい放題でプリシラも両親に甘やかされて我儘に育った。
今までは皇帝の寵愛があったからこそ好きにさせていたが、これからはそうもいかない。
シャーロットは愛妾とプリシラに対する復讐を実行に移す―
一部タイトルを変更しました。

断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません
天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。
私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。
処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。
魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。
【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。
るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」
色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。
……ほんとに屑だわ。
結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。
彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。
彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

忘却令嬢〜そう言われましても記憶にございません〜【完】
雪乃
恋愛
ほんの一瞬、躊躇ってしまった手。
誰よりも愛していた彼女なのに傷付けてしまった。
ずっと傷付けていると理解っていたのに、振り払ってしまった。
彼女は深い碧色に絶望を映しながら微笑んだ。
※読んでくださりありがとうございます。
ゆるふわ設定です。タグをころころ変えてます。何でも許せる方向け。

貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした
ましゅぺちーの
恋愛
王国の名門公爵家の出身であるエレンは幼い頃から婚約者候補である第一王子殿下に全てを捧げて生きてきた。
彼を数々の悪意から守り、彼の敵を排除した。それも全ては愛する彼のため。
しかし、王太子となった彼が最終的には選んだのはエレンではない平民の女だった。
悲しみに暮れたエレンだったが、家族や幼馴染の公爵令息に支えられて元気を取り戻していく。
その一方エレンを捨てた王太子は着々と破滅への道を進んでいた・・・

【完結】領主の妻になりました
青波鳩子
恋愛
「私が君を愛することは無い」
司祭しかいない小さな教会で、夫になったばかりのクライブにフォスティーヌはそう告げられた。
===============================================
オルティス王の側室を母に持つ第三王子クライブと、バーネット侯爵家フォスティーヌは婚約していた。
挙式を半年後に控えたある日、王宮にて事件が勃発した。
クライブの異母兄である王太子ジェイラスが、国王陛下とクライブの実母である側室を暗殺。
新たに王の座に就いたジェイラスは、異母弟である第二王子マーヴィンを公金横領の疑いで捕縛、第三王子クライブにオールブライト辺境領を治める沙汰を下した。
マーヴィンの婚約者だったブリジットは共犯の疑いがあったが確たる証拠が見つからない。
ブリジットが王都にいてはマーヴィンの子飼いと接触、画策の恐れから、ジェイラスはクライブにオールブライト領でブリジットの隔離監視を命じる。
捜査中に大怪我を負い、生涯歩けなくなったブリジットをクライブは密かに想っていた。
長兄からの「ブリジットの隔離監視」を都合よく解釈したクライブは、オールブライト辺境伯の館のうち豪華な別邸でブリジットを囲った。
新王である長兄の命令に逆らえずフォスティーヌと結婚したクライブは、本邸にフォスティーヌを置き、自分はブリジットと別邸で暮らした。
フォスティーヌに「別邸には近づくことを許可しない」と告げて。
フォスティーヌは「お飾りの領主の妻」としてオールブライトで生きていく。
ブリジットの大きな嘘をクライブが知り、そこからクライブとフォスティーヌの関係性が変わり始める。
========================================
*荒唐無稽の世界観の中、ふんわりと書いていますのでふんわりとお読みください
*約10万字で最終話を含めて全29話です
*他のサイトでも公開します
*10月16日より、1日2話ずつ、7時と19時にアップします
*誤字、脱字、衍字、誤用、素早く脳内変換してお読みいただけるとありがたいです

【完結】婚約破棄されたから静かに過ごしたかったけど無理でした
かんな
恋愛
カトリーヌ・エルノーはレオナルド・オルコットと婚約者だ。
二人の間には愛などなく、婚約者なのに挨拶もなく、冷え切った生活を送る日々。そんなある日、殿下に婚約破棄を言い渡され――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる