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80話 五人のお茶会
しおりを挟む「そんな時兄上も手紙を読んで溜息が増えていたんだ。
僕は思い切って兄上に相談してみたんだ。僕の記憶のことを……」
レンス殿下の話を聞いていたクロード殿下が話し出した。
「僕は記憶が変わった事に気がついていなかった。前回と違いすぎるのに違和感も感じていなかった。
なのにレンスは全て覚えていてぼくは驚いたんだ。手紙に書かれていた内容と同じだった」
クロード殿下は悔しそうにわたしを見つめた。
「僕はエリーゼにもう二度と辛い思いをさせたくなかったのに……大事な事は忘れて君に振られて領地でただ引きこもっていたんだ……マリーナや母上が酷い事をしたのに……君が僕たちをどれだけ嫌がっていたか分かっていたのに、きみが孤児院にいる時に会いに行ってそのせいでマリーナに襲われ、次はユイナ・ミレーヌに襲われた。
僕の過ちは前回だけでなく今回も同じだった。
君の苦しみも知らずに僕は君が刺される前のもう一つの世界を僕は知らない……レンスに聞いて驚いたんだ、母上はおかしくなっていて、レンスはそれを一人耐えていた、君も母上に酷い事をされていた」
「わたしが刺されて意識を失った時、何故かわたしは貴方達のお母様であるユシリス様の子どもの時の世界に迷い込んだのです……
わたしの姿が見えるのはユシリス様だけでした。
わたしは励ますことしか出来ませんでした。
ユシリス様は父親であるニューベル公爵に虐待されていました。
わたしが彼女の手を握ると何故か彼女はわたしと同じで姿が消えて見えなくなります。だから二人であの屋敷から抜け出しました。
そして、運良くユシリス様のお母様であるセリーヌ様の友人のマリアンヌ様に助けられて、セリーヌ様のご両親に会うことが出来ました。
わたしはずっと彼女のそばに寄り添うことしか出来ませんでした」
「母上の義母がマリアンヌだ。だから、前回と今回は母上の育った環境が違っていたんだ。前回の母上は精神的にもおかしくて酷い状態だった。今回は父上ととても仲が良くて幸せそうだったんだ……」
クロード殿下が納得して頷いた。
レンス殿下は思い出したように話し出した。
「マリーナ様の事件のことなんだけど、エリーゼ様が救い出された時兄上と母上がちょうど居たんだ。
母上は突然『お姉ちゃん』と言って倒れたんだ。
それからは度々寝込むことが増えたんだ。未だに原因がわからないんだが、今は入院している……
ここ半年以上はとても怖がって外へ出ることもできない。
父上はここ数年何とか治療して治そうとしたけど、今では外に出ることも怖がるようになって、現在は南の領地の病院に入院しているんだ。
父上は、母上のそばに居てあげたくて国王の座を叔父上に譲ったんだ。
その時に僕たちも王位継承権の順位を下げてもらったんだ。
実質王位に就くことはないと思う。
僕たちは母上のそばで過ごしたいと希望して王都を去ることにしたんだ。
そんな時だった。
エリーゼ様が刺されて入院したのは。
それと同じ頃に母上の精神はさらに悪化しているんだ。
そして僕は記憶が新しく入ってきて、その二つの辻褄が合わなさすぎてパニックになりそうになったんだ。
兄上は巻き戻っているから僕の話を信じてもらえると思って全て話した。
前回と今回、刺される前と刺された後、幾つも辻褄が合わなくなっているんだ。
それで僕はどうしていいのか分からなくて、王都の学園に入学してエリーゼ様に会いたいと思ったんだ。
多分全ての鍵は貴女だと思って…
「お姉ちゃん」と言うのはエリーゼ様のことだったんですね、僕の記憶がおかしくなったのも、貴女が過去を変えたから……」
「ご、ごめんなさい、わたしはただユシリス様が可哀想で助けてあげたかったんです。それがこんな風に変わってしまうなんて考えてもみなかったんです……」
あの時のわたしは必死だった。
糞気持ち悪いニューベル侯爵からユシリス様を守ることしか考えていなかった。
意識が戻って一人記憶が違っている事に戸惑い、悩み続けた。
みんなと仲良く過ごしても、何か引っかかるものがあって、いつも何かわからないものを探していた。
それが多分レンス殿下。
そして今のユシリス様。
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