79 / 110
77話
しおりを挟む
ノアは教室に来たがわたしの方を見ようともしなかった。
男らしくない!
そうは思うが聞かなかったことにした手前黙って静観するしかなかった。
7ヶ月以上ぶりの学園は新鮮で友人達は仲良くしてくれるし楽しい。
ノアは相変わらずわたしを微妙に避けて過ごしたが、わたしはいつも通りノアに挨拶したり話しかけたりした。
「ノアおはよう」
「……おはよう」
「ノア、食堂一緒に行こう」
「………う…うん…」
と、とりあえず返事はしてくれる。
ノアはあんなにいつも普通に話しかけてくれていたのに……少し寂しいが今はわたしがいつも通りにするしかない!
そしてふた月も経たずすぐに中等部1年生から2年生になった。
ずっと休んでいたし仕方がないよね。
クラスは変わらずカイラやエレン、ノア達とも同じクラス。
なんと一年生にレンス殿下が入学してきた。
先王陛下であり、現在公爵で今は南の領地の当主となった父について行ったが、また王都に一人戻りこれからは王城から王立学園に通うことが決まった。
わたしの記憶のレンス殿下は大人の世界に振り回され愛情をもらうことなく育ち、父からも蔑まされ、母からも捨て置かれた子だった。
静かでいつも影のある子で、黙って大人達にされるがままの感情の薄い子だった。
だがわたしがユシリス様の過去を変えて、ユシリス様と陛下は愛し合い、結婚された。
クロード殿下もレンス殿下も二人の愛情を受けて育った。
ただ、お父様曰くクロード殿下は巻き戻っているので前回の記憶はあるらしい。
だからわたしに執着してもう一度何とかやり直そうとした。
マリーナ様は殿下に執着してわたしを排除しようとして毒を盛った。
わたしは、わたしが変えた世界になってから4ヶ月経つが未だにクロード殿下に会っていない。
もちろん遠くにいるということもあるが、会いにきたいという先触れを理由を付けて断っている。
そんな中のレンス殿下の入学。
わたしは何故か彼と会うのを避けたい気持ちと一度会ってみたい気持ちが入り混じっていた。
入学して友人と楽しそうに過ごすレンス殿下を遠くから見て、彼は以前とは違いとても明るく元気であの暗く大人しいレンス殿下を知っているわたしには信じられない光景だった。
そんなレンス殿下をボッーと見ていると
「エリーゼ!大丈夫か?」
ノアが本当に久しぶりに話しかけてきた。
わたしはノアの声に驚いて
「ノア!やっと話しかけてきてくれたわね!」
ノアはわたしを見て気まずそうに頭をぽりぽり掻きながら
「エリーゼごめん、自分の不甲斐なさにまともに話しかけられなかった」
と、俯いて話した。
「ノア、わたしが怪我をしたのは貴方の所為ではないわ。あれはユイナ・ミレーヌ様がよく分からない思い込みでわたしを刺したの、あれは誰も止めることは出来なかったの」
「わかってる、でも、それでも、俺は守ってあげたかった」
「ありがとう……その気持ちだけで十分嬉しいわ」
ノアから話しかけられてわたしはとても嬉しかった。
「エリーゼ、レンス殿下が気になるんだろう?でももう王族とは関わるな。お前はあいつらの所為で二度も危険な目にあって死にかけたんだ」
ノアが言っていることは分かっている。
お父様とお兄様にも、「関わるな」と言われている。
わたしからしたらお父様だって変わらない。
貴方と関わっても碌なことはないと言いたいけど、わたしも少し大人になった。
いつまでもツンツンして子供みたいに拗ねてばかりいても仕方がない。
今はしっかり勉強して早く大人になりたい。
そして一人で生きていけるようになって、自立するのが夢だ。
今の生活になってヴィクトリア様にまだ会いに行ってはいない。
自分の今を、ひとつひとつ実感して違いを確かめながら生活している。
もう少ししたら変わってしまった孤児院での生活も確かめようとは思っている。
でも今はレンス殿下が気になって仕方がない。
「ノア、わたしはレンス殿下とお話をしてみたいの」
男らしくない!
そうは思うが聞かなかったことにした手前黙って静観するしかなかった。
7ヶ月以上ぶりの学園は新鮮で友人達は仲良くしてくれるし楽しい。
ノアは相変わらずわたしを微妙に避けて過ごしたが、わたしはいつも通りノアに挨拶したり話しかけたりした。
「ノアおはよう」
「……おはよう」
「ノア、食堂一緒に行こう」
「………う…うん…」
と、とりあえず返事はしてくれる。
ノアはあんなにいつも普通に話しかけてくれていたのに……少し寂しいが今はわたしがいつも通りにするしかない!
そしてふた月も経たずすぐに中等部1年生から2年生になった。
ずっと休んでいたし仕方がないよね。
クラスは変わらずカイラやエレン、ノア達とも同じクラス。
なんと一年生にレンス殿下が入学してきた。
先王陛下であり、現在公爵で今は南の領地の当主となった父について行ったが、また王都に一人戻りこれからは王城から王立学園に通うことが決まった。
わたしの記憶のレンス殿下は大人の世界に振り回され愛情をもらうことなく育ち、父からも蔑まされ、母からも捨て置かれた子だった。
静かでいつも影のある子で、黙って大人達にされるがままの感情の薄い子だった。
だがわたしがユシリス様の過去を変えて、ユシリス様と陛下は愛し合い、結婚された。
クロード殿下もレンス殿下も二人の愛情を受けて育った。
ただ、お父様曰くクロード殿下は巻き戻っているので前回の記憶はあるらしい。
だからわたしに執着してもう一度何とかやり直そうとした。
マリーナ様は殿下に執着してわたしを排除しようとして毒を盛った。
わたしは、わたしが変えた世界になってから4ヶ月経つが未だにクロード殿下に会っていない。
もちろん遠くにいるということもあるが、会いにきたいという先触れを理由を付けて断っている。
そんな中のレンス殿下の入学。
わたしは何故か彼と会うのを避けたい気持ちと一度会ってみたい気持ちが入り混じっていた。
入学して友人と楽しそうに過ごすレンス殿下を遠くから見て、彼は以前とは違いとても明るく元気であの暗く大人しいレンス殿下を知っているわたしには信じられない光景だった。
そんなレンス殿下をボッーと見ていると
「エリーゼ!大丈夫か?」
ノアが本当に久しぶりに話しかけてきた。
わたしはノアの声に驚いて
「ノア!やっと話しかけてきてくれたわね!」
ノアはわたしを見て気まずそうに頭をぽりぽり掻きながら
「エリーゼごめん、自分の不甲斐なさにまともに話しかけられなかった」
と、俯いて話した。
「ノア、わたしが怪我をしたのは貴方の所為ではないわ。あれはユイナ・ミレーヌ様がよく分からない思い込みでわたしを刺したの、あれは誰も止めることは出来なかったの」
「わかってる、でも、それでも、俺は守ってあげたかった」
「ありがとう……その気持ちだけで十分嬉しいわ」
ノアから話しかけられてわたしはとても嬉しかった。
「エリーゼ、レンス殿下が気になるんだろう?でももう王族とは関わるな。お前はあいつらの所為で二度も危険な目にあって死にかけたんだ」
ノアが言っていることは分かっている。
お父様とお兄様にも、「関わるな」と言われている。
わたしからしたらお父様だって変わらない。
貴方と関わっても碌なことはないと言いたいけど、わたしも少し大人になった。
いつまでもツンツンして子供みたいに拗ねてばかりいても仕方がない。
今はしっかり勉強して早く大人になりたい。
そして一人で生きていけるようになって、自立するのが夢だ。
今の生活になってヴィクトリア様にまだ会いに行ってはいない。
自分の今を、ひとつひとつ実感して違いを確かめながら生活している。
もう少ししたら変わってしまった孤児院での生活も確かめようとは思っている。
でも今はレンス殿下が気になって仕方がない。
「ノア、わたしはレンス殿下とお話をしてみたいの」
94
お気に入りに追加
4,845
あなたにおすすめの小説

愛されなかった公爵令嬢のやり直し
ましゅぺちーの
恋愛
オルレリアン王国の公爵令嬢セシリアは、誰からも愛されていなかった。
母は幼い頃に亡くなり、父である公爵には無視され、王宮の使用人達には憐れみの眼差しを向けられる。
婚約者であった王太子と結婚するが夫となった王太子には冷遇されていた。
そんなある日、セシリアは王太子が寵愛する愛妾を害したと疑われてしまう。
どうせ処刑されるならと、セシリアは王宮のバルコニーから身を投げる。
死ぬ寸前のセシリアは思う。
「一度でいいから誰かに愛されたかった。」と。
目が覚めた時、セシリアは12歳の頃に時間が巻き戻っていた。
セシリアは決意する。
「自分の幸せは自分でつかみ取る!」
幸せになるために奔走するセシリア。
だがそれと同時に父である公爵の、婚約者である王太子の、王太子の愛妾であった男爵令嬢の、驚くべき真実が次々と明らかになっていく。
小説家になろう様にも投稿しています。
タイトル変更しました!大幅改稿のため、一部非公開にしております。

断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません
天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。
私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。
処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。
魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。

虐げられた皇女は父の愛人とその娘に復讐する
ましゅぺちーの
恋愛
大陸一の大国ライドーン帝国の皇帝が崩御した。
その皇帝の子供である第一皇女シャーロットはこの時をずっと待っていた。
シャーロットの母親は今は亡き皇后陛下で皇帝とは政略結婚だった。
皇帝は皇后を蔑ろにし身分の低い女を愛妾として囲った。
やがてその愛妾には子供が生まれた。それが第二皇女プリシラである。
愛妾は皇帝の寵愛を笠に着てやりたい放題でプリシラも両親に甘やかされて我儘に育った。
今までは皇帝の寵愛があったからこそ好きにさせていたが、これからはそうもいかない。
シャーロットは愛妾とプリシラに対する復讐を実行に移す―
一部タイトルを変更しました。

貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした
ましゅぺちーの
恋愛
王国の名門公爵家の出身であるエレンは幼い頃から婚約者候補である第一王子殿下に全てを捧げて生きてきた。
彼を数々の悪意から守り、彼の敵を排除した。それも全ては愛する彼のため。
しかし、王太子となった彼が最終的には選んだのはエレンではない平民の女だった。
悲しみに暮れたエレンだったが、家族や幼馴染の公爵令息に支えられて元気を取り戻していく。
その一方エレンを捨てた王太子は着々と破滅への道を進んでいた・・・
【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。
るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」
色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。
……ほんとに屑だわ。
結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。
彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。
彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login

婚約破棄されなかった者たち
ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。
令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。
第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。
公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。
一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。
その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。
ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。

幼馴染がそんなに良いなら、婚約解消いたしましょうか?
ルイス
恋愛
「アーチェ、君は明るいのは良いんだけれど、お淑やかさが足りないと思うんだ。貴族令嬢であれば、もっと気品を持ってだね。例えば、ニーナのような……」
「はあ……なるほどね」
伯爵令嬢のアーチェと伯爵令息のウォーレスは幼馴染であり婚約関係でもあった。
彼らにはもう一人、ニーナという幼馴染が居た。
アーチェはウォーレスが性格面でニーナと比べ過ぎることに辟易し、婚約解消を申し出る。
ウォーレスも納得し、婚約解消は無事に成立したはずだったが……。
ウォーレスはニーナのことを大切にしながらも、アーチェのことも忘れられないと言って来る始末だった……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる