【完結】どうして殺されたのですか?貴方達の愛はもう要りません  

たろ

文字の大きさ
上 下
74 / 110

72話

しおりを挟む
ユシリス様は現在入院している理由は、やはり心が病んでいるからみたいだ。

それもわたしを見た時に「お姉ちゃん」と言ってから……

わたしを見て突然あの糞気持ち悪い公爵のことを思い出したのだろうか……
ユシリス様にお会いできれば……入院中の彼女に会う事は難しいだろう。



「そう言えば……お父様、ユイナ・ミレーヌという人はなぜわたしを刺したのでしょうか?」

わたしは自分が刺された理由も半年も寝込んでいた事もよくわからないでいた。
刺される前はアンが前回、同じ時期にわたしを庇い亡くなったので、そのことを心配して過ごしていた。

わたしはユシリス様のことばかりで自分が刺された理由をよく知らなかった。

でもその理由もわたしが変えてしまったので、今聞いても刺された前と今では変わっているかもしれない。
変わっていても、わたしには判断できない。

未来を変えるとは、自分の持っていた記憶を捨ててしまうことでもあるんだと今更ながらに気がついた。

「ユイナ・ミレーヌはマリーナ様の幼い頃からの友人なんだ。……マリーナ様はエリーゼに毒を盛り拐った犯人として処刑されたんだ」

「え?処刑?違うわ、わたしの記憶では修道院に入れられてそのあと辺境伯の後妻になるはずだったわ」

「……エリーゼの刺される前と後では、処罰も変わってしまったんだな、マリーナ様はお前にした罪だけではなくて、クロード殿下にも媚薬を盛り、既成事実を作ろうとしたんだ」

「え?ええ?だってまだその時は12歳か13歳くらいですよね?二人とも!」

「……マリーナ様は何を考えているのか……もちろんそれは未遂で終わったが、薬を盛るという王族への罪は重たい。
父親と一緒に子ども達を売買する仕事にも関わっていた。いや、それを先導して主犯だったのは娘のマリーナ様の方だったんだ。
あの子は子供ながらに、あまりにも罪を重ねていたんだ。
処刑は免れなかった。ハウエル公爵やその周りの貴族派で共に犯罪に深く関わった者達もみんな処刑や重たい刑罰を受けたんだ」

「わたしの記憶よりも今の方がマリーナ様は酷いことをしているのですね」

「ああ、まさかあの年で大人顔負けの犯罪を犯すとは……前回はお前を冤罪で処刑したんだ……そして今回はお前を毒で殺そうとした。わたしは処刑は当たり前だと思っているよ」

「わたしの記憶ではまだマリーナ様は生きていたので……ではユイナ・ミレーヌ様は何故?マリーナ様の復讐ですか?」

「それもあるが……ユイナ・ミレーヌはマリーナ様の意思を継いで、自分がクロード殿下と結婚するのだと思い込んで、邪魔なエリーゼを排除しようとしたんだ。そのために2年ほどお前の動きを見張り、殺そうと準備をしていたらしい」

「わたしを排除?でもわたしとクロード様は仲良くないし、わたしは彼を嫌っているわ、それにわたしは婚約の打診をされて断ったのでしょう?」

「そうだ。でも殿下がお前を諦めきれていないのはまだみんな知っている。だから南の領地に行ってからも、お前が刺されて意識がない間、何度もこちらに見舞いに来られたんだ。手紙も度々頂いている。
彼には婚約話が多数きているが全て未だに断っている。
お前を諦めきれないんだ」

「………そうなのですね……」

「もちろんお前が殿下を嫌っていることも前回のことで許せないことも、わたしもスコットも殿下も分かっている。
わたしと殿下はお前に好かれることも許されないことも分かっているんだ。ただ殿下はお前が幸せにならないと自分も幸せになる事はできないと思っているんだと思う」

「わたしはもうお父様のことも殿下のことも恨み嫌いながら生きたくはありません。ユシリス様と過ごすひと月の中で、自分も前に進まないといけないのだと感じました。
すぐに気持ちを捨て去る事は出来ませんがわたしは二人を避けるのではなくて向き合って行こうと思います」

「エリーゼ……無理はしないで欲しい……わたしは許されるべきではない事は分かっている……」

お父様は横を向き、わたしに見えないようにそっと涙を流していた。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛されなかった公爵令嬢のやり直し

ましゅぺちーの
恋愛
オルレリアン王国の公爵令嬢セシリアは、誰からも愛されていなかった。 母は幼い頃に亡くなり、父である公爵には無視され、王宮の使用人達には憐れみの眼差しを向けられる。 婚約者であった王太子と結婚するが夫となった王太子には冷遇されていた。 そんなある日、セシリアは王太子が寵愛する愛妾を害したと疑われてしまう。 どうせ処刑されるならと、セシリアは王宮のバルコニーから身を投げる。 死ぬ寸前のセシリアは思う。 「一度でいいから誰かに愛されたかった。」と。 目が覚めた時、セシリアは12歳の頃に時間が巻き戻っていた。 セシリアは決意する。 「自分の幸せは自分でつかみ取る!」 幸せになるために奔走するセシリア。 だがそれと同時に父である公爵の、婚約者である王太子の、王太子の愛妾であった男爵令嬢の、驚くべき真実が次々と明らかになっていく。 小説家になろう様にも投稿しています。 タイトル変更しました!大幅改稿のため、一部非公開にしております。

虐げられた皇女は父の愛人とその娘に復讐する

ましゅぺちーの
恋愛
大陸一の大国ライドーン帝国の皇帝が崩御した。 その皇帝の子供である第一皇女シャーロットはこの時をずっと待っていた。 シャーロットの母親は今は亡き皇后陛下で皇帝とは政略結婚だった。 皇帝は皇后を蔑ろにし身分の低い女を愛妾として囲った。 やがてその愛妾には子供が生まれた。それが第二皇女プリシラである。 愛妾は皇帝の寵愛を笠に着てやりたい放題でプリシラも両親に甘やかされて我儘に育った。 今までは皇帝の寵愛があったからこそ好きにさせていたが、これからはそうもいかない。 シャーロットは愛妾とプリシラに対する復讐を実行に移す― 一部タイトルを変更しました。

断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません

天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。 私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。 処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。 魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。

【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。

るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」  色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。  ……ほんとに屑だわ。 結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。 彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。 彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

忘却令嬢〜そう言われましても記憶にございません〜【完】

雪乃
恋愛
ほんの一瞬、躊躇ってしまった手。 誰よりも愛していた彼女なのに傷付けてしまった。 ずっと傷付けていると理解っていたのに、振り払ってしまった。 彼女は深い碧色に絶望を映しながら微笑んだ。 ※読んでくださりありがとうございます。 ゆるふわ設定です。タグをころころ変えてます。何でも許せる方向け。

貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした

ましゅぺちーの
恋愛
王国の名門公爵家の出身であるエレンは幼い頃から婚約者候補である第一王子殿下に全てを捧げて生きてきた。 彼を数々の悪意から守り、彼の敵を排除した。それも全ては愛する彼のため。 しかし、王太子となった彼が最終的には選んだのはエレンではない平民の女だった。 悲しみに暮れたエレンだったが、家族や幼馴染の公爵令息に支えられて元気を取り戻していく。 その一方エレンを捨てた王太子は着々と破滅への道を進んでいた・・・

【完結】領主の妻になりました

青波鳩子
恋愛
「私が君を愛することは無い」 司祭しかいない小さな教会で、夫になったばかりのクライブにフォスティーヌはそう告げられた。 =============================================== オルティス王の側室を母に持つ第三王子クライブと、バーネット侯爵家フォスティーヌは婚約していた。 挙式を半年後に控えたある日、王宮にて事件が勃発した。 クライブの異母兄である王太子ジェイラスが、国王陛下とクライブの実母である側室を暗殺。 新たに王の座に就いたジェイラスは、異母弟である第二王子マーヴィンを公金横領の疑いで捕縛、第三王子クライブにオールブライト辺境領を治める沙汰を下した。 マーヴィンの婚約者だったブリジットは共犯の疑いがあったが確たる証拠が見つからない。 ブリジットが王都にいてはマーヴィンの子飼いと接触、画策の恐れから、ジェイラスはクライブにオールブライト領でブリジットの隔離監視を命じる。 捜査中に大怪我を負い、生涯歩けなくなったブリジットをクライブは密かに想っていた。 長兄からの「ブリジットの隔離監視」を都合よく解釈したクライブは、オールブライト辺境伯の館のうち豪華な別邸でブリジットを囲った。 新王である長兄の命令に逆らえずフォスティーヌと結婚したクライブは、本邸にフォスティーヌを置き、自分はブリジットと別邸で暮らした。 フォスティーヌに「別邸には近づくことを許可しない」と告げて。 フォスティーヌは「お飾りの領主の妻」としてオールブライトで生きていく。 ブリジットの大きな嘘をクライブが知り、そこからクライブとフォスティーヌの関係性が変わり始める。 ======================================== *荒唐無稽の世界観の中、ふんわりと書いていますのでふんわりとお読みください *約10万字で最終話を含めて全29話です *他のサイトでも公開します *10月16日より、1日2話ずつ、7時と19時にアップします *誤字、脱字、衍字、誤用、素早く脳内変換してお読みいただけるとありがたいです

【完結】私を忘れてしまった貴方に、憎まれています

高瀬船
恋愛
夜会会場で突然意識を失うように倒れてしまった自分の旦那であるアーヴィング様を急いで邸へ連れて戻った。 そうして、医者の診察が終わり、体に異常は無い、と言われて安心したのも束の間。 最愛の旦那様は、目が覚めると綺麗さっぱりと私の事を忘れてしまっており、私と結婚した事も、お互い愛を育んだ事を忘れ。 何故か、私を憎しみの籠った瞳で見つめるのです。 優しかったアーヴィング様が、突然見知らぬ男性になってしまったかのようで、冷たくあしらわれ、憎まれ、私の心は日が経つにつれて疲弊して行く一方となってしまったのです。

処理中です...