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72話
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ユシリス様は現在入院している理由は、やはり心が病んでいるからみたいだ。
それもわたしを見た時に「お姉ちゃん」と言ってから……
わたしを見て突然あの糞気持ち悪い公爵のことを思い出したのだろうか……
ユシリス様にお会いできれば……入院中の彼女に会う事は難しいだろう。
「そう言えば……お父様、ユイナ・ミレーヌという人はなぜわたしを刺したのでしょうか?」
わたしは自分が刺された理由も半年も寝込んでいた事もよくわからないでいた。
刺される前はアンが前回、同じ時期にわたしを庇い亡くなったので、そのことを心配して過ごしていた。
わたしはユシリス様のことばかりで自分が刺された理由をよく知らなかった。
でもその理由もわたしが変えてしまったので、今聞いても刺された前と今では変わっているかもしれない。
変わっていても、わたしには判断できない。
未来を変えるとは、自分の持っていた記憶を捨ててしまうことでもあるんだと今更ながらに気がついた。
「ユイナ・ミレーヌはマリーナ様の幼い頃からの友人なんだ。……マリーナ様はエリーゼに毒を盛り拐った犯人として処刑されたんだ」
「え?処刑?違うわ、わたしの記憶では修道院に入れられてそのあと辺境伯の後妻になるはずだったわ」
「……エリーゼの刺される前と後では、処罰も変わってしまったんだな、マリーナ様はお前にした罪だけではなくて、クロード殿下にも媚薬を盛り、既成事実を作ろうとしたんだ」
「え?ええ?だってまだその時は12歳か13歳くらいですよね?二人とも!」
「……マリーナ様は何を考えているのか……もちろんそれは未遂で終わったが、薬を盛るという王族への罪は重たい。
父親と一緒に子ども達を売買する仕事にも関わっていた。いや、それを先導して主犯だったのは娘のマリーナ様の方だったんだ。
あの子は子供ながらに、あまりにも罪を重ねていたんだ。
処刑は免れなかった。ハウエル公爵やその周りの貴族派で共に犯罪に深く関わった者達もみんな処刑や重たい刑罰を受けたんだ」
「わたしの記憶よりも今の方がマリーナ様は酷いことをしているのですね」
「ああ、まさかあの年で大人顔負けの犯罪を犯すとは……前回はお前を冤罪で処刑したんだ……そして今回はお前を毒で殺そうとした。わたしは処刑は当たり前だと思っているよ」
「わたしの記憶ではまだマリーナ様は生きていたので……ではユイナ・ミレーヌ様は何故?マリーナ様の復讐ですか?」
「それもあるが……ユイナ・ミレーヌはマリーナ様の意思を継いで、自分がクロード殿下と結婚するのだと思い込んで、邪魔なエリーゼを排除しようとしたんだ。そのために2年ほどお前の動きを見張り、殺そうと準備をしていたらしい」
「わたしを排除?でもわたしとクロード様は仲良くないし、わたしは彼を嫌っているわ、それにわたしは婚約の打診をされて断ったのでしょう?」
「そうだ。でも殿下がお前を諦めきれていないのはまだみんな知っている。だから南の領地に行ってからも、お前が刺されて意識がない間、何度もこちらに見舞いに来られたんだ。手紙も度々頂いている。
彼には婚約話が多数きているが全て未だに断っている。
お前を諦めきれないんだ」
「………そうなのですね……」
「もちろんお前が殿下を嫌っていることも前回のことで許せないことも、わたしもスコットも殿下も分かっている。
わたしと殿下はお前に好かれることも許されないことも分かっているんだ。ただ殿下はお前が幸せにならないと自分も幸せになる事はできないと思っているんだと思う」
「わたしはもうお父様のことも殿下のことも恨み嫌いながら生きたくはありません。ユシリス様と過ごすひと月の中で、自分も前に進まないといけないのだと感じました。
すぐに気持ちを捨て去る事は出来ませんがわたしは二人を避けるのではなくて向き合って行こうと思います」
「エリーゼ……無理はしないで欲しい……わたしは許されるべきではない事は分かっている……」
お父様は横を向き、わたしに見えないようにそっと涙を流していた。
それもわたしを見た時に「お姉ちゃん」と言ってから……
わたしを見て突然あの糞気持ち悪い公爵のことを思い出したのだろうか……
ユシリス様にお会いできれば……入院中の彼女に会う事は難しいだろう。
「そう言えば……お父様、ユイナ・ミレーヌという人はなぜわたしを刺したのでしょうか?」
わたしは自分が刺された理由も半年も寝込んでいた事もよくわからないでいた。
刺される前はアンが前回、同じ時期にわたしを庇い亡くなったので、そのことを心配して過ごしていた。
わたしはユシリス様のことばかりで自分が刺された理由をよく知らなかった。
でもその理由もわたしが変えてしまったので、今聞いても刺された前と今では変わっているかもしれない。
変わっていても、わたしには判断できない。
未来を変えるとは、自分の持っていた記憶を捨ててしまうことでもあるんだと今更ながらに気がついた。
「ユイナ・ミレーヌはマリーナ様の幼い頃からの友人なんだ。……マリーナ様はエリーゼに毒を盛り拐った犯人として処刑されたんだ」
「え?処刑?違うわ、わたしの記憶では修道院に入れられてそのあと辺境伯の後妻になるはずだったわ」
「……エリーゼの刺される前と後では、処罰も変わってしまったんだな、マリーナ様はお前にした罪だけではなくて、クロード殿下にも媚薬を盛り、既成事実を作ろうとしたんだ」
「え?ええ?だってまだその時は12歳か13歳くらいですよね?二人とも!」
「……マリーナ様は何を考えているのか……もちろんそれは未遂で終わったが、薬を盛るという王族への罪は重たい。
父親と一緒に子ども達を売買する仕事にも関わっていた。いや、それを先導して主犯だったのは娘のマリーナ様の方だったんだ。
あの子は子供ながらに、あまりにも罪を重ねていたんだ。
処刑は免れなかった。ハウエル公爵やその周りの貴族派で共に犯罪に深く関わった者達もみんな処刑や重たい刑罰を受けたんだ」
「わたしの記憶よりも今の方がマリーナ様は酷いことをしているのですね」
「ああ、まさかあの年で大人顔負けの犯罪を犯すとは……前回はお前を冤罪で処刑したんだ……そして今回はお前を毒で殺そうとした。わたしは処刑は当たり前だと思っているよ」
「わたしの記憶ではまだマリーナ様は生きていたので……ではユイナ・ミレーヌ様は何故?マリーナ様の復讐ですか?」
「それもあるが……ユイナ・ミレーヌはマリーナ様の意思を継いで、自分がクロード殿下と結婚するのだと思い込んで、邪魔なエリーゼを排除しようとしたんだ。そのために2年ほどお前の動きを見張り、殺そうと準備をしていたらしい」
「わたしを排除?でもわたしとクロード様は仲良くないし、わたしは彼を嫌っているわ、それにわたしは婚約の打診をされて断ったのでしょう?」
「そうだ。でも殿下がお前を諦めきれていないのはまだみんな知っている。だから南の領地に行ってからも、お前が刺されて意識がない間、何度もこちらに見舞いに来られたんだ。手紙も度々頂いている。
彼には婚約話が多数きているが全て未だに断っている。
お前を諦めきれないんだ」
「………そうなのですね……」
「もちろんお前が殿下を嫌っていることも前回のことで許せないことも、わたしもスコットも殿下も分かっている。
わたしと殿下はお前に好かれることも許されないことも分かっているんだ。ただ殿下はお前が幸せにならないと自分も幸せになる事はできないと思っているんだと思う」
「わたしはもうお父様のことも殿下のことも恨み嫌いながら生きたくはありません。ユシリス様と過ごすひと月の中で、自分も前に進まないといけないのだと感じました。
すぐに気持ちを捨て去る事は出来ませんがわたしは二人を避けるのではなくて向き合って行こうと思います」
「エリーゼ……無理はしないで欲しい……わたしは許されるべきではない事は分かっている……」
お父様は横を向き、わたしに見えないようにそっと涙を流していた。
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