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64話 過去戻り編
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夫人とお祖母様はユシリス様の酷い傷に唖然としていた。
ユシリス様は熱が上がってきたのかぐったりして、ベッドに寝かされると目を閉じた。
わたしは、居間の方に行くと、夫人の息子とお祖父様、御者のおじさんが三人で話していた。
二人の話を聞いているお祖父様の顔はだんだん険しくなり、見ているわたしの方が怖くなってきた。
お祖母様と夫人もユシリス様が寝ているのを確認して居間へきた。
「かなり酷い傷でした」
「あんな酷い傷が出来るまでどれだけ鞭で打たれ殴られたのでしょう……可哀想に……」
あまりの酷い傷痕を思い出し、顔を歪ませた。
そして、お医者様が来てユシリス様の治療をしてくれた。
熱が出ているので、解熱剤と塗り薬、あとは化膿止めの薬を貰い、明日また来てくれると言っていた。
しばらくは絶対安静だそうだ。
そんな状態のユシリス様を連れ回してわたしは落ち込んでしまった。
手を握っている時のユシリス様は、痛がらないし普通に話してくれた。
でも手を離した瞬間から痛みと恐怖の中で一人で頑張って、この夫人に話しかけたのだ。
わたしに力が有ればもっと何かしてあげられるのに……
ユシリス様の寝顔を見に行くと、薬が効いてきたのか少し呼吸も楽になっている。
「ユシリス様、ここは安全みたい。とりあえずゆっくり寝ていてね」
わたしは夫人と、ユシリス様の祖父母の三人の話を聞くことにした。
この人達が今からユシリス様をどうするのか。
もしこの人達ではダメなら、とりあえずお金はあるので一人でなんとか生きる方法を考えるしかない。
そんなことを考えながら聞いていた。
「ユシリスが娘の葬式の時に居なかったのは、あの父親に虐待されていたからなんだわ」
「具合が悪くて葬儀には参加できないと言ってたのは嘘だったんだな、あんな酷い傷ではまともに歩くことも出来なかっただろう、よく屋敷を逃げ出して来たと思う、誰か助けがあったのかもしれないな」
「おじさま、おばさま、これからどうなさいますか?」
「もちろん、ユシリスは引き取るつもりだ」
「そうよ、あんな男にユシリスを任せられないわ」
「あちらはこの国の公爵です……失礼ですがお二人は侯爵…あちらが力も格も上だと思います。もしよろしければわたしの養女として引き取るのは駄目でしようか?
セリーヌの忘れ形見です、わたしならあの男よりも格も力も上ですから、『うん』と言わせてみせますわ」
夫人は誰なのだろう?
笑顔がとても怖かった。
「いいのですか?貴女は我が帝国の第二皇女だった方です。ニューベル公爵も貴女に逆らう事は出来ないと思います。
しかもこの子の傷を見ているので、証人としても申し分ありません。ですがそれはご迷惑をお掛けすることになります」
「いいのです、セリーヌとは幼い頃からの友人でした。彼女は公爵と結婚して幸せだったのでしょうか?手紙ではいつも幸せそうにしていました。でもユシリスを見ているとどうだったのか……あの公爵は、こちらの王に頼んで、わたしの証言を元に捕まえてもらいます、すぐに使用人達を連行して証言を取らせます」
凄い!この人は、帝国の皇女様だったんだ!
我が国は、帝国の配下に入っているので、帝国が力を持っている。
いくら公爵でも敵わないだろう。
わたしはユシリス様の強運にガッツポーズをした。
「よし!」
でも、ユシリス様の体調は簡単には良くならなかった。
熱が下がらないし、夢でうなされて
「ごめんなさい、ごめんなさい、助けてください」
と泣き出したり、叫んだり、体も心もなかなか治らなかった。
わたしはずっとそばにいて、みんながいない時こっそり手を握った。
「お姉ちゃん?お姉ちゃんが手を握ってくれる時だけ、体が軽くなるの。それに安心するの」
「お祖父様やお祖母様は怖い?とても優しそうよ?」
「あまり会ったことがないの。優しいのは分かってるの。
でもねまたお父様みたいに、お母様を殺したと言って憎まれたらどうしたらいいの?怖いよ」
「そうだよね、怖いよね。お姉ちゃんはお父様に叩かれたりはしなかったけどずっと放っておかれたの。とても寂しくてずっと屋敷で一人だったの。そして殺された時、もう誰のことも信じない、みんなを憎んで恨んでやると思いながら死んだわ」
「お姉ちゃんは死んでいるの?」
「わからないの、一度は死んだの。そして生き返ってもう一度やり直していたんだけど、また刺されて殺されかけたの。意識を失って、気がついたらユリシス様に会いに来ていたの」
「わたしに?」
「うん、大人のユリシス様は知っているの、でも貴女はユシリス様であってユシリス様ではないわ。わたしの知っているユシリス様は辛いことがありすぎて心の箱の中に閉じこもってしまったの。貴女にはそうなって欲しくないの、お願い、勇気を出して!わたしも勇気を出してお父様と向き合うから、貴女も目の前にいる優しい人達と向き合ってみて!」
ユシリス様は、しばらく下を向いて何も言わなかった。
「お姉ちゃん、そばに居てくれる?
そしたら頑張るから!」
「分かったわ」
ユシリス様は熱が上がってきたのかぐったりして、ベッドに寝かされると目を閉じた。
わたしは、居間の方に行くと、夫人の息子とお祖父様、御者のおじさんが三人で話していた。
二人の話を聞いているお祖父様の顔はだんだん険しくなり、見ているわたしの方が怖くなってきた。
お祖母様と夫人もユシリス様が寝ているのを確認して居間へきた。
「かなり酷い傷でした」
「あんな酷い傷が出来るまでどれだけ鞭で打たれ殴られたのでしょう……可哀想に……」
あまりの酷い傷痕を思い出し、顔を歪ませた。
そして、お医者様が来てユシリス様の治療をしてくれた。
熱が出ているので、解熱剤と塗り薬、あとは化膿止めの薬を貰い、明日また来てくれると言っていた。
しばらくは絶対安静だそうだ。
そんな状態のユシリス様を連れ回してわたしは落ち込んでしまった。
手を握っている時のユシリス様は、痛がらないし普通に話してくれた。
でも手を離した瞬間から痛みと恐怖の中で一人で頑張って、この夫人に話しかけたのだ。
わたしに力が有ればもっと何かしてあげられるのに……
ユシリス様の寝顔を見に行くと、薬が効いてきたのか少し呼吸も楽になっている。
「ユシリス様、ここは安全みたい。とりあえずゆっくり寝ていてね」
わたしは夫人と、ユシリス様の祖父母の三人の話を聞くことにした。
この人達が今からユシリス様をどうするのか。
もしこの人達ではダメなら、とりあえずお金はあるので一人でなんとか生きる方法を考えるしかない。
そんなことを考えながら聞いていた。
「ユシリスが娘の葬式の時に居なかったのは、あの父親に虐待されていたからなんだわ」
「具合が悪くて葬儀には参加できないと言ってたのは嘘だったんだな、あんな酷い傷ではまともに歩くことも出来なかっただろう、よく屋敷を逃げ出して来たと思う、誰か助けがあったのかもしれないな」
「おじさま、おばさま、これからどうなさいますか?」
「もちろん、ユシリスは引き取るつもりだ」
「そうよ、あんな男にユシリスを任せられないわ」
「あちらはこの国の公爵です……失礼ですがお二人は侯爵…あちらが力も格も上だと思います。もしよろしければわたしの養女として引き取るのは駄目でしようか?
セリーヌの忘れ形見です、わたしならあの男よりも格も力も上ですから、『うん』と言わせてみせますわ」
夫人は誰なのだろう?
笑顔がとても怖かった。
「いいのですか?貴女は我が帝国の第二皇女だった方です。ニューベル公爵も貴女に逆らう事は出来ないと思います。
しかもこの子の傷を見ているので、証人としても申し分ありません。ですがそれはご迷惑をお掛けすることになります」
「いいのです、セリーヌとは幼い頃からの友人でした。彼女は公爵と結婚して幸せだったのでしょうか?手紙ではいつも幸せそうにしていました。でもユシリスを見ているとどうだったのか……あの公爵は、こちらの王に頼んで、わたしの証言を元に捕まえてもらいます、すぐに使用人達を連行して証言を取らせます」
凄い!この人は、帝国の皇女様だったんだ!
我が国は、帝国の配下に入っているので、帝国が力を持っている。
いくら公爵でも敵わないだろう。
わたしはユシリス様の強運にガッツポーズをした。
「よし!」
でも、ユシリス様の体調は簡単には良くならなかった。
熱が下がらないし、夢でうなされて
「ごめんなさい、ごめんなさい、助けてください」
と泣き出したり、叫んだり、体も心もなかなか治らなかった。
わたしはずっとそばにいて、みんながいない時こっそり手を握った。
「お姉ちゃん?お姉ちゃんが手を握ってくれる時だけ、体が軽くなるの。それに安心するの」
「お祖父様やお祖母様は怖い?とても優しそうよ?」
「あまり会ったことがないの。優しいのは分かってるの。
でもねまたお父様みたいに、お母様を殺したと言って憎まれたらどうしたらいいの?怖いよ」
「そうだよね、怖いよね。お姉ちゃんはお父様に叩かれたりはしなかったけどずっと放っておかれたの。とても寂しくてずっと屋敷で一人だったの。そして殺された時、もう誰のことも信じない、みんなを憎んで恨んでやると思いながら死んだわ」
「お姉ちゃんは死んでいるの?」
「わからないの、一度は死んだの。そして生き返ってもう一度やり直していたんだけど、また刺されて殺されかけたの。意識を失って、気がついたらユリシス様に会いに来ていたの」
「わたしに?」
「うん、大人のユリシス様は知っているの、でも貴女はユシリス様であってユシリス様ではないわ。わたしの知っているユシリス様は辛いことがありすぎて心の箱の中に閉じこもってしまったの。貴女にはそうなって欲しくないの、お願い、勇気を出して!わたしも勇気を出してお父様と向き合うから、貴女も目の前にいる優しい人達と向き合ってみて!」
ユシリス様は、しばらく下を向いて何も言わなかった。
「お姉ちゃん、そばに居てくれる?
そしたら頑張るから!」
「分かったわ」
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