63 / 110
61話 過去戻り編
しおりを挟む目覚めたら知らない場所にいた。
(ここは……?)
わたしは周囲を見回した。
わたしの手、わたしの体。
大きさは13歳のままだ。
死んで3回目の人生に巻き戻ったのかと思ったけど違っていた。
だってわたしの姿は鏡に映っていない。
幽霊?
ここはどこ?
わたしはあんな酷い怪我をして毒に侵されたのに、とても体が軽い。
知らない屋敷を歩いていても誰もわたしの存在に気が付かない。
メイド服を着た沢山の人。
執事の人、料理人、たぶん出入りの業者さんもいる。
でも誰もわたしの存在に気がつかない。
歩いて回るのに疲れない。
どれくらいあるいてまわったのだろう。
そんな時、遠くから泣く声が聞こえてきた。
「ごめんなさい、もうしません。これ以上叩かないで」
幼い子供の声だった。
ドアをすり抜けて覗いてみると、わたしの死ぬほど嫌いなニューベル公爵がいた。
(うん?でもすごく若い、気持ち悪いのは昔から変わらないんだ、やっぱり気持ち悪い)
ニューベル公爵は、8歳くらいの女の子を鞭で叩いていた。
とても楽しそうに、興奮していた。
「泣け!もっと泣け!」
女の子は壁に追いやられて震えて泣き続けていた。
痛みで抵抗出来ずにいるのを見て、わたしは何とかしなきゃと思った。
周りを見て何かないか、でもわたしが触ることが出来るのか……通り抜けてしまうのに……
なんとかしないと。
わたしは近くにあるものを片っ端から触ろうとした。
でも全てすり抜ける。
気持ち悪いけどニューベル公爵に体当たりした。
すり抜けるはずが、何故か反応があった。
突然体に何か物が当たった公爵は驚いて辺りを見回していた。
わたしは何度も何度もぶつかり、気持ち悪いけど股間を思いっきり蹴った。
蹲った公爵を見届けて、わたしは壁でぐったりした女の子の耳元で「立って!早く!」と声を掛けた。
女の子はわたしをじっと見た。
「見える?」
女の子はこくんと頷いた。
そしてわたしの手を握り、一緒に部屋から出た。
わたしと手を繋いだ女の子は、何故かわたしと同じで周りから見えていない。
「わたしはエリーゼ貴女の名前は?」
「わたしはユシリス!助けてくれてありがとう」
ユシリス?え?
「もしかしてあの気持ち悪いニューベル公爵の娘?」
「お父様を知っているの?」
ユシリス様は青い顔をして震えていた。
「うーん、知ってはいるけど知らないわ。どうしてあの人は貴女を叩いていたの?」
「お母様が亡くなってからお父様はわたしを叩くようになったの」
「どういうこと?」
「お父様がお母様が死んだのはわたしの所為だって」
「え?どうして?」
「お母様はわたしを産んで体を壊したの。それからは寝ていることが多くて……風邪を引いて肺炎を起こして返らぬ人になったの」
「ユシリス様の所為ではないわ」
「お父様はお母様が亡くなった日からわたしを部屋から出さなくなって今みたいに鞭で叩いたり殴ったりするようになったの」
「痛かったわね、怖かったでしょう?よく我慢したわ」
「………う、う……ん」
ユシリス様は涙をポロポロ流していた。
「泣かないで、他には何かされていない?」
「……うん、大丈夫…」
「変なことはされていない?」
「……?……」
どう聞いていいかわからなかった。
あの映像で聞いた、娘への性的虐待はまだ始まっていなかった。
「お母様はいつ亡くなったの?」
「10日前……」
「そうか、寂しいよね、わたしも小さい頃にお母様が亡くなったの、悲しかったわ」
「お姉ちゃんも?」
「え?お姉ちゃん?……そ、そうお姉ちゃんもなの」
今のわたしはユシリス様より年上だった。
「お姉ちゃん、どうしてわたしとお姉ちゃんが歩いているのに誰もこっちを見ないの?わたし、部屋から出してもらえなかったの、みんなも知っているはずなのに」
「お姉ちゃんにもわからないの、でもね、貴女を助ける為にわたしはここに飛ばされたんだと思うの」
「わたしを助ける?」
「うん、貴女はとても良い子なの。だからあの糞気持ち悪いニューベル公爵から貴女を守るのがわたしの仕事なの」
わたしは本当にそう思った。
だってニューベル公爵には体当たり出来たし、ユシリス様と手を握ればユシリス様もみんなから消えて見えなくなっている。
でも、これで助けたとはいえない。
どうすればいいの?
◆ ◆ ◆
あともう少し話が続きます。
ここからはユシリスの救済編です。
皆様からユシリスを!との言葉に…もう少しだけお付き合いください。
(ここは……?)
わたしは周囲を見回した。
わたしの手、わたしの体。
大きさは13歳のままだ。
死んで3回目の人生に巻き戻ったのかと思ったけど違っていた。
だってわたしの姿は鏡に映っていない。
幽霊?
ここはどこ?
わたしはあんな酷い怪我をして毒に侵されたのに、とても体が軽い。
知らない屋敷を歩いていても誰もわたしの存在に気が付かない。
メイド服を着た沢山の人。
執事の人、料理人、たぶん出入りの業者さんもいる。
でも誰もわたしの存在に気がつかない。
歩いて回るのに疲れない。
どれくらいあるいてまわったのだろう。
そんな時、遠くから泣く声が聞こえてきた。
「ごめんなさい、もうしません。これ以上叩かないで」
幼い子供の声だった。
ドアをすり抜けて覗いてみると、わたしの死ぬほど嫌いなニューベル公爵がいた。
(うん?でもすごく若い、気持ち悪いのは昔から変わらないんだ、やっぱり気持ち悪い)
ニューベル公爵は、8歳くらいの女の子を鞭で叩いていた。
とても楽しそうに、興奮していた。
「泣け!もっと泣け!」
女の子は壁に追いやられて震えて泣き続けていた。
痛みで抵抗出来ずにいるのを見て、わたしは何とかしなきゃと思った。
周りを見て何かないか、でもわたしが触ることが出来るのか……通り抜けてしまうのに……
なんとかしないと。
わたしは近くにあるものを片っ端から触ろうとした。
でも全てすり抜ける。
気持ち悪いけどニューベル公爵に体当たりした。
すり抜けるはずが、何故か反応があった。
突然体に何か物が当たった公爵は驚いて辺りを見回していた。
わたしは何度も何度もぶつかり、気持ち悪いけど股間を思いっきり蹴った。
蹲った公爵を見届けて、わたしは壁でぐったりした女の子の耳元で「立って!早く!」と声を掛けた。
女の子はわたしをじっと見た。
「見える?」
女の子はこくんと頷いた。
そしてわたしの手を握り、一緒に部屋から出た。
わたしと手を繋いだ女の子は、何故かわたしと同じで周りから見えていない。
「わたしはエリーゼ貴女の名前は?」
「わたしはユシリス!助けてくれてありがとう」
ユシリス?え?
「もしかしてあの気持ち悪いニューベル公爵の娘?」
「お父様を知っているの?」
ユシリス様は青い顔をして震えていた。
「うーん、知ってはいるけど知らないわ。どうしてあの人は貴女を叩いていたの?」
「お母様が亡くなってからお父様はわたしを叩くようになったの」
「どういうこと?」
「お父様がお母様が死んだのはわたしの所為だって」
「え?どうして?」
「お母様はわたしを産んで体を壊したの。それからは寝ていることが多くて……風邪を引いて肺炎を起こして返らぬ人になったの」
「ユシリス様の所為ではないわ」
「お父様はお母様が亡くなった日からわたしを部屋から出さなくなって今みたいに鞭で叩いたり殴ったりするようになったの」
「痛かったわね、怖かったでしょう?よく我慢したわ」
「………う、う……ん」
ユシリス様は涙をポロポロ流していた。
「泣かないで、他には何かされていない?」
「……うん、大丈夫…」
「変なことはされていない?」
「……?……」
どう聞いていいかわからなかった。
あの映像で聞いた、娘への性的虐待はまだ始まっていなかった。
「お母様はいつ亡くなったの?」
「10日前……」
「そうか、寂しいよね、わたしも小さい頃にお母様が亡くなったの、悲しかったわ」
「お姉ちゃんも?」
「え?お姉ちゃん?……そ、そうお姉ちゃんもなの」
今のわたしはユシリス様より年上だった。
「お姉ちゃん、どうしてわたしとお姉ちゃんが歩いているのに誰もこっちを見ないの?わたし、部屋から出してもらえなかったの、みんなも知っているはずなのに」
「お姉ちゃんにもわからないの、でもね、貴女を助ける為にわたしはここに飛ばされたんだと思うの」
「わたしを助ける?」
「うん、貴女はとても良い子なの。だからあの糞気持ち悪いニューベル公爵から貴女を守るのがわたしの仕事なの」
わたしは本当にそう思った。
だってニューベル公爵には体当たり出来たし、ユシリス様と手を握ればユシリス様もみんなから消えて見えなくなっている。
でも、これで助けたとはいえない。
どうすればいいの?
◆ ◆ ◆
あともう少し話が続きます。
ここからはユシリスの救済編です。
皆様からユシリスを!との言葉に…もう少しだけお付き合いください。
98
お気に入りに追加
4,844
あなたにおすすめの小説

愛されなかった公爵令嬢のやり直し
ましゅぺちーの
恋愛
オルレリアン王国の公爵令嬢セシリアは、誰からも愛されていなかった。
母は幼い頃に亡くなり、父である公爵には無視され、王宮の使用人達には憐れみの眼差しを向けられる。
婚約者であった王太子と結婚するが夫となった王太子には冷遇されていた。
そんなある日、セシリアは王太子が寵愛する愛妾を害したと疑われてしまう。
どうせ処刑されるならと、セシリアは王宮のバルコニーから身を投げる。
死ぬ寸前のセシリアは思う。
「一度でいいから誰かに愛されたかった。」と。
目が覚めた時、セシリアは12歳の頃に時間が巻き戻っていた。
セシリアは決意する。
「自分の幸せは自分でつかみ取る!」
幸せになるために奔走するセシリア。
だがそれと同時に父である公爵の、婚約者である王太子の、王太子の愛妾であった男爵令嬢の、驚くべき真実が次々と明らかになっていく。
小説家になろう様にも投稿しています。
タイトル変更しました!大幅改稿のため、一部非公開にしております。

虐げられた皇女は父の愛人とその娘に復讐する
ましゅぺちーの
恋愛
大陸一の大国ライドーン帝国の皇帝が崩御した。
その皇帝の子供である第一皇女シャーロットはこの時をずっと待っていた。
シャーロットの母親は今は亡き皇后陛下で皇帝とは政略結婚だった。
皇帝は皇后を蔑ろにし身分の低い女を愛妾として囲った。
やがてその愛妾には子供が生まれた。それが第二皇女プリシラである。
愛妾は皇帝の寵愛を笠に着てやりたい放題でプリシラも両親に甘やかされて我儘に育った。
今までは皇帝の寵愛があったからこそ好きにさせていたが、これからはそうもいかない。
シャーロットは愛妾とプリシラに対する復讐を実行に移す―
一部タイトルを変更しました。

断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません
天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。
私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。
処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。
魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。
【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。
るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」
色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。
……ほんとに屑だわ。
結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。
彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。
彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

忘却令嬢〜そう言われましても記憶にございません〜【完】
雪乃
恋愛
ほんの一瞬、躊躇ってしまった手。
誰よりも愛していた彼女なのに傷付けてしまった。
ずっと傷付けていると理解っていたのに、振り払ってしまった。
彼女は深い碧色に絶望を映しながら微笑んだ。
※読んでくださりありがとうございます。
ゆるふわ設定です。タグをころころ変えてます。何でも許せる方向け。

貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした
ましゅぺちーの
恋愛
王国の名門公爵家の出身であるエレンは幼い頃から婚約者候補である第一王子殿下に全てを捧げて生きてきた。
彼を数々の悪意から守り、彼の敵を排除した。それも全ては愛する彼のため。
しかし、王太子となった彼が最終的には選んだのはエレンではない平民の女だった。
悲しみに暮れたエレンだったが、家族や幼馴染の公爵令息に支えられて元気を取り戻していく。
その一方エレンを捨てた王太子は着々と破滅への道を進んでいた・・・

【完結】領主の妻になりました
青波鳩子
恋愛
「私が君を愛することは無い」
司祭しかいない小さな教会で、夫になったばかりのクライブにフォスティーヌはそう告げられた。
===============================================
オルティス王の側室を母に持つ第三王子クライブと、バーネット侯爵家フォスティーヌは婚約していた。
挙式を半年後に控えたある日、王宮にて事件が勃発した。
クライブの異母兄である王太子ジェイラスが、国王陛下とクライブの実母である側室を暗殺。
新たに王の座に就いたジェイラスは、異母弟である第二王子マーヴィンを公金横領の疑いで捕縛、第三王子クライブにオールブライト辺境領を治める沙汰を下した。
マーヴィンの婚約者だったブリジットは共犯の疑いがあったが確たる証拠が見つからない。
ブリジットが王都にいてはマーヴィンの子飼いと接触、画策の恐れから、ジェイラスはクライブにオールブライト領でブリジットの隔離監視を命じる。
捜査中に大怪我を負い、生涯歩けなくなったブリジットをクライブは密かに想っていた。
長兄からの「ブリジットの隔離監視」を都合よく解釈したクライブは、オールブライト辺境伯の館のうち豪華な別邸でブリジットを囲った。
新王である長兄の命令に逆らえずフォスティーヌと結婚したクライブは、本邸にフォスティーヌを置き、自分はブリジットと別邸で暮らした。
フォスティーヌに「別邸には近づくことを許可しない」と告げて。
フォスティーヌは「お飾りの領主の妻」としてオールブライトで生きていく。
ブリジットの大きな嘘をクライブが知り、そこからクライブとフォスティーヌの関係性が変わり始める。
========================================
*荒唐無稽の世界観の中、ふんわりと書いていますのでふんわりとお読みください
*約10万字で最終話を含めて全29話です
*他のサイトでも公開します
*10月16日より、1日2話ずつ、7時と19時にアップします
*誤字、脱字、衍字、誤用、素早く脳内変換してお読みいただけるとありがたいです

筆頭婚約者候補は「一抜け」を叫んでさっさと逃げ出した
基本二度寝
恋愛
王太子には婚約者候補が二十名ほどいた。
その中でも筆頭にいたのは、顔よし頭良し、すべての条件を持っていた公爵家の令嬢。
王太子を立てることも忘れない彼女に、ひとつだけ不満があった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる