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60話 ノア編
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父上に頼まれて出来るだけ近くで見守るようにしていた。
なのにエリーゼが刺されて医務室へ運ばれた。
俺はその話を聞いて急いで医務室へ向かった。
「エリーゼ!」
連れてきた男の人二人は服が血だらけだった。
エリーゼの体はぐったりしていて意識がなかった。
俺はエリーゼの体を触ると皮膚の色が白く、冷たくなっていて冷や汗が出ていた。
「エリーゼは、大丈夫ですか?これは大量出血のショック症状ですよね?」
俺の父上は医師で俺も父上について行き、勉強しているのでエリーゼの状態がわかった。
すぐに仰向けに寝かせ、枕を足の下に置き、両足を30cmほど高く上げた。
次にスカートやブラウスをゆるめ、からだに毛布をかけて保温して、これ以上体温を奪われないようにした。エリーゼのそばから離れないでずっと声をかけた。
「エリーゼ、大丈夫だから、しっかりしろ!聞こえているか?今父上を呼びに行ってる!近いからすぐに駆けつけてくれる!それまで死ぬな!生きろ!エリーゼ!」
俺は必死で声をかけた。
冷たくなった手を握り、少しでも温めようとした。
俺がエリーゼに会ったのは幼い頃だった。
俺の母上とエリーゼの母上は仲が良くて、幼い頃は一緒に遊んだ。
とても可愛くて笑顔も可愛い女の子だった。
「ノア!えほんをよもう」
「ノア!このおかしおいしいね」
いつもエリーゼは俺の後を追ってきて、俺はその姿が可愛くて態とに置いて行ったりした。
それでも必死でついて来るエリーゼ。
「ノア!」と俺を呼ぶエリーゼの笑顔が大好きだった。
なのにエリーゼに会えなくなった。
エリーゼの母上が亡くなってからエリーゼは外に出ることがなくなった。
「母上、エリーゼに会いたい」
何度も母上にお願いしたが、母上は困った顔をして
「オーリスが亡くなったの。今はエリーゼも悲しんでいるわ、だからそっとしてあげましょう」
そう言われると小さかった俺には何も言えなかった。
それから何度か母上はエリーゼの父上に連絡をとってくれた。
でも忙しいので今は連れていけないと返事が来ていたらしい。
父上はエリーゼの主治医なので偶に会うことがあるが、屋敷で一人寂しく過ごしていると聞いた。
「母上、エリーゼに会いに行きたい!」
俺は何度もおねがいした。
そんな時、母上は俺に申しわけなさそうに
「ノア、エリーゼには会えないの。あの子は屋敷を出て今は違う場所で暮らしているの」
と言った。
「オーリスが亡くなって、エリーゼの笑顔は消えてしまったの。わたしが躊躇してエリーゼに会いに行かなかった間に、エリーゼは笑うことも感情も無くしてしまったらしいの。今は別の場所で過ごしているわ、もっと早くに会いにいけばよかった。人の家庭にあまり踏み込むのもよくないと思っていたけど、ジェフなんか気にせずエリーゼに会いにいけばよかった」
「エリーゼは笑わなくなったの?エリーゼに会えないの?」
俺はエリーゼに会えなくなって、悲しかった。
どこにいるかもわからない。
でもまたいつか会える、そう思って過ごした。
そして、10歳を過ぎた時にエリーゼは、また実家に戻って来た。
母上は「今度こそ間違えない、エリーゼを放っては置かないわ」と言ってエリーゼに会いに行くようになった。
もちろん俺も必ず着いて行った。
「久しぶり、エリーゼ!」
エリーゼは誰かわからなかったみたいだった。
俺はショックでもう忘れてしまったんだと落ち込んだ。
「……ノア?ノアなの?久しぶり」
懐かしい笑顔で、俺の顔を見て俺の名前を呼んだ。
「エリーゼ、やっと会えた!ずっと会いたかったんだ」
俺はそれからエリーゼと過ごす時間を増やして行った。
学園に入り、エリーゼは友人達と仲良く過ごしていた。
俺もその仲間に入りいつもみんなで過ごすようにしていた。
父上からエリーゼに誰かわからないが、いつも見張っている視線があると聞いていた。
以前事件に巻き込まれて誘拐され殺されそうになったエリーゼ。
また狙われているかもしれないからと何人もの影と護衛をつけていた。
エリーゼが毒殺されようとしたことを知っている俺は、自分も常に近くで見張ることにした。
俺は、エリーゼに会えない間、エリーゼを守れるようになりたくて必死で剣術や体術を覚えた。
小さくて何も出来なくてエリーゼの笑顔を守れなかった。
だから次に会えた時はエリーゼを守ると決めていた。
なのにエリーゼを一人にさせてしまった。
どうして目を離したのか。
父上が来て、急いで手当をしてくれた。
応急処置をしていたので、出血は止まっていたが、顔色が悪い。
「これは…毒を塗られている……」
今ある解毒剤を飲ませてみよう。
「今犯人に何の毒を塗ったか吐かせています」
護衛が神妙な顔で言った。
「わかった、一応少しでも毒の進行を抑えるためにこれを飲ませる」
父上が飲ませた解毒剤のおかげか、少しだけ呼吸が落ち着いてきた。
はやく、早く、速く。
何の毒かわかってくれ!
エリーゼが死んだらどうするんだ!
なのにエリーゼが刺されて医務室へ運ばれた。
俺はその話を聞いて急いで医務室へ向かった。
「エリーゼ!」
連れてきた男の人二人は服が血だらけだった。
エリーゼの体はぐったりしていて意識がなかった。
俺はエリーゼの体を触ると皮膚の色が白く、冷たくなっていて冷や汗が出ていた。
「エリーゼは、大丈夫ですか?これは大量出血のショック症状ですよね?」
俺の父上は医師で俺も父上について行き、勉強しているのでエリーゼの状態がわかった。
すぐに仰向けに寝かせ、枕を足の下に置き、両足を30cmほど高く上げた。
次にスカートやブラウスをゆるめ、からだに毛布をかけて保温して、これ以上体温を奪われないようにした。エリーゼのそばから離れないでずっと声をかけた。
「エリーゼ、大丈夫だから、しっかりしろ!聞こえているか?今父上を呼びに行ってる!近いからすぐに駆けつけてくれる!それまで死ぬな!生きろ!エリーゼ!」
俺は必死で声をかけた。
冷たくなった手を握り、少しでも温めようとした。
俺がエリーゼに会ったのは幼い頃だった。
俺の母上とエリーゼの母上は仲が良くて、幼い頃は一緒に遊んだ。
とても可愛くて笑顔も可愛い女の子だった。
「ノア!えほんをよもう」
「ノア!このおかしおいしいね」
いつもエリーゼは俺の後を追ってきて、俺はその姿が可愛くて態とに置いて行ったりした。
それでも必死でついて来るエリーゼ。
「ノア!」と俺を呼ぶエリーゼの笑顔が大好きだった。
なのにエリーゼに会えなくなった。
エリーゼの母上が亡くなってからエリーゼは外に出ることがなくなった。
「母上、エリーゼに会いたい」
何度も母上にお願いしたが、母上は困った顔をして
「オーリスが亡くなったの。今はエリーゼも悲しんでいるわ、だからそっとしてあげましょう」
そう言われると小さかった俺には何も言えなかった。
それから何度か母上はエリーゼの父上に連絡をとってくれた。
でも忙しいので今は連れていけないと返事が来ていたらしい。
父上はエリーゼの主治医なので偶に会うことがあるが、屋敷で一人寂しく過ごしていると聞いた。
「母上、エリーゼに会いに行きたい!」
俺は何度もおねがいした。
そんな時、母上は俺に申しわけなさそうに
「ノア、エリーゼには会えないの。あの子は屋敷を出て今は違う場所で暮らしているの」
と言った。
「オーリスが亡くなって、エリーゼの笑顔は消えてしまったの。わたしが躊躇してエリーゼに会いに行かなかった間に、エリーゼは笑うことも感情も無くしてしまったらしいの。今は別の場所で過ごしているわ、もっと早くに会いにいけばよかった。人の家庭にあまり踏み込むのもよくないと思っていたけど、ジェフなんか気にせずエリーゼに会いにいけばよかった」
「エリーゼは笑わなくなったの?エリーゼに会えないの?」
俺はエリーゼに会えなくなって、悲しかった。
どこにいるかもわからない。
でもまたいつか会える、そう思って過ごした。
そして、10歳を過ぎた時にエリーゼは、また実家に戻って来た。
母上は「今度こそ間違えない、エリーゼを放っては置かないわ」と言ってエリーゼに会いに行くようになった。
もちろん俺も必ず着いて行った。
「久しぶり、エリーゼ!」
エリーゼは誰かわからなかったみたいだった。
俺はショックでもう忘れてしまったんだと落ち込んだ。
「……ノア?ノアなの?久しぶり」
懐かしい笑顔で、俺の顔を見て俺の名前を呼んだ。
「エリーゼ、やっと会えた!ずっと会いたかったんだ」
俺はそれからエリーゼと過ごす時間を増やして行った。
学園に入り、エリーゼは友人達と仲良く過ごしていた。
俺もその仲間に入りいつもみんなで過ごすようにしていた。
父上からエリーゼに誰かわからないが、いつも見張っている視線があると聞いていた。
以前事件に巻き込まれて誘拐され殺されそうになったエリーゼ。
また狙われているかもしれないからと何人もの影と護衛をつけていた。
エリーゼが毒殺されようとしたことを知っている俺は、自分も常に近くで見張ることにした。
俺は、エリーゼに会えない間、エリーゼを守れるようになりたくて必死で剣術や体術を覚えた。
小さくて何も出来なくてエリーゼの笑顔を守れなかった。
だから次に会えた時はエリーゼを守ると決めていた。
なのにエリーゼを一人にさせてしまった。
どうして目を離したのか。
父上が来て、急いで手当をしてくれた。
応急処置をしていたので、出血は止まっていたが、顔色が悪い。
「これは…毒を塗られている……」
今ある解毒剤を飲ませてみよう。
「今犯人に何の毒を塗ったか吐かせています」
護衛が神妙な顔で言った。
「わかった、一応少しでも毒の進行を抑えるためにこれを飲ませる」
父上が飲ませた解毒剤のおかげか、少しだけ呼吸が落ち着いてきた。
はやく、早く、速く。
何の毒かわかってくれ!
エリーゼが死んだらどうするんだ!
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