【完結】どうして殺されたのですか？貴方達の愛はもう要りません

59話 影編

ユイナ・ミレーヌ男爵令嬢15歳。

どうしてエリーゼ様の命を狙ったのか。

マリーナはユイナ・ミレーヌとは幼い頃からの友人だったらしい。

大人しく影の薄いユイナ・ミレーヌにとって、マリーナは誇らしい、自慢できる友人だった。

「わたしはクロード王子のお嫁さんになるの」
いつもマリーナは、ユイナ・ミレーヌにそう言っていた。

ユイナ・ミレーヌも、マリーナの家柄、美しさ、性格、賢さ、全てが整っているので、それはもう決定しているとものだと思い込んでいた。

なのにクロード様は、エリーゼ様を寵愛して東宮に住まわせた。

マリーナの嫉妬と怒りは凄まじかった。

それを一緒に見ていたユイナ・ミレーヌも同様で、エリーゼ様への憎悪を募らせていた。

そんな時、マリーナが事件を起こした。

エリーゼ様を誘拐して監禁し、毒殺しようとした。

しかし失敗してマリーナは、修道院入れられた。

もうすぐ辺境伯の元へ嫁ぐことになる。

辺境伯の元へ嫁ぐ。
聞けば幸せになるように思えるが、辺境伯のことを知る者は、マリーナが幸せになることはないだろうと思っている。

ユイナ・ミレーヌは、父親にその話を聞いてしまった。

ユイナ・ミレーヌの男爵家はマリーナの公爵家とは繋がりはあまりなかった。
子ども同士がお茶会で仲良くなってはいたが、公爵家からすると男爵家など目にも入らない存在で、相手にされることはなかった。

それは男爵家にとって運が良かったとも言える。
もし少しでも親しくしていれば犯罪の片棒を担ぎ、辺境地の鉱山で一生を過ごすことになったかもしれない。

貴族の間で、辺境伯の噂が流れた。知らなかった者達も、辺境伯の性癖を聞いてゾッとした。

だから前妻の二人は亡くなったのだろう……と、噂された。

その性癖は、加虐被虐性愛。

それも、マリーナと変わらない年頃の息子三人と娘二人も同じ性癖を持ち、これから6人からマリーナは死ぬまで逃れられない。

屋敷からいや、部屋から出してもらうことはないだろう。
服を着ることも外を見ることもなく、6人から毎日ずっと永遠に鞭で打たれ、殴られ、引きづられ、愛され続ける。

その話を聞いたユイナ・ミレーヌは、エリーゼが全ての悪だと悟った。

その悪を排除してマリーナを救う。


そのためにユイナ・ミレーヌは毒を手に入れて、エリーゼが学園に入学するのを待った。

エリーゼを守るものが多いのは、生徒間では知られていたので、遠くから観察していた。

もともと性格は暗くあまり存在感のないユイナ・ミレーヌなので、目立つことはない。

誰にも気づかれず虎視眈々とエリーゼの命を狙っていた。

友人達と仲良くしながら彼女に近づけば、沢山の視線の中で自分のエリーゼを見る視線は隠れる。

そうしてエリーゼが一人になる時、エリーゼにわからないように近づけるときを待っていた。

友人と話しながら、笑いながら、殺気を完全に殺して。

常にナイフをスカートに隠し持って。

暗殺に特化した殺し屋のように殺気を消す。
そんなことが女子生徒に出来るのだろうか？

不思議に思われた。

マリーナが捕まり、ユイナ・ミレーヌはマリーナのやり方が失敗だったと思い、どうすれば相手にわからずに殺せるかこの数年殺し屋を雇い教えを買うたらしい。

我々影と同じ訓練をしたのだ。

だから、指を折られようと口を割らなかった。
流石に足首を折られ、次々に口を割るまで折られることを悟り、諦めて口を割った。

俺たちは女子供だろうと容赦はしない。

最後の骨まで折っていく。

殺し屋に習っていればそれくらい分かったのだろう。

だから諦めて口を割った。

流石にこれ以上の痛みに素人では耐えられなかったのだ。


殺し方を覚えたユイナ・ミレーヌは、エリーゼを本当に殺すことにした。

たぶん彼女も「殺す」ことに対しての嗜好を持っているのだろう。

我々に捕まって牢に入れられても、成功したことで悦に入っていた。

「ふふふ、わたしの殺しは「影」すら阻止出来なかったわ」

アハハハ！

「エリーゼ様は助からないわ！いい気味よ、マリーナ様が不幸になったのよ、あの女も当然不幸になるべきよ！」