【完結】どうして殺されたのですか?貴方達の愛はもう要りません  

たろ

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56話

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入学してすぐ気になる視線に気がついた。

いつも誰かがわたしを見ている。

前回の時は、殿下の婚約者なのでいつも誰かの睨むようなキツい視線が当たり前だった。

でも今回は殿下の婚約者でも、誰かの婚約者でもない。
事件のことは貴族の中では有名だが、攫われて助かった悲劇の令嬢として、その話をする者はいない。

王家からのお達しで今回の話は王家の醜聞になるので箝口令が敷かれている。

なのでわたしに鋭い視線を送ったり嫌味を言ってくる者はいない……はず。

「エリーゼ、お昼を食べに行くわよ!」
カイラとエレンから誘われてわたしは食堂へ行った。

そこに、席を取っていてくれたユンとミリアが居た。

「二人ともいつもごめんなさい」

「エリーゼ様、そう言う時は謝らない!」

「そうですよ!ありがとうです」

わたしは四人のおかげで、学園を楽しく過ごすことが出来ている。

「俺達も隣にいいか?」

と三人組がやって来た。

彼らは同じクラスの男子達。

一人はお母様の友人のリンス様の息子で、ノア・バーグ、伯爵家の次男
ノアのお父様のグレイおじさまは、医師をしていていつもわたしの病気を診てくれる。
おばさまは、わたしの母親代わりで何かあった時は相談に乗ってくださる。

前回の時は、おばさまやノアとは交流はなかった。

今回は、お父様がおばさまに頭を下げて、わたしが寂しくないように気にかけて欲しいと、わたしが家出をする前に頼んでいたらしい。

おばさまに聞いて、あのお父様がわたしを心配してくれていたなんて信じられなかった。

でもおばさまは、院長先生とも仲が良くて、わたしにお母様の話を聞かせてくれた。

ノアと一緒にいるのが、セスとダニー。
二人は子爵の息子。

三人とも優しくて話しやすい。

前回のわたしは彼らと全く交流もなく関わることもなかった。

先生の息子だと言うことも今回知ったくらいだ。

エレンはセスが少し気になっているらしく、三人が来るとソワソワして、見ていて可愛くてわたしの方がニヤけてしまう。

「空いているからどうぞ、わたしが取った席ではないけど」
わたしがノアに言うと

「ユンとミリア、座らせてもらうね」
と、イケメンの笑顔でお礼を言った。

二人とも毎回頬を染めて「どうぞ」と言う。

わたしは殿下のおかげでイケメン抗体が付いているのか、かっこよさがわからない。

ノアをじっと観察していると

「エリーゼ、俺の顔に何かついてる?」

「ううん、ノア達ってイケメンなのにわたし、どうしてときめかないのか考えていたの」

三人は顔を見合わせて
「「「え?」」」
と言った。

「イケメンなんて言ってくれてありがとう」
と、みんな照れていたが

「エリーゼは俺たちのことなんとも思わないって事?」

「そうなの、三人ともかっこいいんだと思うの。でもみんなみたいに三人を見ても話しかけられても、頬を染めることもそわそわすることもないの。
『あー、いるな』って思うだけなの」

「エリーゼ!」
エレン達が焦ってわたしの話を止めた。

「ご、ごめんなさい。エレン達が頬を染めたと言ったわけではないの」
わたしが謝るとエレン達はさらに顔を赤くした。

わたし失敗したかも……

わたしの発言の所為で、みんななんだか照れながらの食事になった。

もちろんそのあと四人に怒られたのは言うまでもない。

自分の思ったことを素直に言うって難しい。

わたしはもう少し人の気持ちを勉強したほうがいいらしい。
屋敷に帰ってから、ユンとミリアにいっぱい怒られて反省した。

アンはそれを聞いて、やはり
「エリーゼ様、もう少し考えて発言されたほうがいいでしょう」
と、残念な子に思われたみたいだ。

わたしの二度目の学園生活はなんとか上手くいっている。

ただ、あの視線が気になる。

もうこれ以上の事件に巻き込まれるのだけはごめんだ。

わたしはとりあえずお父様に報告する事にした。

未だに話すのは嫌だし、苦手だけど。




「エリーゼ、今のところ何もないんだな。お前の学年に一人護衛として付けている。名前などはお前には伝えてはいないがいざと言う時は助けてくれる」

「何故、教えてくれないのですか?」

「相手からの希望なんだよ。名前を言わないで守ることがね」

「はあ、なんかめんどくさい人なんですね」

「そうだな、めんどくさいな。
それから数人の影も学園に忍び込ませるように手配している。
だから何も気がつかないフリをして、学園を楽しんでくれ」

お父様は、公爵家の力をフルに活用してくれている。

でもそのおかげで、わたしだけでなく友人達も守られるのなら有り難く使わせてもらう。







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