【完結】どうして殺されたのですか?貴方達の愛はもう要りません  

たろ

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55話

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院長先生は、孤児院に戻り、今も院長先生としてみんなと暮らしている。

わたしやユン、ミリアと、時間がある時は顔を出すようにしている。
他のみんなも公爵家の仕事をしながら孤児院にも顔を出している。



いつだったか院長先生は、わたしにボソッと言った。

「わたしと陛下の関係は婚約破棄した時に終わっているの。すぐに気持ちに整理は出来なかったわ。でも、彼と寄りを戻そうなんて一度も考えた事はなかったわ」

わたしは安易に二人が想いあっているんだと思っていた。

でも、先生の中では完全に終わっていたのだ。

そしてわたしも殿下に伝えた。

「貴方ともう一度やり直す事は出来ません」

わたしも処刑された時に終わっていたのだ。
気づかなかった初恋に。

今回殿下がいくらわたしに会いに来ても、やはり何も思わなかった。

わたしも終わっていたのだ。


そしてわたしは公爵令嬢に戻った。

別にお父様を許したわけでも仲直りしたわけでもない。

ただ、せっかく持っている地位を捨てるより、利用する方がいいと思ったからだ。

わたしの家族である孤児院のみんなのために。

就職先として、公爵家に孤児が働ける訳がないのだが、優秀であれば雇ってもいいと言われた。

もちろん能力のない者は受け入れてはもらえない。

勉強もマナーもある程度出来ないと駄目だし、院長先生からの推薦状がなければ、面接も試験も受けられない。

それでも、「公爵家で仕事をしたい、出来るかもしれない」と努力する事で、みんな生きていくための力を付けることができる。

その力は公爵家に就職できなくても、必ず他の場所で発揮される。

この一年だけでも、屋敷の近くのわたしが通っていた孤児院と住んでいた孤児院の2ヶ所の子、合わせて8人のうち3人がうちに、残りは大きな商会やお店に就職できた。

騎士を目指す子は、うちが駄目でも他の所で受けることも出来る。

みんなの未来が少しずつ変わっていけるかもしれない。

だからわたしは公爵令嬢でいることにした。


もう一つ巻き戻して、どうしてもやり直さないといけないことがある。

アンの命を守る事。

これも公爵令嬢に戻った1つの理由。

わたしを庇って亡くなったのだからわたしが居ない方がいいのか。
それともわたしが居なくても、やはり亡くなるのか。

わたしが13歳の時にアンは死ぬのだ。
わたしを庇って、代わりに刺された。 

あの時は、アンが目の前でわたしを庇って男に刺されて死んだ。そのショックで当日のことを忘れていた。

わたしを抱きしめて代わりに刺されたんだった。

わたしはその時呆然と立ち尽くし、立ったままアンに抱きしめられて泣いた。

アンはわたしに笑顔で
「お嬢様泣かないでください。貴女を守れてよかった」
と言ってそのまま亡くなったのだ。

わたしはお父様にその時の状況を聞いた。

街に買い物に出たわたしとアン、そして護衛が2人。

突然数人の男達に囲まれて、護衛達が他の男を相手にしている間にわたしとアンにナイフを振り回してきた。

そしてわたしを庇って抱きしめてアンは刺されて亡くなった。

その男達は、アンが亡くなった後捕まり自害したらしい。
だから、偶々わたしを刺そうとしたのか、最初からの計画なのか分からない。

自害すると言う事は、それなりに鍛えられた者達のはず。

ならばわたしがアンと居ないのが一番では?

でも強制力でやはりアンに何かあるかもしれない。


かなり前回と違ってきているので、どうなるかわからない。
ならばアンとわたし自身を守るために、公爵家の力と護衛達の力を使った方がいいのではないかと、お父様とお兄様と話し合った。


そして入学式。

アンが前回亡くなるまで3ヶ月。

ユンとミリアと3人で学園に向かった。

わたしのクラスにはカイラとエレンがいた。

残念ながらユンとミリアの成績では同じクラスにはなれなかった。

それでも昼食は出来るだけ一緒に食べようと話した。

「エリーゼ様、おそばにいる事が出来なくて残念ですが、何かあればすぐに駆けつけますので言ってくださいね」
ミリアとユンが心配そうだった。

「大丈夫よ。2回目の学園生活だからある程度は同じだと思うの」
わたしは二人には巻き戻した事を話している。

もちろんアンのことも。

前回はこの学園の2歳上に殿下とマリーナ様がいた。
ただ、まだ二人の接点はなかった。

今回は二人ともいない。

そして、わたしは前回ほとんどクラスの誰とも話さなかった。
カイラとミリアが居てくれたから、話す必要も仲良くなる必要もなかった。

今回はせっかくもう一度学園に通うのだから、思いっきり楽しむつもりだ。

殿下に冷たい目で見られ、周りにこそこそ噂され、遠巻きにされた学園生活。

今回は自由だ!














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