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37話
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あれからマリーナ様はわたしの前には現れていない。
静かになった東宮で、わたしは殿下と勉強をしたり、毎日どんなに冷たい態度を取っても懲りないでやってくるお父様、最近は偶にお兄様も一緒に来て、気がつけば三人または殿下と陛下、院長先生と六人でお茶をしている。
そして話題はほのぼのとした……ものではなくて、ハウエル公爵やマリーナ様、ニューベル公爵やユシリス皇后の話になっている。
最近の殿下は、レンス王子とも一緒に過ごす時間を作っているらしい。
レンス王子は陛下の子供ではない。
皇后様と誰かわからない人との子供なのだが、陛下は第2王子として受け入れている。
理由は愛していない皇后を抱きたくないから。
だから、皇后が浮気して子供が出来ても、その真実を世間では話せないので、表面上は一応息子としているだけで、レンス王子には王位継承権はない。
陛下も息子として接してもいない。
皇后様とも、公の場で参加しないといけない時以外の接触はないそうだ。
最初から破綻した夫婦。
だから、殿下は歪んだ性格に育ったのかもしれない。
今回の生では、前回の反省と大人として考えて行動ができるから歪んでいないだけで、普通に考えてこんな両親から育てば、真っ直ぐな素直ないい子には育たないだろう。
皇后様と殿下の関係がわたしはよくわからない。
前回の時、王子妃教育の時に皇后様は偶に顔を合わせるだけで一緒に過ごした記憶はない。
皇后様はレンス王子を可愛がっていたが、殿下と親子として仲良くしているところは見たことがない。
六人でお茶をしている時、ふと殿下に聞いてみた。
「殿下は、皇后様とお話されることはあるのですか?」
わたしの質問に、陛下と殿下はピタッと固まってしまった。
聞いてはいけないことだったのか、わたしはチラッとお父様の顔色を伺った。
お父様は、わたしを見て「大丈夫」と頷いてくれた。
「母上は、君も知っているように3歳下のレンスと過ごすことが多いんだ。今の僕の中身は大人だからそれに対してヤキモチも僻みもないんだ。
でも前回の時は、やはり寂しさとかレンスだけ何故?という僻みで僕はいつもイライラしていた。
君に意地悪していたのもひとつはそれが理由だった。イライラを君に当たることで憂さ晴らししていたんだ。もちろん君に素直になれなかったというのもあるんだ」
「エリーゼ、それに対しては父親としてクロードときちんと接していなかったわたしが悪いんだ。クロードのことは可愛いとは思っていた。でも、ユシリスを愛することは出来なかった。だからわたしは二人と距離を置いていたんだ。クロードがユシリスから放置されているとは知らなかったんだ」
「知らなかった?貴方はすぐに言い訳をするんですね」
院長先生が冷たく陛下に言い放った。
「わたしは愚かなことをした。クロードに罪はないのにクロードを見ると、自分の罪をまざまざと感じてしまっていたんだ。だから目を逸らして、ユシリスのこともクロードのことも見ないようにしていたんだ」
「王子に罪はありません。陛下、貴方の弱さが王子を前回歪ませてエリーゼを不幸にさせたんです。
でも今回は、みんなそれぞれ、前回の過ちを正そうと頑張っています」
院長先生はみんなに話しかけていたが、わたしと目が合うと、
「エリーゼ、認めるのは難しいかも知れませんが、少しだけ周りを見渡してはどうかなと思うのよ。
前回のことを考えないで今回のことだけで、みんなを偶には見て欲しいの。
そうしないと貴女の心はずっと壊れたまま、もう治ることはないわ。そんな人生を歩まないで欲しい。新しいやり直しのこの時間を、幸せな時間として生きて行って!」
「院長先生、わたしはまだまだこの人達を許せるほど心は広くはありません。でも、もう恨みだけで生きるのは疲れています」
「貴方はまだ10歳よ。人生はこれからよ」
先生はわたしを抱きしめて、「幸せになりなさい」と言ってくれた。
わたしはずっと思っていたことを先生に思い切って言った。
「……先生もそろそろ素直になってはいかがですか?」
わたしはニコッと笑って陛下を見た。
「お二人は未だに思いあっています。まだ皇后様も居られるし息子の前で言ってはいけないのかもしれませんが、殿下も中身は20歳を過ぎています。
お二人の恋愛に口を出したり反対はしないと思いますよ?」
わたしの発言に二人は固まっていた。
「エリーゼ、大人の話に子どもが口出しては駄目だよ」
お兄様が慌ててわたしを止めた。
「お兄様、わたしの見た目は10歳ですが中身は20歳を過ぎています」
「ごめん、そうだったね。でも、それでも、駄目だよ」
「エリーゼはわたしとヴィクトリアがまだ思い合っているように見えているのかな?」
「はい、そうです。違いますか?」
静かになった東宮で、わたしは殿下と勉強をしたり、毎日どんなに冷たい態度を取っても懲りないでやってくるお父様、最近は偶にお兄様も一緒に来て、気がつけば三人または殿下と陛下、院長先生と六人でお茶をしている。
そして話題はほのぼのとした……ものではなくて、ハウエル公爵やマリーナ様、ニューベル公爵やユシリス皇后の話になっている。
最近の殿下は、レンス王子とも一緒に過ごす時間を作っているらしい。
レンス王子は陛下の子供ではない。
皇后様と誰かわからない人との子供なのだが、陛下は第2王子として受け入れている。
理由は愛していない皇后を抱きたくないから。
だから、皇后が浮気して子供が出来ても、その真実を世間では話せないので、表面上は一応息子としているだけで、レンス王子には王位継承権はない。
陛下も息子として接してもいない。
皇后様とも、公の場で参加しないといけない時以外の接触はないそうだ。
最初から破綻した夫婦。
だから、殿下は歪んだ性格に育ったのかもしれない。
今回の生では、前回の反省と大人として考えて行動ができるから歪んでいないだけで、普通に考えてこんな両親から育てば、真っ直ぐな素直ないい子には育たないだろう。
皇后様と殿下の関係がわたしはよくわからない。
前回の時、王子妃教育の時に皇后様は偶に顔を合わせるだけで一緒に過ごした記憶はない。
皇后様はレンス王子を可愛がっていたが、殿下と親子として仲良くしているところは見たことがない。
六人でお茶をしている時、ふと殿下に聞いてみた。
「殿下は、皇后様とお話されることはあるのですか?」
わたしの質問に、陛下と殿下はピタッと固まってしまった。
聞いてはいけないことだったのか、わたしはチラッとお父様の顔色を伺った。
お父様は、わたしを見て「大丈夫」と頷いてくれた。
「母上は、君も知っているように3歳下のレンスと過ごすことが多いんだ。今の僕の中身は大人だからそれに対してヤキモチも僻みもないんだ。
でも前回の時は、やはり寂しさとかレンスだけ何故?という僻みで僕はいつもイライラしていた。
君に意地悪していたのもひとつはそれが理由だった。イライラを君に当たることで憂さ晴らししていたんだ。もちろん君に素直になれなかったというのもあるんだ」
「エリーゼ、それに対しては父親としてクロードときちんと接していなかったわたしが悪いんだ。クロードのことは可愛いとは思っていた。でも、ユシリスを愛することは出来なかった。だからわたしは二人と距離を置いていたんだ。クロードがユシリスから放置されているとは知らなかったんだ」
「知らなかった?貴方はすぐに言い訳をするんですね」
院長先生が冷たく陛下に言い放った。
「わたしは愚かなことをした。クロードに罪はないのにクロードを見ると、自分の罪をまざまざと感じてしまっていたんだ。だから目を逸らして、ユシリスのこともクロードのことも見ないようにしていたんだ」
「王子に罪はありません。陛下、貴方の弱さが王子を前回歪ませてエリーゼを不幸にさせたんです。
でも今回は、みんなそれぞれ、前回の過ちを正そうと頑張っています」
院長先生はみんなに話しかけていたが、わたしと目が合うと、
「エリーゼ、認めるのは難しいかも知れませんが、少しだけ周りを見渡してはどうかなと思うのよ。
前回のことを考えないで今回のことだけで、みんなを偶には見て欲しいの。
そうしないと貴女の心はずっと壊れたまま、もう治ることはないわ。そんな人生を歩まないで欲しい。新しいやり直しのこの時間を、幸せな時間として生きて行って!」
「院長先生、わたしはまだまだこの人達を許せるほど心は広くはありません。でも、もう恨みだけで生きるのは疲れています」
「貴方はまだ10歳よ。人生はこれからよ」
先生はわたしを抱きしめて、「幸せになりなさい」と言ってくれた。
わたしはずっと思っていたことを先生に思い切って言った。
「……先生もそろそろ素直になってはいかがですか?」
わたしはニコッと笑って陛下を見た。
「お二人は未だに思いあっています。まだ皇后様も居られるし息子の前で言ってはいけないのかもしれませんが、殿下も中身は20歳を過ぎています。
お二人の恋愛に口を出したり反対はしないと思いますよ?」
わたしの発言に二人は固まっていた。
「エリーゼ、大人の話に子どもが口出しては駄目だよ」
お兄様が慌ててわたしを止めた。
「お兄様、わたしの見た目は10歳ですが中身は20歳を過ぎています」
「ごめん、そうだったね。でも、それでも、駄目だよ」
「エリーゼはわたしとヴィクトリアがまだ思い合っているように見えているのかな?」
「はい、そうです。違いますか?」
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