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35話

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「どうしたの?さっきまであんなに強気でいたくせに。処刑された時のことを思い出したの?」

わたしの耳元でクスクス笑いながら言うと、
「今回も貴女は処刑されるのよ」
と言って去っていった。

わたしは何も言い返せなくて、息をするのも苦しくてハァハァ言いながら蹲って、そのまま気を失った。






気がつくとわたしはいつもと違う景色の天井が目に入った。

(ここは何処?)

わたしはキョロキョロと周りを見回した。

流石に巻き戻りではないだろう。

ベッドのテーブルの上にあった手鏡に映る自分を見て10歳だとホッとした。

もう何回も同じ人生は歩みたくはない。


わたしは、喉が渇いたのでベッドから降りて、水差しからコップに水を入れて飲んだ。

まだ外は明るい。
時計を見ると12時を過ぎている。
マリーナ様に会ったのが9時半過ぎだったので、2時間以上時間が経っているみたい。

何もする事がないのでベッドに戻りボッーとしていると、扉をノックする音が聞こえた。

「失礼するよ」
入って来たのは殿下だった。

「目が覚めたみたいだね?君が突然倒れたと護衛の者から聞いて慌てたよ。
すぐに僕の部屋に運んでもらって医者に診せたんだけど、過呼吸になっていたらしい。そして意識を失ったみたいなんだ」

「過呼吸……だから息が苦しかったんですね」

「マリーナに会ってかなりのストレスを感じたんだと思う」
殿下はなんとも言えない顔をしていた。

「マリーナは僕になんとか会おうとして、東宮に訪ねて来るんだ。僕が会おうとしないから君を待ち伏せしていたんだと思う、護衛に聞いた。結構酷いことを言われたんだろう?」

「………『今回も貴女は処刑されるのよ』と言われました」

「なんだって?」
殿下の顔がみるみる怖くなっていった。

「マリーナはやはり記憶があるんだね。だから突然、性格が変わったんだね。
僕に会いに来るのも君が東宮に来てからなんだ。初めは手紙で先触れが来ていたんだが、忙しいと断っていたら、父親について来て東宮をうろうろするようになったんだ。
一応公爵令嬢なのであまり無碍には出来ないけど、僕は彼女には会うつもりはない」

「……わたしは、こちらを去った方がいいのではないでしょうか?」

「何故?君の部屋に連れて行くのは危ないと思って、僕の部屋に連れて来たんだ。ここは東宮の中で一番警備が厳重だし、マリーナもここの場所には近寄れない。だから君が何処かへ行く必要はないよ。
ここを出たらそれこそマリーナやハウエル公爵、僕のお祖父様であるニューベル公爵達に狙われやすい。
君を今度は絶対に死なせない」

殿下はわたしの手を握りしめていた。

「お願いだから、僕を嫌っていいから今だけは僕を利用して欲しい。
ここより安全なところは今はないと思う」

わたしはどう返事をしていいのか迷っていた。

「彼らのやっている事が前回の時とは違っているんだ。今回は、狙った貴族に話を持ちかけて不渡を出させて、彼らの領地を安く買い上げているんだ。
その領地の価値を知らないで簡単に手放した貴族が今三人いるんだが、そこには実は鉱山があってかなり価値がある事がわかったんだ。前もって分かっていないと出来ない」

わたしはその話を聞いて、殿下の顔を見つめた。

「彼らも記憶があるのですか?だから、巻き戻った10年で価値が上がった領地を知っていると言う事ですか?」

「僕もそう思う。僕たちの記憶があれば、いつ何があったかわかるから、対処できる。それはお金儲けになると言う事なんだ」

「このままでは何人もの犠牲者が出ます。なんとかしなければ!」

「向こうが記憶を持っているように僕と公爵、そしてスコット殿も記憶がある。さらにエレン嬢とカイラ嬢、君も記憶があるんだ。こちらの方が数では有利なんだ。
今も父上は何も知らない顔をして毒を食べ続けているかのように、犯人には見せているんだ。
父上は元々一人で食事をされるんだ。毒見係にもわからない小量なのでどこに入れられているかは毒見係ではわからない。
毎回出された食事は、信用できる料理人に作ってもらってこっそり変えているんだ。
毎回、毒入りの料理は検査してどこに何が入っているか調べている。全て証拠を集めるためにね。
入れているのは母上の息のかかった料理人なんだ。侍女達は知らない。
この四年間ずっと調べているんだけど、毒を入れ始めたのは二年前から。全て影が動いて、毒を入れている所も毎回記録しているんだ。
母上が命令している姿もきちんと把握している。
今王家の影と諜報員は、母上とお祖父様、ハウエル公爵、マリーナや他の気になる貴族達に張り付いている」

「泳がして監視しているのですか?」


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