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26話
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「父上、僕もマリーナに同じように懐柔されて愛していたエリーゼを死なせてしまいました」
殿下がわたしを見て頭を下げた。
「エリーゼ、前回の時は死なせてしまってすまなかった。でも君を愛していた、それだけは嘘ではない」
お父様がわたしを見て辛そうに顔を歪めていた。
「エリーゼ、死なせてすまなかった」
わたしは今はそんなことよりも、エレンとカイラの方が心配だった。
「お二人の話は、後日で……結構です。
それよりもエレンとカイラはその後どうなったの?辛いことを聞いてごめんなさい。話したくはないと思うけど……」
「大丈夫よ。……その後わたし達は……わからないの。そこからの記憶がまだ思い出さないの」
エレンが申し訳なさそうに言った。
「わたしは少しだけまだ先を思い出しているわ。
国は荒れて行ったわ。貴族派が力を持ちそれ以外の貴族は虐げられていたわ。
貧富の差がハッキリして、強盗や人身売買も増えていた。わたしが相手をさせられた貴族がよく馬鹿にしていたの。
「ニューベル公爵につかなかった馬鹿はみんな負け組」だって笑っていたわ。
彼についていればおこぼれが貰えると言っていた」
「ニューベル公爵とハウエル公爵の現時点での罪を全て精査して全て封じ込める。クロード、お前の母親であるユシリスとは離縁して、ユシリスとレンスは島流しにするつもりだ」
「僕には何も言えません。僕もこの事件が解決したら二人と共に王族から去ります」
「お前はわたしの息子だ。前回の時は確かにお前にも罪はあったと思う。しかし今のお前は何も悪いことはしていない。お前が王族を去ることは許さない、わかったな」
「しかしっ!父上。
僕の前回のことを考えると次の王としては不適合だと思います」
「だったらわたしは、さらに不適合だろう、なあ、ヴィクトリア?」
「陛下、わたしに話しを振られても迷惑でございます。わたしには全く関係ありませんので」
陛下は院長先生の言葉を聞いて少し悲しそうな顔をしたが
「そうだな。すまなかった」と言った。
エレンとカイラは、また今度ゆっくり話そうと言いあって帰って行った。
そして陛下と殿下とお父様も帰ることになった。
「しばらく忙しくなる。落ち着くまでは、ヴィクトリアもエリーゼも王宮のわたしの守れる場所に来てもらいたい。
孤児院も護衛を増やすので安心して欲しい。君たち二人がここに居る方が、他の子供達にも危険が及ぶ、納得できないかもしれないが頼む」
陛下がわたしと院長先生に頭を下げてお願いされた。
「陛下、わたしにこの子達を置いて逃げ出せと言うのですか?」
「違う!どちらも守るにはそれが最善だと思うんだ」
院長先生は、しばらく返事をせずに考え込んでいた。
「………わかりました。ここで意地を張って子ども達を危険な目に合わせたくはありません。
エリーゼ、貴女も嫌でしょうが、しばらくお世話になりましょう。この件が解決しない限り前には進めません」
わたしは院長先生が言うことなら従うしかないと思った。
わたしの母親のような存在である院長先生の言葉なら素直に受け入れられた。本当は殿下の近くになんか住みたくはなかったのだけど。
「わかりました、先生」
わたしはみんなと抱き合って別れを惜しんだ。
「また帰ってくるから待っててね」
大好きなユンと抱き合った。
「待ってる」
「うん」
わたしは、ユンと手を握り合った。
「リゼお姉ちゃん、早く帰ってきてね」
4歳になったマイラはわたしのスカートの裾をぎゅっと握って、涙をためていた。
「少しのお別れだから」
わたしは腰を屈めてマイラの目線に合わせると、
「待っていてね」
と言って優しく頭を撫でた。
わたしは、また戻って来るんだと何度も自分に言い聞かせた。
たぶんもうここに帰って来る事は出来ないと分かっているからこそ、帰りたいと帰るんだと思い込もうとした。
先生とわたしは馬車の中で、お互い無言だった。
先生が陛下の元婚約者で、陛下は今も先生を愛しているのだと話を聞いて知った。
先生はどんな気持ちでいるのだろう。
裏切られて家族にも捨てられて、平民になって生きてきた。
辛く悲しかっただろう。
そしてカイラとエレンの二人の前回の思い出した記憶の話を聞いて、わたしの処刑などまだマシだったのかもしれないと思った。
女性にとって一番辛い、知らない男達に陵辱された記憶なんて今更蘇って欲しくなんかなかっただろう。
それをみんなの前で話さないといけなかった。
わたしは思い出すだけで悔しくて、何も知らずに死んでしまった自分にも腹が立った。
でもそれ以上に、ニューベル公爵やハウエル公爵にも腹が立った。
絶対に許さない。
今はまだ犯罪を犯していないとしても、絶対に全員を処刑にしてやる。
そんな時、ふとマリーナ様は今何をしているのだろうと思った。
まだ今回マリーナ様の話題をどこからも聞いていない。
わたしに聞かせないため?それとも今のところ何もないのか?
このことを聞くならお父様か殿下になる。
…………………………話したくない。
でも………………。
殿下がわたしを見て頭を下げた。
「エリーゼ、前回の時は死なせてしまってすまなかった。でも君を愛していた、それだけは嘘ではない」
お父様がわたしを見て辛そうに顔を歪めていた。
「エリーゼ、死なせてすまなかった」
わたしは今はそんなことよりも、エレンとカイラの方が心配だった。
「お二人の話は、後日で……結構です。
それよりもエレンとカイラはその後どうなったの?辛いことを聞いてごめんなさい。話したくはないと思うけど……」
「大丈夫よ。……その後わたし達は……わからないの。そこからの記憶がまだ思い出さないの」
エレンが申し訳なさそうに言った。
「わたしは少しだけまだ先を思い出しているわ。
国は荒れて行ったわ。貴族派が力を持ちそれ以外の貴族は虐げられていたわ。
貧富の差がハッキリして、強盗や人身売買も増えていた。わたしが相手をさせられた貴族がよく馬鹿にしていたの。
「ニューベル公爵につかなかった馬鹿はみんな負け組」だって笑っていたわ。
彼についていればおこぼれが貰えると言っていた」
「ニューベル公爵とハウエル公爵の現時点での罪を全て精査して全て封じ込める。クロード、お前の母親であるユシリスとは離縁して、ユシリスとレンスは島流しにするつもりだ」
「僕には何も言えません。僕もこの事件が解決したら二人と共に王族から去ります」
「お前はわたしの息子だ。前回の時は確かにお前にも罪はあったと思う。しかし今のお前は何も悪いことはしていない。お前が王族を去ることは許さない、わかったな」
「しかしっ!父上。
僕の前回のことを考えると次の王としては不適合だと思います」
「だったらわたしは、さらに不適合だろう、なあ、ヴィクトリア?」
「陛下、わたしに話しを振られても迷惑でございます。わたしには全く関係ありませんので」
陛下は院長先生の言葉を聞いて少し悲しそうな顔をしたが
「そうだな。すまなかった」と言った。
エレンとカイラは、また今度ゆっくり話そうと言いあって帰って行った。
そして陛下と殿下とお父様も帰ることになった。
「しばらく忙しくなる。落ち着くまでは、ヴィクトリアもエリーゼも王宮のわたしの守れる場所に来てもらいたい。
孤児院も護衛を増やすので安心して欲しい。君たち二人がここに居る方が、他の子供達にも危険が及ぶ、納得できないかもしれないが頼む」
陛下がわたしと院長先生に頭を下げてお願いされた。
「陛下、わたしにこの子達を置いて逃げ出せと言うのですか?」
「違う!どちらも守るにはそれが最善だと思うんだ」
院長先生は、しばらく返事をせずに考え込んでいた。
「………わかりました。ここで意地を張って子ども達を危険な目に合わせたくはありません。
エリーゼ、貴女も嫌でしょうが、しばらくお世話になりましょう。この件が解決しない限り前には進めません」
わたしは院長先生が言うことなら従うしかないと思った。
わたしの母親のような存在である院長先生の言葉なら素直に受け入れられた。本当は殿下の近くになんか住みたくはなかったのだけど。
「わかりました、先生」
わたしはみんなと抱き合って別れを惜しんだ。
「また帰ってくるから待っててね」
大好きなユンと抱き合った。
「待ってる」
「うん」
わたしは、ユンと手を握り合った。
「リゼお姉ちゃん、早く帰ってきてね」
4歳になったマイラはわたしのスカートの裾をぎゅっと握って、涙をためていた。
「少しのお別れだから」
わたしは腰を屈めてマイラの目線に合わせると、
「待っていてね」
と言って優しく頭を撫でた。
わたしは、また戻って来るんだと何度も自分に言い聞かせた。
たぶんもうここに帰って来る事は出来ないと分かっているからこそ、帰りたいと帰るんだと思い込もうとした。
先生とわたしは馬車の中で、お互い無言だった。
先生が陛下の元婚約者で、陛下は今も先生を愛しているのだと話を聞いて知った。
先生はどんな気持ちでいるのだろう。
裏切られて家族にも捨てられて、平民になって生きてきた。
辛く悲しかっただろう。
そしてカイラとエレンの二人の前回の思い出した記憶の話を聞いて、わたしの処刑などまだマシだったのかもしれないと思った。
女性にとって一番辛い、知らない男達に陵辱された記憶なんて今更蘇って欲しくなんかなかっただろう。
それをみんなの前で話さないといけなかった。
わたしは思い出すだけで悔しくて、何も知らずに死んでしまった自分にも腹が立った。
でもそれ以上に、ニューベル公爵やハウエル公爵にも腹が立った。
絶対に許さない。
今はまだ犯罪を犯していないとしても、絶対に全員を処刑にしてやる。
そんな時、ふとマリーナ様は今何をしているのだろうと思った。
まだ今回マリーナ様の話題をどこからも聞いていない。
わたしに聞かせないため?それとも今のところ何もないのか?
このことを聞くならお父様か殿下になる。
…………………………話したくない。
でも………………。
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