27 / 110
25話
しおりを挟む
「かなり形振り構わず動いたんだな」
陛下はイライラしながら聞いていた。
「はい、お父様は危険を感じてこれ以上対立することはできませんでした」
「そして、スコット様はハウエル公爵派の残党に執拗に追われていました。そして戦って亡くなりました」
「スコットはニューベル公爵にとって邪魔だったんだろう。わたしが王族派でもし生きていたら王弟殿下を推していた。スコットも勿論王弟殿下の後ろ盾となるだろう。わが公爵家はニューベル公爵家に唯一意見を言え、同じかそれ以上の力を持っているからな」
この国の貴族の頂点に立つのがニューベル家とバセット家だ。
特に下に従える貴族の数、持っている領地、金、全て我が家が上回っている。
我が家は諸外国にもいくつかの領地を持ち、大きなルートを持っていて商売をしている。
さらに鉱山もいくつか所有しているので、金銭的にもかなり裕福だ。
ニューベル家からすると目の上のたんこぶであろう。
「お前が死んだことで王族派の力は緩んだんだな」
陛下がわたしをチラリと見た。
あの時のわたしは、周りを見て冷静に考えてはいられなかった。
エリーゼへの贖罪と生きる希望すらなく、こんな国がどうなろうとどうでもよかった。
「王族派はだんだん力を失い、貴族派がまた新たに力をつけていきました。レンス殿下は陛下が亡くなってすぐに王位につきました。そして宰相となったのが、ニューベル公爵です」
「それからの国は、税率が上がり庶民は今まで以上に貧しくなりました。少しでも反乱が起こそうとした者は見つかると一家全員捕まり、女子供関係なく処刑されました。それはもちろん貴族も一緒です」
「バセット家は、スコット様が亡くなり、ニューベル公爵の親戚の娘がが新しいバセット公爵になったジーク様の奥様になり、実質ニューベル公爵の傀儡になってしまいました」
「ジークが公爵?あんな力も頭もない奴が公爵など務まるわけがない。それも全てニューベルの奴が裏で動いたんだな」
「ニューベル公爵家は、国で強大な力も持ってしまいました。少しでも睨まれれば一家全員殺されます。誰も逆らうことはできませんでした。
皇后様は何人かの愛人達と離宮で贅沢三昧の暮らしをしていました。彼女は公務にも権力にも興味がなく、国がどうなろうと関係ないみたいでした」
「レンス陛下は、宰相に言われるまま動くだけ。いつも宰相であるお祖父様のご機嫌伺いばかりしていました」
「わたし達のお父様はこの国を捨てて、隣国へ移り住むことにしました。もちろんバレれば殺されます。
でもこの国にいても、王族派だったわたし達は何か理由を付けて殺されていたと思います。だから一か八かこの国から逃げることに賭けました」
カイラとエレンは辛い何かを思い出したのか涙が止まらなかった。
「逃げる途中、お父様達は殺されました。お母様達とわたし達は捕まりました」
二人は、泣き出した。
涙が止まらず話しができなくなっていた。
「……………す、すみません。陛下の前で……申し訳ございません。…………」
しばらくみんな黙って立っていた。
少し落ち着いた二人は、気持ちを持ち直して話し始めた。
「お母様やお姉様、妹や従姉妹達、女性はみんな娼館に売られました。もちろんわたし達もです」
「………そんな……」
わたしは何も言えず、顔が青くなった。
「そこで貴族達の慰み者になりました。10歳の妹もです。泣こうと叫ぼうと誰も助けてくれませんでした。ただ毎日地獄の中で知りもしない男達に無理矢理犯されるのです」
10歳のエレンとカイラの口から出てくる話に、お父様と陛下は怖い顔をして聞いていた。
「その中にはニューベル公爵もいました。彼は少女趣味でわたし達はよく相手をさせられました」
「その時に、話していた言葉……
陛下はユリシスに媚薬を盛られ、精神を操られていた馬鹿な男だと言っていました
それに5年間、ユリシスにずっと少量の毒薬を飲まされ続けて、医師にも分からないように少しずつ体調を悪くさせたと言っていました」
「ニューベル公爵がやはり全ての元凶か……」
陛下は怒りを露わにしていた。
「父上、僕もマリーナとハウエル公爵に言いように操られました。今回は、ハウエル公爵が他の貴族達に近寄り、甘い言葉を使って懐柔している証拠を握っています。
それから、領地での収入をかなり誤魔化して計上して税金も誤魔化しています」
「わたしが調べたところ、平民の可愛い子どもや男の子を言葉巧みに親に言って、屋敷に使用人として連れて来ています。そこに親しくなった貴族達に遊びに来てもらい体を売らせているそうです、いわゆる少年少女の高級娼館のようなものですね」
「そんな!なんて酷いの!」
わたしは、初めて二人を見た。
「どうしてわかっているのに止めないのですか?」
「今やっと場所を特定したところだ。今日陛下と話し合って、どのように踏み込むか決めようとしていた時に、ヴィクトリアから急ぎ知らせが入ったので、それを取りやめて3人で急いで来たんだ」
「陛下、貴方の弱さが全ての原因です。貴方がユシリス様の罠に嵌った事から、全てが悪い方へ行ったのでしょう?」
今まで黙って聞いていた院長先生が、陛下に向かって冷たく言った。
「ヴィクトリア、わたしが間違えていた。ユシリスに媚薬を盛られ操られていたとしても、ユシリスにのめり込んだのは間違いない。それから、ニューベル公爵が力を持ち始めさらに力を持とうとしたんだ、全てわたしの甘さが招いた」
「父上、僕もマリーナに同じように懐柔されて愛していたエリーゼを死なせてしまいました」
陛下はイライラしながら聞いていた。
「はい、お父様は危険を感じてこれ以上対立することはできませんでした」
「そして、スコット様はハウエル公爵派の残党に執拗に追われていました。そして戦って亡くなりました」
「スコットはニューベル公爵にとって邪魔だったんだろう。わたしが王族派でもし生きていたら王弟殿下を推していた。スコットも勿論王弟殿下の後ろ盾となるだろう。わが公爵家はニューベル公爵家に唯一意見を言え、同じかそれ以上の力を持っているからな」
この国の貴族の頂点に立つのがニューベル家とバセット家だ。
特に下に従える貴族の数、持っている領地、金、全て我が家が上回っている。
我が家は諸外国にもいくつかの領地を持ち、大きなルートを持っていて商売をしている。
さらに鉱山もいくつか所有しているので、金銭的にもかなり裕福だ。
ニューベル家からすると目の上のたんこぶであろう。
「お前が死んだことで王族派の力は緩んだんだな」
陛下がわたしをチラリと見た。
あの時のわたしは、周りを見て冷静に考えてはいられなかった。
エリーゼへの贖罪と生きる希望すらなく、こんな国がどうなろうとどうでもよかった。
「王族派はだんだん力を失い、貴族派がまた新たに力をつけていきました。レンス殿下は陛下が亡くなってすぐに王位につきました。そして宰相となったのが、ニューベル公爵です」
「それからの国は、税率が上がり庶民は今まで以上に貧しくなりました。少しでも反乱が起こそうとした者は見つかると一家全員捕まり、女子供関係なく処刑されました。それはもちろん貴族も一緒です」
「バセット家は、スコット様が亡くなり、ニューベル公爵の親戚の娘がが新しいバセット公爵になったジーク様の奥様になり、実質ニューベル公爵の傀儡になってしまいました」
「ジークが公爵?あんな力も頭もない奴が公爵など務まるわけがない。それも全てニューベルの奴が裏で動いたんだな」
「ニューベル公爵家は、国で強大な力も持ってしまいました。少しでも睨まれれば一家全員殺されます。誰も逆らうことはできませんでした。
皇后様は何人かの愛人達と離宮で贅沢三昧の暮らしをしていました。彼女は公務にも権力にも興味がなく、国がどうなろうと関係ないみたいでした」
「レンス陛下は、宰相に言われるまま動くだけ。いつも宰相であるお祖父様のご機嫌伺いばかりしていました」
「わたし達のお父様はこの国を捨てて、隣国へ移り住むことにしました。もちろんバレれば殺されます。
でもこの国にいても、王族派だったわたし達は何か理由を付けて殺されていたと思います。だから一か八かこの国から逃げることに賭けました」
カイラとエレンは辛い何かを思い出したのか涙が止まらなかった。
「逃げる途中、お父様達は殺されました。お母様達とわたし達は捕まりました」
二人は、泣き出した。
涙が止まらず話しができなくなっていた。
「……………す、すみません。陛下の前で……申し訳ございません。…………」
しばらくみんな黙って立っていた。
少し落ち着いた二人は、気持ちを持ち直して話し始めた。
「お母様やお姉様、妹や従姉妹達、女性はみんな娼館に売られました。もちろんわたし達もです」
「………そんな……」
わたしは何も言えず、顔が青くなった。
「そこで貴族達の慰み者になりました。10歳の妹もです。泣こうと叫ぼうと誰も助けてくれませんでした。ただ毎日地獄の中で知りもしない男達に無理矢理犯されるのです」
10歳のエレンとカイラの口から出てくる話に、お父様と陛下は怖い顔をして聞いていた。
「その中にはニューベル公爵もいました。彼は少女趣味でわたし達はよく相手をさせられました」
「その時に、話していた言葉……
陛下はユリシスに媚薬を盛られ、精神を操られていた馬鹿な男だと言っていました
それに5年間、ユリシスにずっと少量の毒薬を飲まされ続けて、医師にも分からないように少しずつ体調を悪くさせたと言っていました」
「ニューベル公爵がやはり全ての元凶か……」
陛下は怒りを露わにしていた。
「父上、僕もマリーナとハウエル公爵に言いように操られました。今回は、ハウエル公爵が他の貴族達に近寄り、甘い言葉を使って懐柔している証拠を握っています。
それから、領地での収入をかなり誤魔化して計上して税金も誤魔化しています」
「わたしが調べたところ、平民の可愛い子どもや男の子を言葉巧みに親に言って、屋敷に使用人として連れて来ています。そこに親しくなった貴族達に遊びに来てもらい体を売らせているそうです、いわゆる少年少女の高級娼館のようなものですね」
「そんな!なんて酷いの!」
わたしは、初めて二人を見た。
「どうしてわかっているのに止めないのですか?」
「今やっと場所を特定したところだ。今日陛下と話し合って、どのように踏み込むか決めようとしていた時に、ヴィクトリアから急ぎ知らせが入ったので、それを取りやめて3人で急いで来たんだ」
「陛下、貴方の弱さが全ての原因です。貴方がユシリス様の罠に嵌った事から、全てが悪い方へ行ったのでしょう?」
今まで黙って聞いていた院長先生が、陛下に向かって冷たく言った。
「ヴィクトリア、わたしが間違えていた。ユシリスに媚薬を盛られ操られていたとしても、ユシリスにのめり込んだのは間違いない。それから、ニューベル公爵が力を持ち始めさらに力を持とうとしたんだ、全てわたしの甘さが招いた」
「父上、僕もマリーナに同じように懐柔されて愛していたエリーゼを死なせてしまいました」
131
お気に入りに追加
4,844
あなたにおすすめの小説

愛されなかった公爵令嬢のやり直し
ましゅぺちーの
恋愛
オルレリアン王国の公爵令嬢セシリアは、誰からも愛されていなかった。
母は幼い頃に亡くなり、父である公爵には無視され、王宮の使用人達には憐れみの眼差しを向けられる。
婚約者であった王太子と結婚するが夫となった王太子には冷遇されていた。
そんなある日、セシリアは王太子が寵愛する愛妾を害したと疑われてしまう。
どうせ処刑されるならと、セシリアは王宮のバルコニーから身を投げる。
死ぬ寸前のセシリアは思う。
「一度でいいから誰かに愛されたかった。」と。
目が覚めた時、セシリアは12歳の頃に時間が巻き戻っていた。
セシリアは決意する。
「自分の幸せは自分でつかみ取る!」
幸せになるために奔走するセシリア。
だがそれと同時に父である公爵の、婚約者である王太子の、王太子の愛妾であった男爵令嬢の、驚くべき真実が次々と明らかになっていく。
小説家になろう様にも投稿しています。
タイトル変更しました!大幅改稿のため、一部非公開にしております。

虐げられた皇女は父の愛人とその娘に復讐する
ましゅぺちーの
恋愛
大陸一の大国ライドーン帝国の皇帝が崩御した。
その皇帝の子供である第一皇女シャーロットはこの時をずっと待っていた。
シャーロットの母親は今は亡き皇后陛下で皇帝とは政略結婚だった。
皇帝は皇后を蔑ろにし身分の低い女を愛妾として囲った。
やがてその愛妾には子供が生まれた。それが第二皇女プリシラである。
愛妾は皇帝の寵愛を笠に着てやりたい放題でプリシラも両親に甘やかされて我儘に育った。
今までは皇帝の寵愛があったからこそ好きにさせていたが、これからはそうもいかない。
シャーロットは愛妾とプリシラに対する復讐を実行に移す―
一部タイトルを変更しました。

断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません
天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。
私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。
処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。
魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。
【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。
るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」
色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。
……ほんとに屑だわ。
結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。
彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。
彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

忘却令嬢〜そう言われましても記憶にございません〜【完】
雪乃
恋愛
ほんの一瞬、躊躇ってしまった手。
誰よりも愛していた彼女なのに傷付けてしまった。
ずっと傷付けていると理解っていたのに、振り払ってしまった。
彼女は深い碧色に絶望を映しながら微笑んだ。
※読んでくださりありがとうございます。
ゆるふわ設定です。タグをころころ変えてます。何でも許せる方向け。

貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした
ましゅぺちーの
恋愛
王国の名門公爵家の出身であるエレンは幼い頃から婚約者候補である第一王子殿下に全てを捧げて生きてきた。
彼を数々の悪意から守り、彼の敵を排除した。それも全ては愛する彼のため。
しかし、王太子となった彼が最終的には選んだのはエレンではない平民の女だった。
悲しみに暮れたエレンだったが、家族や幼馴染の公爵令息に支えられて元気を取り戻していく。
その一方エレンを捨てた王太子は着々と破滅への道を進んでいた・・・

【完結】領主の妻になりました
青波鳩子
恋愛
「私が君を愛することは無い」
司祭しかいない小さな教会で、夫になったばかりのクライブにフォスティーヌはそう告げられた。
===============================================
オルティス王の側室を母に持つ第三王子クライブと、バーネット侯爵家フォスティーヌは婚約していた。
挙式を半年後に控えたある日、王宮にて事件が勃発した。
クライブの異母兄である王太子ジェイラスが、国王陛下とクライブの実母である側室を暗殺。
新たに王の座に就いたジェイラスは、異母弟である第二王子マーヴィンを公金横領の疑いで捕縛、第三王子クライブにオールブライト辺境領を治める沙汰を下した。
マーヴィンの婚約者だったブリジットは共犯の疑いがあったが確たる証拠が見つからない。
ブリジットが王都にいてはマーヴィンの子飼いと接触、画策の恐れから、ジェイラスはクライブにオールブライト領でブリジットの隔離監視を命じる。
捜査中に大怪我を負い、生涯歩けなくなったブリジットをクライブは密かに想っていた。
長兄からの「ブリジットの隔離監視」を都合よく解釈したクライブは、オールブライト辺境伯の館のうち豪華な別邸でブリジットを囲った。
新王である長兄の命令に逆らえずフォスティーヌと結婚したクライブは、本邸にフォスティーヌを置き、自分はブリジットと別邸で暮らした。
フォスティーヌに「別邸には近づくことを許可しない」と告げて。
フォスティーヌは「お飾りの領主の妻」としてオールブライトで生きていく。
ブリジットの大きな嘘をクライブが知り、そこからクライブとフォスティーヌの関係性が変わり始める。
========================================
*荒唐無稽の世界観の中、ふんわりと書いていますのでふんわりとお読みください
*約10万字で最終話を含めて全29話です
*他のサイトでも公開します
*10月16日より、1日2話ずつ、7時と19時にアップします
*誤字、脱字、衍字、誤用、素早く脳内変換してお読みいただけるとありがたいです

【完結】白い結婚をした悪役令嬢は田舎暮らしと陰謀を満喫する
ツカノ
恋愛
「こんな形での君との婚姻は望んでなかった」と、私は初夜の夜に旦那様になる方に告げられた。
卒業パーティーで婚約者の最愛を虐げた悪役令嬢として予定通り断罪された挙げ句に、その罰としてなぜか元婚約者と目と髪の色以外はそっくりな男と『白い結婚』をさせられてしまった私は思う。
それにしても、旦那様。あなたはいったいどこの誰ですか?
陰謀と事件混みのご都合主義なふんわり設定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる