【完結】どうして殺されたのですか?貴方達の愛はもう要りません  

たろ

文字の大きさ
上 下
25 / 110

23話

しおりを挟む
10歳になったわたしは、孤児院に完全に馴染んでしまった。

孤児院での仕事にも慣れた。

わたしは院長先生に頼まれて事務の仕事を手伝うようになった。

孤児院にある広い敷地の一角には、今までなかった畑を作った。井戸水しかなかった孤児院に、みんなで稼いだお金と寄付金を貯めて、水道設備を引く事が出来たので、畑の水やりも出来る様になった。

今までは生活用水のための水汲みだけでも大変だった。それが畑の水やりも出来るし、お風呂も週に一回しか入れなかったのが毎日入る事が出来る様になった。

ミシンも2台しかなかったのだが5台に増えた。

どこかの金持ちの貴族がかなりの寄付金をくれたらしい。
貴族なんて自分達のことしか考えておらず、孤児院への寄付なんて格好付けのための形だけだと思っていた。

「可哀想だからしてあげる」そんな態度がいつも見えて、慰問なんか来なくてもいいのにといつも思っていた。お金と物だけくれればあんた達なんか必要がない。
そう思っていた。




そんな時、カイラとエレンが、孤児院にいるわたしに会いにきた。

客室にいる二人にわたしは初めてお会いした貴族の令嬢に挨拶する様に、頭を下げた。

「ようこそお越しくださいました。わたしはリゼともうします。沢山の寄付をいただいてありがとうございました」

わたしは二人に対して、なんの感情もなく、今いる自分の立ち位置に恥じることなく二人を見た。

すると二人は涙を溜めて、わたしを見ると抱きしめて来た。

「エリーゼ、わたし……前回の記憶が突然戻ったの」

「わたしもそうなの。エリーゼが居なくなって探そうとしたらお父様達に止められたの。理由は教えて貰えなくて、ずっと心配していたのよ。
そんな時、マリーナ様とお茶会で初めてお話をしていたら、何故か頭の中にいろんな記憶が流れ込んできたの」

「貴女が突然いなくなったのは、殿下と貴女のお父様から逃げるためよね?」

「わたし達、二人で話し合って前回の記憶を確認しあったわ、貴女がどこに行ったか探し出すのに時間がかかったけどなんとか見つけ出したの。
大人達はわたし達がエリーゼを探すことに難色を示したの。どうしてかしら?」

二人がわたしを忘れていなくて探してくれたことに驚いた。
でも、とても嬉しかった。

「ありがとう、わたしは貴族の生活を捨てたの。二人にはわたしなんてもう忘れられていると思っていたわ」

「忘れるわけないじゃない。いつ消えてなくなるかわからない、そんな貴方を放っておけないから友達になったのよ」

「そうよ。それに前回の記憶がよみがえって、わたし達は後悔しているのよ、貴方を助ける事が出来ずに処刑されたこと」
カイラとエレンは泣き出した。

「貴方はいつから記憶があったの?だから逃げ出したの?」

「……わたしは貴女達に出会う1ヶ月半前くらいからだったわ。処刑されて首を切られて、とても痛くて苦しくて、絶望の中で死んだの。そうしたら何故か6歳に巻き戻っていたの」

「そう……わたし達は巻き戻ったというより、17歳の貴女が死んで1年後くらいまでの記憶を思い出したの」

カイラが言うとエレンも話し出した。
「わたしもよ、マリーナ様を見て目の前にいろんな忘れていた記憶が溢れて来て、初めは何がなんだか分からなくてパニックになったわ、そしたら、カイラもわたしと同じような状態だったの」

「ええ。エレンと二人で控え室に行って、少し休んでいたんだけど、お互い似たような状態だったから話してみたら全く同じようにエリーゼとの過去を思い出したの」

「まだ7歳のわたし達が、何故か17歳までの記憶があるのよ」

「とても怖かった、でも何故か不思議なの。それが夢とは思えなくて現実にあった出来事だと確信していたの」

二人はわたしを見ながら、涙を溜めて手を握って

「辛かったわね、やっとエリーゼに会えた。お願い、わたし達と一緒に話をしましょう。これからのこと、これまでのこと」

わたしは、二人に前回のこと、そして今の生活のことを話した。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛されなかった公爵令嬢のやり直し

ましゅぺちーの
恋愛
オルレリアン王国の公爵令嬢セシリアは、誰からも愛されていなかった。 母は幼い頃に亡くなり、父である公爵には無視され、王宮の使用人達には憐れみの眼差しを向けられる。 婚約者であった王太子と結婚するが夫となった王太子には冷遇されていた。 そんなある日、セシリアは王太子が寵愛する愛妾を害したと疑われてしまう。 どうせ処刑されるならと、セシリアは王宮のバルコニーから身を投げる。 死ぬ寸前のセシリアは思う。 「一度でいいから誰かに愛されたかった。」と。 目が覚めた時、セシリアは12歳の頃に時間が巻き戻っていた。 セシリアは決意する。 「自分の幸せは自分でつかみ取る!」 幸せになるために奔走するセシリア。 だがそれと同時に父である公爵の、婚約者である王太子の、王太子の愛妾であった男爵令嬢の、驚くべき真実が次々と明らかになっていく。 小説家になろう様にも投稿しています。 タイトル変更しました!大幅改稿のため、一部非公開にしております。

虐げられた皇女は父の愛人とその娘に復讐する

ましゅぺちーの
恋愛
大陸一の大国ライドーン帝国の皇帝が崩御した。 その皇帝の子供である第一皇女シャーロットはこの時をずっと待っていた。 シャーロットの母親は今は亡き皇后陛下で皇帝とは政略結婚だった。 皇帝は皇后を蔑ろにし身分の低い女を愛妾として囲った。 やがてその愛妾には子供が生まれた。それが第二皇女プリシラである。 愛妾は皇帝の寵愛を笠に着てやりたい放題でプリシラも両親に甘やかされて我儘に育った。 今までは皇帝の寵愛があったからこそ好きにさせていたが、これからはそうもいかない。 シャーロットは愛妾とプリシラに対する復讐を実行に移す― 一部タイトルを変更しました。

断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません

天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。 私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。 処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。 魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。

【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。

るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」  色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。  ……ほんとに屑だわ。 結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。 彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。 彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

忘却令嬢〜そう言われましても記憶にございません〜【完】

雪乃
恋愛
ほんの一瞬、躊躇ってしまった手。 誰よりも愛していた彼女なのに傷付けてしまった。 ずっと傷付けていると理解っていたのに、振り払ってしまった。 彼女は深い碧色に絶望を映しながら微笑んだ。 ※読んでくださりありがとうございます。 ゆるふわ設定です。タグをころころ変えてます。何でも許せる方向け。

貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした

ましゅぺちーの
恋愛
王国の名門公爵家の出身であるエレンは幼い頃から婚約者候補である第一王子殿下に全てを捧げて生きてきた。 彼を数々の悪意から守り、彼の敵を排除した。それも全ては愛する彼のため。 しかし、王太子となった彼が最終的には選んだのはエレンではない平民の女だった。 悲しみに暮れたエレンだったが、家族や幼馴染の公爵令息に支えられて元気を取り戻していく。 その一方エレンを捨てた王太子は着々と破滅への道を進んでいた・・・

【完結】領主の妻になりました

青波鳩子
恋愛
「私が君を愛することは無い」 司祭しかいない小さな教会で、夫になったばかりのクライブにフォスティーヌはそう告げられた。 =============================================== オルティス王の側室を母に持つ第三王子クライブと、バーネット侯爵家フォスティーヌは婚約していた。 挙式を半年後に控えたある日、王宮にて事件が勃発した。 クライブの異母兄である王太子ジェイラスが、国王陛下とクライブの実母である側室を暗殺。 新たに王の座に就いたジェイラスは、異母弟である第二王子マーヴィンを公金横領の疑いで捕縛、第三王子クライブにオールブライト辺境領を治める沙汰を下した。 マーヴィンの婚約者だったブリジットは共犯の疑いがあったが確たる証拠が見つからない。 ブリジットが王都にいてはマーヴィンの子飼いと接触、画策の恐れから、ジェイラスはクライブにオールブライト領でブリジットの隔離監視を命じる。 捜査中に大怪我を負い、生涯歩けなくなったブリジットをクライブは密かに想っていた。 長兄からの「ブリジットの隔離監視」を都合よく解釈したクライブは、オールブライト辺境伯の館のうち豪華な別邸でブリジットを囲った。 新王である長兄の命令に逆らえずフォスティーヌと結婚したクライブは、本邸にフォスティーヌを置き、自分はブリジットと別邸で暮らした。 フォスティーヌに「別邸には近づくことを許可しない」と告げて。 フォスティーヌは「お飾りの領主の妻」としてオールブライトで生きていく。 ブリジットの大きな嘘をクライブが知り、そこからクライブとフォスティーヌの関係性が変わり始める。 ======================================== *荒唐無稽の世界観の中、ふんわりと書いていますのでふんわりとお読みください *約10万字で最終話を含めて全29話です *他のサイトでも公開します *10月16日より、1日2話ずつ、7時と19時にアップします *誤字、脱字、衍字、誤用、素早く脳内変換してお読みいただけるとありがたいです

【完結】私を忘れてしまった貴方に、憎まれています

高瀬船
恋愛
夜会会場で突然意識を失うように倒れてしまった自分の旦那であるアーヴィング様を急いで邸へ連れて戻った。 そうして、医者の診察が終わり、体に異常は無い、と言われて安心したのも束の間。 最愛の旦那様は、目が覚めると綺麗さっぱりと私の事を忘れてしまっており、私と結婚した事も、お互い愛を育んだ事を忘れ。 何故か、私を憎しみの籠った瞳で見つめるのです。 優しかったアーヴィング様が、突然見知らぬ男性になってしまったかのようで、冷たくあしらわれ、憎まれ、私の心は日が経つにつれて疲弊して行く一方となってしまったのです。

処理中です...