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23話

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10歳になったわたしは、孤児院に完全に馴染んでしまった。

孤児院での仕事にも慣れた。

わたしは院長先生に頼まれて事務の仕事を手伝うようになった。

孤児院にある広い敷地の一角には、今までなかった畑を作った。井戸水しかなかった孤児院に、みんなで稼いだお金と寄付金を貯めて、水道設備を引く事が出来たので、畑の水やりも出来る様になった。

今までは生活用水のための水汲みだけでも大変だった。それが畑の水やりも出来るし、お風呂も週に一回しか入れなかったのが毎日入る事が出来る様になった。

ミシンも2台しかなかったのだが5台に増えた。

どこかの金持ちの貴族がかなりの寄付金をくれたらしい。
貴族なんて自分達のことしか考えておらず、孤児院への寄付なんて格好付けのための形だけだと思っていた。

「可哀想だからしてあげる」そんな態度がいつも見えて、慰問なんか来なくてもいいのにといつも思っていた。お金と物だけくれればあんた達なんか必要がない。
そう思っていた。




そんな時、カイラとエレンが、孤児院にいるわたしに会いにきた。

客室にいる二人にわたしは初めてお会いした貴族の令嬢に挨拶する様に、頭を下げた。

「ようこそお越しくださいました。わたしはリゼともうします。沢山の寄付をいただいてありがとうございました」

わたしは二人に対して、なんの感情もなく、今いる自分の立ち位置に恥じることなく二人を見た。

すると二人は涙を溜めて、わたしを見ると抱きしめて来た。

「エリーゼ、わたし……前回の記憶が突然戻ったの」

「わたしもそうなの。エリーゼが居なくなって探そうとしたらお父様達に止められたの。理由は教えて貰えなくて、ずっと心配していたのよ。
そんな時、マリーナ様とお茶会で初めてお話をしていたら、何故か頭の中にいろんな記憶が流れ込んできたの」

「貴女が突然いなくなったのは、殿下と貴女のお父様から逃げるためよね?」

「わたし達、二人で話し合って前回の記憶を確認しあったわ、貴女がどこに行ったか探し出すのに時間がかかったけどなんとか見つけ出したの。
大人達はわたし達がエリーゼを探すことに難色を示したの。どうしてかしら?」

二人がわたしを忘れていなくて探してくれたことに驚いた。
でも、とても嬉しかった。

「ありがとう、わたしは貴族の生活を捨てたの。二人にはわたしなんてもう忘れられていると思っていたわ」

「忘れるわけないじゃない。いつ消えてなくなるかわからない、そんな貴方を放っておけないから友達になったのよ」

「そうよ。それに前回の記憶がよみがえって、わたし達は後悔しているのよ、貴方を助ける事が出来ずに処刑されたこと」
カイラとエレンは泣き出した。

「貴方はいつから記憶があったの?だから逃げ出したの?」

「……わたしは貴女達に出会う1ヶ月半前くらいからだったわ。処刑されて首を切られて、とても痛くて苦しくて、絶望の中で死んだの。そうしたら何故か6歳に巻き戻っていたの」

「そう……わたし達は巻き戻ったというより、17歳の貴女が死んで1年後くらいまでの記憶を思い出したの」

カイラが言うとエレンも話し出した。
「わたしもよ、マリーナ様を見て目の前にいろんな忘れていた記憶が溢れて来て、初めは何がなんだか分からなくてパニックになったわ、そしたら、カイラもわたしと同じような状態だったの」

「ええ。エレンと二人で控え室に行って、少し休んでいたんだけど、お互い似たような状態だったから話してみたら全く同じようにエリーゼとの過去を思い出したの」

「まだ7歳のわたし達が、何故か17歳までの記憶があるのよ」

「とても怖かった、でも何故か不思議なの。それが夢とは思えなくて現実にあった出来事だと確信していたの」

二人はわたしを見ながら、涙を溜めて手を握って

「辛かったわね、やっとエリーゼに会えた。お願い、わたし達と一緒に話をしましょう。これからのこと、これまでのこと」

わたしは、二人に前回のこと、そして今の生活のことを話した。







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