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21話 ジェフと殿下編
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陛下とわたし、王子と三人だけで話し合うことが出来た。
人払いをされて部屋にいるのは三人だけ。
「ヴィクトリアから話は聞いた。信じられなかったがお前達は10年前に巻きもどっていて、記憶があるとは本当か?」
わたしは陛下の信じられないという顔を見て、当たり前だと納得しつつも、信じてもらえるように経緯を話した。
「では、わたしが病床に倒れるのにはあと9年あるのだな」
「はい、父上」
「………クロード、、お前の中身は18歳だと思って話す」
陛下は、何処か遠くを見ながら思い出すように話し出した。
「9年前、わたしはヴィクトリアを裏切りお前の母親、今の皇后でもあるユシリスと結婚した。お前を妊娠したからヴィクトリアと婚約破棄してユシリスと結婚したんだ。ユシリスは、わたしの言い訳にしかならないが、わたしを体で懐柔したんだ。お前が巻き戻る前にマリーナに懐柔されたのと同じだ」
「え?母上がですか?」
「わたしはヴィクトリアを愛していた。結婚まであと半年だった。
そんな時、ユシリスがわたしを誘ってきたんだ。わたしはまだ若くて愚かだったんだ、つい欲に負けてしまった。
ユシリスと何度も体を重ねてしまった。そして……出来たのがお前だ。
ヴィクトリアとは、妊娠を知って婚約破棄したんだ。解消ではなくて破棄だった。
ユシリスの親、お前の祖父でもあるニューベル公爵は、ヴィクトリアの実家のルイナーレ公爵に対して昔から敵対心を持っていた。自分の娘であるユシリスがわたしの婚約者として選ばれず、ヴィクトリアが選ばれたことを心よく思っていなかった。
だから妊娠させられたと圧力をかけられ解消ではなく破棄になったんだ。
ルイナーレ公爵は醜聞を気にしたのと、私を繋ぎ止めておけなかった腹立たしさからヴィクトリアを除籍して追い出したんだ」
陛下はわたしの顔を見た。
「ジェフは全て知っているから今更だが、クロードには話すつもりはなかった」
「……そうですね、本当に今更ですよね」
わたしはヴィクトリアが泣き続けた姿を思い出した。
妻のオーリスはヴィクトリアを心配して屋敷に来るように何度も言ったが、ルイナーレ公爵に知られて迷惑をかけたくないと断った。
オーリスにとってヴィクトリアは友人というより姉のような存在だった。オーリスの憧れの存在で、彼女を手本にしているのよ、と妻はよく言っていた。
いつも毅然として前を向いて立っている姿が美しかったヴィクトリア。
わたし自身も幼い頃の初恋相手でもあった。
だからこそ、わたし達夫婦は陛下に対して怒りを抱いた。
それでも生まれてきた子どもに罪はない。
だから、嫌々でもわたしはエリーゼとの婚約を受けたのだ。
まあ、似たもの親子だったが。
「ハウエル公爵は今力もないし財政難なはずだ。確か不渡を出して今金策に励んでいると思う」
陛下の言葉にわたしは
「エリーゼが前回今の時期には殿下、いやすみません、王子の婚約者になっていました。もしかしてニューベル公爵がハウエル公爵のバックに付いて、裏で貴族派を動かしていたのか?」
わたしは殿下と二人で顔を見合わせた。
「前回の時は、貴族派筆頭のハウエル公爵達を処刑してわたしは死にました。宰相もそのあと自害されたから、そのあとどうなったか知りませんよね?」
「ああ、ただ、息子がチラッと言っていたのが、
『はい、殿下と父上が墓の前で自殺をしたあと僕はハウエル公爵派の残党と戦い死にました』
と、言っていたんです。その残党はもしかして、ニューベル公爵の手の者だったのかも知れません。貴族派からしたら我がバセット公爵は邪魔でしかなかったでしょうから、エリーゼを殺し、わたしが死んだ。あとは息子のスコットだけ。残党と戦わせて始末したのかもしれません」
「ではお祖父様が、黒幕かもしれない?父上に薬を盛り、僕を懐柔しエリーゼを殺した」
殿下は怒りで小刻みに震えていた。
「たぶん、ユシリスは全てを知っているはずだ。クロード、お前には悪いがわたしはユシリスを愛してはいない。確かにお前と第2王子のレンスがいるが、レンスはわたしの子ではない」
「え?え?」
「わたしはユシリスを愛せなかった。愛しているのはヴィクトリアだけだ。だから、妊娠したことが分かってから一度もユシリスを抱いた事はない」
「陛下……ではレンス王子は……」
わたしが言葉を失うと
「ああ、レンスは誰の子だろうね。知らないよ」
陛下は平然と言った。
「クロードはわたしの子だ。だがレンスは違う。だから彼に王位継承権を与える事はしない………たとえクロードが死んでも次の継承権はわたしの弟、そしてその息子になる。それがマリーナにクロードを懐柔させた原因かもね。
クロードがエリーゼと結婚すれば、ニューベル公爵の思い通りにはならないだろう。
ハウエル公爵の娘を妃にすれば、ニューベル公爵が影で思う存分力を発揮できる。何かあればハウエル公爵に全ての責任を負わせればいいしね、巻き戻る前の時のようにね」
「ではエリーゼが処刑されたのは、別の理由かもしれませんね」
人払いをされて部屋にいるのは三人だけ。
「ヴィクトリアから話は聞いた。信じられなかったがお前達は10年前に巻きもどっていて、記憶があるとは本当か?」
わたしは陛下の信じられないという顔を見て、当たり前だと納得しつつも、信じてもらえるように経緯を話した。
「では、わたしが病床に倒れるのにはあと9年あるのだな」
「はい、父上」
「………クロード、、お前の中身は18歳だと思って話す」
陛下は、何処か遠くを見ながら思い出すように話し出した。
「9年前、わたしはヴィクトリアを裏切りお前の母親、今の皇后でもあるユシリスと結婚した。お前を妊娠したからヴィクトリアと婚約破棄してユシリスと結婚したんだ。ユシリスは、わたしの言い訳にしかならないが、わたしを体で懐柔したんだ。お前が巻き戻る前にマリーナに懐柔されたのと同じだ」
「え?母上がですか?」
「わたしはヴィクトリアを愛していた。結婚まであと半年だった。
そんな時、ユシリスがわたしを誘ってきたんだ。わたしはまだ若くて愚かだったんだ、つい欲に負けてしまった。
ユシリスと何度も体を重ねてしまった。そして……出来たのがお前だ。
ヴィクトリアとは、妊娠を知って婚約破棄したんだ。解消ではなくて破棄だった。
ユシリスの親、お前の祖父でもあるニューベル公爵は、ヴィクトリアの実家のルイナーレ公爵に対して昔から敵対心を持っていた。自分の娘であるユシリスがわたしの婚約者として選ばれず、ヴィクトリアが選ばれたことを心よく思っていなかった。
だから妊娠させられたと圧力をかけられ解消ではなく破棄になったんだ。
ルイナーレ公爵は醜聞を気にしたのと、私を繋ぎ止めておけなかった腹立たしさからヴィクトリアを除籍して追い出したんだ」
陛下はわたしの顔を見た。
「ジェフは全て知っているから今更だが、クロードには話すつもりはなかった」
「……そうですね、本当に今更ですよね」
わたしはヴィクトリアが泣き続けた姿を思い出した。
妻のオーリスはヴィクトリアを心配して屋敷に来るように何度も言ったが、ルイナーレ公爵に知られて迷惑をかけたくないと断った。
オーリスにとってヴィクトリアは友人というより姉のような存在だった。オーリスの憧れの存在で、彼女を手本にしているのよ、と妻はよく言っていた。
いつも毅然として前を向いて立っている姿が美しかったヴィクトリア。
わたし自身も幼い頃の初恋相手でもあった。
だからこそ、わたし達夫婦は陛下に対して怒りを抱いた。
それでも生まれてきた子どもに罪はない。
だから、嫌々でもわたしはエリーゼとの婚約を受けたのだ。
まあ、似たもの親子だったが。
「ハウエル公爵は今力もないし財政難なはずだ。確か不渡を出して今金策に励んでいると思う」
陛下の言葉にわたしは
「エリーゼが前回今の時期には殿下、いやすみません、王子の婚約者になっていました。もしかしてニューベル公爵がハウエル公爵のバックに付いて、裏で貴族派を動かしていたのか?」
わたしは殿下と二人で顔を見合わせた。
「前回の時は、貴族派筆頭のハウエル公爵達を処刑してわたしは死にました。宰相もそのあと自害されたから、そのあとどうなったか知りませんよね?」
「ああ、ただ、息子がチラッと言っていたのが、
『はい、殿下と父上が墓の前で自殺をしたあと僕はハウエル公爵派の残党と戦い死にました』
と、言っていたんです。その残党はもしかして、ニューベル公爵の手の者だったのかも知れません。貴族派からしたら我がバセット公爵は邪魔でしかなかったでしょうから、エリーゼを殺し、わたしが死んだ。あとは息子のスコットだけ。残党と戦わせて始末したのかもしれません」
「ではお祖父様が、黒幕かもしれない?父上に薬を盛り、僕を懐柔しエリーゼを殺した」
殿下は怒りで小刻みに震えていた。
「たぶん、ユシリスは全てを知っているはずだ。クロード、お前には悪いがわたしはユシリスを愛してはいない。確かにお前と第2王子のレンスがいるが、レンスはわたしの子ではない」
「え?え?」
「わたしはユシリスを愛せなかった。愛しているのはヴィクトリアだけだ。だから、妊娠したことが分かってから一度もユシリスを抱いた事はない」
「陛下……ではレンス王子は……」
わたしが言葉を失うと
「ああ、レンスは誰の子だろうね。知らないよ」
陛下は平然と言った。
「クロードはわたしの子だ。だがレンスは違う。だから彼に王位継承権を与える事はしない………たとえクロードが死んでも次の継承権はわたしの弟、そしてその息子になる。それがマリーナにクロードを懐柔させた原因かもね。
クロードがエリーゼと結婚すれば、ニューベル公爵の思い通りにはならないだろう。
ハウエル公爵の娘を妃にすれば、ニューベル公爵が影で思う存分力を発揮できる。何かあればハウエル公爵に全ての責任を負わせればいいしね、巻き戻る前の時のようにね」
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