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20話 ジェフと殿下編
しおりを挟むわたしは直ぐに殿下と話し合うことにした。
まだ8歳の殿下。今は第一王子だ。数年後王太子殿下になる。
そして、その頃陛下が病床についた。
「殿下、いや、王子。王子が殿下になった時、急に陛下はご病気になられた。あの時の原因はなんだったのでしょう。病名もよく分からず陛下はだんだん体が弱ってきましたよね」
「確かに……あの時は自分も父上が体調を崩すし自分も公務に精一杯で余裕がなかった。原因は確かに不明でありとあらゆる薬を、いいと聞けば取り寄せた記憶がある」
「そして、その頃から突然シーモア・ハウエル公爵が貴族派の筆頭になり何かと殿下の公務の邪魔をしてきました。
それまで、あいつはそんなに力も財力もなかった」
「そうだ、どうしてハウエル公爵が突然力をつけたんだろう?あとで確かに不正をしていることもわかったけど、それは筆頭になってからの不正だ。その前の事は分からない」
「もしかして、陛下の体調を崩した事とハウエル公爵が筆頭になった事は何か繋がりがあるのかもしれませんね。殿下になったのが17歳の時で18歳の時にマリーナ様とそういう関係になったのでしたね、という事は今から9年後にあいつは動きだすとして、その前に工作しているはず」
わたしの話を聞いて、殿下は苦虫を噛み潰したような顔をした。
心の中でざまあみろとほくそ笑んだ。
わたしの大事なエリーゼを蔑ろにしてマリーナ様と寝た男だ。それも処刑されて死んだ娘のことを気づきもせず、朝までマリーナ様を抱いていた最低の男。
殿下は、それでもわたしを見て
「貴方にいくら嫌味を言われても言い返せない。わたしは最低の男だった。だけど今回は間違えない」
「一度味わった女性の体。忘れられますか?多少はマリーナ様を愛していたでしょう?そうでないと抱いたりは出来ませんよ」
「やめてくれ。それならマリーナを処刑など出来るわけがないだろう?」
「でも今回は彼女は何もしなければどうしますか?一族みんな処刑して頂けますか?」
わたしは前回だろうと今回だろうと一族全て処刑にするつもりだ。
「………まだそこまではわからない」
「どうせなら貴方の婚約者にして、マリーナ様に近づいてみては如何ですか?そうすれば早く動きもわかります」
「なっ……なんでそうなるんだ?嫌だ。僕はエリーゼを今も愛しているんだ」
「以前から言っていますがエリーゼは貴方を愛していないし嫌っています。さらに今は怖がっていて貴方の思いが通じる事はありません」
「………わかっている。エリーゼは婚約しても僕に笑顔を向けることはなかった。
僕は彼女に酷いことばかり言ってしまった。そして演技とはいえマリーナと仲良くした。
さらにマリーナの体に溺れた。たぶん……マリーナに惹かれていたのも事実だ。エリーゼを断罪した時、僕を見てくれないエリーゼに対して演技とはいえ少し苛ついていたから胸がスカッとした。僕は最低なのはわかっている」
「本当に最低ですね。今回はマリーナ様とどうぞ婚約してください。この事件が終われば、貴方は臣下に降りてマリーナ様と毎日愛し合って抱き合っていればいいのですよ、エリーゼにはもっといい人を選びます」
殿下は涙をためてわたしを見た。
子ども姿の殿下に言い過ぎたのは分かっていた。
でもエリーゼへの気持ちをここで完全にへし折ってしまいたかった。
それがエリーゼのこれからの幸せには必要だから。
わたしも殿下もエリーゼの幸せには要らない。
「宰相、君がいくら僕に酷いことを言っても無理だよ。振られるのはエリーゼからがいいんだ。そしたら諦められる。でもそれまではいくら事実を把握したいからと言っても、マリーナの婚約者にはならないよ」
「………すみません、大人げなかったですね」
「いいんだ。エリーゼのことを考えたら僕が彼女と接触しない方がいいのはわかっているんだ」
殿下が己れの過去を悔やんでいるのもわかっている。
それでもわたし達は、エリーゼが姿を消したことを重く受け止めるしかなかった。
わたし達は許されてはいけない人間なのだ。
「陛下がわたし達が巻き戻ったことを知っているらしいのだが、ご存知ですか?」
「………父上に、明日呼ばれている。宰相、貴方も一緒がいいと思う」
「そうですね、ただお互い前回の時の呼び方はやめましょう。わたしはバセット公爵とお呼びください。そしてわたしもクロード王子と呼ばせていただきます」
「わかったバセット公爵、明日は父上との話し合いよろしく頼む」
「かしこまりました、クロード王子」
◆ ◆ ◆
初めて名前が出ました。
王子であり殿下の名前は、クロードです。
よろしくお願いします。
短編のはずですが、中編になりそうです。
もしよろしければお付き合いくださいね。
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