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19話 ジェフ編
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エリーゼがいなくなってから、すぐに足取りを追うと孤児院へ向かったことがわかった。
ただ、その孤児院の院長が、最悪だった。
オーリスの友人で陛下の元婚約者。
陛下からも圧力があり、エリーゼは孤児院で預かるので手出し無用と言われた。
動きが早い。
わたしがエリーゼを迎えに来られないように陛下に手を打つなんて。
院長先生である彼女の名前は、ヴィクトリア。
元公爵令嬢だった。
彼女は陛下の婚約者だった。
結婚する半年前に、陛下が今の皇后を妊娠させて婚約破棄になった。
彼女は、公爵当主である父親に「お前が陛下を繋ぎ止めていなかったからだ」と、罵倒され公爵家から除籍された。
その時に、助けたのがうちの屋敷の近くにある孤児院の院長先生だった。
院長先生の実家は、平民だが孤児院をいくつか持っていて運営していた。
ヴィクトリアは暫く手伝いをして、それから隣町の院長先生として孤児院で働き出した。
妻のオーリスは、ヴィクトリアにうちの屋敷に来て欲しいと懇願したが、ヴィクトリアは迷惑はかけたくないと、断った。
彼女のいる孤児院にまさかエリーゼがいるなんて思わなかった。それもヴィクトリアは陛下の力を使ってわたしに手出しさせないようにした。
陛下は自分のしでかした事で、ヴィクトリアの人生を変えてしまった罪悪感から、多少の頼みは聞いてしまう。
もちろんヴィクトリアは、訳の分からない頼み事はしない。
どうしても自身では無理だと思った時だけ頭を下げて陛下に頼んでいる。
以前も、孤児院の子どもが難病になった時、町医者では治せず王宮内の医師に診て欲しいと必死で頼んだ。
そのおかげでその子の命は救われた。
わたしはその橋渡しをした。
彼女は自分の私利私欲で頼む人ではない。
今回のエリーゼのことは、わたしには父親としての資格はないと思われたのだろう。
陛下ならば、公爵のわたしを止めることが出来る力を持つ唯一の人だから。
それは殿下にも及んでいた。
エリーゼへの接近禁止を出された。
それに関してはわたしもホッとしている。
エリーゼも殿下には会いたくはないだろう。また倒れられても困る。
それからのわたしは平民の格好をして、隣町の孤児院へこっそりとエリーゼを見に行くことにした。
エリーゼは、みんなから「リゼ」と呼ばれていた。
初めは表情も固く、ぎこちない様子だったがだんだん明るくなっていった。
水汲みも上手に出来るし、友達と駆けっこしたり、木登りまでしていた。
あの大人しいエリーゼが、笑って子どもらしい表情をしている。
わたしはエリーゼの笑顔を孤児院で初めて見た時、涙が出た。
わたしが奪ってしまった笑顔が戻っていた。
子ども達との生活は、彼女に笑顔と安寧を与えていた。
そして会いたくはないヴィクトリアに会いにいった。
「久しぶりだね」
ヴィクトリアは相変わらず年を取っても綺麗だった。
だが、会った早々辛辣な言葉が返ってきた。
「この屑!駄目父!エリーゼを不幸にして何をしているの!オーリスが知ったら悲しむわよ!」
わたしは返す言葉もなくて、呆然と立ち尽くしていると、さらに追い打ちをかけてきた。
「エリーゼは人生を巻き戻しているわ。貴方もでしょう?」
「…どうして…分かるんだ?」
「だって貴方もエリーゼも絶望を経験した同じ目をしているわ。
エリーゼは全て話してくれたわ。貴方の言い訳くらいなら聞いてあげるわ、許してはあげないけどね」
わたしは、自分が知っている経緯を仕方なく全て話した。
「……そお、やはり悪いのは殿下と屑ね」
「その屑はやめてもらえないか?」
「あら?屑で自分だと分かるの?」
「グッ………自分のやったことは今さら変えられないことくらい分かっている。でも今からでも、あの子を守っていきたいんだ」
「ふうん?どんな風に?」
「宰相補佐官の仕事は辞めた。今は公爵邸での仕事が増えている。屋敷にいられるように出来るだけするつもりだ。まだ6歳なんだから今ならあの子とやり直しも出来るだろう」
「………あの子を守りたいのならわたしに暫く任せてくれないかしら?」
「そんな……」
「その間に、マリーナ様とハウエル公爵のことをなんとかしなさい。今屋敷に戻しても公爵がまた動き出せばエリーゼは狙われるわ。たかが婚約者だったくらいで殺されるのはおかしいわ。今回殿下の婚約者にならなくてもまた何か理由をつけて殺されたらどうするの?」
「また殺される?そんなことは絶対にさせない!」
「だったらちびっ子殿下とも話しなさい。ちなみに陛下には全て話しているわ。頼っても大丈夫よ」
「………すまない。陛下に会うのは嫌だっただろう。娘のために恩に着る」
「貴方のためではないわ。エリーゼとオーリスのためよ」
「ありがとう、迎えは決着がついたら来る。それまで娘をよろしくお願いします……だが、遠くから見るのは許してくれ」
わたしは、エリーゼを迎えに行くのを諦めて、マリーナとハウエル公爵をなんとかするのが先だと、急ぎ殿下と話し合うことにした。
ただ、その孤児院の院長が、最悪だった。
オーリスの友人で陛下の元婚約者。
陛下からも圧力があり、エリーゼは孤児院で預かるので手出し無用と言われた。
動きが早い。
わたしがエリーゼを迎えに来られないように陛下に手を打つなんて。
院長先生である彼女の名前は、ヴィクトリア。
元公爵令嬢だった。
彼女は陛下の婚約者だった。
結婚する半年前に、陛下が今の皇后を妊娠させて婚約破棄になった。
彼女は、公爵当主である父親に「お前が陛下を繋ぎ止めていなかったからだ」と、罵倒され公爵家から除籍された。
その時に、助けたのがうちの屋敷の近くにある孤児院の院長先生だった。
院長先生の実家は、平民だが孤児院をいくつか持っていて運営していた。
ヴィクトリアは暫く手伝いをして、それから隣町の院長先生として孤児院で働き出した。
妻のオーリスは、ヴィクトリアにうちの屋敷に来て欲しいと懇願したが、ヴィクトリアは迷惑はかけたくないと、断った。
彼女のいる孤児院にまさかエリーゼがいるなんて思わなかった。それもヴィクトリアは陛下の力を使ってわたしに手出しさせないようにした。
陛下は自分のしでかした事で、ヴィクトリアの人生を変えてしまった罪悪感から、多少の頼みは聞いてしまう。
もちろんヴィクトリアは、訳の分からない頼み事はしない。
どうしても自身では無理だと思った時だけ頭を下げて陛下に頼んでいる。
以前も、孤児院の子どもが難病になった時、町医者では治せず王宮内の医師に診て欲しいと必死で頼んだ。
そのおかげでその子の命は救われた。
わたしはその橋渡しをした。
彼女は自分の私利私欲で頼む人ではない。
今回のエリーゼのことは、わたしには父親としての資格はないと思われたのだろう。
陛下ならば、公爵のわたしを止めることが出来る力を持つ唯一の人だから。
それは殿下にも及んでいた。
エリーゼへの接近禁止を出された。
それに関してはわたしもホッとしている。
エリーゼも殿下には会いたくはないだろう。また倒れられても困る。
それからのわたしは平民の格好をして、隣町の孤児院へこっそりとエリーゼを見に行くことにした。
エリーゼは、みんなから「リゼ」と呼ばれていた。
初めは表情も固く、ぎこちない様子だったがだんだん明るくなっていった。
水汲みも上手に出来るし、友達と駆けっこしたり、木登りまでしていた。
あの大人しいエリーゼが、笑って子どもらしい表情をしている。
わたしはエリーゼの笑顔を孤児院で初めて見た時、涙が出た。
わたしが奪ってしまった笑顔が戻っていた。
子ども達との生活は、彼女に笑顔と安寧を与えていた。
そして会いたくはないヴィクトリアに会いにいった。
「久しぶりだね」
ヴィクトリアは相変わらず年を取っても綺麗だった。
だが、会った早々辛辣な言葉が返ってきた。
「この屑!駄目父!エリーゼを不幸にして何をしているの!オーリスが知ったら悲しむわよ!」
わたしは返す言葉もなくて、呆然と立ち尽くしていると、さらに追い打ちをかけてきた。
「エリーゼは人生を巻き戻しているわ。貴方もでしょう?」
「…どうして…分かるんだ?」
「だって貴方もエリーゼも絶望を経験した同じ目をしているわ。
エリーゼは全て話してくれたわ。貴方の言い訳くらいなら聞いてあげるわ、許してはあげないけどね」
わたしは、自分が知っている経緯を仕方なく全て話した。
「……そお、やはり悪いのは殿下と屑ね」
「その屑はやめてもらえないか?」
「あら?屑で自分だと分かるの?」
「グッ………自分のやったことは今さら変えられないことくらい分かっている。でも今からでも、あの子を守っていきたいんだ」
「ふうん?どんな風に?」
「宰相補佐官の仕事は辞めた。今は公爵邸での仕事が増えている。屋敷にいられるように出来るだけするつもりだ。まだ6歳なんだから今ならあの子とやり直しも出来るだろう」
「………あの子を守りたいのならわたしに暫く任せてくれないかしら?」
「そんな……」
「その間に、マリーナ様とハウエル公爵のことをなんとかしなさい。今屋敷に戻しても公爵がまた動き出せばエリーゼは狙われるわ。たかが婚約者だったくらいで殺されるのはおかしいわ。今回殿下の婚約者にならなくてもまた何か理由をつけて殺されたらどうするの?」
「また殺される?そんなことは絶対にさせない!」
「だったらちびっ子殿下とも話しなさい。ちなみに陛下には全て話しているわ。頼っても大丈夫よ」
「………すまない。陛下に会うのは嫌だっただろう。娘のために恩に着る」
「貴方のためではないわ。エリーゼとオーリスのためよ」
「ありがとう、迎えは決着がついたら来る。それまで娘をよろしくお願いします……だが、遠くから見るのは許してくれ」
わたしは、エリーゼを迎えに行くのを諦めて、マリーナとハウエル公爵をなんとかするのが先だと、急ぎ殿下と話し合うことにした。
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