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16話 王太子殿下 現在
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エリーゼが茶会で倒れてから直ぐ僕は彼女を見舞おうとした。
(エリーゼ、大丈夫だろうか?)
彼女が寝ている病室の前に立ち、ドキドキしながら部屋をノックしようとした……が、大きな手に止められた。
「王子、エリーゼに会うのはやめて頂きたいのですが」
そこにはエリーゼの父上であるバセット宰相補佐官、前回の宰相がいた。
「宰相、どうして止めるんだ」
僕の言葉にピクっと眉が動いた。
「……宰相?わたしは宰相補佐官ですが………もしかして、貴方は……」
宰相は怪訝な顔をした。
(しまった!今の役職で呼ばなければいけなかったのにまだこちらに戻ったばかりなのでつい前回の役職で呼んでしまった)
僕は平然とした顔をして受け流そうとした。
宰相は小さな声で
「貴方も巻き戻りましたか?」
と、呟いた。
僕は彼の顔を思わず驚いた顔で見てしまった。
それは肯定しているのも同じ。
「……やはり……わたしも今日巻き戻りました」
「今日……僕は一週間前だった」
「そうですか……全ての記憶はおありですか?」
「ああ…………」
僕は自分が何をしたか全て覚えている事を白状するしかなかった。
「では娘の前に現れないで頂きたい。貴方と婚約さえしなければエリーゼは処刑されないですむんです」
僕は彼の言葉に、ハッとした。
確かに……僕と関わらなければハウエル公爵もマリーナもエリーゼを処刑しないはずだ。
だが、僕は今もエリーゼを愛しているんだ。
何があってもこの気持ちだけは変わらないし、変えられない。
僕がマリーナと婚約して傀儡になればそれで済むのかもしれない。
「………僕はエリーゼを愛しているんだ」
「どなたが言っているんですか?
貴方は今小さな体です。だから、ここで言うのはおかしい話ですが、前回の貴方はマリーナ様に夢中でした。
娘が処刑された日も貴方は知らずにマリーナ様と一晩中ご一緒におられた。娘を殺した女と娘を裏切った男が愛し合っていたんだ。
悍ましく気持ちが悪い」
宰相に吐き捨てられるように言われた。
「…言い訳はしない。前回の時はエリーゼのためと言い訳しながらもマリーナの体に夢中になっていた。心はエリーゼに向かっていたはずなのに男の性には勝てなかった」
「だったら今回もそのまま勝てなければいいのではないですか?好きなだけマリーナ様に溺れればいいのです」
「……グッ」
僕は何も言えなかった。
「……わたしも前回の時にエリーゼを仕事が忙しいと言って放置して彼女からの信頼を失った駄目な父親です。
わたしはもうすぐ宰相になるはずです。
だからその前に宰相補佐官を辞めて、公爵として屋敷で過ごすつもりです。もう後悔はしたくありません。あの子の消えた笑顔も感情もなんとか今回は取り戻してみせます。
そして今度こそ死なせない。幸せにします。」
宰相は、硬い表情で僕を見つめていた。
僕は彼の決意に一瞬ビクッとしたけど、僕だって今回は決心している。
「宰相、今回はハウエル公爵やマリーナにいい様にはされない。
それに、今すぐにエリーゼを婚約者として打診はしない。僕は力を付けていくよ、誰にも負けない力が必要なんだ。強い貴族達の後ろ盾も自分の力で掴みとる」
僕が今必要なのは国政を行うための知識と強い後ろ盾だ。18歳までの知識はある。勉強に関しては飛び級してさっさと卒業するつもりだ。
これからは父上の側に付いて、とにかく吸収出来ることは今からどんどん取り入れていく。
そして父上の体にも気をつけなければいけない。
暴飲暴食を避けさせて、無理はさせず休養もとっていただき、健康でいてもらい、ハウエル公爵が介入出来ないようにしなければいけない。
18歳の若造では、海千山千の高位貴族達に良いように扱われる。
力は付けるが、まだ父上にはしっかり貴族達の動きを抑え込んでいてもらいたい。
そうすればハウエル公爵の悪行の証拠をその間に探し出せる。
今回はほとんど動きがわかっているので、早めに証拠集めは出来るが、泳がせて悪い事をしてもらわないと断罪出来ない。
だから、泳がせながら影に動いてもらって、証拠を早めに集め始めた。
力を削ぎ、弱小貴族になってもらう。
マリーナに対しては、まだ子どもなのでどうしようか考えあぐねている。
わたしは前回彼女に溺れてしまった。
今回は……まだ子どもだ。
殺すのは悩むところだが、一度接触してどうするか……悩むところだ。
公爵、あいつだけは今回は完全に潰してやる。
そんな決意の中、宰相からの知らせに呆然となってしまった。
エリーゼが置き手紙をして、屋敷からいなくなったらしい。
彼女にも記憶がある?
だから逃げ出したのか?
僕たちはエリーゼの行方を必死で探した。
(エリーゼ、大丈夫だろうか?)
彼女が寝ている病室の前に立ち、ドキドキしながら部屋をノックしようとした……が、大きな手に止められた。
「王子、エリーゼに会うのはやめて頂きたいのですが」
そこにはエリーゼの父上であるバセット宰相補佐官、前回の宰相がいた。
「宰相、どうして止めるんだ」
僕の言葉にピクっと眉が動いた。
「……宰相?わたしは宰相補佐官ですが………もしかして、貴方は……」
宰相は怪訝な顔をした。
(しまった!今の役職で呼ばなければいけなかったのにまだこちらに戻ったばかりなのでつい前回の役職で呼んでしまった)
僕は平然とした顔をして受け流そうとした。
宰相は小さな声で
「貴方も巻き戻りましたか?」
と、呟いた。
僕は彼の顔を思わず驚いた顔で見てしまった。
それは肯定しているのも同じ。
「……やはり……わたしも今日巻き戻りました」
「今日……僕は一週間前だった」
「そうですか……全ての記憶はおありですか?」
「ああ…………」
僕は自分が何をしたか全て覚えている事を白状するしかなかった。
「では娘の前に現れないで頂きたい。貴方と婚約さえしなければエリーゼは処刑されないですむんです」
僕は彼の言葉に、ハッとした。
確かに……僕と関わらなければハウエル公爵もマリーナもエリーゼを処刑しないはずだ。
だが、僕は今もエリーゼを愛しているんだ。
何があってもこの気持ちだけは変わらないし、変えられない。
僕がマリーナと婚約して傀儡になればそれで済むのかもしれない。
「………僕はエリーゼを愛しているんだ」
「どなたが言っているんですか?
貴方は今小さな体です。だから、ここで言うのはおかしい話ですが、前回の貴方はマリーナ様に夢中でした。
娘が処刑された日も貴方は知らずにマリーナ様と一晩中ご一緒におられた。娘を殺した女と娘を裏切った男が愛し合っていたんだ。
悍ましく気持ちが悪い」
宰相に吐き捨てられるように言われた。
「…言い訳はしない。前回の時はエリーゼのためと言い訳しながらもマリーナの体に夢中になっていた。心はエリーゼに向かっていたはずなのに男の性には勝てなかった」
「だったら今回もそのまま勝てなければいいのではないですか?好きなだけマリーナ様に溺れればいいのです」
「……グッ」
僕は何も言えなかった。
「……わたしも前回の時にエリーゼを仕事が忙しいと言って放置して彼女からの信頼を失った駄目な父親です。
わたしはもうすぐ宰相になるはずです。
だからその前に宰相補佐官を辞めて、公爵として屋敷で過ごすつもりです。もう後悔はしたくありません。あの子の消えた笑顔も感情もなんとか今回は取り戻してみせます。
そして今度こそ死なせない。幸せにします。」
宰相は、硬い表情で僕を見つめていた。
僕は彼の決意に一瞬ビクッとしたけど、僕だって今回は決心している。
「宰相、今回はハウエル公爵やマリーナにいい様にはされない。
それに、今すぐにエリーゼを婚約者として打診はしない。僕は力を付けていくよ、誰にも負けない力が必要なんだ。強い貴族達の後ろ盾も自分の力で掴みとる」
僕が今必要なのは国政を行うための知識と強い後ろ盾だ。18歳までの知識はある。勉強に関しては飛び級してさっさと卒業するつもりだ。
これからは父上の側に付いて、とにかく吸収出来ることは今からどんどん取り入れていく。
そして父上の体にも気をつけなければいけない。
暴飲暴食を避けさせて、無理はさせず休養もとっていただき、健康でいてもらい、ハウエル公爵が介入出来ないようにしなければいけない。
18歳の若造では、海千山千の高位貴族達に良いように扱われる。
力は付けるが、まだ父上にはしっかり貴族達の動きを抑え込んでいてもらいたい。
そうすればハウエル公爵の悪行の証拠をその間に探し出せる。
今回はほとんど動きがわかっているので、早めに証拠集めは出来るが、泳がせて悪い事をしてもらわないと断罪出来ない。
だから、泳がせながら影に動いてもらって、証拠を早めに集め始めた。
力を削ぎ、弱小貴族になってもらう。
マリーナに対しては、まだ子どもなのでどうしようか考えあぐねている。
わたしは前回彼女に溺れてしまった。
今回は……まだ子どもだ。
殺すのは悩むところだが、一度接触してどうするか……悩むところだ。
公爵、あいつだけは今回は完全に潰してやる。
そんな決意の中、宰相からの知らせに呆然となってしまった。
エリーゼが置き手紙をして、屋敷からいなくなったらしい。
彼女にも記憶がある?
だから逃げ出したのか?
僕たちはエリーゼの行方を必死で探した。
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