【完結】どうして殺されたのですか？貴方達の愛はもう要りません

10話

「旦那様、お嬢様にスープを飲ませてあげてください」

わたしとお父様はアンの言葉に固まった。
(そんな恥ずかしいことをわたしがされるの？)

(の、飲ませる？どうやって？)
ジェフも思考が固まっていた。

アンはお父様にスープのお皿を渡すとさっさと出て行った。

お父様は固まっていたので、わたしは仕方なく手を出して
「自分で飲みますので大丈夫です」
と言ったら、
「わたしが飲ませる、任せておけ」
と返答された。

お父様はスプーンを震えながらわたしの口元に運んだ。
わたしは口を開けて一口飲んだ。

(美味しいのかもよく分からない……自分で飲みたい……)

お父様は更にもう一度、口元にスプーンを運んだ。
わたしは口を開けて一口飲んだ。

無言の中でそれを何度か繰り返した。

「お父様、もうお腹いっぱいです」
半分程でもうお腹がいっぱいになった。

「たったのこれだけしか飲んでいないのに体は大丈夫なのか？」

「いつもこのくらいしか食べないので大丈夫です」

お父様は驚いていた。
「屋敷のものは料理を出してくれないのか？
料理長を呼べ！」

お父様は怒ってベルを鳴らしてアンを呼び出した。

「料理長ですか？すぐに呼んで来ます」

「アン、待って！行かなくても大丈夫だから」
わたしはアンを止めてからお父様を見た。

「わたしはまだ子どもです。沢山は食べられません。
料理長はいつも少ししか食べられないわたしのためにスープには沢山の野菜を使ってくれています。
パンもわたしが食べやすいように小さめに作ってくれます。
他の食べ物も少しずついろんな種類を出してわたしが食べられるようにしてくれています」

お父様は驚いてアンを見た。

「そうなのか？」

「はい、わたし達はお嬢様が少しでもこの屋敷で過ごしやすいように工夫しています」

アン達は貴方なんかよりよっぽどわたしを大切にして思っていてくれているの！

と、叫びたかったがわたしはグッと我慢した。

だから我慢して、頭を下げた。

「みんなわたしの大切な家族です、怒らないでください。
怒るなら食べられないわたしを叱ってください、お願いします」

「エリーゼの大切な家族……」

(わたしより使用人の方が大切な家族……)

ジェフはその言葉にショックを受けたがそれが今まで彼女へした仕打ちなんだと自覚した。

「すまない、知らなかった。叱ることはしない」

お父様は、お皿をテーブルに置くと部屋を去って行った。

わたしはホッとしてベッドに横になり、アンに言った。
「アン疲れたわ。しばらく寝かせてちょうだい」

アンは「いつでもお呼びください」と言って部屋を出て行った。

わたしは疲れていたのかそのまま眠ってしまった。



◇ ◇ ◇



お茶会から倒れて1週間経った。

結局熱がでてやっと普通に起きていられるようになるまでに時間がかかった。

子どもの体力はまだまだ弱いのだと実感した。

「アン、そろそろわたし孤児院へ行きたいわ」

「病み上がりですので、すぐには無理だと思いますが、ロン様にお聞きして了承を得てからまた行きましょう」

「わかったわ、わたしからもロンに聞いてみるわ」

今のところ殿下から婚約の打診はないみたい。
やはり倒れたのが悪かったのか……

わたしを好きにさせて振ってやる計画は上手くいかなかったか……

だったらわたしが良い女になってみんなからモテる女になる計画にでも変更しようかしら？

6歳のモテる女って一体どんな子？

あー、もう、よくわからないわ。







◇ ◇ ◇





友人になったカイラとエレンと初めて三人で会う事になった。

エレンの屋敷から招待を受けた。

わたしは料理長にお願いをして前回の記憶にあるエレンが大好きだった我が料理長お手製のアップルパイを持って行く事にした。

エレンはこのアップルパイが本当に好きだった。

今回ももちろん喜んでくれるはず。