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9話
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わたしは医務室に寝かされていた。
途中から意識はあったのにずっと寝たふりをしていた。
ここのお医者様が一度目の時からわたしに優しかったのはお父様の友人だったからなんだと今知った。
お父様はわたしのために王宮での仕事を辞めるつもりみたい。
だから頑張って仕事をしているのだと知って感動した……なんてことはない。
だからなんだと言いたい。
首を切られた時の壮絶な痛み、悔しさ、恐怖。
今思い出しても地獄のようなものだ。
全てのことに絶望した。
忘れられない!
絶対にこんな親捨ててやる!
わたしはどうせなら6歳ではなくてもう少し年上に戻りたかった。
家出もできない!
◇ ◇ ◇
朝起きたらお父様は椅子に座ったままわたしのベッドの脇で寝ていた。
疲れた顔をして寝ている姿を見て気づいた。
(わたしお父様の顔をちゃんと見たことなかったわ)
なんだか胸がキュッと苦しくなった。
じっとお父様を見ていたら気配に気がついたのかお父様が目を覚ました。
「……う…ん、あ、、エリーゼ、体調は大丈夫かい?」
わたしは何故か泣きそうになりながらも答えた。
「おはようございます。大丈夫です」
わたしはお父様から目を逸らすように壁に向き、毛布を顔まで被った。
この感情は何?
懐かしさ?
父への切なさ?
突然の優しい言葉への対応がわからないだけ?
何故?
今さら優しくなんかしないで。
わたしを見捨てて殺したくせに。
一度も愛情をくれなかったくせに!
わたしは目が熱くなった。
涙なんか流してあげない。
グッと堪えて我慢した。
◇ ◇ ◇
わたしとお父様は屋敷に帰っている。
何故がお父様はわたしを抱っこして馬車まで運んでくれた。
「お父様自分で歩けます、おろしてください」
「また倒れたらいけないからね、今日は歩いたら駄目だ」
王宮内でお父様を振り返る人々の視線に晒されながら抱っこされた。
わたしは流石に中身は16歳なので恥ずかしい。
顔をお父様の胸の方を向いて隠れた。
お父様に抱っこされるなんて生まれて初めてでどうしていいのか分からない。
とにかく恥ずかしい。
わたし、恥ずかしいと言う感情を今初めて知った。
馬車の中でもずっと抱っこ。
「おろして頂きたいのですが…」
小さな声でお願いしても聞き入れて貰えなかった。
屋敷に着くとわたしの部屋までずっと抱っこされたままでベッドへ寝かされた。
すぐにアンが来てくれて寝間着に着替えてわたしは横になった。
その間お父様は特にわたしに話しかけることもなくお互い無言だった。
話しかけられても困るけど抱っこされての無言はさらに困った。
いつ息をしていいのか分からないし、何故かドキドキして落ち着かなかった。
やっとベッドに寝かされて息ができる。
「お嬢様、旦那様が抱えて帰ってきたので驚きました。体調はまだお悪いのですか?お食事は如何致しましょうか?」
アンは少しニコニコしながらも心配そうにして話しかけてきた。
(は、恥ずかしすぎる…屋敷のみんなに抱っこを見られたんだわ)
「昨日から何も食べていないの、何か食べたいわ」
「まあ、旦那様は何も食べさせてくれなかったのですか?急いで用意します」
アンは部屋を慌てて出て行った。
◇ ◇ ◇
部屋の外で見守っていたジェフ(エリーゼの父)は、真っ青になって固まっていた。
それを横目でチラッと見たアンは慌てて頭を下げて急いで厨房へと行ってしまった。
(エリーゼにご飯を食べさせることなんて思いつきもしなかった、水すら飲ませてない……まずい、これはまずい)
ジェフは落ち込んでエリーゼの部屋へ入れず、でも去ることも出来ず、エリーゼに気づかれぬまま外で立ち尽くしていた。
アンが戻ってきて部屋へ入る時も何も言わず立ち尽くしていたので「ご一緒に入りましょう」と促した。
ジェフは「あ、ああ」と言いながら気まずそうにエリーゼの元へ近づいた。
「旦那様、お嬢様にスープを飲ませてあげてください」
途中から意識はあったのにずっと寝たふりをしていた。
ここのお医者様が一度目の時からわたしに優しかったのはお父様の友人だったからなんだと今知った。
お父様はわたしのために王宮での仕事を辞めるつもりみたい。
だから頑張って仕事をしているのだと知って感動した……なんてことはない。
だからなんだと言いたい。
首を切られた時の壮絶な痛み、悔しさ、恐怖。
今思い出しても地獄のようなものだ。
全てのことに絶望した。
忘れられない!
絶対にこんな親捨ててやる!
わたしはどうせなら6歳ではなくてもう少し年上に戻りたかった。
家出もできない!
◇ ◇ ◇
朝起きたらお父様は椅子に座ったままわたしのベッドの脇で寝ていた。
疲れた顔をして寝ている姿を見て気づいた。
(わたしお父様の顔をちゃんと見たことなかったわ)
なんだか胸がキュッと苦しくなった。
じっとお父様を見ていたら気配に気がついたのかお父様が目を覚ました。
「……う…ん、あ、、エリーゼ、体調は大丈夫かい?」
わたしは何故か泣きそうになりながらも答えた。
「おはようございます。大丈夫です」
わたしはお父様から目を逸らすように壁に向き、毛布を顔まで被った。
この感情は何?
懐かしさ?
父への切なさ?
突然の優しい言葉への対応がわからないだけ?
何故?
今さら優しくなんかしないで。
わたしを見捨てて殺したくせに。
一度も愛情をくれなかったくせに!
わたしは目が熱くなった。
涙なんか流してあげない。
グッと堪えて我慢した。
◇ ◇ ◇
わたしとお父様は屋敷に帰っている。
何故がお父様はわたしを抱っこして馬車まで運んでくれた。
「お父様自分で歩けます、おろしてください」
「また倒れたらいけないからね、今日は歩いたら駄目だ」
王宮内でお父様を振り返る人々の視線に晒されながら抱っこされた。
わたしは流石に中身は16歳なので恥ずかしい。
顔をお父様の胸の方を向いて隠れた。
お父様に抱っこされるなんて生まれて初めてでどうしていいのか分からない。
とにかく恥ずかしい。
わたし、恥ずかしいと言う感情を今初めて知った。
馬車の中でもずっと抱っこ。
「おろして頂きたいのですが…」
小さな声でお願いしても聞き入れて貰えなかった。
屋敷に着くとわたしの部屋までずっと抱っこされたままでベッドへ寝かされた。
すぐにアンが来てくれて寝間着に着替えてわたしは横になった。
その間お父様は特にわたしに話しかけることもなくお互い無言だった。
話しかけられても困るけど抱っこされての無言はさらに困った。
いつ息をしていいのか分からないし、何故かドキドキして落ち着かなかった。
やっとベッドに寝かされて息ができる。
「お嬢様、旦那様が抱えて帰ってきたので驚きました。体調はまだお悪いのですか?お食事は如何致しましょうか?」
アンは少しニコニコしながらも心配そうにして話しかけてきた。
(は、恥ずかしすぎる…屋敷のみんなに抱っこを見られたんだわ)
「昨日から何も食べていないの、何か食べたいわ」
「まあ、旦那様は何も食べさせてくれなかったのですか?急いで用意します」
アンは部屋を慌てて出て行った。
◇ ◇ ◇
部屋の外で見守っていたジェフ(エリーゼの父)は、真っ青になって固まっていた。
それを横目でチラッと見たアンは慌てて頭を下げて急いで厨房へと行ってしまった。
(エリーゼにご飯を食べさせることなんて思いつきもしなかった、水すら飲ませてない……まずい、これはまずい)
ジェフは落ち込んでエリーゼの部屋へ入れず、でも去ることも出来ず、エリーゼに気づかれぬまま外で立ち尽くしていた。
アンが戻ってきて部屋へ入る時も何も言わず立ち尽くしていたので「ご一緒に入りましょう」と促した。
ジェフは「あ、ああ」と言いながら気まずそうにエリーゼの元へ近づいた。
「旦那様、お嬢様にスープを飲ませてあげてください」
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