9 / 110
8話 ジェフ編
しおりを挟む「バセット宰相補佐官、なんてこと言い出すんですか!」
「煩い!わたしの大事な娘が倒れたんだ」
「だったら一人で茶会に置いて行く事が間違いなんです、普通は侍女をそばに置くものなんですよ」
「そうなのか?」
「男親しかいないから仕方がないかもしれないが6歳の女の子に誰も知らない場所に一人で放ってしまうなんて非常識です」
「……し、知らなかった、もしかしてエリーゼにわたしは酷いことをしたのか?」
「はっきり申しますがとても可哀想だとしか言えません」
わたしは跪いて項垂れた。
エリーゼを今度こそ不幸にはしないと誓ったばかりなのに。
「わたしは子育てを知らなすぎる……」
「再婚なさるのは如何ですか?そうすれば娘さんにどうしたらいいかわかるのでは?」
「絶対にしない。わたしが愛したのはオーリス、一人だ」
いくらエリーゼのためとはいえそれだけは出来ない。
「そうだ!お前の嫁さん、子育て終わってるだろう?我が家に家庭教師で来ないか?」
医者は、いや、幼馴染のグレイは口調を崩した。
「お前、何考えているんだ?」
「わたしではこの子が必要なものもどうするべきかもわからない。だからたまにでいいんだ。
この子にとって今何をするべきなのかアドバイスが欲しいんだ。この子は笑うことも泣くこともない。
何も求めない、生きて息をしているだけなんだ。頼む、助けてくれ」
わたしとコイツは幼馴染だ。
そして嫁さんのこともよく知っている。
だからこそ、適任だと思った。
「はぁー、嫁さんに聞いてみるよ、期待はしないでくれ」
「ありがとう、駄目ならほかに良い人を紹介してくれ、頼む」
「わかった、わかった。お前変わったな、少し前までは子どもに関わろうとせず逃げてばかりだったのに」
「今でも逃げたいよ、どう関わって良いのかわからないんだ、でもこの子をこのままにしてたら不幸になることはわかったんだ。だから今からでも幸せにしてやりたいんだ」
「だから時期宰相と言われているのに辞めるのか?」
「地位などあっても仕方がない。わたしは二人の子どもを守って領民たちを守れれば良いんだ。わたしはもう一度エリーゼの笑顔を見たい、取り戻したいんだ。そのためなら人に頭を下げることなんか厭わない、頼む、エリーゼを救いたいんだ」
「うちの嫁に自分で会いに行け。今のお前なら多分会ってくれるよ、前のお前のことは嫌ってたからな無理だったと思うけど」
「嫌われているのはわかっている。オーリスの死に際に仕事が入り看取ってやる事ができなかったからな」
「女にはわからないからな、男がどうしても手が離せなかった理由なんて。
あの時お前が隣国の宰相と話し合いを途中で辞めていたら我が国は戦争になっていたかもしれない。
お前が執り成してくれなかったら今頃わたし達はどうなっていたかわからない。あの時は本当に不運だった。
まさかお前が話し合いをしている時にオーリスが亡くなるとは思っていなかった。突然容態が悪化したからな」
「それでもわたしが悪い。言い訳は出来ない」
「お前は不器用だからな、オーリスもわかってくれていたと思うぞ。まぁだからこそ親友だった嫁はオーリスの代わりに怒っているんだけどな」
「怒られた方がマシだ。戒めになる」
「今日は仕事しながらでもいいからそばに居てやれ。仕事が終わらないと辞めれないんだろう?」
「ああ、あともう少し残っている。これさえ終われば屋敷にいられる時間が増える、そしたら少しでもエリーゼとスコットと一緒に過ごそうと思う。スコットも寮を出て屋敷から学園に通うようになるんだ」
「へぇ、勉強のためには時間が惜しいからと無理矢理寮に入れたのはお前だろ」
「そうだ、その所為でエリーゼは笑顔が消えた。スコットも冷めた子になってしまった。良かれと思ってした事が全て悪い方にいってしまった」
「どこまで取り戻せるかはお前次第だな、自業自得だ」
わたしはエリーゼの寝顔を見ながら急ぎ仕事を終わらせていく。
176
お気に入りに追加
4,844
あなたにおすすめの小説

愛されなかった公爵令嬢のやり直し
ましゅぺちーの
恋愛
オルレリアン王国の公爵令嬢セシリアは、誰からも愛されていなかった。
母は幼い頃に亡くなり、父である公爵には無視され、王宮の使用人達には憐れみの眼差しを向けられる。
婚約者であった王太子と結婚するが夫となった王太子には冷遇されていた。
そんなある日、セシリアは王太子が寵愛する愛妾を害したと疑われてしまう。
どうせ処刑されるならと、セシリアは王宮のバルコニーから身を投げる。
死ぬ寸前のセシリアは思う。
「一度でいいから誰かに愛されたかった。」と。
目が覚めた時、セシリアは12歳の頃に時間が巻き戻っていた。
セシリアは決意する。
「自分の幸せは自分でつかみ取る!」
幸せになるために奔走するセシリア。
だがそれと同時に父である公爵の、婚約者である王太子の、王太子の愛妾であった男爵令嬢の、驚くべき真実が次々と明らかになっていく。
小説家になろう様にも投稿しています。
タイトル変更しました!大幅改稿のため、一部非公開にしております。

虐げられた皇女は父の愛人とその娘に復讐する
ましゅぺちーの
恋愛
大陸一の大国ライドーン帝国の皇帝が崩御した。
その皇帝の子供である第一皇女シャーロットはこの時をずっと待っていた。
シャーロットの母親は今は亡き皇后陛下で皇帝とは政略結婚だった。
皇帝は皇后を蔑ろにし身分の低い女を愛妾として囲った。
やがてその愛妾には子供が生まれた。それが第二皇女プリシラである。
愛妾は皇帝の寵愛を笠に着てやりたい放題でプリシラも両親に甘やかされて我儘に育った。
今までは皇帝の寵愛があったからこそ好きにさせていたが、これからはそうもいかない。
シャーロットは愛妾とプリシラに対する復讐を実行に移す―
一部タイトルを変更しました。

断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません
天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。
私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。
処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。
魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。
【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。
るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」
色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。
……ほんとに屑だわ。
結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。
彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。
彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

忘却令嬢〜そう言われましても記憶にございません〜【完】
雪乃
恋愛
ほんの一瞬、躊躇ってしまった手。
誰よりも愛していた彼女なのに傷付けてしまった。
ずっと傷付けていると理解っていたのに、振り払ってしまった。
彼女は深い碧色に絶望を映しながら微笑んだ。
※読んでくださりありがとうございます。
ゆるふわ設定です。タグをころころ変えてます。何でも許せる方向け。

貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした
ましゅぺちーの
恋愛
王国の名門公爵家の出身であるエレンは幼い頃から婚約者候補である第一王子殿下に全てを捧げて生きてきた。
彼を数々の悪意から守り、彼の敵を排除した。それも全ては愛する彼のため。
しかし、王太子となった彼が最終的には選んだのはエレンではない平民の女だった。
悲しみに暮れたエレンだったが、家族や幼馴染の公爵令息に支えられて元気を取り戻していく。
その一方エレンを捨てた王太子は着々と破滅への道を進んでいた・・・

【完結】領主の妻になりました
青波鳩子
恋愛
「私が君を愛することは無い」
司祭しかいない小さな教会で、夫になったばかりのクライブにフォスティーヌはそう告げられた。
===============================================
オルティス王の側室を母に持つ第三王子クライブと、バーネット侯爵家フォスティーヌは婚約していた。
挙式を半年後に控えたある日、王宮にて事件が勃発した。
クライブの異母兄である王太子ジェイラスが、国王陛下とクライブの実母である側室を暗殺。
新たに王の座に就いたジェイラスは、異母弟である第二王子マーヴィンを公金横領の疑いで捕縛、第三王子クライブにオールブライト辺境領を治める沙汰を下した。
マーヴィンの婚約者だったブリジットは共犯の疑いがあったが確たる証拠が見つからない。
ブリジットが王都にいてはマーヴィンの子飼いと接触、画策の恐れから、ジェイラスはクライブにオールブライト領でブリジットの隔離監視を命じる。
捜査中に大怪我を負い、生涯歩けなくなったブリジットをクライブは密かに想っていた。
長兄からの「ブリジットの隔離監視」を都合よく解釈したクライブは、オールブライト辺境伯の館のうち豪華な別邸でブリジットを囲った。
新王である長兄の命令に逆らえずフォスティーヌと結婚したクライブは、本邸にフォスティーヌを置き、自分はブリジットと別邸で暮らした。
フォスティーヌに「別邸には近づくことを許可しない」と告げて。
フォスティーヌは「お飾りの領主の妻」としてオールブライトで生きていく。
ブリジットの大きな嘘をクライブが知り、そこからクライブとフォスティーヌの関係性が変わり始める。
========================================
*荒唐無稽の世界観の中、ふんわりと書いていますのでふんわりとお読みください
*約10万字で最終話を含めて全29話です
*他のサイトでも公開します
*10月16日より、1日2話ずつ、7時と19時にアップします
*誤字、脱字、衍字、誤用、素早く脳内変換してお読みいただけるとありがたいです

筆頭婚約者候補は「一抜け」を叫んでさっさと逃げ出した
基本二度寝
恋愛
王太子には婚約者候補が二十名ほどいた。
その中でも筆頭にいたのは、顔よし頭良し、すべての条件を持っていた公爵家の令嬢。
王太子を立てることも忘れない彼女に、ひとつだけ不満があった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる