【完結】愛されない王妃

たろ

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23話

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 俺がカリクシードを連れて行くのはジュリエットがずっと守り続けた平民にとって生き残るための最後の砦。

 平民達にとって一縷の望みに縋る最後の場所だ。
 大切な家族の命を救いたいと願うのは貴族だけではない。

 俺もまたあの場所で、価値観を変えることができた。それでも国のトップになれば切り捨てなければならないこともあるし、冷酷な判断をするしかないこともある。

 それでも、あの場所は、俺にとっても大切な場所になった。

 そして、皇帝となった今でもあの場所を支援している。帝国でも、そんな場所を作った。

 貴族だけでは国は回らない。国民を守らなければ頂点に立つ者として意味がない。

 まぁ、マリーナとクリシアにはしっかり罪を償ってもらったが。

 そして今からカリクシードにも罪は償ってもらう。だがその前にジュリエットのことを誤解したまま死なれては困る。いやそれは俺にとって腹立たしいし、納得できない。

 馬車を降りて悪路を歩く。

 カリクシードは綺麗に舗装された道しか歩いたことがないのだろう。

 安い靴に違和感があるのか何度も靴を確かめている。

「おい、お前はまともに歩くこともできないのか?」

 俺がそう言うと「この靴はまるで裸足の気分になる。靴を履いていないみたいで気持ち悪いし、足に合っていないみたいで痛いんだ」

「そりゃそうだろう?平民の靴は金持ちの人のように合わせて作られているわけではない。決まったサイズの型があって作られているんだ。履く人間が靴を選ぶのではなく靴に選ばれるんだ」

「靴に選ばれる?」

「その服も同じさ。自分に合うサイズを探して着るしかないんだ」

「そんなこと考えたこともなかった」

「まぁ俺たちは自分に合わせてなんでも作るからな」

 カリクシードは黙って考え込みながら歩き続けた。



 そして治療院に着いた。

 以前よりは寄付金で建物も中も改善されている。
 あのなんとも言えない臭いもかなり良くなっていた。
 流石に俺もあの臭いは覚悟してきたが人手も増えて、手が回るようになったからなのか衛生面もかなり良くなったようだ。

「カリクシード、今から俺たちはここで手伝いをする。お前も手伝いをするんだ、わかったな」

「はっ?俺が?こんな汚いところで?」

「こんな汚いか……ここもお前が国王の時に守らなければいけなかったフォード王国の一部なんだぞ?」

「こんなところまで手は回らない。いくらでも大きな病院ならあるだろう?」
 カリクシードは馬鹿にしたように鼻で笑った。

「お前にはここでひと月ほど働いてもらう。ここで働く者達と同じ食事、そして寝るのも数人で一部屋を使っているからカリクシードもみんなと同じ部屋で共に過ごしてもらう」

「俺が平民達と?こんな薄汚い格好で、しかも平民と一緒の暮らしをするなんていい笑い者だ。ベルナンド皇帝、あなたは俺が笑い者にされるのを楽しみにしているのか」?

「どう受け取られようとカリクシードにはここで働いてもらう。24時間監視はついているので逃げることはできない」

「くそっ!ふざけるな!」

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