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20話 ベルナンド編
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カリクシードの愛妾でしかないクリシアは確かに可愛らしい。ジュリエットは美しいと言われることはあるが可愛らしいとは言われることはない。
カリクシードはあの甘えるよな声で話すクリシアを好んでいるらしい。
あれはただあざといだけで、頭の中は空っぽ、いや、自分の欲求に関しては貪欲で頭の中も心の中も真っ黒でギトギトしていそうだ。
と言ってもほぼ部下からの報告によるもので、俺自身は捕えるまで会ったことがなかったが、捕まった途端、カリクシードへの愛はどこへ消えたのか、俺に媚を売り始めた。
「ベルナンド様ぁ、わたしは何も知らないんです。わたしはカリクシード様の恋人だっただけで、妃でもないし、この国の政務に関わったことなんて一度もありません。そんなわたしを捕まえて何を罪に問うと言うのですか?」
騎士達に両手を押さえられて「痛い、少しだけ優しくしてください」と甘えた声で騎士達を誘惑した女。
馬鹿な騎士達はすぐに手の力を緩めた。
調子に乗った女は牢に入れられても色々と要求をしてきた。
俺は叶えられる要求は全て聞いてやるようにと伝えた。
この女がどこまでやるのか見てみたかった。
牢の中には簡素なベッドとトイレがついているだけ。王族専用の牢にはもちろん入れていない。平民専用の牢に入れた。
カリクシードとマリーナ王女は、王族としての罰を受けさせる。しかしこの女は一応平民。ただ、ジュリエットよりも王族のように振る舞った女。
だから牢に入れてどこまで王族のように振る舞うかみさせてもらう。
「湯浴みをしたいわ」
「こんな食事食べられない」
「ベッドがとても硬くて体が痛いの。もう少しいいベッドはないのかしら」
「着替えが欲しいわ」
「せめて美味しいお茶くらい飲みたい」
初めはそんな欲求だった。
全て叶えられると今度は。
「寂しいの。話し相手になって」
「ねえ、少しでいいから抱きしめて」
色仕掛けで騎士達を誘惑し始めた。
うちの騎士団でも女好きと言われる男達に、あの女の言う通りにしてやれと言ったら喜んでクリシアを抱き始めた。
自分はモテていると勘違いしている女。
本当は男達から遊ばれているのに。
毎日のように騎士達を誘う女。
「あの女はただの阿婆擦れか?」
側近にそう聞くと、側近は報告書を読みながら呆れた声を出した。
「報告書によればクリシアという女は夜はカリクシードと過ごし、昼間の暇な時間は騎士や侍従、文官など気に入った男とベッドで過ごすことが多かったそうです」
「あの女は処刑はしない。帝国のマヤ鉱山に悪質な犯罪を犯して懲役刑で働いてる奴らがいたな?」
「マヤ鉱山は荒くれ者しかおりません。あそこに看守として行きたがる者は少ないくらいです。あそこに看守に行く者も何か問題を犯した奴らです。あそこにクリシアを送りますか?」
「飯炊き女が男の中に一人くらいいてもいいだろう?」
「了解致しました」
「ああ、服は与えていいが、下着はいらない。ワンピースを数枚だけ持たせてマヤ鉱山へ送ってやれ」
「確かに、服なんてあそこでは必要ないでしょうね」
「男好きの阿婆擦れだ。俺にしては一番優しい罰だと思わないか?」
「処刑された方が幸せだと俺は思います」
「俺の大切なジュリエットを人として扱わなかったあの女を人として扱ってやったんだ。俺はかなり優しいと思うぞ」
俺はクリシアが牢から出て馬車で送られる姿を見送った。
それなりに質素とはいえ綺麗なワンピースに着替えさせられたクリシアはどうしていいのか分からず、牢から出て馬車に乗るまで落ち着きなくキョロキョロしながら騎士に連れられ歩いていた。
「ねえ、綺麗な服はいいんだけど、下着が用意されていなかったの。男ばかりの騎士だからって女物の下着くらい用意できるわよね?」
そばにいる騎士にそう尋ねたらしい。
騎士は「俺は馬車に乗せるように言われただけなので分からない」と答えたらしい。
馬車に乗る時、離れた場所にいた俺に目を向けたクリシアは、騎士の腕を振りほどいて嬉しそうに走ってきた。
「ベルナンド様ぁ!わたしを助けてくださってありがとうございます!わたしは何にも悪いことをしていないとわかってくださったんですね」
この女は馬鹿か?
そう思いながらも、まぁ、牢の中で好き勝手させたのは俺の指示だし、調子に乗ったのも仕方がない。そう、平民だから。
この牢の中で最後に寝た男は、女遊びをしすぎて性病持ちだと知らないこの女。
いずれマヤ鉱山の男達全てと共に性病で死んでいくだろう。
ついでにその男もマヤ鉱山で看守をすることが決まっているので、一緒に馬車に乗せた。
馬車の中でさらに性病が酷くなるだろう。
それから一年後にはマヤ鉱山から人はいなくなった。
もうあそこから採掘される物もなくなってきていたので、閉山する予定だった。
全てみんな処分できた。
罪を犯しても反省しなかった奴らだ。
被害者もこれで少しは安心して暮らせるだろう。
◆ ◆ ◆
ちょっと怖すぎるベルナンド。
だけどジュリエットの前だけはただただ優しい男なんです。それも怖いけど。
カリクシードはあの甘えるよな声で話すクリシアを好んでいるらしい。
あれはただあざといだけで、頭の中は空っぽ、いや、自分の欲求に関しては貪欲で頭の中も心の中も真っ黒でギトギトしていそうだ。
と言ってもほぼ部下からの報告によるもので、俺自身は捕えるまで会ったことがなかったが、捕まった途端、カリクシードへの愛はどこへ消えたのか、俺に媚を売り始めた。
「ベルナンド様ぁ、わたしは何も知らないんです。わたしはカリクシード様の恋人だっただけで、妃でもないし、この国の政務に関わったことなんて一度もありません。そんなわたしを捕まえて何を罪に問うと言うのですか?」
騎士達に両手を押さえられて「痛い、少しだけ優しくしてください」と甘えた声で騎士達を誘惑した女。
馬鹿な騎士達はすぐに手の力を緩めた。
調子に乗った女は牢に入れられても色々と要求をしてきた。
俺は叶えられる要求は全て聞いてやるようにと伝えた。
この女がどこまでやるのか見てみたかった。
牢の中には簡素なベッドとトイレがついているだけ。王族専用の牢にはもちろん入れていない。平民専用の牢に入れた。
カリクシードとマリーナ王女は、王族としての罰を受けさせる。しかしこの女は一応平民。ただ、ジュリエットよりも王族のように振る舞った女。
だから牢に入れてどこまで王族のように振る舞うかみさせてもらう。
「湯浴みをしたいわ」
「こんな食事食べられない」
「ベッドがとても硬くて体が痛いの。もう少しいいベッドはないのかしら」
「着替えが欲しいわ」
「せめて美味しいお茶くらい飲みたい」
初めはそんな欲求だった。
全て叶えられると今度は。
「寂しいの。話し相手になって」
「ねえ、少しでいいから抱きしめて」
色仕掛けで騎士達を誘惑し始めた。
うちの騎士団でも女好きと言われる男達に、あの女の言う通りにしてやれと言ったら喜んでクリシアを抱き始めた。
自分はモテていると勘違いしている女。
本当は男達から遊ばれているのに。
毎日のように騎士達を誘う女。
「あの女はただの阿婆擦れか?」
側近にそう聞くと、側近は報告書を読みながら呆れた声を出した。
「報告書によればクリシアという女は夜はカリクシードと過ごし、昼間の暇な時間は騎士や侍従、文官など気に入った男とベッドで過ごすことが多かったそうです」
「あの女は処刑はしない。帝国のマヤ鉱山に悪質な犯罪を犯して懲役刑で働いてる奴らがいたな?」
「マヤ鉱山は荒くれ者しかおりません。あそこに看守として行きたがる者は少ないくらいです。あそこに看守に行く者も何か問題を犯した奴らです。あそこにクリシアを送りますか?」
「飯炊き女が男の中に一人くらいいてもいいだろう?」
「了解致しました」
「ああ、服は与えていいが、下着はいらない。ワンピースを数枚だけ持たせてマヤ鉱山へ送ってやれ」
「確かに、服なんてあそこでは必要ないでしょうね」
「男好きの阿婆擦れだ。俺にしては一番優しい罰だと思わないか?」
「処刑された方が幸せだと俺は思います」
「俺の大切なジュリエットを人として扱わなかったあの女を人として扱ってやったんだ。俺はかなり優しいと思うぞ」
俺はクリシアが牢から出て馬車で送られる姿を見送った。
それなりに質素とはいえ綺麗なワンピースに着替えさせられたクリシアはどうしていいのか分からず、牢から出て馬車に乗るまで落ち着きなくキョロキョロしながら騎士に連れられ歩いていた。
「ねえ、綺麗な服はいいんだけど、下着が用意されていなかったの。男ばかりの騎士だからって女物の下着くらい用意できるわよね?」
そばにいる騎士にそう尋ねたらしい。
騎士は「俺は馬車に乗せるように言われただけなので分からない」と答えたらしい。
馬車に乗る時、離れた場所にいた俺に目を向けたクリシアは、騎士の腕を振りほどいて嬉しそうに走ってきた。
「ベルナンド様ぁ!わたしを助けてくださってありがとうございます!わたしは何にも悪いことをしていないとわかってくださったんですね」
この女は馬鹿か?
そう思いながらも、まぁ、牢の中で好き勝手させたのは俺の指示だし、調子に乗ったのも仕方がない。そう、平民だから。
この牢の中で最後に寝た男は、女遊びをしすぎて性病持ちだと知らないこの女。
いずれマヤ鉱山の男達全てと共に性病で死んでいくだろう。
ついでにその男もマヤ鉱山で看守をすることが決まっているので、一緒に馬車に乗せた。
馬車の中でさらに性病が酷くなるだろう。
それから一年後にはマヤ鉱山から人はいなくなった。
もうあそこから採掘される物もなくなってきていたので、閉山する予定だった。
全てみんな処分できた。
罪を犯しても反省しなかった奴らだ。
被害者もこれで少しは安心して暮らせるだろう。
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ちょっと怖すぎるベルナンド。
だけどジュリエットの前だけはただただ優しい男なんです。それも怖いけど。
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