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18話 カリクシード編
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ジュリエットのことは側近達から報告を受けていた。
王妃としてこの国に戻ってきたのに真面目に仕事をしようとしない。
罰として食事も減らすように伝えた。
なのにそれすら食べようとしないらしい。
生意気すぎる。弱音すら吐かない。
一度として俺に頭を下げて助けてほしいとすら言わない。
父上に彼女ならこの国のために働いてくれる優秀な令嬢だと言ったが、どこがだ?
クリシアは毎日俺のために仕事をこなしてくれる。あれだけの書類を毎日どれだけの時間をかけてしてくれると思っているんだ。マリーナだって嫌な顔もせず「国のためですから」と身を粉にして働いているのにあの女は何もしようとしない。
食事だって罰として減らしたとは言え王宮の料理人が作るものだ。食材だって高級なものしか使っていないのに食べないとは、ほんと呆れてものが言えない。
王妃としての予算も足りないと追加してくる始末だ。
父上には悪いがどこが優秀でこの国の王妃として役立つのかわからない。
それに比べればクリシアは慣れない政務を必死でこなし、夜は俺の部屋へと甲斐甲斐しく通って俺を癒してくれる。
執務室からマリーナとクリシアが楽しそうにお茶をする姿にすら癒された。
そう、今思えば、あんなにたくさんの執務をこなすためにはかなりの時間を取られる。なのにどうやってあんなに毎日お茶をして過ごす時間があったのだろう。
俺は朝から晩まで必死で政務をこなしていた。
だがあの二人は昼間はお茶会、夜は二人で毎晩豪華なディナー、さらにパーティーの出席や街への買い物と忙しそうに過ごしていた。
なのに毎日これだけの仕事をこなしたと俺の前に終わった書類や決済書、報告書などを持ってきては、ジュリエットは今日も遊んで過ごしていたと言っていた。
俺はジュリエットへの不信感と苛立ちからそのまま二人の、そして側近達の言葉を鵜呑みにしていた。
操り人形になっていたのは俺?
地下牢に入れられ俺はただじっと考え続けた。
ベルナンド皇帝が俺を捕らえた時言った言葉。
「お前には目も耳もないのか?」
「何を言ってる?」
あまりにも馬鹿げた質問に捕まってしまったのに、鼻で笑った。
「お前は今まで何を見てきた?何を聞いてきた?真実を見ることもできない人間がこの国の王なんて、国民が可哀想だ」
「は?俺は国王として精一杯頑張ってきた。それなのに帝国はこの国を攻めた。悪はお前達だろう?」
「他国に麻薬を売りつけるフォード王国、重税に苦しみ難民として他国へ渡るフォード国民、そして王族は贅沢三昧、王妃にはまともに食事も与えず休憩すら与えず働かせて、蔑ろにする国王。王妃がどれだけこの国の民のために働いているのか知っているのか?」
「ジュリエットは穀潰しだ。働かず贅沢三昧、横柄なのはジュリエット。辛い思いをしているのは俺が愛するクリシアと可愛い妹のマリーナだ」
「やはりお前の目は節穴だ。そして愚かで馬鹿な男だ。ジュリエットの愛を蔑ろにして踏み躙って、この国は終わったんだ」
「ジュリエットの愛?あの女は無表情で泣き言も言わない。それに一年間も愛する男がいる帝国で暮らしたんだ。感謝されることはあっても恨み言を言われる覚えはない」
「ハワー帝国で一年間、ジュリエットはフォード王国のために手紙を書き続けた。少しでも国を良くしようとジュリエットの気持ちに賛同したもの達がこっそりとジュリエットに政務の相談をしていたんだ。
ジュリエットはハワー帝国での政務の仕方や農業、商業の仕方を聞いて回り、少しでも役立てようと毎日勉強をしながら過ごしていた。
遊んで暮らすことも贅沢することもなかった。
フォード王国の民が飢えに苦しんでいるのに自分は贅沢はできないと言って使用人達と同じ食事をしていた。服だってドレスは必要ないと質素なブラウスと動きやすいスカートだった。
化粧もせず髪は一つに結んで、侯爵令嬢だった頃の美しさも王妃としての誇りも捨て、みんなと同じ目線で一年間、フォード王国のためだけに過ごした」
「は?そんな嘘誰が信じる?ジュリエットはベルナンド皇帝と恋仲だとみんな知ってるんだ。
いくら恋人のためとは言え良くそこまでジュリエットを美化できるな?」
「俺もジュリエットを恋人として迎えたかったよ。お前みたいなクソにジュリエットは勿体無い。ジュリエットがお前を選ばなければ俺がもらうつもりだった」
「クソで悪かったな?ジュリエットは評判では優秀な令嬢と言われたからな。しかし実際は俺の愛するクリシアとマリーナを見下す酷い女だ、あんたも知らずに惚れて残念だったな」
「いや、お前が残念でよかったよ。もうジュリエットもいい加減目を覚ますだろう。こんなクソ男を愛し続けていたと分かったら綺麗さっぱり諦めもつくはずだ」
「ジュリエットが俺を愛した?そんなことはあり得ない。初めて顔合わせしたのは結婚式だ、それから数ヶ月でハワー帝国へ向かったんだ」
「ふうん、ジュリエットの顔を覚えていないんだな?」
ベルナンド皇帝のその言葉が今も引っかかる。
俺はジュリエットに会ったことがあるのか?
だから、クリシアを愛しているのに、気になっていたのか?
王妃としてこの国に戻ってきたのに真面目に仕事をしようとしない。
罰として食事も減らすように伝えた。
なのにそれすら食べようとしないらしい。
生意気すぎる。弱音すら吐かない。
一度として俺に頭を下げて助けてほしいとすら言わない。
父上に彼女ならこの国のために働いてくれる優秀な令嬢だと言ったが、どこがだ?
クリシアは毎日俺のために仕事をこなしてくれる。あれだけの書類を毎日どれだけの時間をかけてしてくれると思っているんだ。マリーナだって嫌な顔もせず「国のためですから」と身を粉にして働いているのにあの女は何もしようとしない。
食事だって罰として減らしたとは言え王宮の料理人が作るものだ。食材だって高級なものしか使っていないのに食べないとは、ほんと呆れてものが言えない。
王妃としての予算も足りないと追加してくる始末だ。
父上には悪いがどこが優秀でこの国の王妃として役立つのかわからない。
それに比べればクリシアは慣れない政務を必死でこなし、夜は俺の部屋へと甲斐甲斐しく通って俺を癒してくれる。
執務室からマリーナとクリシアが楽しそうにお茶をする姿にすら癒された。
そう、今思えば、あんなにたくさんの執務をこなすためにはかなりの時間を取られる。なのにどうやってあんなに毎日お茶をして過ごす時間があったのだろう。
俺は朝から晩まで必死で政務をこなしていた。
だがあの二人は昼間はお茶会、夜は二人で毎晩豪華なディナー、さらにパーティーの出席や街への買い物と忙しそうに過ごしていた。
なのに毎日これだけの仕事をこなしたと俺の前に終わった書類や決済書、報告書などを持ってきては、ジュリエットは今日も遊んで過ごしていたと言っていた。
俺はジュリエットへの不信感と苛立ちからそのまま二人の、そして側近達の言葉を鵜呑みにしていた。
操り人形になっていたのは俺?
地下牢に入れられ俺はただじっと考え続けた。
ベルナンド皇帝が俺を捕らえた時言った言葉。
「お前には目も耳もないのか?」
「何を言ってる?」
あまりにも馬鹿げた質問に捕まってしまったのに、鼻で笑った。
「お前は今まで何を見てきた?何を聞いてきた?真実を見ることもできない人間がこの国の王なんて、国民が可哀想だ」
「は?俺は国王として精一杯頑張ってきた。それなのに帝国はこの国を攻めた。悪はお前達だろう?」
「他国に麻薬を売りつけるフォード王国、重税に苦しみ難民として他国へ渡るフォード国民、そして王族は贅沢三昧、王妃にはまともに食事も与えず休憩すら与えず働かせて、蔑ろにする国王。王妃がどれだけこの国の民のために働いているのか知っているのか?」
「ジュリエットは穀潰しだ。働かず贅沢三昧、横柄なのはジュリエット。辛い思いをしているのは俺が愛するクリシアと可愛い妹のマリーナだ」
「やはりお前の目は節穴だ。そして愚かで馬鹿な男だ。ジュリエットの愛を蔑ろにして踏み躙って、この国は終わったんだ」
「ジュリエットの愛?あの女は無表情で泣き言も言わない。それに一年間も愛する男がいる帝国で暮らしたんだ。感謝されることはあっても恨み言を言われる覚えはない」
「ハワー帝国で一年間、ジュリエットはフォード王国のために手紙を書き続けた。少しでも国を良くしようとジュリエットの気持ちに賛同したもの達がこっそりとジュリエットに政務の相談をしていたんだ。
ジュリエットはハワー帝国での政務の仕方や農業、商業の仕方を聞いて回り、少しでも役立てようと毎日勉強をしながら過ごしていた。
遊んで暮らすことも贅沢することもなかった。
フォード王国の民が飢えに苦しんでいるのに自分は贅沢はできないと言って使用人達と同じ食事をしていた。服だってドレスは必要ないと質素なブラウスと動きやすいスカートだった。
化粧もせず髪は一つに結んで、侯爵令嬢だった頃の美しさも王妃としての誇りも捨て、みんなと同じ目線で一年間、フォード王国のためだけに過ごした」
「は?そんな嘘誰が信じる?ジュリエットはベルナンド皇帝と恋仲だとみんな知ってるんだ。
いくら恋人のためとは言え良くそこまでジュリエットを美化できるな?」
「俺もジュリエットを恋人として迎えたかったよ。お前みたいなクソにジュリエットは勿体無い。ジュリエットがお前を選ばなければ俺がもらうつもりだった」
「クソで悪かったな?ジュリエットは評判では優秀な令嬢と言われたからな。しかし実際は俺の愛するクリシアとマリーナを見下す酷い女だ、あんたも知らずに惚れて残念だったな」
「いや、お前が残念でよかったよ。もうジュリエットもいい加減目を覚ますだろう。こんなクソ男を愛し続けていたと分かったら綺麗さっぱり諦めもつくはずだ」
「ジュリエットが俺を愛した?そんなことはあり得ない。初めて顔合わせしたのは結婚式だ、それから数ヶ月でハワー帝国へ向かったんだ」
「ふうん、ジュリエットの顔を覚えていないんだな?」
ベルナンド皇帝のその言葉が今も引っかかる。
俺はジュリエットに会ったことがあるのか?
だから、クリシアを愛しているのに、気になっていたのか?
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