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16話
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ジュリエットは窶れて青白い顔でベッドに横たわっていた。まだ意識は戻っていない。
侯爵家はじきにお家取り潰しになるだろう。
ジュリエットの両親は、それを覚悟して迎えにきた。
ただ親戚達を巻き込むことをよしとせず親戚たちには自らの財産を譲渡した。
今もついてきている使用人や騎士達は家族を連れて隣の国に移り住む覚悟をした者達だけだった。
その中には侯爵家の親類縁者も多数加わっていた。
「ジュリエット様の遺体として用意していたのですが違う遺体だと知られてしまったようです」
「ならばジュリエットを逃した者達は捕まったのか?」
ベルナンドがはなった従者が戻ってきてフォード王国の現状を伝えた。
カリクシードは王妃であるジュリエットを逃してしまったドワード大臣や騎士達を勾留し、牢に入れた。
「あなた、どうしましょう?」
侯爵夫人は真っ青な顔をして震えていた。
「彼らは娘を助けるために覚悟は決まっていたはずだ」
「ですが……」
二人は苦渋の中、どうすることもできずに口籠るしかなかった。
ジュリエットを助けた二人の騎士は悔しさに俯きよく見れば握りしめている手が震えていた。
ベルナンドはジュリエットのそばを離れようとはしなかった。
「ジュリ、お前はあの国を潰すなと思ってるのか?だがあんな腐った国、一度ぶっ壊した方が民のためになると思わないか?」
ジュリエットが返事をすることはない。
いつ死んでもおかしくない状態の中で今は医者が来るのをひたすら待つしかない。
「なぁジュリ、お前が初恋に拘ったのは、カリクシードをまだ愛してるからか?それともただの執着なのか?あんな男になんで命なんか賭ける?クソだろ?」
髪の毛を掻きむしるベルナンド。
「くっそ!あーー、俺は皇帝だ。ジュリ、俺は皇帝として判断させてもらう。フォード王国の王のクビをもらう。これはお前のためだけではない。あの国をこのままにしておけば他国に迷惑をかける」
フォード王国は財政が圧迫してかなりの税金を民に強いていた。
そのため、隣国に民が逃げてきて、隣国もこれ以上受け入れられないと声を上げ始めていた。
治安も悪くなるフォード王国、さらにフォード王国内で栽培された麻薬を他国の貴族に高い値段で売り付けそれが出回ろうとしていた。
まだ始まったばかりの今なら取り締まることもできる。
皇帝として何ヶ国もの国を取り仕切るベルナンドは、ジュリエットの想いを理解してもその気持ちをのむことはできない。
ジュリエットが執務でうまく采配して効率化を目指したが、国の中で悪さをする貴族達を抑えることはできなかった。
フォード王国の貴族達も重税に苦しみ悪いことだとわかっていても麻薬などの犯罪に手を出し始めていた。
もうカリクシードは国王として国を治めることは出来ないと、他国の王達は判断し始めていた。
そして……
「やるなら早めに動くか」
その言葉を聞いた帝国の騎士団長は静かにベルナンドに頭を下げた。
次の日にはフォード王国はハワー帝国の騎士団に攻め入れられた。
ベルナンドはジュリエットに会いに来る時、もう騎士団をその近くまで連れてきて待機させていた。
帝国の騎士団は常に自国と属国を守るためにいつでも出兵できるように準備されている。
世界屈指の騎士団が、戦力の乏しいフォード王国を落とすのは簡単だった。
そしてベルナンドはフォード王国へと向かった。
まだ眠り続けるジュリエットに「すまない」と言葉を告げて。
侯爵家はじきにお家取り潰しになるだろう。
ジュリエットの両親は、それを覚悟して迎えにきた。
ただ親戚達を巻き込むことをよしとせず親戚たちには自らの財産を譲渡した。
今もついてきている使用人や騎士達は家族を連れて隣の国に移り住む覚悟をした者達だけだった。
その中には侯爵家の親類縁者も多数加わっていた。
「ジュリエット様の遺体として用意していたのですが違う遺体だと知られてしまったようです」
「ならばジュリエットを逃した者達は捕まったのか?」
ベルナンドがはなった従者が戻ってきてフォード王国の現状を伝えた。
カリクシードは王妃であるジュリエットを逃してしまったドワード大臣や騎士達を勾留し、牢に入れた。
「あなた、どうしましょう?」
侯爵夫人は真っ青な顔をして震えていた。
「彼らは娘を助けるために覚悟は決まっていたはずだ」
「ですが……」
二人は苦渋の中、どうすることもできずに口籠るしかなかった。
ジュリエットを助けた二人の騎士は悔しさに俯きよく見れば握りしめている手が震えていた。
ベルナンドはジュリエットのそばを離れようとはしなかった。
「ジュリ、お前はあの国を潰すなと思ってるのか?だがあんな腐った国、一度ぶっ壊した方が民のためになると思わないか?」
ジュリエットが返事をすることはない。
いつ死んでもおかしくない状態の中で今は医者が来るのをひたすら待つしかない。
「なぁジュリ、お前が初恋に拘ったのは、カリクシードをまだ愛してるからか?それともただの執着なのか?あんな男になんで命なんか賭ける?クソだろ?」
髪の毛を掻きむしるベルナンド。
「くっそ!あーー、俺は皇帝だ。ジュリ、俺は皇帝として判断させてもらう。フォード王国の王のクビをもらう。これはお前のためだけではない。あの国をこのままにしておけば他国に迷惑をかける」
フォード王国は財政が圧迫してかなりの税金を民に強いていた。
そのため、隣国に民が逃げてきて、隣国もこれ以上受け入れられないと声を上げ始めていた。
治安も悪くなるフォード王国、さらにフォード王国内で栽培された麻薬を他国の貴族に高い値段で売り付けそれが出回ろうとしていた。
まだ始まったばかりの今なら取り締まることもできる。
皇帝として何ヶ国もの国を取り仕切るベルナンドは、ジュリエットの想いを理解してもその気持ちをのむことはできない。
ジュリエットが執務でうまく采配して効率化を目指したが、国の中で悪さをする貴族達を抑えることはできなかった。
フォード王国の貴族達も重税に苦しみ悪いことだとわかっていても麻薬などの犯罪に手を出し始めていた。
もうカリクシードは国王として国を治めることは出来ないと、他国の王達は判断し始めていた。
そして……
「やるなら早めに動くか」
その言葉を聞いた帝国の騎士団長は静かにベルナンドに頭を下げた。
次の日にはフォード王国はハワー帝国の騎士団に攻め入れられた。
ベルナンドはジュリエットに会いに来る時、もう騎士団をその近くまで連れてきて待機させていた。
帝国の騎士団は常に自国と属国を守るためにいつでも出兵できるように準備されている。
世界屈指の騎士団が、戦力の乏しいフォード王国を落とすのは簡単だった。
そしてベルナンドはフォード王国へと向かった。
まだ眠り続けるジュリエットに「すまない」と言葉を告げて。
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