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15話
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ジュリエットが歩けなくなり男性騎士がジュリエットを背負いなんとか地下の隠し通路を抜けた。
地下通路から出るとそこは王城の周囲にある森へと出た。
「ジュリエット様、あと少しです」
血が止まらないジュリエットの顔が真っ赤になり、騎士の服も血だらけになっていた。
このままでは失血死してしまう。
森の中を駆け抜け待ち合わせの場所へとなんとか辿り着いた男性騎士はかなり息が荒かった。
「大丈夫ですか?」
声をかけるもジュリエットから返事はなかった。
「ジュリエット様?……王妃?」
女性騎士が男性騎士の背中に背負われたジュリエットに何度も声をかける。
息はしているようだが、危険な状態だとわかった。
「ジュリエット!」
「ジュリエット、どうしたの?」
数人の人影の中にはジュリエットの両親もいた。
侯爵家の騎士達がジュリエットの脱出のために森の外れで迎えのため待ち構えていた。
急いでジュリエットを侯爵家の騎士が受け取り、馬車へと運んだ。
衰弱していることは知っていた。だから馬車には医者も待機ささていた。
この場から離れなければ追っ手が来るかもしれない。
馬車が動いている状態で処置を始めた。
出血を止めるための薬は幼い頃病気をしたジュリエットのために常に用意はしてあった。
なんとか揺れる馬車の中で今できる治療を施した。
馬車は侯爵家からもハワー帝国からも逆方向へと向かった。
追ってがもし来た場合のために隣の国に用意してあった小さな屋敷へと向かった。
その間もジュリエットは意識を取り戻さなかった。
母親である侯爵夫人が馬車の中で看病をし続けた。
娘からの願いで助けに行くのは最後の最後、ギリギリまで待って欲しいと言われた。
そんな願いなど聞かずに助けに行こうと何度も思った。でも娘からの手紙で踏みとどまった。
『私の最後の願いをどうか聞いてください。我儘な娘で申し訳ございません』
助けるな、と。
それは、娘自身の願いであり、侯爵家がどんな目に遭わされるかを考えてのことでもあった。
もし犯罪者である王妃を助ければ、お家取り潰しで親族全てが処刑される可能性がある。
何もしていないジュリエットをマリーナやクリシア、そしてカリクシードは追い込んでいった。
特にマリーナは愛するカリクシードの妃の座についたジュリエットが惨めに過ごす姿を見てほくそ笑んだ。
隣の国の用意されていた小さな屋敷にジュリエットはすぐに運び込まれた。
そこにはベルナンドが待っていた。
「ジュリエット……」
「まだ意識が戻りません」
ジュリエットの父であるベリーナ侯爵が首を横に振った。
「空の薬の瓶が届けられた。ジュリエットは再発していたんだな」
「私たちも知りませんでした」
母親が疲れた顔で言った。
「今、例の医者をこちらに呼び寄せている。あの医者なら助けてくれるかもしれない」
「そのお医者様が出してくださった薬でも効かないのですよね?」
「まだ診察はしていないんだ。あの医者なら助けてくれるはずだ。何かあった時のためいつでも連絡が取れる状態にしていたんだ。絶対にジュリエットを助ける」
「ジュリエットばどうやって薬を手に入れていたのでしょう?」
侯爵夫人が疑問を投げかけた。
この医者に出会える確率はかなり低いはず。
「あの例の医者は俺やジュリエットを治療した後もたまに会いに来てくれていたんだ。そして必ずその時にいざという時にと薬を渡されていた」
「そうだったんですか……」
「だがジュリエットのこの体の細さは異常だ。まだハワー帝国から帰国して半年しか経っていないだろう?どう言うことなんだ?俺が集めた情報ではまだ最近のことは報告されていない。ただジュリエットがあの国で不遇な日々を送っていることは聞いていた。
いつでも助け出せるように用意はしていたんだが、遅すぎたのか?
ジュリエットの言葉なんか聞くんじゃなかった、くそッ!」
ベルナンドは何度もなくジュリエットに密偵を使い手紙を送った。
『助けはいらないのか』
『幸せなのか』
『さっさと離縁しろ』
その度に『心配はいらない』としか返事は来なかった。
地下通路から出るとそこは王城の周囲にある森へと出た。
「ジュリエット様、あと少しです」
血が止まらないジュリエットの顔が真っ赤になり、騎士の服も血だらけになっていた。
このままでは失血死してしまう。
森の中を駆け抜け待ち合わせの場所へとなんとか辿り着いた男性騎士はかなり息が荒かった。
「大丈夫ですか?」
声をかけるもジュリエットから返事はなかった。
「ジュリエット様?……王妃?」
女性騎士が男性騎士の背中に背負われたジュリエットに何度も声をかける。
息はしているようだが、危険な状態だとわかった。
「ジュリエット!」
「ジュリエット、どうしたの?」
数人の人影の中にはジュリエットの両親もいた。
侯爵家の騎士達がジュリエットの脱出のために森の外れで迎えのため待ち構えていた。
急いでジュリエットを侯爵家の騎士が受け取り、馬車へと運んだ。
衰弱していることは知っていた。だから馬車には医者も待機ささていた。
この場から離れなければ追っ手が来るかもしれない。
馬車が動いている状態で処置を始めた。
出血を止めるための薬は幼い頃病気をしたジュリエットのために常に用意はしてあった。
なんとか揺れる馬車の中で今できる治療を施した。
馬車は侯爵家からもハワー帝国からも逆方向へと向かった。
追ってがもし来た場合のために隣の国に用意してあった小さな屋敷へと向かった。
その間もジュリエットは意識を取り戻さなかった。
母親である侯爵夫人が馬車の中で看病をし続けた。
娘からの願いで助けに行くのは最後の最後、ギリギリまで待って欲しいと言われた。
そんな願いなど聞かずに助けに行こうと何度も思った。でも娘からの手紙で踏みとどまった。
『私の最後の願いをどうか聞いてください。我儘な娘で申し訳ございません』
助けるな、と。
それは、娘自身の願いであり、侯爵家がどんな目に遭わされるかを考えてのことでもあった。
もし犯罪者である王妃を助ければ、お家取り潰しで親族全てが処刑される可能性がある。
何もしていないジュリエットをマリーナやクリシア、そしてカリクシードは追い込んでいった。
特にマリーナは愛するカリクシードの妃の座についたジュリエットが惨めに過ごす姿を見てほくそ笑んだ。
隣の国の用意されていた小さな屋敷にジュリエットはすぐに運び込まれた。
そこにはベルナンドが待っていた。
「ジュリエット……」
「まだ意識が戻りません」
ジュリエットの父であるベリーナ侯爵が首を横に振った。
「空の薬の瓶が届けられた。ジュリエットは再発していたんだな」
「私たちも知りませんでした」
母親が疲れた顔で言った。
「今、例の医者をこちらに呼び寄せている。あの医者なら助けてくれるかもしれない」
「そのお医者様が出してくださった薬でも効かないのですよね?」
「まだ診察はしていないんだ。あの医者なら助けてくれるはずだ。何かあった時のためいつでも連絡が取れる状態にしていたんだ。絶対にジュリエットを助ける」
「ジュリエットばどうやって薬を手に入れていたのでしょう?」
侯爵夫人が疑問を投げかけた。
この医者に出会える確率はかなり低いはず。
「あの例の医者は俺やジュリエットを治療した後もたまに会いに来てくれていたんだ。そして必ずその時にいざという時にと薬を渡されていた」
「そうだったんですか……」
「だがジュリエットのこの体の細さは異常だ。まだハワー帝国から帰国して半年しか経っていないだろう?どう言うことなんだ?俺が集めた情報ではまだ最近のことは報告されていない。ただジュリエットがあの国で不遇な日々を送っていることは聞いていた。
いつでも助け出せるように用意はしていたんだが、遅すぎたのか?
ジュリエットの言葉なんか聞くんじゃなかった、くそッ!」
ベルナンドは何度もなくジュリエットに密偵を使い手紙を送った。
『助けはいらないのか』
『幸せなのか』
『さっさと離縁しろ』
その度に『心配はいらない』としか返事は来なかった。
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