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9話
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それは突然だった。
少しずつだが先に進み始めていた。
ジュリエットに対して尊敬の念を抱いている大臣達や文官達とこれからの政務の在り方や仕事の仕方について話し合いを始めていた。
仕事を縦だけではなく互いの横のつながりを大事にすれば、もっと無駄を省けるのでは?
必要な案件をもっと話し合い効率的に動けるようにと、毎日顔を突き合わせる。
牽制し合っていた部署、特に税務課と財政課は以前よりも和やかな雰囲気を醸し出している。
陛下はいまだ蚊帳の外でジュリエット達の動きを知らない。
もちろんジュリエットと自分たちの仕事の効率化や政務の見直し、軌道に乗れば陛下に報告をしようと話し合いをしていた。
今陛下の機嫌を損ね邪魔をされて混乱を起こすことは皆由としない。
まだ陛下達に知らせるのは先のこと、せめて王妃への風当たりをもう少し減らすまでは、軌道に乗るまでは、と先延ばしをしていた。
なのに……誰が陛下に告げ口したのだろう。
「王妃、あなたが反乱を企てていると言う情報が入った」
いつものように執務をこなしているジュリエットに数人の騎士がいきなり部屋に入ってきて、そう言うと彼女の腕を捻り上げた。
「何を馬鹿なことを!」
「そんなことあり得ませんわ!ジュリエット様はこの国のために働かれているのですよ!」
マリラとセリナが騎士達へ抗議をしたが、二人が今度は壁に体を押し当てられ、身動きできなくなった。
「きゃっ!何をするの?」
「私達が何をしたと言うの?」
二人の抗議に耳を貸すつもりはなく「うるさい、お前達も捕まりたいのか?」と怒鳴られ壁に体を打ち付けられた。
「きゃっ」
「あっ」
ジュリエットは青い顔をして震えた。
ーー私だけでいいじゃない!何故二人に手を出すの!
「二人に乱暴なことをしないでください。私を捕えるために来たのでしょう?
でも、私は何もしていない。身の潔白を証明するためにも反抗するつもりはないわ。どこへついて行けばいいのかしら?」
ジュリエットは騎士の掴んだ手を振り払い静かに椅子から立ち上がった。
「おい!連れていくぞ」
一人の騎士が部下に指示を出す。
ジュリエットは縄で上半身を拘束され引っ張られるように連行された。
歩いて連行される間、見世物のようにたくさん人がいるところを歩かされた。
それでもジュリエットは俯かず前をまっすぐ見つめ歩いた。
ーー私は何も悪いことはしていない。身の潔白は証明されるはず。
たとえ蔑まれるように人々に見られてもジュリエットは誇りだけは捨てない。
私はまだ王妃として生きているのだから。まだ私を信じてくれている者もいるのだから。
陛下にこれまでのことをきちんと話せば分かってもらえる。私はこの国を大切に思っているの。みんなで少しでも良い方向へと導いていきたい。
キッキッ、キッキッ
頭の上で鳴き声が聞こえる。
ーーアース……お願い、あまり近くに来ないで。
ジュリエットはアースがまた銃で撃たれることを心配した。
だけど空を見ることだけはしない。
もし上を見上げれば騎士達に気づかれる。
連行された場所は貴族専用の牢だった。
「私は犯罪者ではありません。まずは私から調書を取りそれを元にしっかり調査をするのではないのかしら?それに私が一体どんな犯罪を犯したと言うのかしら?」
騎士達はお互い顔を見合わせた。
「そ、それは、また後で誰かやってくるから待っていろ」
これは、多分、上からの命令で私を捕まえただけで本当の理由を知らないのね。
ジュリエットは牢の中に入ると当たりを見回した。
平民が入る牢に比べれば貴族専用の牢はそれなりに整っていた。
ベッドもあるし、ランプやテーブル、椅子も置かれていた。もちろん簡素ではあるが。
ただ、トイレはあるのだが風呂はない。
ーー入浴はできないようね。残念だわ。
そしてやって来たのはやはり陛下の側近で常にジュリエットを目の敵のようにして執拗に嫌味や嫌がらせをしてくる男だった。
「王妃、やはりあなたは陛下を陥れこの国を我が物にしようと思われていたのですね?」
「私が?」
少しずつだが先に進み始めていた。
ジュリエットに対して尊敬の念を抱いている大臣達や文官達とこれからの政務の在り方や仕事の仕方について話し合いを始めていた。
仕事を縦だけではなく互いの横のつながりを大事にすれば、もっと無駄を省けるのでは?
必要な案件をもっと話し合い効率的に動けるようにと、毎日顔を突き合わせる。
牽制し合っていた部署、特に税務課と財政課は以前よりも和やかな雰囲気を醸し出している。
陛下はいまだ蚊帳の外でジュリエット達の動きを知らない。
もちろんジュリエットと自分たちの仕事の効率化や政務の見直し、軌道に乗れば陛下に報告をしようと話し合いをしていた。
今陛下の機嫌を損ね邪魔をされて混乱を起こすことは皆由としない。
まだ陛下達に知らせるのは先のこと、せめて王妃への風当たりをもう少し減らすまでは、軌道に乗るまでは、と先延ばしをしていた。
なのに……誰が陛下に告げ口したのだろう。
「王妃、あなたが反乱を企てていると言う情報が入った」
いつものように執務をこなしているジュリエットに数人の騎士がいきなり部屋に入ってきて、そう言うと彼女の腕を捻り上げた。
「何を馬鹿なことを!」
「そんなことあり得ませんわ!ジュリエット様はこの国のために働かれているのですよ!」
マリラとセリナが騎士達へ抗議をしたが、二人が今度は壁に体を押し当てられ、身動きできなくなった。
「きゃっ!何をするの?」
「私達が何をしたと言うの?」
二人の抗議に耳を貸すつもりはなく「うるさい、お前達も捕まりたいのか?」と怒鳴られ壁に体を打ち付けられた。
「きゃっ」
「あっ」
ジュリエットは青い顔をして震えた。
ーー私だけでいいじゃない!何故二人に手を出すの!
「二人に乱暴なことをしないでください。私を捕えるために来たのでしょう?
でも、私は何もしていない。身の潔白を証明するためにも反抗するつもりはないわ。どこへついて行けばいいのかしら?」
ジュリエットは騎士の掴んだ手を振り払い静かに椅子から立ち上がった。
「おい!連れていくぞ」
一人の騎士が部下に指示を出す。
ジュリエットは縄で上半身を拘束され引っ張られるように連行された。
歩いて連行される間、見世物のようにたくさん人がいるところを歩かされた。
それでもジュリエットは俯かず前をまっすぐ見つめ歩いた。
ーー私は何も悪いことはしていない。身の潔白は証明されるはず。
たとえ蔑まれるように人々に見られてもジュリエットは誇りだけは捨てない。
私はまだ王妃として生きているのだから。まだ私を信じてくれている者もいるのだから。
陛下にこれまでのことをきちんと話せば分かってもらえる。私はこの国を大切に思っているの。みんなで少しでも良い方向へと導いていきたい。
キッキッ、キッキッ
頭の上で鳴き声が聞こえる。
ーーアース……お願い、あまり近くに来ないで。
ジュリエットはアースがまた銃で撃たれることを心配した。
だけど空を見ることだけはしない。
もし上を見上げれば騎士達に気づかれる。
連行された場所は貴族専用の牢だった。
「私は犯罪者ではありません。まずは私から調書を取りそれを元にしっかり調査をするのではないのかしら?それに私が一体どんな犯罪を犯したと言うのかしら?」
騎士達はお互い顔を見合わせた。
「そ、それは、また後で誰かやってくるから待っていろ」
これは、多分、上からの命令で私を捕まえただけで本当の理由を知らないのね。
ジュリエットは牢の中に入ると当たりを見回した。
平民が入る牢に比べれば貴族専用の牢はそれなりに整っていた。
ベッドもあるし、ランプやテーブル、椅子も置かれていた。もちろん簡素ではあるが。
ただ、トイレはあるのだが風呂はない。
ーー入浴はできないようね。残念だわ。
そしてやって来たのはやはり陛下の側近で常にジュリエットを目の敵のようにして執拗に嫌味や嫌がらせをしてくる男だった。
「王妃、やはりあなたは陛下を陥れこの国を我が物にしようと思われていたのですね?」
「私が?」
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