【完結】愛されない王妃

たろ

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6話

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「あ……申し訳ありません」

 ジュリエットはなにも言えなかった。

 いや、もし陛下にどうしてもと聞かれたら……全ては話せないけど……少しなら理由を話しても……そう思ったその時。

 陛下から出てきた言葉は……

「やはり噂は本当だったのか……お前はハワー皇帝と関係を持っていた。汚らしい女だ」

 吐き捨てるように言われた。
 蔑むような目で見られた。

 ーー違う。

 私が病気をしていた時、ベルナンドも一緒に入院していた。そこで互いに身分のことを知らずに仲良くなった。

 ジュリエットはそう伝えたかった。だけどそれはベルナンドのプライベートを話すことになる。
 彼の病いのことは伝えられない。

「私と皇帝は幼馴染なのです」

 カリクシードの目を逸らさずに言った。

 ーー浮気なんかしていない。違うの、お願い、わかって。

「幼馴染?へぇ、帝国の皇太子と?君が?」

 陛下は鼻で笑った。

「そんな作り話を誰が信用すると思うのか?」

「私は子供の頃、病気になりました。その時、皇帝……ベルナンド……様が友人のお見舞いにこられていたのです。その時知り合いました」

 ーー半分嘘だけど半分本当。

「じゃあ人質として行ったはずがそこで愛が芽生えたと言うわけか?」

「私はあなたの妻です。不貞などしておりません」

「君の悪い噂しか耳に入ってこない。なにを信じろと言うんだ?」

「私はなにも悪いことはしておりません」

「俺が用事があると言って呼び出しても来ようとしない。なのに自分の用事のある時は無理矢理でも会いたいと言ってくる。仕事はまともにしないで遊んでばかり。マリーナやクリシアに迷惑をかけて、側近達や大臣、文官達もみんな辟易しているんだ。そのうえ、皇帝と浮気?いい身分だな」

 ーーえっ?私は呼び出されたのは今日が初めて……それに会いたいと無理矢理言ったことなどない……


 チラリと側近の顔を見たジュリエットに側近は慌てて目を逸らした。
 周りにいる騎士も目を逸らした。
 ただ一人の騎士は両手をギュッと握りしめて悔しそうにしていた。ジュリエットと目が合うと周りにわからないくらいにほんの少し頭を下げた。






 ジュリエットは陛下に「出て行け!」と言われ部屋を後にした。

 廊下を歩いているとマリーナとすれ違った。

「あら?お義姉様?お珍しいわ、ここはお兄様とクリシア様が過ごす宮よ?どうしてお飾りでしかないお義姉様がいるのかしら?」

 俯いたまま顔を上げないジュリエットにマリーナはクスクスと馬鹿にして笑う。

「失礼するわ」

 ジュリエットはなにも答えなかった。





 ーーもういい。

 みんなに馬鹿にされ笑われた。それはもう結婚してから当たり前なので我慢できる。帝国から帰ってきても変わらなかった。いや前より酷いかもしれない。

 それよりも陛下にまでなにも信じてもらえない。それがショックだった。

 口を開こうとしても言い訳すら出てこない。だって何を言っても聞く耳すら持ってくれない。

 ーー私を嫌っているのね。


「お義姉様、あなたって何を言われても泣きもしない。その可愛げのなさではお兄様に愛されることなどないわ。クリシア様のように儚げで可愛らしくて守ってあげたくなる人をお兄様は愛していらっしゃるの。あなたは黙って仕事だけしていればいいのよ」

 ジュリエットの背中に向かってマリーナが楽しそうに言葉を投げつけた。









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