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2話
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「ジュリエット様……申し訳ございません」
二人の騎士が深々と頭を下げた。
「貴方達は私のために態々迎えに来てくれたのよ?何故頭を下げるの?」
ジュリエットは淡々とそう告げた。
「本来なら貴方のお迎えはもっと盛大に行うはずでした。フォード王国のために、そしてマリーナ殿下の代わりに犠牲になり人質となり一年もの間ハワー帝国で過ごされたのですから」
「そうです。なのに、陛下はクリシア様とマリーナ殿下の言葉に流されて貴女を軽んじられております」
「貴女がこの一年間我々にくださった手紙のおかげでどれだけ助かってきたのかあの三人は全く気がついておりません」
「いや、三人どころかあの王城で貴女のことをきちんと理解されている方は数十人……いや十人ほどしかいないかもしれません。
我々上位の騎士は貴女の采配のおかげで何度も戦が起こらないように防ぐことができました。
それも理解しているのは本当に騎士団長や我々近衛騎士の上の者だけです」
「とても悔しいですが陛下に意見をできる者がいないのも現状です」
「わかっているわ。貴方達が来てくれただけで十分よ?」
ジュリエットは結婚してひと月も経たずにハワー帝国へ人質として渡った。
陛下との結婚生活はひと月もなかった。
いや、結婚式のあと、現実を知らされた。
何も知らずに嫁いだジュリエットは……
初夜だと思い陛下を待っていたが寝室に訪れることはなかった。
新しく仕えることになった侍女達は理由を知っていたのだが、何も知らされることなく入浴をし、初夜のための寝衣に着替えさせた。
そして一人陛下を待ち続けた。
何度となく侍女達はお水を持ってきたりしてジュリエットの様子を窺いに来た。
そして廊下から聞こえてくる微かな笑い声。
陛下が来ないことをわかっている侍女達はそれを見てクスクスと笑っていた。
次の日、心無い侍女が嘲笑うかのように告げた。
『陛下には愛するお人がおります。昨夜もその方のところへ行かれました』と。
ジュリエットは侯爵令嬢として常に感情を出してはいけない、下の者に侮られてはいけないと言われ厳しく躾けられて育った。
『そう、陛下には愛する人がいらっしゃるのね』
ジュリエットはそう言って侍女の前で淡々と答えた。
侍女達は王妃であるジュリエットがあまりにも表情を変えないので、陛下のことをなんとも思ってはいない、ただ王妃になりたかっただけのお人なのだろう、と噂をした。
だから、そんな扱いでいいと皆判断した。
陛下もただお飾りの都合の良い妃を娶っただけなのだろうと噂をした。
前国王がフォード王国のために、そしてカリクシードの後ろ盾となってもらうためにベリーナ侯爵に頭を下げてジュリエットを迎えたことは、現国王であるカリクシードも知らなかった。
いや、聞いたはずだが耳に入ってこなかった。
愛するクリシア・ランジェル元伯爵令嬢との結婚を反対された。
ジュリエットと結婚すればクリシアを愛妾として自分の宮に迎え入れられる。
ジュリエットに王妃として仕事をさせて、クリシアは大切に愛だけを囁き慈しみ暮らそうと考えた。
陛下にとってジュリエットはいいように使える道具でしかなかった。
二人の騎士が深々と頭を下げた。
「貴方達は私のために態々迎えに来てくれたのよ?何故頭を下げるの?」
ジュリエットは淡々とそう告げた。
「本来なら貴方のお迎えはもっと盛大に行うはずでした。フォード王国のために、そしてマリーナ殿下の代わりに犠牲になり人質となり一年もの間ハワー帝国で過ごされたのですから」
「そうです。なのに、陛下はクリシア様とマリーナ殿下の言葉に流されて貴女を軽んじられております」
「貴女がこの一年間我々にくださった手紙のおかげでどれだけ助かってきたのかあの三人は全く気がついておりません」
「いや、三人どころかあの王城で貴女のことをきちんと理解されている方は数十人……いや十人ほどしかいないかもしれません。
我々上位の騎士は貴女の采配のおかげで何度も戦が起こらないように防ぐことができました。
それも理解しているのは本当に騎士団長や我々近衛騎士の上の者だけです」
「とても悔しいですが陛下に意見をできる者がいないのも現状です」
「わかっているわ。貴方達が来てくれただけで十分よ?」
ジュリエットは結婚してひと月も経たずにハワー帝国へ人質として渡った。
陛下との結婚生活はひと月もなかった。
いや、結婚式のあと、現実を知らされた。
何も知らずに嫁いだジュリエットは……
初夜だと思い陛下を待っていたが寝室に訪れることはなかった。
新しく仕えることになった侍女達は理由を知っていたのだが、何も知らされることなく入浴をし、初夜のための寝衣に着替えさせた。
そして一人陛下を待ち続けた。
何度となく侍女達はお水を持ってきたりしてジュリエットの様子を窺いに来た。
そして廊下から聞こえてくる微かな笑い声。
陛下が来ないことをわかっている侍女達はそれを見てクスクスと笑っていた。
次の日、心無い侍女が嘲笑うかのように告げた。
『陛下には愛するお人がおります。昨夜もその方のところへ行かれました』と。
ジュリエットは侯爵令嬢として常に感情を出してはいけない、下の者に侮られてはいけないと言われ厳しく躾けられて育った。
『そう、陛下には愛する人がいらっしゃるのね』
ジュリエットはそう言って侍女の前で淡々と答えた。
侍女達は王妃であるジュリエットがあまりにも表情を変えないので、陛下のことをなんとも思ってはいない、ただ王妃になりたかっただけのお人なのだろう、と噂をした。
だから、そんな扱いでいいと皆判断した。
陛下もただお飾りの都合の良い妃を娶っただけなのだろうと噂をした。
前国王がフォード王国のために、そしてカリクシードの後ろ盾となってもらうためにベリーナ侯爵に頭を下げてジュリエットを迎えたことは、現国王であるカリクシードも知らなかった。
いや、聞いたはずだが耳に入ってこなかった。
愛するクリシア・ランジェル元伯爵令嬢との結婚を反対された。
ジュリエットと結婚すればクリシアを愛妾として自分の宮に迎え入れられる。
ジュリエットに王妃として仕事をさせて、クリシアは大切に愛だけを囁き慈しみ暮らそうと考えた。
陛下にとってジュリエットはいいように使える道具でしかなかった。
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