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オリソン国③

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オリエ様に初めて会ったのはわたしが寮に入る少し前のことだった。

「貴女がカトリーヌ様?初めまして」
とても綺麗な人だった。
思わず息を呑むほど。
ブロンドの長い髪はサラサラと輝いていた。
青い瞳に見つめられるとドキッとして…なのにその瞳に惹きつけられて見入ってしまう。

「は、初めましてカトリーヌ・ブランゼルと申します」

緊張しながら挨拶をすると

「わたしはもうただのオリエなの。だから緊張しないでね」
優しい声、柔らかい笑顔、思わず見惚れてしまう。

「カトリーヌったらどうしたの?オリエお姉ちゃんが綺麗すぎて驚いた?」
マーラがクスクス笑っているけど笑えない。

「っや……だってこんなに綺麗な人だと思わなかったのだもの」

思わず本音が出てしまった。

「マーラ、そんなに褒めても何もあげるものはないの、ごめんなさい」

「えー?お土産は?」

「今回は買い物をする暇すらなかったの。カイさんが何か買ってきてくれると思うわ」

「お義父さんのお土産のセンス最悪だから…期待できないわ」

マーラはそう言って部屋の隅に置かれたこの部屋の装飾品としては似合わない熊の木の彫り物や変な顔をしたお人形などへ目線をやった。

ーーもしかしてこれらは……

わたしも思わずジーッと見ていると

「カトリーヌ、そう、あれがお義父さんのお土産……」

「カイはマーラ達が喜ぶと思ってその国のいいと思うものを選んで買ってきてくれるの……まあ、捨てられないけど捨てたい物が増えて困っているのは確かだけどね」
メルーさんも苦笑していた。

オリエ様はしばらくお休みらしく明日は女4人でランチへ行くことになった。

「今日は美味しいものをいっぱい食べよう」
マーラの言葉に他の3人も賛成して、街で美味しいと人気のあるカフェが併設されたレストランへ向かった。

オリエ様はこの国に来て半年ほど経ったと言っていた。
離縁の話も彼女はしないしわたしも婚約解消した話はしていない。

たぶんお互い知っているのだろうけどそこは話さないで過ごした。マーラもわかっていても無理やり聞いてくることはない。
ちょうどいい距離感でいてくれるマーラに感謝。

そして寮に入る日、カイ様が仕事から戻ってきた。

「カイさん、おかえり」

「オリエこそおかえり」

「お義父さん、お土産は?」

「ほら、これ」
カイさんはいくつかの箱を置いて「好きなのを選んで」と言って「俺少し寝るから」と寝室へと消えて行った。

箱の中身は金のブレスレットだった。
ルビーやエメラルドなどの宝石が付いたものでどれも手が込んでいて可愛かった。

「わたしまでいいのかしら?」
遠慮がちに言ったら

「4人分なのだからもちろんカトリーヌのものもあるわ」

「ありがとうございます」

ーーどんな高価な宝石よりもこのお土産の方が嬉しい。

この国に来てよかった。

ここならわたしの髪の色を偏見で見る人もいないし、ただのカトリーヌとして見てもらえる。

2週間、カイ様の家で過ごしたおかげで勇気をもらえた。そしてマーラという素晴らしい友人もできた。


ーーーーーー

寮に入ると話す人もいなくてとても寂しかった。でも隣の部屋のマーラと友達だというアリッサが突然わたしの部屋に来て仲良くなれた。

「わたしはアリッサよ、マーラに貴女のことは聞いているわ、お世話をしてって頼まれたの」

屈託のない笑顔にわたしはすぐ仲良くなれた。

一緒に食堂へ連れて行ってくれたり、寮から学校(同じ敷地にはあるのだけど学校がとにかく広いので)まで連れて行ってくれた。
マーラやアリッサと同じクラスになれて、ホッとした。
女子には昔から嫌われやすく男子は寄ってくるというのがわたしのいつものパターンなので、最初から女子の友達ができたのがとても嬉しかった。
それも作り笑いをしなくてもいい、腹の中を探り合わなくてもいい、そんな友人関係を持てるなんて信じられなかった。

「カトリーヌ、置いていくわよ」

「待って、マーラ!」
食堂の席は争奪戦になる。

マーラとアリッサ、それから二人の仲の良い友人達が3人、合わせて6人で行動することが多い。

子爵家や男爵家の子供たちが多い。まず高位貴族はこの学校を選ばない、
伯爵家より上の人は国立の学校ではなく、私立の学校へ通っている。高位貴族の親たちは平民たちと学力もだけど友人になるのをとても嫌がり拒否していた。

国立は月謝は安いけど頭が良くないと入れない。私立は月謝は高いけど多少頭が悪くても入学できるし卒業すれば、その学園の名前だけで箔が付くらしい、これはどこの国も同じよね。


そしてこの国に来て2年半が過ぎた。










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