29 / 69
イーサン殿下⑤
しおりを挟む
でも、ロイズ殿に違和感を感じるようになったんだ。
どうしてそんなにカトリーヌのことばかり手紙に書くのか。いくら婚約者の妹とは言えおかしいと思うようになったんだ。
それでもなんとなくなので、初めは気にしないようにしていた。
でもロイズ殿が結婚して婿入りすることが決まってこちらの国に移り住むことになってからやはりおかしいと感じるようになった。
ロイズ殿の視線が……君を見る時のあのいやらしい目つき、じっと見つめたかと思うと今度は舐めるように上から下を見ていたんだ。
君もその気持ち悪い視線に少しずつ怯えるようになった。
セシル様は相変わらずロイズ殿にベッタリで言われるがままに動いていたみたいなんだ。
色々調べてわかったのは、君が記憶を取り戻す少し前だった。
ロイズ殿がどうして君にそんなことをするのか理由はまだわからない。
ただ馬車の事故については故意だとは思っていなかった。雨の中の馬車の事故だから単なる事故だと思っていた。
今回の馬車のヒビのことも今から調べてみるよ。
そしてセリーヌ嬢のことなんだけど……
ハッキリしているのは王太子の婚約者の地位を狙っていると言うことだけなんだ。
君と婚約解消すれば次の婚約者候補の筆頭はセリーヌ嬢になる。
俺と年が近くて高位貴族の令嬢で婚約者がまだいない中では一番相応しいからね。
「セリーヌ様が?婚約者?ダメよ!絶対ダメ!」
え?どうして……俺のことが好きなの……?
「はあ?え?あり得ないです。セリーヌ様が可哀想だからです!あなたみたいな人と婚約させられたら可哀想。だったら我慢してわたしがすっごく嫌だけど婚約者でいます」
君さ、セリーヌ嬢に命狙われているんだよ?
「それってセリーヌ様がしたのかな?たぶんセリーヌ様に近い人がしたんじゃないのかな?父親とか母親とか、側近の誰かとか」
君の悪い噂を直接流したのはセシル様に頼まれてセリーヌ嬢が流したことはわかっている。
君の屋敷の侍女長に家庭教師を紹介したのもセリーヌ嬢の侯爵家だったんだ。
君が記憶を取り戻すきっかけになった襲った男はたぶん……ロイズ殿だと思う。
そして今回の馬車のヒビは……たぶんセリーヌ嬢のところの誰かがしたのではないかと思うんだ。
学園の帰りに事故に遭うのなら馬車を触れるのは同じ学園でないといけないからね。
カトリーヌは記憶がないから知らないと思うけど、君は実は何度か命を狙われたんだ。
「影」が護っていたから助かったんだけど。
「何をされたのですか?」
学校で何度か飲み物に薬を入れられていたんだ。
毒薬とか睡眠薬をね。すぐに「影」が回収したし犯人は取り押さえたけどみんな絶対口を割らないんだ。
「口を割らない?」
うん、みんな捕まると必ず自殺するんだ、大人も学生もね。
「そ、そんな恐ろしいことがあってたんですか?」
カトリーヌにはあまり伝えたくなかったんだ。
友人が自分を裏切ったなんて知りたくなかっただろう?それに姉の旦那さんが自分を狙ったなんて。
さらにセシル様も悪意を持って君を貶めていたんだから共犯だ。
ーーーーーーー
殿下の話を聞いてわたしはもう何かを言う元気すらなくなっていた。
「イーサン殿下、私を守っていただきありがとうございました。記憶がなかったとは言え知らない間に助けていただいていたんですね」
お礼だけ述べて、わたしはガイ達と屋敷へと戻った。
そして今夜の作戦会議と報告はガイ達に任せてわたしはおとなしく眠ることにした。
今は何も考えたくない。
明日からの登校のことを考えると嫌になるので、ひたすら眠ることにした。
翌朝、しっかり眠ったおかげで少しだけ気分はスッキリとした。
「よし!学校へ行こう」
いつものように一人で朝食を食べてガイの護衛で馬車に乗った。
「お嬢様、学校へ行くのは気まずいのでは?」
心配してくれたガイに、にっこりと笑い
「うん、でも避けて通れないなら正面から行くしかないと思うの」
「正面からですか?」
「うん」
学校へ着くとすぐにセリーヌ様の席へと行き
「おはようございます、セリーヌ様」
挨拶そこそこに「少しだけお話しがあります」と言って庭園へと連れ立った。
セリーヌ様はキョトンとして「カトリーヌ様?どうしたの?そんな真剣な顔をして」と聞いて来た。
誰もいないことを確認してわたしはセリーヌ様の手を握った。
少し手が震えてしまった。それでも決めたのだ。
「セリーヌ様はわたしの敵ですか?馬車の車輪にヒビが入っていたのはセリーヌ様の指示ですか?わたしの悪い噂はあなたが流したのですか?」
わたしは誤魔化さず一気に聞いた。
セリーヌ様の顔色はどんどん青くなって震え出した。
「……………っあ…………」
ガタガタと震えるセリーヌ様。
ーーもうこれ以上は聞けない。この顔色を見れば答えは出たのと同じだよね。
どうしてそんなにカトリーヌのことばかり手紙に書くのか。いくら婚約者の妹とは言えおかしいと思うようになったんだ。
それでもなんとなくなので、初めは気にしないようにしていた。
でもロイズ殿が結婚して婿入りすることが決まってこちらの国に移り住むことになってからやはりおかしいと感じるようになった。
ロイズ殿の視線が……君を見る時のあのいやらしい目つき、じっと見つめたかと思うと今度は舐めるように上から下を見ていたんだ。
君もその気持ち悪い視線に少しずつ怯えるようになった。
セシル様は相変わらずロイズ殿にベッタリで言われるがままに動いていたみたいなんだ。
色々調べてわかったのは、君が記憶を取り戻す少し前だった。
ロイズ殿がどうして君にそんなことをするのか理由はまだわからない。
ただ馬車の事故については故意だとは思っていなかった。雨の中の馬車の事故だから単なる事故だと思っていた。
今回の馬車のヒビのことも今から調べてみるよ。
そしてセリーヌ嬢のことなんだけど……
ハッキリしているのは王太子の婚約者の地位を狙っていると言うことだけなんだ。
君と婚約解消すれば次の婚約者候補の筆頭はセリーヌ嬢になる。
俺と年が近くて高位貴族の令嬢で婚約者がまだいない中では一番相応しいからね。
「セリーヌ様が?婚約者?ダメよ!絶対ダメ!」
え?どうして……俺のことが好きなの……?
「はあ?え?あり得ないです。セリーヌ様が可哀想だからです!あなたみたいな人と婚約させられたら可哀想。だったら我慢してわたしがすっごく嫌だけど婚約者でいます」
君さ、セリーヌ嬢に命狙われているんだよ?
「それってセリーヌ様がしたのかな?たぶんセリーヌ様に近い人がしたんじゃないのかな?父親とか母親とか、側近の誰かとか」
君の悪い噂を直接流したのはセシル様に頼まれてセリーヌ嬢が流したことはわかっている。
君の屋敷の侍女長に家庭教師を紹介したのもセリーヌ嬢の侯爵家だったんだ。
君が記憶を取り戻すきっかけになった襲った男はたぶん……ロイズ殿だと思う。
そして今回の馬車のヒビは……たぶんセリーヌ嬢のところの誰かがしたのではないかと思うんだ。
学園の帰りに事故に遭うのなら馬車を触れるのは同じ学園でないといけないからね。
カトリーヌは記憶がないから知らないと思うけど、君は実は何度か命を狙われたんだ。
「影」が護っていたから助かったんだけど。
「何をされたのですか?」
学校で何度か飲み物に薬を入れられていたんだ。
毒薬とか睡眠薬をね。すぐに「影」が回収したし犯人は取り押さえたけどみんな絶対口を割らないんだ。
「口を割らない?」
うん、みんな捕まると必ず自殺するんだ、大人も学生もね。
「そ、そんな恐ろしいことがあってたんですか?」
カトリーヌにはあまり伝えたくなかったんだ。
友人が自分を裏切ったなんて知りたくなかっただろう?それに姉の旦那さんが自分を狙ったなんて。
さらにセシル様も悪意を持って君を貶めていたんだから共犯だ。
ーーーーーーー
殿下の話を聞いてわたしはもう何かを言う元気すらなくなっていた。
「イーサン殿下、私を守っていただきありがとうございました。記憶がなかったとは言え知らない間に助けていただいていたんですね」
お礼だけ述べて、わたしはガイ達と屋敷へと戻った。
そして今夜の作戦会議と報告はガイ達に任せてわたしはおとなしく眠ることにした。
今は何も考えたくない。
明日からの登校のことを考えると嫌になるので、ひたすら眠ることにした。
翌朝、しっかり眠ったおかげで少しだけ気分はスッキリとした。
「よし!学校へ行こう」
いつものように一人で朝食を食べてガイの護衛で馬車に乗った。
「お嬢様、学校へ行くのは気まずいのでは?」
心配してくれたガイに、にっこりと笑い
「うん、でも避けて通れないなら正面から行くしかないと思うの」
「正面からですか?」
「うん」
学校へ着くとすぐにセリーヌ様の席へと行き
「おはようございます、セリーヌ様」
挨拶そこそこに「少しだけお話しがあります」と言って庭園へと連れ立った。
セリーヌ様はキョトンとして「カトリーヌ様?どうしたの?そんな真剣な顔をして」と聞いて来た。
誰もいないことを確認してわたしはセリーヌ様の手を握った。
少し手が震えてしまった。それでも決めたのだ。
「セリーヌ様はわたしの敵ですか?馬車の車輪にヒビが入っていたのはセリーヌ様の指示ですか?わたしの悪い噂はあなたが流したのですか?」
わたしは誤魔化さず一気に聞いた。
セリーヌ様の顔色はどんどん青くなって震え出した。
「……………っあ…………」
ガタガタと震えるセリーヌ様。
ーーもうこれ以上は聞けない。この顔色を見れば答えは出たのと同じだよね。
50
お気に入りに追加
3,923
あなたにおすすめの小説
【完結】地味令嬢の願いが叶う刻
白雨 音
恋愛
男爵令嬢クラリスは、地味で平凡な娘だ。
幼い頃より、両親から溺愛される、美しい姉ディオールと後継ぎである弟フィリップを羨ましく思っていた。
家族から愛されたい、認められたいと努めるも、都合良く使われるだけで、
いつしか、「家を出て愛する人と家庭を持ちたい」と願うようになっていた。
ある夜、伯爵家のパーティに出席する事が認められたが、意地悪な姉に笑い者にされてしまう。
庭でパーティが終わるのを待つクラリスに、思い掛けず、素敵な出会いがあった。
レオナール=ヴェルレーヌ伯爵子息___一目で恋に落ちるも、分不相応と諦めるしか無かった。
だが、一月後、驚く事に彼の方からクラリスに縁談の打診が来た。
喜ぶクラリスだったが、姉は「自分の方が相応しい」と言い出して…
異世界恋愛:短編(全16話) ※魔法要素無し。
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆
領主の妻になりました
青波鳩子
恋愛
「私が君を愛することは無い」
司祭しかいない小さな教会で、夫になったばかりのクライブにフォスティーヌはそう告げられた。
===============================================
オルティス王の側室を母に持つ第三王子クライブと、バーネット侯爵家フォスティーヌは婚約していた。
挙式を半年後に控えたある日、王宮にて事件が勃発した。
クライブの異母兄である王太子ジェイラスが、国王陛下とクライブの実母である側室を暗殺。
新たに王の座に就いたジェイラスは、異母弟である第二王子マーヴィンを公金横領の疑いで捕縛、第三王子クライブにオールブライト辺境領を治める沙汰を下した。
マーヴィンの婚約者だったブリジットは共犯の疑いがあったが確たる証拠が見つからない。
ブリジットが王都にいてはマーヴィンの子飼いと接触、画策の恐れから、ジェイラスはクライブにオールブライト領でブリジットの隔離監視を命じる。
捜査中に大怪我を負い、生涯歩けなくなったブリジットをクライブは密かに想っていた。
長兄からの「ブリジットの隔離監視」を都合よく解釈したクライブは、オールブライト辺境伯の館のうち豪華な別邸でブリジットを囲った。
新王である長兄の命令に逆らえずフォスティーヌと結婚したクライブは、本邸にフォスティーヌを置き、自分はブリジットと別邸で暮らした。
フォスティーヌに「別邸には近づくことを許可しない」と告げて。
フォスティーヌは「お飾りの領主の妻」としてオールブライトで生きていく。
ブリジットの大きな嘘をクライブが知り、そこからクライブとフォスティーヌの関係性が変わり始める。
========================================
*荒唐無稽の世界観の中、ふんわりと書いていますのでふんわりとお読みください
*約10万字で最終話を含めて全29話です
*他のサイトでも公開します
*10月16日より、1日2話ずつ、7時と19時にアップします
*誤字、脱字、衍字、誤用、素早く脳内変換してお読みいただけるとありがたいです
悪役令息、拾いました~捨てられた公爵令嬢の薬屋経営~
山夜みい
恋愛
「僕が病気で苦しんでいる時に君は呑気に魔法薬の研究か。良いご身分だな、ラピス。ここに居るシルルは僕のために毎日聖水を浴びて神に祈りを捧げてくれたというのに、君にはがっかりだ。もう別れよう」
婚約者のために薬を作っていたラピスはようやく完治した婚約者に毒を盛っていた濡れ衣を着せられ、婚約破棄を告げられる。公爵家の力でどうにか断罪を回避したラピスは男に愛想を尽かし、家を出ることにした。
「もううんざり! 私、自由にさせてもらうわ」
ラピスはかねてからの夢だった薬屋を開くが、毒を盛った噂が広まったラピスの薬など誰も買おうとしない。
そんな時、彼女は店の前で倒れていた男を拾う。
それは『毒花の君』と呼ばれる、凶暴で女好きと噂のジャック・バランだった。
バラン家はラピスの生家であるツァーリ家とは犬猿の仲。
治療だけして出て行ってもらおうと思っていたのだが、ジャックはなぜか店の前に居着いてしまって……。
「お前、私の犬になりなさいよ」
「誰がなるかボケェ……おい、風呂入ったのか。服を脱ぎ散らかすな馬鹿!」
「お腹空いた。ご飯作って」
これは、私生活ダメダメだけど気が強い公爵令嬢と、
凶暴で不良の世話焼きなヤンデレ令息が二人で幸せになる話。
幼馴染の公爵令嬢が、私の婚約者を狙っていたので、流れに身を任せてみる事にした。
完菜
恋愛
公爵令嬢のアンジェラは、自分の婚約者が大嫌いだった。アンジェラの婚約者は、エール王国の第二王子、アレックス・モーリア・エール。彼は、誰からも愛される美貌の持ち主。何度、アンジェラは、婚約を羨ましがられたかわからない。でもアンジェラ自身は、5歳の時に婚約してから一度も嬉しいなんて思った事はない。アンジェラの唯一の幼馴染、公爵令嬢エリーもアンジェラの婚約者を羨ましがったうちの一人。アンジェラが、何度この婚約が良いものではないと説明しても信じて貰えなかった。アンジェラ、エリー、アレックス、この三人が貴族学園に通い始めると同時に、物語は動き出す。
初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。
【完結】公爵令嬢の育て方~平民の私が殿下から溺愛されるいわれはないので、ポーション開発に励みます。
buchi
恋愛
ポーシャは、平民の特待生として貴族の学園に入学したが、容貌もパッとしなければ魔力もなさそうと蔑視の対象に。それなのに、入学早々、第二王子のルーカス殿下はポーシャのことを婚約者と呼んで付きまとう。デロ甘・辛辣・溺愛・鈍感コメディ(?)。殿下の一方通行がかわいそう。ポジティブで金儲けに熱心なポーシャは、殿下を無視して自分の道を突き進む。がんばれ、殿下! がんばれ、ポーシャ?
私は王妃になりません! ~王子に婚約解消された公爵令嬢、街外れの魔道具店に就職する~
瑠美るみ子
恋愛
サリクスは王妃になるため幼少期から虐待紛いな教育をされ、過剰な躾に心を殺された少女だった。
だが彼女が十八歳になったとき、婚約者である第一王子から婚約解消を言い渡されてしまう。サリクスの代わりに妹のヘレナが結婚すると告げられた上、両親から「これからは自由に生きて欲しい」と勝手なことを言われる始末。
今までの人生はなんだったのかとサリクスは思わず自殺してしまうが、精霊達が精霊王に頼んだせいで生き返ってしまう。
好きに死ぬこともできないなんてと嘆くサリクスに、流石の精霊王も酷なことをしたと反省し、「弟子であるユーカリの様子を見にいってほしい」と彼女に仕事を与えた。
王国で有数の魔法使いであるユーカリの下で働いているうちに、サリクスは殺してきた己の心を取り戻していく。
一方で、サリクスが突然いなくなった公爵家では、両親が悲しみに暮れ、何としてでも見つけ出すとサリクスを探し始め……
*小説家になろう様にても掲載しています。*タイトル少し変えました
大切なあのひとを失ったこと絶対許しません
にいるず
恋愛
公爵令嬢キャスリン・ダイモックは、王太子の思い人の命を脅かした罪状で、毒杯を飲んで死んだ。
はずだった。
目を開けると、いつものベッド。ここは天国?違う?
あれっ、私生きかえったの?しかも若返ってる?
でもどうしてこの世界にあの人はいないの?どうしてみんなあの人の事を覚えていないの?
私だけは、自分を犠牲にして助けてくれたあの人の事を忘れない。絶対に許すものか。こんな原因を作った人たちを。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる