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可愛いくなんてなりたくない。 13歳
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お茶会を断ることが出来なくて諦めてドレスを着ることになった。
侍女長のジャルマはさすがに王家主催のお茶会にはみすぼらしい格好をさせて行くことはしない。それは侯爵家の恥、ひいてはお父様の恥にもなるから。
お父様は今も領地で暮らしている。最近は領主として忙しく過ごしているみたいだけど王都に帰ってくることは今のところない。お母様も忙しくて領地には行っていない。
二人の関係を壊したわたしは何も聞くことはできないでいた。
「お嬢様、しっかりお立ちください、動かないで!」
コルセットをこれでもかとぎゅうぎゅうに締め上げられ、ピンを地肌に突き刺されながらなんとか拷問の着替えの時間が終わった。
ほんとこんな痛い目に遭ってまでドレスなんて着たくない。わたしの体はまだ太ももやお尻にアザがある。いまだに続く侯爵家の家庭教師の体罰。
慣れたとはいえ痛いものは痛い。
お母様にいい加減訴えたらいい?
絶対いや。
それは負けると言うこと。ジャルマには負けたくない。意地でも耐えてやるんだから!
そしてわたしが成人したらコイツをうちの屋敷から叩き出してやる!
「カトリーヌ、支度はできたの?」
お姉様がわたしの部屋に顔を出した。
さっきまで乱暴な態度でわたしに接していたジャルマの顔と態度が一瞬で変わる。
「セシル様!もう少しで終わります」
お姉様に見せるジャルマの媚を売るような笑顔。
「カトリーヌはその淡いクリーム色のフリルのついた可愛いドレスがとても似合っているわ。今日は髪を結い上げてもらったのね?とても可愛いわ」
お姉様は留学を終えて今はお母様に付いて侯爵家の後継者としての勉強を始めた。
婚約者は留学中に知り合った他国の王族でもあるロイズ様と今は遠距離恋愛中だ。
いずれはお姉様と結婚して婿入りする予定だ。その頃にはわたしは邪魔になるかもしれない、でもジャルマを追い出すまではなんとかこの屋敷に居座り暮らしたい。
ジャルマ追い出し計画は着々と進んでいる。
もちろんわたしの頭の中だけで。
「お姉様はお茶会には参加しないのですか?」
「わたしは今日ロイズが来るから欠席するのよ、日を改めてロイズと両陛下には挨拶に伺う予定なの」
「ロイズ様はこちらにお泊まりになるのですか?」
「そうなの、聞いてなかったかしら?」
ーーはい、ジャルマがわたしから目線を逸らした。わざと知らせなかったのね。ま、いつものことだから慣れてはいるけどね
「それでね、今日はカトリーヌにこれを付けて行ってもらいたくて持ってきたの」
わたしの目の前にあるのはダイヤモンドのブローチだった。とても豪華な……
「まぁなんで素敵なんでしょう」
そう言うとジャルマはお姉様から受け取りわたしの肌に刺しながらブローチをつけてくれた。
ーー痛っい!ジャルマは澄ましているけど内心わたしが痛がっているのを見てほくそ笑んでいるはず。
悔しい!
「とても素敵です」ジャルマの笑顔。
「お姉様ありがとうございます」
ーーーーー
わたしは一人で馬車に乗るとため息が出た。
「この悪趣味なフリルたっぷりのドレスにゴージャスなブローチ………合うわけないじゃない。ジャルマもジャルマだけどお姉様もお姉様だわ。これ完全に嫌がらせだわ」
あの優しい笑顔の下で何を思ってわたしに接しているのかわからない。
7歳も離れていてわたしが8歳の時には他国で大学へ通い最近また戻ってきたお姉様。
あまり接することはないけど「優しさ」という意地悪を受けている気がするのはわたしだけなのか……
姉は本気で似合うと思ってこのブローチを渡したのだろうか……
とりあえずこのブローチは外しドレスに付いているポケットにそっと隠した。
胸のところを覗くと血が固まってはいたけどやはり怪我していた。ドレスが汚れなくてよかった。
こんな悪趣味なドレスだけど、わたしの容姿には確かに似合っている。
ピンク色の髪の毛をいくつも編み込みをして、ふわっと可愛く結い上げて、フリルたっぷりの淡いドレス。
客観的に見ても見た目は確かに可愛らしい少女。
みんなから「可愛い」と言ってもらえるだろう。
全く趣味ではないし、それをわかっているジャルマの嫌がらせだけど。わたしがシンプルな服が好きで落ち着いた紺色や緑が好きなのをわかっていて敢えてこの服を選ぶのだから。
『巷のピンク色の髪のお馬鹿な男好きの少女』を作り出すために。
「はあーーー」
大きな溜息しか出ないわ。
ーーーーー
お茶会の会場へと着いた。
エスコートも護衛も侍女も付いていないわたしは一人で庭園へと向かう。
王宮内は通い慣れているので一人でも平気だ。
周りには見知った護衛騎士さん達がいる。
その場に着くとわたしよりも目上の人ばかり。
13歳のわたしが何故ここに呼ばれるのか……それは王太子殿下の婚約者だから。
みんなの前に行くと
「本日はよろしくお願い致しますカトリーヌ・ブランゼルと申します」
頭を下げカーテシーをして挨拶をする。
「カトリーヌ様は相変わらず可愛らしいわね」
「自分の可愛さをアピールしたいのよね」
「男受けする格好で来るなんて恥ずかしくないのかしら?」
ーー聞こえていますよ……誰が好き好んでこんな可愛らしい格好なんてするのよ!……と叫びたいけど笑顔で過ごす。
そして促された席へと座り周りから話しかけられることに対して静かに微笑み相槌をうつ。
そうただひたすら笑顔で。心を空っぽにして。
ザワザワと言う声が聞こえてきた。
笑顔でそちらを向くとわたしの笑顔は固まった。
イーサン殿下がアーシャ様をエスコートしてきた。満面の笑顔で。
悲しくて辛くて………なんて思うことはない。握り拳をつくり心の中でガッツポーズをした。
みんなが見ている、これで婚約解消だ。
わたしとイーサン殿下の不仲がハッキリとみんなにわかってもらえた。
なんて嬉しい日なのだろう。
ただイーサン殿下にわたしの笑顔を見せてあげるのが勿体なくて笑顔はスッと消えた。
イーサン殿下はアーシャ様と楽しそうに別の席で過ごされていた。わたしの席ではわたしに気遣ってくださる令嬢達が重い空気の中過ごしていた。
それを気にせずわたしはニコニコと笑顔で過ごした。
お茶会がお開きになり、わたしは陛下のもとへ向かおうとしたらイーサン殿下がアーシャ様を連れてわたしのところへ来た。
「王太子殿下にご挨拶申し上げます」
わたしはいつものように無表情で形だけの挨拶をした。
そして「申し訳ございません、急いでいるので失礼致します」
と言って陛下のもとへむかった。
今日は陛下に呼ばれていた。
婚約してから5年目。
婚約解消のお願いを陛下に伝えるのは7回目だ。
侍女長のジャルマはさすがに王家主催のお茶会にはみすぼらしい格好をさせて行くことはしない。それは侯爵家の恥、ひいてはお父様の恥にもなるから。
お父様は今も領地で暮らしている。最近は領主として忙しく過ごしているみたいだけど王都に帰ってくることは今のところない。お母様も忙しくて領地には行っていない。
二人の関係を壊したわたしは何も聞くことはできないでいた。
「お嬢様、しっかりお立ちください、動かないで!」
コルセットをこれでもかとぎゅうぎゅうに締め上げられ、ピンを地肌に突き刺されながらなんとか拷問の着替えの時間が終わった。
ほんとこんな痛い目に遭ってまでドレスなんて着たくない。わたしの体はまだ太ももやお尻にアザがある。いまだに続く侯爵家の家庭教師の体罰。
慣れたとはいえ痛いものは痛い。
お母様にいい加減訴えたらいい?
絶対いや。
それは負けると言うこと。ジャルマには負けたくない。意地でも耐えてやるんだから!
そしてわたしが成人したらコイツをうちの屋敷から叩き出してやる!
「カトリーヌ、支度はできたの?」
お姉様がわたしの部屋に顔を出した。
さっきまで乱暴な態度でわたしに接していたジャルマの顔と態度が一瞬で変わる。
「セシル様!もう少しで終わります」
お姉様に見せるジャルマの媚を売るような笑顔。
「カトリーヌはその淡いクリーム色のフリルのついた可愛いドレスがとても似合っているわ。今日は髪を結い上げてもらったのね?とても可愛いわ」
お姉様は留学を終えて今はお母様に付いて侯爵家の後継者としての勉強を始めた。
婚約者は留学中に知り合った他国の王族でもあるロイズ様と今は遠距離恋愛中だ。
いずれはお姉様と結婚して婿入りする予定だ。その頃にはわたしは邪魔になるかもしれない、でもジャルマを追い出すまではなんとかこの屋敷に居座り暮らしたい。
ジャルマ追い出し計画は着々と進んでいる。
もちろんわたしの頭の中だけで。
「お姉様はお茶会には参加しないのですか?」
「わたしは今日ロイズが来るから欠席するのよ、日を改めてロイズと両陛下には挨拶に伺う予定なの」
「ロイズ様はこちらにお泊まりになるのですか?」
「そうなの、聞いてなかったかしら?」
ーーはい、ジャルマがわたしから目線を逸らした。わざと知らせなかったのね。ま、いつものことだから慣れてはいるけどね
「それでね、今日はカトリーヌにこれを付けて行ってもらいたくて持ってきたの」
わたしの目の前にあるのはダイヤモンドのブローチだった。とても豪華な……
「まぁなんで素敵なんでしょう」
そう言うとジャルマはお姉様から受け取りわたしの肌に刺しながらブローチをつけてくれた。
ーー痛っい!ジャルマは澄ましているけど内心わたしが痛がっているのを見てほくそ笑んでいるはず。
悔しい!
「とても素敵です」ジャルマの笑顔。
「お姉様ありがとうございます」
ーーーーー
わたしは一人で馬車に乗るとため息が出た。
「この悪趣味なフリルたっぷりのドレスにゴージャスなブローチ………合うわけないじゃない。ジャルマもジャルマだけどお姉様もお姉様だわ。これ完全に嫌がらせだわ」
あの優しい笑顔の下で何を思ってわたしに接しているのかわからない。
7歳も離れていてわたしが8歳の時には他国で大学へ通い最近また戻ってきたお姉様。
あまり接することはないけど「優しさ」という意地悪を受けている気がするのはわたしだけなのか……
姉は本気で似合うと思ってこのブローチを渡したのだろうか……
とりあえずこのブローチは外しドレスに付いているポケットにそっと隠した。
胸のところを覗くと血が固まってはいたけどやはり怪我していた。ドレスが汚れなくてよかった。
こんな悪趣味なドレスだけど、わたしの容姿には確かに似合っている。
ピンク色の髪の毛をいくつも編み込みをして、ふわっと可愛く結い上げて、フリルたっぷりの淡いドレス。
客観的に見ても見た目は確かに可愛らしい少女。
みんなから「可愛い」と言ってもらえるだろう。
全く趣味ではないし、それをわかっているジャルマの嫌がらせだけど。わたしがシンプルな服が好きで落ち着いた紺色や緑が好きなのをわかっていて敢えてこの服を選ぶのだから。
『巷のピンク色の髪のお馬鹿な男好きの少女』を作り出すために。
「はあーーー」
大きな溜息しか出ないわ。
ーーーーー
お茶会の会場へと着いた。
エスコートも護衛も侍女も付いていないわたしは一人で庭園へと向かう。
王宮内は通い慣れているので一人でも平気だ。
周りには見知った護衛騎士さん達がいる。
その場に着くとわたしよりも目上の人ばかり。
13歳のわたしが何故ここに呼ばれるのか……それは王太子殿下の婚約者だから。
みんなの前に行くと
「本日はよろしくお願い致しますカトリーヌ・ブランゼルと申します」
頭を下げカーテシーをして挨拶をする。
「カトリーヌ様は相変わらず可愛らしいわね」
「自分の可愛さをアピールしたいのよね」
「男受けする格好で来るなんて恥ずかしくないのかしら?」
ーー聞こえていますよ……誰が好き好んでこんな可愛らしい格好なんてするのよ!……と叫びたいけど笑顔で過ごす。
そして促された席へと座り周りから話しかけられることに対して静かに微笑み相槌をうつ。
そうただひたすら笑顔で。心を空っぽにして。
ザワザワと言う声が聞こえてきた。
笑顔でそちらを向くとわたしの笑顔は固まった。
イーサン殿下がアーシャ様をエスコートしてきた。満面の笑顔で。
悲しくて辛くて………なんて思うことはない。握り拳をつくり心の中でガッツポーズをした。
みんなが見ている、これで婚約解消だ。
わたしとイーサン殿下の不仲がハッキリとみんなにわかってもらえた。
なんて嬉しい日なのだろう。
ただイーサン殿下にわたしの笑顔を見せてあげるのが勿体なくて笑顔はスッと消えた。
イーサン殿下はアーシャ様と楽しそうに別の席で過ごされていた。わたしの席ではわたしに気遣ってくださる令嬢達が重い空気の中過ごしていた。
それを気にせずわたしはニコニコと笑顔で過ごした。
お茶会がお開きになり、わたしは陛下のもとへ向かおうとしたらイーサン殿下がアーシャ様を連れてわたしのところへ来た。
「王太子殿下にご挨拶申し上げます」
わたしはいつものように無表情で形だけの挨拶をした。
そして「申し訳ございません、急いでいるので失礼致します」
と言って陛下のもとへむかった。
今日は陛下に呼ばれていた。
婚約してから5年目。
婚約解消のお願いを陛下に伝えるのは7回目だ。
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