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第20話 〜ジュリー編〜
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久しぶりの王都。
屋敷に帰るとなんだか静かだわ。
いつもの沢山のお迎えの者がいない。
「これは……どう言う事?」
屋敷の中はガランとしていた。
「マークを呼んでちょうだい」
侍女に声をかけると侍女は困った顔をしていた。
「マークさんは辞めました」
「辞めた?では侍女長を呼んでちょうだい」
「侍女長も辞めました」
「どう言う事?誰か説明をして!」
そこに現れたのは料理長だった。
「ジュリー様、お帰りなさいましたか。旦那様から手紙を預かっております」
そう言うと手紙を渡された。
そこに入っていたのは、離縁状だった。
「どう言う事?何故離縁状なの?料理長説明をして!」
わたしは意味が分からなくて料理長に説明を求めた。
「封筒の中に説明の紙が入っています。わたしからは説明する事は憚られます」
わたしは仕方なく手紙を読んだ。
「これはどう言う事なの………アイシャが手術?心臓病?この屋敷で使用人のような生活をしていた?」
わたしは確かにアイシャを育ててはいなかった。
友人達と旅行に行ったりパーティーに行ったり領地で過ごしたり毎日楽しく過ごしてきた。
だってわたしの仕事はウィリアムの子どもを産む事だったから。
愛のない政略結婚。子どもさえ出来てしまえばわたしの役目は終わり。
後は公爵夫人として社交をしながら好きに暮らしていくだけ。
子ども達は家令のマークと侍女長にきちんとお願いしてあったから安心していた。
わたし自身子どもへの愛情は特にはなかったが、偶に会う子どもは可愛かったしお土産を買って渡すと喜んでくれるし、アイシャの笑顔には癒されてきた。
「アイシャはこの屋敷で酷い目に遭っていたの?ここにいる使用人達はアイシャを助けてくれていた人達?マーク達はアイシャに酷い仕打ちをしていたの?」
別にアイシャに愛情なんてないはず……
あの子の笑顔をいつ見たかしら?
お土産を渡すと喜んでいたのはいつだったかしら?
最近見かける事もなかったわ。
だからと言って気にした事もない。
わたしが呆然としていたら、
「母上、お帰りになられたんですね」
ルイズが疲れ切った顔をしていた。
わたしを睨むように見ながら
「貴女はアイシャが死のうと生きようと興味もないでしょう、父上からの伝言です。貴女が買ったものは全て差し上げるので屋敷から出て行ってくれ、との事です」
何を言っているのかよく分からなかった。
出て行ってくれ?離縁?
わたしが何をしたと言うの?
アイシャが病気なのも使用人に虐げられたのもわたしの所為ではないわ。
わたしはアイシャの所為で謂れのないことで離縁を言い渡されてイラッとした。
「ルイズ、ウィリアムは何処にいるの?話し合いをしたいわ。どうしてわたしが離縁されないといけないの?
わたしは疲れたの。ねえ、誰か!入浴の準備をしてちょうだい」
わたしが使用人達に声を掛けたのに誰も動こうとしない。
わたしの荷物を誰も運んでくれない。
「ねえ!聞いているの?わたしはとても疲れているのよ、早くしなさい!」
ルイズはわたしの事を呆れた顔をして見た。
「貴女は全くアイシャの心配すらしないのですね。アイシャは手術を拒絶しています、いえ、手術を受けさせてもらえないと諦めているのです」
「どうして?お金ならいくらでもあるのだからさっさと手術して治して王子妃教育を再開させないと。遅れたらその分恥をかくのは我が公爵家よ?」
「……貴女って人は……」
「本当にあの子ってお金がかかる子ね。王子妃になったらその分しっかり元を取り戻さないといけないわ」
「貴女の居る場所は此処にはありません。全ての荷物は貴女の実家に送っています。
父上はアイシャを助けるためにルビラ王国へ行っています。僕は今アイシャが行方不明になっているので殿下と一緒に探しているところです。
貴女が帰ってくると聞いたので一旦屋敷に戻ってきただけです」
大きな溜息を吐いたルイズは使用人に言った。
「さようなら、母上。ほんの少しでも貴女がアイシャのことを心配してくれると期待した僕が馬鹿でした。ジュリー様を実家へお連れして」
ルイズは使用人に声を掛けると屋敷を出て行った。
「な、何を言っているのよ!」
わたしは怒りで震えてそばにあった花瓶を叩き割った。
「ジュリー様、どうぞお帰りください。こちらには貴女様が居る場所はもう何処にもございません」
わたしはそのまま実家へ帰された。
実家の侯爵家には兄夫婦が住んでいるが、公爵夫人になったわたしとは反りが合わず、ずっと疎遠になっていた。
わたしが帰ると屋敷の者達は冷たい目で見つめてきた。
お兄様はわたしを見るなり
「お前の荷物は全て離れに置いてある。そこがお前の住む場所だ。嫌ならいつでも出て行ってくれていいから」
と言って去って行った。
わたしが離れ?あの薄汚い家に住めと言うの?
恐る恐る離れに行くと、やはりわたしの記憶通り古びた小さな家があった。
そこに入るとわたしの荷物がぎっしりと入っていて、どこで寝ればいいのか、どこに座ってゆっくりすればいいのかわからない状態だった。
片付けをして整理しないと住めない状態だし、床も所々ギシギシと音がする。
修理もしないといけない。壁もボロボロ。
こんな所住めるわけがない!
わたしはお兄様のところに文句を言いに行ったが追い返された。
「お前は娘を見殺しにしようとした毒母だ。もう社交界では醜聞が出回っている。お前の所為で関係ないわたし達も冷たい目で見られているんだ、置いてもらえるだけ感謝しろ。出て行ってもいいんだぞ。出ていかないならこれからの生活は全て自分のお金でなんとかしろ」
醜聞?そんなのが出回ったらもうわたしは社交界では生きていけないわ。
誰もわたしを相手にしなくなる。
わたしは何もしていないのにどうしてこんな目にあうの?
屋敷に帰るとなんだか静かだわ。
いつもの沢山のお迎えの者がいない。
「これは……どう言う事?」
屋敷の中はガランとしていた。
「マークを呼んでちょうだい」
侍女に声をかけると侍女は困った顔をしていた。
「マークさんは辞めました」
「辞めた?では侍女長を呼んでちょうだい」
「侍女長も辞めました」
「どう言う事?誰か説明をして!」
そこに現れたのは料理長だった。
「ジュリー様、お帰りなさいましたか。旦那様から手紙を預かっております」
そう言うと手紙を渡された。
そこに入っていたのは、離縁状だった。
「どう言う事?何故離縁状なの?料理長説明をして!」
わたしは意味が分からなくて料理長に説明を求めた。
「封筒の中に説明の紙が入っています。わたしからは説明する事は憚られます」
わたしは仕方なく手紙を読んだ。
「これはどう言う事なの………アイシャが手術?心臓病?この屋敷で使用人のような生活をしていた?」
わたしは確かにアイシャを育ててはいなかった。
友人達と旅行に行ったりパーティーに行ったり領地で過ごしたり毎日楽しく過ごしてきた。
だってわたしの仕事はウィリアムの子どもを産む事だったから。
愛のない政略結婚。子どもさえ出来てしまえばわたしの役目は終わり。
後は公爵夫人として社交をしながら好きに暮らしていくだけ。
子ども達は家令のマークと侍女長にきちんとお願いしてあったから安心していた。
わたし自身子どもへの愛情は特にはなかったが、偶に会う子どもは可愛かったしお土産を買って渡すと喜んでくれるし、アイシャの笑顔には癒されてきた。
「アイシャはこの屋敷で酷い目に遭っていたの?ここにいる使用人達はアイシャを助けてくれていた人達?マーク達はアイシャに酷い仕打ちをしていたの?」
別にアイシャに愛情なんてないはず……
あの子の笑顔をいつ見たかしら?
お土産を渡すと喜んでいたのはいつだったかしら?
最近見かける事もなかったわ。
だからと言って気にした事もない。
わたしが呆然としていたら、
「母上、お帰りになられたんですね」
ルイズが疲れ切った顔をしていた。
わたしを睨むように見ながら
「貴女はアイシャが死のうと生きようと興味もないでしょう、父上からの伝言です。貴女が買ったものは全て差し上げるので屋敷から出て行ってくれ、との事です」
何を言っているのかよく分からなかった。
出て行ってくれ?離縁?
わたしが何をしたと言うの?
アイシャが病気なのも使用人に虐げられたのもわたしの所為ではないわ。
わたしはアイシャの所為で謂れのないことで離縁を言い渡されてイラッとした。
「ルイズ、ウィリアムは何処にいるの?話し合いをしたいわ。どうしてわたしが離縁されないといけないの?
わたしは疲れたの。ねえ、誰か!入浴の準備をしてちょうだい」
わたしが使用人達に声を掛けたのに誰も動こうとしない。
わたしの荷物を誰も運んでくれない。
「ねえ!聞いているの?わたしはとても疲れているのよ、早くしなさい!」
ルイズはわたしの事を呆れた顔をして見た。
「貴女は全くアイシャの心配すらしないのですね。アイシャは手術を拒絶しています、いえ、手術を受けさせてもらえないと諦めているのです」
「どうして?お金ならいくらでもあるのだからさっさと手術して治して王子妃教育を再開させないと。遅れたらその分恥をかくのは我が公爵家よ?」
「……貴女って人は……」
「本当にあの子ってお金がかかる子ね。王子妃になったらその分しっかり元を取り戻さないといけないわ」
「貴女の居る場所は此処にはありません。全ての荷物は貴女の実家に送っています。
父上はアイシャを助けるためにルビラ王国へ行っています。僕は今アイシャが行方不明になっているので殿下と一緒に探しているところです。
貴女が帰ってくると聞いたので一旦屋敷に戻ってきただけです」
大きな溜息を吐いたルイズは使用人に言った。
「さようなら、母上。ほんの少しでも貴女がアイシャのことを心配してくれると期待した僕が馬鹿でした。ジュリー様を実家へお連れして」
ルイズは使用人に声を掛けると屋敷を出て行った。
「な、何を言っているのよ!」
わたしは怒りで震えてそばにあった花瓶を叩き割った。
「ジュリー様、どうぞお帰りください。こちらには貴女様が居る場所はもう何処にもございません」
わたしはそのまま実家へ帰された。
実家の侯爵家には兄夫婦が住んでいるが、公爵夫人になったわたしとは反りが合わず、ずっと疎遠になっていた。
わたしが帰ると屋敷の者達は冷たい目で見つめてきた。
お兄様はわたしを見るなり
「お前の荷物は全て離れに置いてある。そこがお前の住む場所だ。嫌ならいつでも出て行ってくれていいから」
と言って去って行った。
わたしが離れ?あの薄汚い家に住めと言うの?
恐る恐る離れに行くと、やはりわたしの記憶通り古びた小さな家があった。
そこに入るとわたしの荷物がぎっしりと入っていて、どこで寝ればいいのか、どこに座ってゆっくりすればいいのかわからない状態だった。
片付けをして整理しないと住めない状態だし、床も所々ギシギシと音がする。
修理もしないといけない。壁もボロボロ。
こんな所住めるわけがない!
わたしはお兄様のところに文句を言いに行ったが追い返された。
「お前は娘を見殺しにしようとした毒母だ。もう社交界では醜聞が出回っている。お前の所為で関係ないわたし達も冷たい目で見られているんだ、置いてもらえるだけ感謝しろ。出て行ってもいいんだぞ。出ていかないならこれからの生活は全て自分のお金でなんとかしろ」
醜聞?そんなのが出回ったらもうわたしは社交界では生きていけないわ。
誰もわたしを相手にしなくなる。
わたしは何もしていないのにどうしてこんな目にあうの?
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