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第16話 〜王宮編②〜
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「貴方!」
突然、王妃が扉を開けて入ってきた。
「どうした?」
「どうしてわたし達が王位を退かなければいけないのですか?」
「聞いていたのか?」
「だってハウザー様の呼び出しだと聞いたのに貴方が行かなくていいなんて言うからおかしいと思ったの。
嫌な予感がしたわ、だからこっそりと様子を窺っていたのよ」
「聞いていたならばわかるだろう。叔父上は国の『番人』だ。『番人』は絶対なんだ!」
王妃は何を国王は言っているのだろうと思ったのだろう。
「でしたらこんなジジイ殺してしまえばいいのではないの?」
王妃は怪しく微笑んだ。
「ほお、わたしを殺すか?」
ゴードンは楽しげに王妃に聞いた。
「だって今は三人だけよ、ゴードン様が死んだって誰にもわからないわ。ねえ貴方、このジジイを早く始末してちょうだい、わたしの王妃の座を奪おうなんてあり得ないわ」
確かにこの部屋には人払いされていて三人しかいない。目に見える人数は。
「やめろ!それ以上馬鹿な事を言わないでくれ。君の助かるはずの命が救えなくなる」
「え?何を言っているのよ貴方?このジジイを殺すだけでわたし達の地位は保たれるのよ?」
「あぁ……、君は王妃教育を受けたはずだろう?忘れたのかい?『番人』を殺そうとすれば殺られるのは言った本人だ、覚えていないのか?」
王妃教育では必ず『影』と『番人』について習う。
『影』は、嘘は吐かない。見たもの全てありのままを伝える。だから、正確であり王族にも靡くことは無い。
『影』が仕えるのは選ばれた『番人』のみ。
『番人』になった者が誰なのかは国王ですら知らされない。
『番人』に会えるのは退位を言い渡される時、もしくはそれに準ずる事をした時のみ。
今回は王妃の行動に問題があり、国王自身もそれを諌めるどころか見て見ぬふりをしていたこと。
そしてもう一つ『番人』が現れた理由は、
「王妃、お前は今まで贅沢をし過ぎた。このままでは国の財政が揺らぐ可能性がある。見逃せるのはここまでだ、ここで止めなければ国民達に迷惑をかける」
「何を言っているのよ?贅沢?王妃になったのだから少しくらいの贅沢の何がいけないの?
三人だけしかいないのよ、こんなジジイ殺すのなんて簡単な事よ、もういいわわたしが殺すから!」
王妃はドレスのスカートの中からナイフを取り出してゴードンに向けて襲い掛かった。
「ギィヤア!!!」
ナイフを持ったまま前に倒れ込んだのは王妃だった。
背中にはナイフが刺さっていた。
「だから言っただろう。『番人』は殺せない。これだけの殺気を君は感じていなかったのか……」
誰もいない筈の三人の周りには影達が潜み、常にゴードンを守っていた。
国王に常に向けられていた殺気に息苦しさすら感じていた。なのに王妃は浅はかにもゴードンを殺そうとした。
国王は王妃の持っていたナイフを取ると首にナイフを当てた。
「叔父上、すみませんでした。あの世でお詫びします」
ナイフを横に動か………
バシッ!
ナイフを影が振り払った。
「……何故……?」
「国王、お前はまだ王の座をおりて次に引き継ぐまで生きなければいけない。それがこの国の国王としての最後の仕事だ。簡単に死なれては困る」
「死ぬことも許されないのか」
こうして王妃は重傷を負い、檻付きの病室の硬いベッドへ寝かされた。
国王は、時を置いて王の座を退く事を伝えられて、王妃から引き離された。
『影』は、国王のそばに常につくことになった。
死なないように、誰にも今の現状を話さないように、そして、いつも通り国王としての公務を行わせるために。
全て『番人』の指示通りに動く事を強制される。
エリック殿下にすぐに留学を止めて帰国するように指示を出した。
そしてゴードンの孫であるジャン・シュトリクも呼び寄せた。
二人を競わせどちらかを次の国王にする事を告げるために。
決めるのは表では国王であるが、『番人』が決めることになっている。
エリックは、優秀ではあるがジャンのように人を惹きつける魅力を持たない。
ジャンの優秀さは貴族達の間でも高評価を付けられている。
エリックは留学を通してどれだけ成長させて帰ってきたかで、二人のどちらが国王になるか決まる。
『番人』は自分の孫だからと贔屓はしない。
国王として相応しい者を淡々と選ぶことになる。
突然、王妃が扉を開けて入ってきた。
「どうした?」
「どうしてわたし達が王位を退かなければいけないのですか?」
「聞いていたのか?」
「だってハウザー様の呼び出しだと聞いたのに貴方が行かなくていいなんて言うからおかしいと思ったの。
嫌な予感がしたわ、だからこっそりと様子を窺っていたのよ」
「聞いていたならばわかるだろう。叔父上は国の『番人』だ。『番人』は絶対なんだ!」
王妃は何を国王は言っているのだろうと思ったのだろう。
「でしたらこんなジジイ殺してしまえばいいのではないの?」
王妃は怪しく微笑んだ。
「ほお、わたしを殺すか?」
ゴードンは楽しげに王妃に聞いた。
「だって今は三人だけよ、ゴードン様が死んだって誰にもわからないわ。ねえ貴方、このジジイを早く始末してちょうだい、わたしの王妃の座を奪おうなんてあり得ないわ」
確かにこの部屋には人払いされていて三人しかいない。目に見える人数は。
「やめろ!それ以上馬鹿な事を言わないでくれ。君の助かるはずの命が救えなくなる」
「え?何を言っているのよ貴方?このジジイを殺すだけでわたし達の地位は保たれるのよ?」
「あぁ……、君は王妃教育を受けたはずだろう?忘れたのかい?『番人』を殺そうとすれば殺られるのは言った本人だ、覚えていないのか?」
王妃教育では必ず『影』と『番人』について習う。
『影』は、嘘は吐かない。見たもの全てありのままを伝える。だから、正確であり王族にも靡くことは無い。
『影』が仕えるのは選ばれた『番人』のみ。
『番人』になった者が誰なのかは国王ですら知らされない。
『番人』に会えるのは退位を言い渡される時、もしくはそれに準ずる事をした時のみ。
今回は王妃の行動に問題があり、国王自身もそれを諌めるどころか見て見ぬふりをしていたこと。
そしてもう一つ『番人』が現れた理由は、
「王妃、お前は今まで贅沢をし過ぎた。このままでは国の財政が揺らぐ可能性がある。見逃せるのはここまでだ、ここで止めなければ国民達に迷惑をかける」
「何を言っているのよ?贅沢?王妃になったのだから少しくらいの贅沢の何がいけないの?
三人だけしかいないのよ、こんなジジイ殺すのなんて簡単な事よ、もういいわわたしが殺すから!」
王妃はドレスのスカートの中からナイフを取り出してゴードンに向けて襲い掛かった。
「ギィヤア!!!」
ナイフを持ったまま前に倒れ込んだのは王妃だった。
背中にはナイフが刺さっていた。
「だから言っただろう。『番人』は殺せない。これだけの殺気を君は感じていなかったのか……」
誰もいない筈の三人の周りには影達が潜み、常にゴードンを守っていた。
国王に常に向けられていた殺気に息苦しさすら感じていた。なのに王妃は浅はかにもゴードンを殺そうとした。
国王は王妃の持っていたナイフを取ると首にナイフを当てた。
「叔父上、すみませんでした。あの世でお詫びします」
ナイフを横に動か………
バシッ!
ナイフを影が振り払った。
「……何故……?」
「国王、お前はまだ王の座をおりて次に引き継ぐまで生きなければいけない。それがこの国の国王としての最後の仕事だ。簡単に死なれては困る」
「死ぬことも許されないのか」
こうして王妃は重傷を負い、檻付きの病室の硬いベッドへ寝かされた。
国王は、時を置いて王の座を退く事を伝えられて、王妃から引き離された。
『影』は、国王のそばに常につくことになった。
死なないように、誰にも今の現状を話さないように、そして、いつも通り国王としての公務を行わせるために。
全て『番人』の指示通りに動く事を強制される。
エリック殿下にすぐに留学を止めて帰国するように指示を出した。
そしてゴードンの孫であるジャン・シュトリクも呼び寄せた。
二人を競わせどちらかを次の国王にする事を告げるために。
決めるのは表では国王であるが、『番人』が決めることになっている。
エリックは、優秀ではあるがジャンのように人を惹きつける魅力を持たない。
ジャンの優秀さは貴族達の間でも高評価を付けられている。
エリックは留学を通してどれだけ成長させて帰ってきたかで、二人のどちらが国王になるか決まる。
『番人』は自分の孫だからと贔屓はしない。
国王として相応しい者を淡々と選ぶことになる。
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