【完結】愛してました、たぶん

ダンのプロポーズ

俺は今日こそシャノンにプロポーズをすると決めていた。

「よし！」

玄関で気合いを入れた。

「……………よし！行くぞ」

「お兄様、いつまでそこにいらっしゃるのですか？
邪魔です！」

「…き、気合いを入れて……シャノンの…」

「では、行って参りますわ」

「俺の話を聞いてく…「行ってきます」
ジェシーは、俺の話も聞かず何処かへ出かけた。

俺はシャノンに会いに行く。

今日はシャノンの休みの日。

我が家の料理人に頼んでシャノンの好きなお菓子も作ってもらった。

花束も庭から薔薇を摘んで自分で包んだ。

指輪も買って、あとは結婚の申し込みをするだけ。

シャノンの家は、診療所から歩いて10分くらいの所にある。
診療所の前を通ってシャノンの家へ行くのだが、同じ敷地にあるヘンドリー伯爵の邸の前でロイズに話しかけられた。

「ダン！今からシャノンのところに行くのか？」

最近ロイズは長年婚約していたエリアナと結婚した。
俺の長年のライバルだった男だ。

俺の姿を見ると、にこにこしてそのまま伯爵邸へ連れて行かれた。

ロイズは、シャノンへの恋を封印してエリアナと婚約した。
たぶん少しずつエリアナのことを好きになっていったのだと思うが、シャノンの離縁問題で邸に来た頃は、グラついていたと思う。

二人で酒を飲み交わすと本音が漏れる。
「ラウルの奴、シャノンを蔑ろにしやがって、絶対に許さない、なんで僕では駄目だったんだ。僕なら泣かせたりしない。一生大事にしたのに」
と、酔い潰れて机を叩いて怒りをぶつけていた。

時には、
「シャノンを愛していたんだ。どうやっても忘れられなかった」
と、泣きそうな顔をしていた。
だが、ラウルと離縁した頃ロイズのシャノンを見る目は変わった。

吹っ切れたのがわかった。

俺は諦めることも吹っ切れることも出来ず、ずっとしつこくシャノンを思い忘れられなかった。

だからこそロイズの気持ちもわかった。
シャノンが自分を思うことはないと踏ん切りをつけたのだ。
俺も同じだった。
自分を思ってくれることはないとわかっていた。

それでも忘れられなくて、ただ近くにいて、彼女が他に好きな人ができてもそれを見守っていくしかなくても忘れられなかったし諦められなかった。

「ダン、シャノンに申し込むのか？」

「ああ、そのつもりだ」

「シャノンを絶対に幸せにしてやってくれ、お願いだ。もし、泣かせたらお前をぶん殴りに行くからな」

「俺はずっとシャノンだけだ。他に好きになった人はいない、これからもずっとシャノンだけだ」

「お前の想いは俺よりずっと重たいんだよな、頑張れよ」

ロイズは少しだけ苦しそうな顔をしたが、俺に向かって笑顔で送り出した。

「じゃあ、行ってくる」

俺は、ジェシーに馬鹿にされ、ロイズに邪魔されたが、シャノンの所へ急いで向かおうとした。

門に今度はノエル様が立っていた。

「ダン、シャノンに結婚の申し込みに行くのね、幸せにしなかったら許さないわよ」

「大丈夫です、何があっても幸せにします」

やっと、シャノンの家にたどり着いたら、また、人が立っていた。

「ダン様、シャノン様に結婚の申し込みをなさるのですね、シャノン様を絶対に幸せにしてください。お願いします」
ロニーは、俺に何度も頭を下げた。

「大丈夫、何があっても大切にする。俺がシャノンを幸せにするから」

俺はロニーに言ってから、家をノックした。

「はい！」
シャノンの声が聞こえて、ドアを開けてくれた。

俺はシャノンに花束を渡した。

「ダン、綺麗ね。ありがとう」
シャノンのフワッとした笑顔に迎えられ俺は緊張しながら家の中に入った。

入った瞬間、
「シャ、シャノン、お、俺と、け、結婚してください！」
と、噛みながらも叫んだ。

「ダン、ありがとう」
シャノンは、少し驚きながらも俺の申し込みを受け入れてくれた。

俺は思わずシャノンを抱きしめてキスをしようとし……たら、奥から
「お兄様、良かったわね」
と、ジェシーが言った。

「え？」
俺はキスをやめて、ドアから奥を見た。

ジェシーがにこにこしながら椅子に座っていた。
その横には、父上と母上、ヘンドリー伯爵までいた。

「「「ダン、おめでとう」」」
と、みんなに言われたが、俺は恥ずかしさと驚きで顔が真っ赤になった。

「な、なんでみんないるんだよ！」

「だって、お兄様が最近一人でブツブツ呟いていたから、お姉様に今日結婚の申し込みをすることわかってたの。だから、みんなに教えてあげたのよ」
ふふふ。

「でも、お姉様には言ってなかったから大丈夫よ」
ジェシーは、悪魔の微笑みを向けた。

「シャノン、なんかカッコ悪いプロポーズになってしまった」
俺は肩を落とした。

「ダン、貴方からのプロポーズ、とっても嬉しかったわ、ありがとう」

こうして俺のプロポーズはちょっとカッコ悪く終わった。