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ダンとわたし③
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ダンからのプロポーズから数日、わたしは研修医の仕事に身が入らない。
頑張ろうと思っても無理でどうしたらいいのかわからずに、ロニーが住む以前わたし達が住んでいた赤い屋根の白い家に向かった。
以前は小さな家だったが、改築されて部屋数も増えて家族で暮らすには丁度いい広さになっていた。
リーサも結婚して今は隣町で暮らしている。
「シャノン様……どうしたのですか?何か悩んでいるのですか?」
「どうしてわかるの?」
「どれだけの時間ご一緒に過ごさせてもらったと思うんですか?それに我慢した時とか悩んだ時の癖が出てますよ。
すぐに下唇噛むでしょう?」
「あ…」
わたしはしばらく黙ったままいたが、ロニーにダンの今までのことを伝えた。
「やっとダン様伝えたのですね」
「知っていたの?」
「周りは気づくでしょう?あんなにシャノン様に会いに来てあんな顔でシャノン様をいつも見てたら」
「顔?」
「はい、いつもシャノン様を愛おしく見ておられました」
(は、恥ずかしい)
わたしは顔が真っ赤になった。
「し、知らなかったわ」
「まぁ、シャノン様ですからね。ダン様には気の毒だけどシャノン様が気付くわけはありませんよね。わたし達も人の恋路は知ったことではないし」
ロニーはちょっと意地悪く笑った。
「シャノン様、わたしが答えを出すことは出来ません。でもプロポーズを断れば二度とダン様と今みたいにお会いになることはないと思います。それで良いのか嫌なのか、それが答えだと思います」
「……会えなくなる?……わたしのそばから離れていくの?……」
わたしは涙が溢れてきた。
「シャノン様、それが答えです」
わたしはやっとダンへの気持ちに気づいた。失いたくない。それはダンをいつの間にか好きになっていたと言うことだった。
◇ ◇ ◇
わたしは自分からダンに会いに行った。
前もって先触れを出していたので、シェリル夫人とジェシーが待っていてくれた。
「ご無沙汰しておりました、シェリル夫人」
「ええ、久しぶりね、シャノン。頑張っているわね。あのいつも壊れそうだったシャノンが生き生きとして、目が輝いているわ」
「ありがとうございます。大変ですが医師の仕事はとても充実しております」
「シャノン姉様、お久しぶりぶりです」
ジェシーはわたしを見ると抱きついてきてくれた。
「ジェシー、会いたかったわ。中々会えなかったもの」
「わたしも学園を卒業して今は花嫁修行中です。いつもシャノン様はわたしが学園に行っている時に来てたから中々会えなかったわ。やっとゆっくり会えて嬉しいわ」
二人に連れられて客室へ案内されてお茶を出された。
「今日はダンに用事があるのよね?」
「はい。この前の頼まれごとの返事をしようと思いまして」
「返事?」
「はい、ちょっと頼まれ事をしていて、どうしようか悩んでいたんですが受け入れようかと思いまして…」
わたしはまだダンに返事をしていないのでここで先に他の人に伝えたくはなかった。
コンコン
「ダン、入りなさい」
ダンは微妙ななんとも言えない顔で入ってきた
「シャノン、いらっしゃい」
シェリル様とジェシーは部屋を後にした。
わたしとダンは二人きりになった。
「「・・・・・」」
沈黙が続いた。
「「あ、あの…」」
ふふふ
二人の言葉が被ってしまった。
「ダン、笑ってごめんなさい。」
「いや、俺もどうして良いかわからなくて、今日はシャノンの答えを聞くと思うと……」
ダンはわたしの顔を見た。
わたしもダンの顔を見つめた。
「わたし、ダンに対して好きなのかよく分からないの。ごめんなさい」
「いや、わかってたからもういいよ」
ダンは目を逸らして少し下を向いた。
「あ…違うの。えっと…ロニーに言われたの。ダンにもう二度と会えなくてもいいのかって。それを考えたら寂しくて会えなくなって話せなくなったら辛くてこれってダンのことが好きって言うことなのかな?」
「シャノン、それを俺に聞くの?」
「ご、ごめん。でもダンに会えなくなるのも話せなくなるのも考えるだけで辛いの。わたしから離れていかないで。……たぶん、貴方のことが好きなの」
「たぶん…か」
「だってダンとはずっと言い合いばかりしてたし、突然好きとか恥ずかしすぎる……し、認めちゃうとこれからどうやってダンと付き合って行けばいいのかわからないわ」
ダンは突然わたしをギュッと抱きしめた。
「初めて抱きしめた。俺の初恋、諦めなくてよかった。シャノン、愛してる」
わたしは恥ずかしくて、でもダンの温かさにふんわりと心地よくてなんとも言えない気分だった。
「ダン兄様、おめでとう」
「ダン、初恋がやっと叶ったわね」
二人がにこにこして部屋に入ってきた。
(何、この恥ずかしさ…どうしよう…消えたい…)
わたしは慌ててダンから離れようとしたがダンはギュッと抱きしめたまま離れなかった。
「ねえ、お願い、恥ずかしいから離れて」
「何で?やっと両思いになったのに絶対離れない!」
「兄様は、拗らせすぎてシャノン姉様に素直に慣れなかったから、やっと素直になれたのね」
と、苦笑いをしているジェシー。
「ふふふ、ダン、長年の初恋が実ったようね、おめでとう。シャノン、面倒臭い男だから大変だけどよろしくね」
と、笑顔でシェリル様にも言われた。
わたしはなんとかダンの体から離れて、二人に向かって挨拶をした。
「傷物ですが、ダンとこれからずっと長く一緒にいたいと思っております。どうぞお許しいただければ幸いです」
「何を言っているの。わたし達は貴方を歓迎するわ」
頑張ろうと思っても無理でどうしたらいいのかわからずに、ロニーが住む以前わたし達が住んでいた赤い屋根の白い家に向かった。
以前は小さな家だったが、改築されて部屋数も増えて家族で暮らすには丁度いい広さになっていた。
リーサも結婚して今は隣町で暮らしている。
「シャノン様……どうしたのですか?何か悩んでいるのですか?」
「どうしてわかるの?」
「どれだけの時間ご一緒に過ごさせてもらったと思うんですか?それに我慢した時とか悩んだ時の癖が出てますよ。
すぐに下唇噛むでしょう?」
「あ…」
わたしはしばらく黙ったままいたが、ロニーにダンの今までのことを伝えた。
「やっとダン様伝えたのですね」
「知っていたの?」
「周りは気づくでしょう?あんなにシャノン様に会いに来てあんな顔でシャノン様をいつも見てたら」
「顔?」
「はい、いつもシャノン様を愛おしく見ておられました」
(は、恥ずかしい)
わたしは顔が真っ赤になった。
「し、知らなかったわ」
「まぁ、シャノン様ですからね。ダン様には気の毒だけどシャノン様が気付くわけはありませんよね。わたし達も人の恋路は知ったことではないし」
ロニーはちょっと意地悪く笑った。
「シャノン様、わたしが答えを出すことは出来ません。でもプロポーズを断れば二度とダン様と今みたいにお会いになることはないと思います。それで良いのか嫌なのか、それが答えだと思います」
「……会えなくなる?……わたしのそばから離れていくの?……」
わたしは涙が溢れてきた。
「シャノン様、それが答えです」
わたしはやっとダンへの気持ちに気づいた。失いたくない。それはダンをいつの間にか好きになっていたと言うことだった。
◇ ◇ ◇
わたしは自分からダンに会いに行った。
前もって先触れを出していたので、シェリル夫人とジェシーが待っていてくれた。
「ご無沙汰しておりました、シェリル夫人」
「ええ、久しぶりね、シャノン。頑張っているわね。あのいつも壊れそうだったシャノンが生き生きとして、目が輝いているわ」
「ありがとうございます。大変ですが医師の仕事はとても充実しております」
「シャノン姉様、お久しぶりぶりです」
ジェシーはわたしを見ると抱きついてきてくれた。
「ジェシー、会いたかったわ。中々会えなかったもの」
「わたしも学園を卒業して今は花嫁修行中です。いつもシャノン様はわたしが学園に行っている時に来てたから中々会えなかったわ。やっとゆっくり会えて嬉しいわ」
二人に連れられて客室へ案内されてお茶を出された。
「今日はダンに用事があるのよね?」
「はい。この前の頼まれごとの返事をしようと思いまして」
「返事?」
「はい、ちょっと頼まれ事をしていて、どうしようか悩んでいたんですが受け入れようかと思いまして…」
わたしはまだダンに返事をしていないのでここで先に他の人に伝えたくはなかった。
コンコン
「ダン、入りなさい」
ダンは微妙ななんとも言えない顔で入ってきた
「シャノン、いらっしゃい」
シェリル様とジェシーは部屋を後にした。
わたしとダンは二人きりになった。
「「・・・・・」」
沈黙が続いた。
「「あ、あの…」」
ふふふ
二人の言葉が被ってしまった。
「ダン、笑ってごめんなさい。」
「いや、俺もどうして良いかわからなくて、今日はシャノンの答えを聞くと思うと……」
ダンはわたしの顔を見た。
わたしもダンの顔を見つめた。
「わたし、ダンに対して好きなのかよく分からないの。ごめんなさい」
「いや、わかってたからもういいよ」
ダンは目を逸らして少し下を向いた。
「あ…違うの。えっと…ロニーに言われたの。ダンにもう二度と会えなくてもいいのかって。それを考えたら寂しくて会えなくなって話せなくなったら辛くてこれってダンのことが好きって言うことなのかな?」
「シャノン、それを俺に聞くの?」
「ご、ごめん。でもダンに会えなくなるのも話せなくなるのも考えるだけで辛いの。わたしから離れていかないで。……たぶん、貴方のことが好きなの」
「たぶん…か」
「だってダンとはずっと言い合いばかりしてたし、突然好きとか恥ずかしすぎる……し、認めちゃうとこれからどうやってダンと付き合って行けばいいのかわからないわ」
ダンは突然わたしをギュッと抱きしめた。
「初めて抱きしめた。俺の初恋、諦めなくてよかった。シャノン、愛してる」
わたしは恥ずかしくて、でもダンの温かさにふんわりと心地よくてなんとも言えない気分だった。
「ダン兄様、おめでとう」
「ダン、初恋がやっと叶ったわね」
二人がにこにこして部屋に入ってきた。
(何、この恥ずかしさ…どうしよう…消えたい…)
わたしは慌ててダンから離れようとしたがダンはギュッと抱きしめたまま離れなかった。
「ねえ、お願い、恥ずかしいから離れて」
「何で?やっと両思いになったのに絶対離れない!」
「兄様は、拗らせすぎてシャノン姉様に素直に慣れなかったから、やっと素直になれたのね」
と、苦笑いをしているジェシー。
「ふふふ、ダン、長年の初恋が実ったようね、おめでとう。シャノン、面倒臭い男だから大変だけどよろしくね」
と、笑顔でシェリル様にも言われた。
わたしはなんとかダンの体から離れて、二人に向かって挨拶をした。
「傷物ですが、ダンとこれからずっと長く一緒にいたいと思っております。どうぞお許しいただければ幸いです」
「何を言っているの。わたし達は貴方を歓迎するわ」
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