上 下
59 / 89

シャノン、お父様と話す

しおりを挟む
ウィリアム事件から疲れて寝てしまったわたしは目覚めると外が暗くなっていた。

「シャノン様、起きましたね」

ロニーはわたしのそばにずっといてくれたみたい。

「ロニー、今何時かしら?外が暗くなっているわ」

「もう夜の7時ですよ」

「もうそんな時間……いっぱい寝てしまったのね」

「旦那様がシャノン様を心配して起きられるのを待っております、お呼びしますか?」

「……お父様?なぜ?わたしが起きるのを待っていたのかしら?……そういえば今日何故ここにいたの?
何か話したいことでもあるのかしら?
ねえ?ロニー?」

ロニーは真面目な顔で言った。
「では、お断りしますか?」

「こういう時はどうしたらいいのかしら?」

わたしにはわからなかった。
だってわたしに会いに来たことなんてなかったんだもん。
(わたしが寝ている時は来たことあるらしいけど記憶にないし)

昼間の抱っこを思い出してしまった。

「お父様と何を話したらいいのかわからないわ」

「シャノン様………」
ロニーは、クスクス笑い出した。

「ええ?ロニー何故笑うの?」

「鏡差し上げましょうか?シャノン様顔が真っ赤ですよ!」

思わず頬を触った。



◇ ◇ ◇


「「・・・・・」」

わたしとお父様、いつまで続くの……この無言地獄……

「旦那様、シャノン様、わたし外に出て…「待って!」」
ロニーが部屋から出ようとしたので急いで止めた。

(お父様と二人っきりなんてに無理、ありえないわ)

ロニーがわたしを見て深い溜息をついた。

「ハァ~……失礼ながら言わせていただきます。
お二人がお話ししないのならここにわたしがいる必要はないのでは?」

「……そ、そうよね。お父様、先程は助けていただき誠にありがとうございました。きちんとしたお礼を言わず失礼致しました」

「………シャノン様……それちが……い…ます」
ロニーがさらに溜息をついた

「ハァ~ッ………」

「旦那様、シャノン様、

「いい加減になさいませ。旦那様もそろそろ素直にシャノン様にお話なさってもいいと思います」

そしてわたしに振り向いた。

「シャノン様もそろそろ旦那様に向き合わなければいけないのでは?お二人共、逃げてばかりでは何も始まりませんよ?」

「ロニー、何が始まらないの?」
わたしが素直に聞いた。

「シャノン様はお勉強は出来ても人としてズレてます!」

「旦那様も侯爵様としては優秀かもしれませんが、父親としては本当に最低です!」

お父様が初めて口を開いた。

「…さ、……い、て…い」

「え?ズレてる?」

「そうです!
旦那様!
ここまで言ったからもう一緒なので言わせていただきます!

シャノン様は旦那様に愛されていないとずっと思っておりました。

喘息が出ても熱が出ても
『お父様には言わないでね』と言っていつもわたしの手を握りしめて我慢なされていました。
旦那様がこっそりと夜中にシャノン様に会いに来てもそんな訳の分からない行動はシャノン様には伝わっておりません!

一度でもシャノン様が起きている時に部屋に顔を出せばこんなに拗れなかったんですよ!
邸の者は何度もアドバイスしましたよね?
このままじゃシャノン様に捨てられると!

なのにもしシャノン様に言ったらクビだと脅して言わせない!

まあ、わたしは旦那様の良い所なんて絶対にシャノン様に言うつもりはありませんでしたけど。

わたしが来た時のシャノン様は、頑張っても認めてもらえないと思って旦那様に諦められていたから言っても信じてもらえなかったでしょうし!

それでもシャノン様は、お馬鹿だから認めて貰いたくて、必死で勉強もダンスもマナーもピアノも頑張っていました。

それなのに旦那様は口を開けば
『勉強しなさい!』
『努力が足りない』
と酷い言葉ばかりを言われましたよね!

本当はお病気ばかりするシャノン様がみんなについて行けなくなるのが心配でつい口煩くなっていただけなんてシャノン様には全く伝わりませんよ!」

「ロニー、わたしってお馬鹿なの?」

「煩いです!」

「う、うるさいって…」

「旦那様、シャノン様はずっとずっと貴方に認められたい!愛されたい!と思っておりました。
まあ、わたしは旦那様に愛される必要なんかないと思っておりましたけどね。
だから、私たち使用人は旦那様の代わりにみんなでシャノン様を守り愛してきたんです!
お一人で食べる食事なんて美味しくあるわけないじゃないですか?あんな広い部屋でポツンとお一人で毎日食べさせるなんて!
だから私たち使用人と一緒に食事をして少しでも寂しいお気持ちを和らげてあげたかったんです!
シャノン様を私たちがずっと貴方の冷たい態度からお守りしてきたんです!
シャノン様が貴方を捨てたのは

『お前が出来ることは侯爵家のためになることだ、わかっているな?』
ラウル様とのお見合いの日に言った言葉ですよ!
シャノン様は自分は駒だと思ったんですよ!愛されてなどいないと、嫌われているんだとその時自覚してしまったんです。貴方に愛されることを完全に諦めたんです!

だから今もラウル様と離縁する自分はゴミだと思っているお馬鹿さんなんです!」

ロニーは、最後の方は涙をポロポロ流していた。

「シャノン様、貴方はわたしの大事な大事な愛する主なのです。お馬鹿で抜けててとっても優しくて可愛いんです……」







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】もう誰にも恋なんてしないと誓った

Mimi
恋愛
 声を出すこともなく、ふたりを見つめていた。  わたしにとって、恋人と親友だったふたりだ。    今日まで身近だったふたりは。  今日から一番遠いふたりになった。    *****  伯爵家の後継者シンシアは、友人アイリスから交際相手としてお薦めだと、幼馴染みの侯爵令息キャメロンを紹介された。  徐々に親しくなっていくシンシアとキャメロンに婚約の話がまとまり掛ける。  シンシアの誕生日の婚約披露パーティーが近付いた夏休み前のある日、シンシアは急ぐキャメロンを見掛けて彼の後を追い、そして見てしまった。  お互いにただの幼馴染みだと口にしていた恋人と親友の口づけを……  * 無自覚の上から目線  * 幼馴染みという特別感  * 失くしてからの後悔   幼馴染みカップルの当て馬にされてしまった伯爵令嬢、してしまった親友視点のお話です。 中盤は略奪した親友側の視点が続きますが、当て馬令嬢がヒロインです。 本編完結後に、力量不足故の幕間を書き加えており、最終話と重複しています。 ご了承下さいませ。 他サイトにも公開中です

「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。

海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。 アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。 しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。 「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」 聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。 ※本編は全7話で完結します。 ※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。

もう尽くして耐えるのは辞めます!!

月居 結深
恋愛
 国のために決められた婚約者。私は彼のことが好きだったけど、彼が恋したのは第二皇女殿下。振り向いて欲しくて努力したけど、無駄だったみたい。  婚約者に蔑ろにされて、それを令嬢達に蔑まれて。もう耐えられない。私は我慢してきた。国のため、身を粉にしてきた。  こんなにも報われないのなら、自由になってもいいでしょう?  小説家になろうの方でも公開しています。 2024/08/27  なろうと合わせるために、ちょこちょこいじりました。大筋は変わっていません。

さよなら、皆さん。今宵、私はここを出ていきます

結城芙由奈 
恋愛
【復讐の為、今夜私は偽の家族と婚約者に別れを告げる―】 私は伯爵令嬢フィーネ・アドラー。優しい両親と18歳になったら結婚する予定の婚約者がいた。しかし、幸せな生活は両親の突然の死により、もろくも崩れ去る。私の後見人になると言って城に上がり込んできた叔父夫婦とその娘。私は彼らによって全てを奪われてしまった。愛する婚約者までも。 もうこれ以上は限界だった。復讐する為、私は今夜皆に別れを告げる決意をした―。 ※マークは残酷シーン有り ※(他サイトでも投稿中)

愛するつもりなぞないんでしょうから

真朱
恋愛
この国の姫は公爵令息と婚約していたが、隣国との和睦のため、一転して隣国の王子の許へ嫁ぐことになった。余計ないざこざを防ぐべく、姫の元婚約者の公爵令息は王命でさくっと婚姻させられることになり、その相手として白羽の矢が立ったのは辺境伯家の二女・ディアナだった。「可憐な姫の後が、脳筋な辺境伯んとこの娘って、公爵令息かわいそうに…。これはあれでしょ?『お前を愛するつもりはない!』ってやつでしょ?」  期待も遠慮も捨ててる新妻ディアナと、好青年の仮面をひっ剥がされていく旦那様ラキルスの、『明日はどっちだ』な夫婦のお話。    ※なんちゃって異世界です。なんでもあり、ご都合主義をご容赦ください。  ※新婚夫婦のお話ですが色っぽさゼロです。Rは物騒な方です。  ※ざまあのお話ではありません。軽い読み物とご理解いただけると幸いです。 ※おまけ更新中です。

前世と今世の幸せ

夕香里
恋愛
幼い頃から皇帝アルバートの「皇后」になるために妃教育を受けてきたリーティア。 しかし聖女が発見されたことでリーティアは皇后ではなく、皇妃として皇帝に嫁ぐ。 皇帝は皇妃を冷遇し、皇后を愛した。 そのうちにリーティアは病でこの世を去ってしまう。 この世を去った後に訳あってもう一度同じ人生を繰り返すことになった彼女は思う。 「今世は幸せになりたい」と ※小説家になろう様にも投稿しています

ごめんなさい、お姉様の旦那様と結婚します

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
しがない伯爵令嬢のエーファには、三つ歳の離れた姉がいる。姉のブリュンヒルデは、女神と比喩される程美しく完璧な女性だった。端麗な顔立ちに陶器の様に白い肌。ミルクティー色のふわふわな長い髪。立ち居振る舞い、勉学、ダンスから演奏と全てが完璧で、非の打ち所がない。正に淑女の鑑と呼ぶに相応しく誰もが憧れ一目置くそんな人だ。  一方で妹のエーファは、一言で言えば普通。容姿も頭も、芸術的センスもなく秀でたものはない。無論両親は、エーファが物心ついた時から姉を溺愛しエーファには全く関心はなかった。周囲も姉とエーファを比較しては笑いの種にしていた。  そんな姉は公爵令息であるマンフレットと結婚をした。彼もまた姉と同様眉目秀麗、文武両道と完璧な人物だった。また周囲からは冷笑の貴公子などとも呼ばれているが、令嬢等からはかなり人気がある。かく言うエーファも彼が初恋の人だった。ただ姉と婚約し結婚した事で彼への想いは断念をした。だが、姉が結婚して二年後。姉が事故に遭い急死をした。社交界ではおしどり夫婦、愛妻家として有名だった夫のマンフレットは憔悴しているらしくーーその僅か半年後、何故か妹のエーファが後妻としてマンフレットに嫁ぐ事が決まってしまう。そして迎えた初夜、彼からは「私は君を愛さない」と冷たく突き放され、彼が家督を継ぐ一年後に離縁すると告げられた。

「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。

あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。 「君の為の時間は取れない」と。 それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。 そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。 旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。 あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。 そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。 ※35〜37話くらいで終わります。

処理中です...