45 / 89
ロスワート侯爵はシャノンを想う③
しおりを挟む
シャノンが起きるまで別の部屋で待機していた。
リーサからシャノンが起きたことを伝えられたが、会いに行く勇気もなく、シャノンが寝かされた部屋の前で佇んでいた。
『ノエル様、わたしはこの近くに家を借りております。ロニーが準備をしてくれています。わたしが邸を出て行ったのでロニーもあの邸を辞めてわたしの元に来てくれることになっております』
『シャノンちゃん、私たちは貴方をここで預かるつもりよ』
『ありがとうございます。でも、雇っていただくだけでもありがたいのです。ここにいることは出来ません』
『シャノン、何を遠慮してるんだ、別にうちで働かなくてもずっとここにいていいんだ』
ロイズが返事をした。
『ロイズ、貴方は今学生だけどいずれおじ様の後継者としてヘンドリー伯爵家を継ぐべく人よ。エリアナ様と結婚もされることでしょう』
シャノンは少しため息をついていた。
『わたしがここにいたら醜聞でしかないわ働かせてもらうだけでもありがたいの。何処にもいくところがないわたしをおじ様が雇ってくださったんだからそれだけで充分なの』
『シャノンちゃん、ロイズのことを気にかけてくれたのね、でもロイズは普段寮に住んでいるからたまにしかこちらには帰ってこないのよ』
『そうだよ、エリアナだって俺とお前は兄妹みたいなものだってわかってるよ』
『ええ、勿論兄妹みたいなものよ、でも、エリアナ様だってそれが続いたらいい気持ちはしないわ、わたし、人の気持ちがわからないところがあるからアイリスやラウルのほんとの気持ちにも気づかなかったの、もうそんなの嫌なの』
そんな話がきこえてきた。
侯爵はシャノンを迎えにきたつもりだったが、何も言えなくなった。
しばらくして伯爵が顔を出した。
『先生』
『大丈夫かい?かなり酷い貧血と軽い栄養失調だ。しっかり食事をしていっぱい寝て、こころも体も元気になったらここで働いてもらうからしばらくはここにいなさい』
伯爵が優しく微笑んだ。
『あ、ありがとうございます。ご迷惑をかけて申し訳ありません』
シャノンは寝たまま頭を下げた。
そしてシャノンは涙が溢れて止まらなかった。
『シャノン嬢、いっぱい泣いて辛いことなんて流してしまえばいい』
伯爵はシャノンの頭をずっと撫でていた。
扉の陰でシャノンをじっと見守っていたが、シャノンに会わず帰っていった。
リーサからシャノンが起きたことを伝えられたが、会いに行く勇気もなく、シャノンが寝かされた部屋の前で佇んでいた。
『ノエル様、わたしはこの近くに家を借りております。ロニーが準備をしてくれています。わたしが邸を出て行ったのでロニーもあの邸を辞めてわたしの元に来てくれることになっております』
『シャノンちゃん、私たちは貴方をここで預かるつもりよ』
『ありがとうございます。でも、雇っていただくだけでもありがたいのです。ここにいることは出来ません』
『シャノン、何を遠慮してるんだ、別にうちで働かなくてもずっとここにいていいんだ』
ロイズが返事をした。
『ロイズ、貴方は今学生だけどいずれおじ様の後継者としてヘンドリー伯爵家を継ぐべく人よ。エリアナ様と結婚もされることでしょう』
シャノンは少しため息をついていた。
『わたしがここにいたら醜聞でしかないわ働かせてもらうだけでもありがたいの。何処にもいくところがないわたしをおじ様が雇ってくださったんだからそれだけで充分なの』
『シャノンちゃん、ロイズのことを気にかけてくれたのね、でもロイズは普段寮に住んでいるからたまにしかこちらには帰ってこないのよ』
『そうだよ、エリアナだって俺とお前は兄妹みたいなものだってわかってるよ』
『ええ、勿論兄妹みたいなものよ、でも、エリアナ様だってそれが続いたらいい気持ちはしないわ、わたし、人の気持ちがわからないところがあるからアイリスやラウルのほんとの気持ちにも気づかなかったの、もうそんなの嫌なの』
そんな話がきこえてきた。
侯爵はシャノンを迎えにきたつもりだったが、何も言えなくなった。
しばらくして伯爵が顔を出した。
『先生』
『大丈夫かい?かなり酷い貧血と軽い栄養失調だ。しっかり食事をしていっぱい寝て、こころも体も元気になったらここで働いてもらうからしばらくはここにいなさい』
伯爵が優しく微笑んだ。
『あ、ありがとうございます。ご迷惑をかけて申し訳ありません』
シャノンは寝たまま頭を下げた。
そしてシャノンは涙が溢れて止まらなかった。
『シャノン嬢、いっぱい泣いて辛いことなんて流してしまえばいい』
伯爵はシャノンの頭をずっと撫でていた。
扉の陰でシャノンをじっと見守っていたが、シャノンに会わず帰っていった。
65
お気に入りに追加
4,546
あなたにおすすめの小説
言いたいことはそれだけですか。では始めましょう
井藤 美樹
恋愛
常々、社交を苦手としていましたが、今回ばかりは仕方なく出席しておりましたの。婚約者と一緒にね。
その席で、突然始まった婚約破棄という名の茶番劇。
頭がお花畑の方々の発言が続きます。
すると、なぜが、私の名前が……
もちろん、火の粉はその場で消しましたよ。
ついでに、独立宣言もしちゃいました。
主人公、めちゃくちゃ口悪いです。
成り立てホヤホヤのミネリア王女殿下の溺愛&奮闘記。ちょっとだけ、冒険譚もあります。
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
稚拙ながらも投稿初日(11/21)から📝HOTランキングに入れて頂き、本当にありがとうございます🤗 今回初めてHOTランキングの5位(11/23)を頂き感無量です🥲 そうは言いつつも間違ってランキング入りしてしまった感が否めないのも確かです💦 それでも目に留めてくれた読者様には感謝致します✨
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
あなたには彼女がお似合いです
風見ゆうみ
恋愛
私の婚約者には大事な妹がいた。
妹に呼び出されたからと言って、パーティー会場やデート先で私を置き去りにしていく、そんなあなたでも好きだったんです。
でも、あなたと妹は血が繋がっておらず、昔は恋仲だったということを知ってしまった今では、私のあなたへの思いは邪魔なものでしかないのだと知りました。
ずっとあなたが好きでした。
あなたの妻になれると思うだけで幸せでした。
でも、あなたには他に好きな人がいたんですね。
公爵令嬢のわたしに、伯爵令息であるあなたから婚約破棄はできないのでしょう?
あなたのために婚約を破棄します。
だから、あなたは彼女とどうか幸せになってください。
たとえわたしが平民になろうとも婚約破棄をすれば、幸せになれると思っていたのに――
※作者独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。
【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる
kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。
いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。
実はこれは二回目人生だ。
回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。
彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。
そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。
その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯
そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。
※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。
※ 設定ゆるゆるです。
恋人に夢中な婚約者に一泡吹かせてやりたかっただけ
棗
恋愛
伯爵令嬢ラフレーズ=ベリーシュは、王国の王太子ヒンメルの婚約者。
王家の忠臣と名高い父を持ち、更に隣国の姫を母に持つが故に結ばれた完全なる政略結婚。
長年の片思い相手であり、婚約者であるヒンメルの隣には常に恋人の公爵令嬢がいる。
婚約者には愛を示さず、恋人に夢中な彼にいつか捨てられるくらいなら、こちらも恋人を作って一泡吹かせてやろうと友達の羊の精霊メリー君の妙案を受けて実行することに。
ラフレーズが恋人役を頼んだのは、人外の魔術師・魔王公爵と名高い王国最強の男――クイーン=ホーエンハイム。
濡れた色香を放つクイーンからの、本気か嘘かも分からない行動に涙目になっていると恋人に夢中だった王太子が……。
※小説家になろう・カクヨム様にも公開しています
【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。
112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。
愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。
実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。
アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。
「私に娼館を紹介してください」
娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──
【完結】裏切ったあなたを許さない
紫崎 藍華
恋愛
ジョナスはスザンナの婚約者だ。
そのジョナスがスザンナの妹のセレナとの婚約を望んでいると親から告げられた。
それは決定事項であるため婚約は解消され、それだけなく二人の邪魔になるからと領地から追放すると告げられた。
そこにセレナの意向が働いていることは間違いなく、スザンナはセレナに人生を翻弄されるのだった。
【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。
やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。
落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。
毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。
様子がおかしい青年に気づく。
ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。
ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
最終話まで予約投稿済です。
次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。
ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。
楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる