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シャノン、シェリル夫人とお出掛け②
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サンドイッチには厚切りのベーコンとシャキシャキのレタス。自家製マヨネーズがたっぷりでとてもおいしかった。
ケーキセットには、生クリームたっぷりで苺が埋め尽くされたショートケーキと濃厚なプリンが付いていた。
コーヒーか紅茶を選べるので、紅茶をお願いした。
シェリル夫人も紅茶。
ダンはコーヒーを頼みつつ、大きなパンの中にローストビーフとトマトとレタス、ソースをたっぷりかけてかぶりついていた。
「ダン、ケーキセットは頼まないの?」
「俺はそんなに甘いものばかり食べれないよ、コーヒーが有ればいいさ」
ダンはわたしの美味しそうなケーキをみてうんざりした顔で笑ってみせた。
「こんなに美味しいのに、食べないなんてもったいないわ」
「だったら一口頂戴」
「えっ?」
わたしの手にあるケーキのスプーンにパクリ!
「ダン、お行儀悪いわよ」
シェリル夫人が苦笑いしながらダンを嗜めた。
「食べてみなきゃもったいないって言うからさ。でも確かに美味しいね。一口だけなら」
(あぁぁ、なんなの、なんなの、びっくりしたわ!
わたしの近くにあの金髪で整った顔が近づいてきたァ!!)
思わずドキドキしてしまった。
ダンは幼馴染、ジェシーと遊んでいるといつも意地悪をしにくる面倒な男の子。
ロイズはいつも優しくてわたしのペースで遊んでくれたけど、ダンはいつもジェシーと遊んでいると邪魔したり引っ掻き回したりするの。
そして座って遊ばないで外で遊ぼうと言って無理やり連れ出されては、走り回らされて喘息の発作が出てよく寝込んでいたわ!
今のダンの顔、あの頃のダンよ!
だめ、絶対近づいたら!
また、何されるかわからないわ。
わたしが固まって考えごとをしていたら
「シャノン、何固まっているんだ?なんか変なこと考えてただろう?」
と、意地悪な笑顔で聞いてきた。
「え?変なこと?違うわ!ダンがまた子どもの頃みたいに何か意地悪してきそうだなと…」
(あ、しまった)
わたしは思わず口を押さえた。
「あはは、俺も大人だよ。子どもの頃みたいな事はさすがにしないよ」
横でシェリル夫人が、苦笑いしながら言った。
「ダン、貴方はシャノンの前だといつも紳士でいることを忘れているのね…ハア…まったく…貴方って子は…」
シェリル夫人は最後の方は小さく呟いていた。
◇ ◇ ◇
お店を出ようと扉を開けようとしたら、外から大きな声がしてきた。
「ねえ気分転換にここでお茶でもして帰りましょう」
「申し訳ございませんが、旦那様からお金は持って出ないように言われましたのでお茶をするにしても先立つものが、全く、ございません」
「ハアア!!!」
「ふ・ざ・け・な・い・で!!!」
(この声は、アイリス……)
わたしは扉を開けたまま固まってしまった。
後ろからダンが声をかけてきた。
「シャノン?どうしたんだい?扉を開けたまま動かないで?」
背の高いダンはわたしの後ろから外を覗き込んだ。
「あれは、アイリス!なんでこんなところで叫んでいるんだ?」
わたしもロイズもダンもアイリスも同じ学園の同級生なのでダンも知っている。
「シャノン、もう一度中に戻ろう」
わかってるの、ここにいたらアイリスに見つかってしまう。でも、公爵邸でのアイリスを思い出したら身体が動かなくなってしまった。
ガタガタ震え出して、涙が溢れてきた。
『夜会の時のラウル様、とっても素敵で優しくてわたしのこと愛してるって何度も囁いて抱きしめてくれたのよ。
彼ったらいつもとっても甘くて優しいのよ、ベッドの中の彼ったら一晩中離してくれないの。何度もわたしを抱き続けるの。シャノンってお人形さんみたいで抱いてもつまらないんだって』
アイリスの言葉が頭の中から離れない。
(………アイリスが、怖い………また酷いことを言われるわ。ラウルはわたしのことなんか愛していなかったの………もう忘れたいのに……)
震えて動けないわたしをダンは後ろから抱きしめてくれた。
「シャノン、大丈夫だ。母上と中に戻ろう。さあ、行くよ」
わたしはダンに手を引っ張られて先ほどのソファに座った。
アイリスには気づかれなかったようだ。
シェリル夫人は、わたしをギュッと抱きしめながら頭を撫でてくれた。
何も言わずそばに居てくれるシェリル夫人に感謝した。
ダンはソファの近くに立って扉のほうを伺っていた。
しばらくして
「もう居なくなったみたいだ」
とダンが外の様子を見に行ってくれていた。
「シャノン、落ち着いたら帰りましょう」
「ああ、ここに馬車を回すようにするからな。歩いてあいつに会ったら最悪だからな」
ダンは吐き捨てるように言った。
わたしの楽しいお出掛けは終わった。
ケーキセットには、生クリームたっぷりで苺が埋め尽くされたショートケーキと濃厚なプリンが付いていた。
コーヒーか紅茶を選べるので、紅茶をお願いした。
シェリル夫人も紅茶。
ダンはコーヒーを頼みつつ、大きなパンの中にローストビーフとトマトとレタス、ソースをたっぷりかけてかぶりついていた。
「ダン、ケーキセットは頼まないの?」
「俺はそんなに甘いものばかり食べれないよ、コーヒーが有ればいいさ」
ダンはわたしの美味しそうなケーキをみてうんざりした顔で笑ってみせた。
「こんなに美味しいのに、食べないなんてもったいないわ」
「だったら一口頂戴」
「えっ?」
わたしの手にあるケーキのスプーンにパクリ!
「ダン、お行儀悪いわよ」
シェリル夫人が苦笑いしながらダンを嗜めた。
「食べてみなきゃもったいないって言うからさ。でも確かに美味しいね。一口だけなら」
(あぁぁ、なんなの、なんなの、びっくりしたわ!
わたしの近くにあの金髪で整った顔が近づいてきたァ!!)
思わずドキドキしてしまった。
ダンは幼馴染、ジェシーと遊んでいるといつも意地悪をしにくる面倒な男の子。
ロイズはいつも優しくてわたしのペースで遊んでくれたけど、ダンはいつもジェシーと遊んでいると邪魔したり引っ掻き回したりするの。
そして座って遊ばないで外で遊ぼうと言って無理やり連れ出されては、走り回らされて喘息の発作が出てよく寝込んでいたわ!
今のダンの顔、あの頃のダンよ!
だめ、絶対近づいたら!
また、何されるかわからないわ。
わたしが固まって考えごとをしていたら
「シャノン、何固まっているんだ?なんか変なこと考えてただろう?」
と、意地悪な笑顔で聞いてきた。
「え?変なこと?違うわ!ダンがまた子どもの頃みたいに何か意地悪してきそうだなと…」
(あ、しまった)
わたしは思わず口を押さえた。
「あはは、俺も大人だよ。子どもの頃みたいな事はさすがにしないよ」
横でシェリル夫人が、苦笑いしながら言った。
「ダン、貴方はシャノンの前だといつも紳士でいることを忘れているのね…ハア…まったく…貴方って子は…」
シェリル夫人は最後の方は小さく呟いていた。
◇ ◇ ◇
お店を出ようと扉を開けようとしたら、外から大きな声がしてきた。
「ねえ気分転換にここでお茶でもして帰りましょう」
「申し訳ございませんが、旦那様からお金は持って出ないように言われましたのでお茶をするにしても先立つものが、全く、ございません」
「ハアア!!!」
「ふ・ざ・け・な・い・で!!!」
(この声は、アイリス……)
わたしは扉を開けたまま固まってしまった。
後ろからダンが声をかけてきた。
「シャノン?どうしたんだい?扉を開けたまま動かないで?」
背の高いダンはわたしの後ろから外を覗き込んだ。
「あれは、アイリス!なんでこんなところで叫んでいるんだ?」
わたしもロイズもダンもアイリスも同じ学園の同級生なのでダンも知っている。
「シャノン、もう一度中に戻ろう」
わかってるの、ここにいたらアイリスに見つかってしまう。でも、公爵邸でのアイリスを思い出したら身体が動かなくなってしまった。
ガタガタ震え出して、涙が溢れてきた。
『夜会の時のラウル様、とっても素敵で優しくてわたしのこと愛してるって何度も囁いて抱きしめてくれたのよ。
彼ったらいつもとっても甘くて優しいのよ、ベッドの中の彼ったら一晩中離してくれないの。何度もわたしを抱き続けるの。シャノンってお人形さんみたいで抱いてもつまらないんだって』
アイリスの言葉が頭の中から離れない。
(………アイリスが、怖い………また酷いことを言われるわ。ラウルはわたしのことなんか愛していなかったの………もう忘れたいのに……)
震えて動けないわたしをダンは後ろから抱きしめてくれた。
「シャノン、大丈夫だ。母上と中に戻ろう。さあ、行くよ」
わたしはダンに手を引っ張られて先ほどのソファに座った。
アイリスには気づかれなかったようだ。
シェリル夫人は、わたしをギュッと抱きしめながら頭を撫でてくれた。
何も言わずそばに居てくれるシェリル夫人に感謝した。
ダンはソファの近くに立って扉のほうを伺っていた。
しばらくして
「もう居なくなったみたいだ」
とダンが外の様子を見に行ってくれていた。
「シャノン、落ち着いたら帰りましょう」
「ああ、ここに馬車を回すようにするからな。歩いてあいつに会ったら最悪だからな」
ダンは吐き捨てるように言った。
わたしの楽しいお出掛けは終わった。
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