29 / 89
シェリル夫人のお茶会
しおりを挟む
「ロニーおはよう」
今日はお休み。
シェリル夫人の邸のお茶に呼ばれた。
「今日はロニー、お手間かけるけどよろしくね」
「もちろんでございます。今日は久しぶりにシャノン様のドレス姿。気合を入れさせていただきます」
公爵邸を出ていく前に運んでおいたドレスが何枚かある。
市井に下りるのだから必要ないかもしれないと思い捨てるつもりでいたドレス。
ロニーが
「貴族とのお付き合いがあるかもしれません。何枚かは運んでおきます」
と言って、わたしのお気に入りだけを数枚運んでおいてくれた。
その中の一枚、淡いブルーの柔らかなシルクの生地、贅沢なレースやフリルが施された女性らしく優美なデザインのドレスを選んだ。
帽子・手袋・パラソルもロニーが運んでくれていた。
ロニー曰く
「実は一人で運べないので、信頼できる公爵邸の使用人何人かと運びました」
と聞いた時にはびっくりした。
夜会の後、体調が悪いと部屋に篭っていた時に邸のみんなが心配してくれてたけど、わたしの事情を知っている者もいたのね。
まあ、ほんとに食欲もなくなり睡眠もとれなくて体調を崩したけど。
その中の一人に執事のセバスがいたから動きやすかったそうだ。
主を裏切ってわたしのために動いてくれた。
わたしの居場所も内緒にしてくれたセバスには感謝だわ。
朝食を摂り急いで準備を始めた。
ロニーは久しぶりだと言って、全身のマッサージからメイク、髪型までたっぷり3時間をかけて綺麗に整えてくれた。
今日はギュウギュウのコルセットはやめて身体を締めつけないティーガウンにした。
これで気分が悪くならずに過ごせるわ。
(久しぶりの戦闘服だわ。わたしも気合を入れなくっちゃ)
ノエルさまが伯爵家の家紋の入っていない馬車を用意してくれた。
わたしが公爵家とは違う家紋の入った馬車に乗るわけにはいかないのでほんとに感謝しかない。
ロニーももちろん侍女として付いてきてくれた。
◇ ◇ ◇
アンブライト公爵邸は、伯爵家から馬車で40分ほど走った場所にある。
王城に近く、ベルアート公爵邸よりも広い敷地があり私兵も沢山いる。
トーマス様は、団長職ではあるが今は騎士団を取り纏めているというより執務のほうがメインで王城内の執務室で過ごすことが多い。
シェリル夫人は、社交界の華と言われる一人で、彼女の所作はとても美しく40歳を過ぎても今なお美貌を失っていない。
彼女の圧倒的な存在にわたしはいつも憧れていた。
結婚から半年後家を出て3ヶ月、バタバタとしてお顔を出していなかったシェリル夫人のお茶会。
今日はどんな方々がお見えになっているのか考えただけで恐ろしいわ。
気合いよ気合い!
色とりどりの薔薇が咲いた庭園に招かれたわたしは、座っている方たちに向かってカーテシーをした。
席に座っていたのは三人。
一人はもちろんシェリル夫人。
隣の席にはもう一人の社交界の華と言われるよヴィクトリア・マイナー公爵夫人が座っていた。
反対の席には、元王女でありアンブライト公爵家嫡男ジャックの妻であるマリアンナ様が座られていた。
カーテシーをして頭を上げると三人は和かにわたしを見ていた。
「本日はお招きいただきありがとうございます。失礼ではありますがわたくしはただいま訳あってシャノンとだけ名前をなのらせていただきたく思っております」
もう一度深々と頭を下げた。
「シャノン様、お話は伺っているわ頭を上げなさい」
マイナー公爵夫人の優しい声色にホッとしてあたまを上げた。
席に座ると侍女が紅茶を淹れてくれた。
ダージリンティーのいい香りがした。
テーブルにはサンドイッチやティービスケット、プチフルールなどが並んでいた。
(まさかの雲の上のお二人がいらっしゃるなんて……どうしよう)
ドキドキのお茶会が始まった。
今日はお休み。
シェリル夫人の邸のお茶に呼ばれた。
「今日はロニー、お手間かけるけどよろしくね」
「もちろんでございます。今日は久しぶりにシャノン様のドレス姿。気合を入れさせていただきます」
公爵邸を出ていく前に運んでおいたドレスが何枚かある。
市井に下りるのだから必要ないかもしれないと思い捨てるつもりでいたドレス。
ロニーが
「貴族とのお付き合いがあるかもしれません。何枚かは運んでおきます」
と言って、わたしのお気に入りだけを数枚運んでおいてくれた。
その中の一枚、淡いブルーの柔らかなシルクの生地、贅沢なレースやフリルが施された女性らしく優美なデザインのドレスを選んだ。
帽子・手袋・パラソルもロニーが運んでくれていた。
ロニー曰く
「実は一人で運べないので、信頼できる公爵邸の使用人何人かと運びました」
と聞いた時にはびっくりした。
夜会の後、体調が悪いと部屋に篭っていた時に邸のみんなが心配してくれてたけど、わたしの事情を知っている者もいたのね。
まあ、ほんとに食欲もなくなり睡眠もとれなくて体調を崩したけど。
その中の一人に執事のセバスがいたから動きやすかったそうだ。
主を裏切ってわたしのために動いてくれた。
わたしの居場所も内緒にしてくれたセバスには感謝だわ。
朝食を摂り急いで準備を始めた。
ロニーは久しぶりだと言って、全身のマッサージからメイク、髪型までたっぷり3時間をかけて綺麗に整えてくれた。
今日はギュウギュウのコルセットはやめて身体を締めつけないティーガウンにした。
これで気分が悪くならずに過ごせるわ。
(久しぶりの戦闘服だわ。わたしも気合を入れなくっちゃ)
ノエルさまが伯爵家の家紋の入っていない馬車を用意してくれた。
わたしが公爵家とは違う家紋の入った馬車に乗るわけにはいかないのでほんとに感謝しかない。
ロニーももちろん侍女として付いてきてくれた。
◇ ◇ ◇
アンブライト公爵邸は、伯爵家から馬車で40分ほど走った場所にある。
王城に近く、ベルアート公爵邸よりも広い敷地があり私兵も沢山いる。
トーマス様は、団長職ではあるが今は騎士団を取り纏めているというより執務のほうがメインで王城内の執務室で過ごすことが多い。
シェリル夫人は、社交界の華と言われる一人で、彼女の所作はとても美しく40歳を過ぎても今なお美貌を失っていない。
彼女の圧倒的な存在にわたしはいつも憧れていた。
結婚から半年後家を出て3ヶ月、バタバタとしてお顔を出していなかったシェリル夫人のお茶会。
今日はどんな方々がお見えになっているのか考えただけで恐ろしいわ。
気合いよ気合い!
色とりどりの薔薇が咲いた庭園に招かれたわたしは、座っている方たちに向かってカーテシーをした。
席に座っていたのは三人。
一人はもちろんシェリル夫人。
隣の席にはもう一人の社交界の華と言われるよヴィクトリア・マイナー公爵夫人が座っていた。
反対の席には、元王女でありアンブライト公爵家嫡男ジャックの妻であるマリアンナ様が座られていた。
カーテシーをして頭を上げると三人は和かにわたしを見ていた。
「本日はお招きいただきありがとうございます。失礼ではありますがわたくしはただいま訳あってシャノンとだけ名前をなのらせていただきたく思っております」
もう一度深々と頭を下げた。
「シャノン様、お話は伺っているわ頭を上げなさい」
マイナー公爵夫人の優しい声色にホッとしてあたまを上げた。
席に座ると侍女が紅茶を淹れてくれた。
ダージリンティーのいい香りがした。
テーブルにはサンドイッチやティービスケット、プチフルールなどが並んでいた。
(まさかの雲の上のお二人がいらっしゃるなんて……どうしよう)
ドキドキのお茶会が始まった。
71
お気に入りに追加
4,524
あなたにおすすめの小説
さよなら、皆さん。今宵、私はここを出ていきます
結城芙由奈
恋愛
【復讐の為、今夜私は偽の家族と婚約者に別れを告げる―】
私は伯爵令嬢フィーネ・アドラー。優しい両親と18歳になったら結婚する予定の婚約者がいた。しかし、幸せな生活は両親の突然の死により、もろくも崩れ去る。私の後見人になると言って城に上がり込んできた叔父夫婦とその娘。私は彼らによって全てを奪われてしまった。愛する婚約者までも。
もうこれ以上は限界だった。復讐する為、私は今夜皆に別れを告げる決意をした―。
※マークは残酷シーン有り
※(他サイトでも投稿中)
もう尽くして耐えるのは辞めます!!
月居 結深
恋愛
国のために決められた婚約者。私は彼のことが好きだったけど、彼が恋したのは第二皇女殿下。振り向いて欲しくて努力したけど、無駄だったみたい。
婚約者に蔑ろにされて、それを令嬢達に蔑まれて。もう耐えられない。私は我慢してきた。国のため、身を粉にしてきた。
こんなにも報われないのなら、自由になってもいいでしょう?
小説家になろうの方でも公開しています。
2024/08/27
なろうと合わせるために、ちょこちょこいじりました。大筋は変わっていません。
「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。
海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。
アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。
しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。
「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」
聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。
※本編は全7話で完結します。
※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。
【完結】もう誰にも恋なんてしないと誓った
Mimi
恋愛
声を出すこともなく、ふたりを見つめていた。
わたしにとって、恋人と親友だったふたりだ。
今日まで身近だったふたりは。
今日から一番遠いふたりになった。
*****
伯爵家の後継者シンシアは、友人アイリスから交際相手としてお薦めだと、幼馴染みの侯爵令息キャメロンを紹介された。
徐々に親しくなっていくシンシアとキャメロンに婚約の話がまとまり掛ける。
シンシアの誕生日の婚約披露パーティーが近付いた夏休み前のある日、シンシアは急ぐキャメロンを見掛けて彼の後を追い、そして見てしまった。
お互いにただの幼馴染みだと口にしていた恋人と親友の口づけを……
* 無自覚の上から目線
* 幼馴染みという特別感
* 失くしてからの後悔
幼馴染みカップルの当て馬にされてしまった伯爵令嬢、してしまった親友視点のお話です。
中盤は略奪した親友側の視点が続きますが、当て馬令嬢がヒロインです。
本編完結後に、力量不足故の幕間を書き加えており、最終話と重複しています。
ご了承下さいませ。
他サイトにも公開中です
戻る場所がなくなったようなので別人として生きます
しゃーりん
恋愛
医療院で目が覚めて、新聞を見ると自分が死んだ記事が載っていた。
子爵令嬢だったリアンヌは公爵令息ジョーダンから猛アプローチを受け、結婚していた。
しかし、結婚生活は幸せではなかった。嫌がらせを受ける日々。子供に会えない日々。
そしてとうとう攫われ、襲われ、森に捨てられたらしい。
見つかったという遺体が自分に似ていて死んだと思われたのか、別人とわかっていて死んだことにされたのか。
でももう夫の元に戻る必要はない。そのことにホッとした。
リアンヌは別人として新しい人生を生きることにするというお話です。
今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~
コトミ
恋愛
結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。
そしてその飛び出した先で出会った人とは?
(できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです)
hotランキング1位入りしました。ありがとうございます
ごめんなさい、お姉様の旦那様と結婚します
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
しがない伯爵令嬢のエーファには、三つ歳の離れた姉がいる。姉のブリュンヒルデは、女神と比喩される程美しく完璧な女性だった。端麗な顔立ちに陶器の様に白い肌。ミルクティー色のふわふわな長い髪。立ち居振る舞い、勉学、ダンスから演奏と全てが完璧で、非の打ち所がない。正に淑女の鑑と呼ぶに相応しく誰もが憧れ一目置くそんな人だ。
一方で妹のエーファは、一言で言えば普通。容姿も頭も、芸術的センスもなく秀でたものはない。無論両親は、エーファが物心ついた時から姉を溺愛しエーファには全く関心はなかった。周囲も姉とエーファを比較しては笑いの種にしていた。
そんな姉は公爵令息であるマンフレットと結婚をした。彼もまた姉と同様眉目秀麗、文武両道と完璧な人物だった。また周囲からは冷笑の貴公子などとも呼ばれているが、令嬢等からはかなり人気がある。かく言うエーファも彼が初恋の人だった。ただ姉と婚約し結婚した事で彼への想いは断念をした。だが、姉が結婚して二年後。姉が事故に遭い急死をした。社交界ではおしどり夫婦、愛妻家として有名だった夫のマンフレットは憔悴しているらしくーーその僅か半年後、何故か妹のエーファが後妻としてマンフレットに嫁ぐ事が決まってしまう。そして迎えた初夜、彼からは「私は君を愛さない」と冷たく突き放され、彼が家督を継ぐ一年後に離縁すると告げられた。
私を運命の相手とプロポーズしておきながら、可哀そうな幼馴染の方が大切なのですね! 幼馴染と幸せにお過ごしください
迷い人
恋愛
王国の特殊爵位『フラワーズ』を頂いたその日。
アシャール王国でも美貌と名高いディディエ・オラール様から婚姻の申し込みを受けた。
断るに断れない状況での婚姻の申し込み。
仕事の邪魔はしないと言う約束のもと、私はその婚姻の申し出を承諾する。
優しい人。
貞節と名高い人。
一目惚れだと、運命の相手だと、彼は言った。
細やかな気遣いと、距離を保った愛情表現。
私も愛しております。
そう告げようとした日、彼は私にこうつげたのです。
「子を事故で亡くした幼馴染が、心をすり減らして戻ってきたんだ。 私はしばらく彼女についていてあげたい」
そう言って私の物を、つぎつぎ幼馴染に与えていく。
優しかったアナタは幻ですか?
どうぞ、幼馴染とお幸せに、請求書はそちらに回しておきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる