24 / 89
アイリスお父様の悩み事②
しおりを挟む公爵家からの手紙の返事は、
『離縁などあり得ない。もし離縁したとしてもアイリスを娶ることはない』
と言う返事と
『誓約書
わたくしアイリス・ベンジャミンは何があってもラウル・ベルアートに迷惑をかけないことを誓う』
という、写し書きが入っていた。
1カ月程かかったが調書が届いた。
「旦那様、調書ができました」
調書の中に書かれていた内容に驚きを隠せなかった。
『アイリスは騎士団に度々顔を出し、差し入れを持っていき騎士達とも良好な関係を築いている。ラウル・ベルアート公爵とも会っていた。
ベルアート公爵とはこの3カ月程アイリスと夜ホテルに泊まることが度々あった。
ベルアート公爵は、あまり邸に戻らずアイリスの他に未亡人や市井の女性と過ごすことがあった。
シャノン公爵夫人は、邸を出ていき今現在行方が分からず捜索中とのこと』
わたしは調書をぐしゃっと握りつぶしてしまった。
だから、アイリスは騎士団に行くことができなくなったのか。
普通、騎士団には令嬢達が見学に行くことができる。
アイリスもよく行っていたと聞いていたが、突然禁止になったのだ。抗議をしたが全く相手にされなかった。
(娘は確かに考えが甘い。だが、公爵はいったい何を考えているんだ。娘以外にも女がいるなんて……娘は遊ばれていただけなんだ!)
わたしは、公爵家にこの調書を送り抗議した。
そして一度話し合いをした。
◇ ◇ ◇
アイリスは、まだ公爵との結婚ができると思い込んでいる。
「お父様もご存知だと思うけど、ラウル様とわたしは何度も閨を共にしているの。愛し合っているの。シャノンとはすぐに別れるっておっしゃってたの!」
わたしは何度もアイリスに伝えた。
「そのことは一度公爵に話に行った。
うちの娘を傷モノにした責任をとって欲しい、娶っていただかないとこちらも醜聞になると伝えたんだ」
「わたしは傷モノではないわ!ラウル様の大切な女性よ!」
ハア……
「アイリス、手紙の中に写しが入っていた。これはお前が書いたんだろ?」
『誓約書
わたくしアイリス・ベンジャミンは何があってもラウル・ベルアートに迷惑をかけないことを誓う』
「ええ、書いたわ
それがどうしたって言うの?」
「『アイリス、自分には妻がいる。問題を起こせば公爵としても騎士団副隊長としても醜聞になり困ることになる。悪いが誓約書を書いてくれ』
と言われたから会えなくなるのは嫌だから書いたわ」
それを聞いたわたしは怒りに震えた。
「お前の純潔を奪っておきながら酷い人だ」
「え?処純潔?奪う?」
アイリスがポカンとしている。
わたしは怪訝な顔をした。
「アイリスの純潔を無理矢理奪ったんだろう?」
「お父様、何を言ってるの?わたし高等部の学園では何人も恋人がいたのよ」
とコテンと首を傾げた。
「お、お前は……」
わたしは青い顔になり小刻みに震えていた。
「わたしはラウル様が好きだから差し入れに少し媚薬を入れてみたの」
ふふふ、と笑うアイリス。
「そしたらわたしを朝まで離してくれなくて、とっても幸せだったわ」
(媚薬?媚薬とは何のことだ?そんなものどこから手に入れたんだ?)
「お父様、でも何回しか使ってないのよ?だって元彼から少しだけ貰ったものでなくなっちゃったから。彼がわたしを抱いてくれたのは媚薬のせいだけではないわ」
「公爵は誓約書をもとにこちらからの訴えも縁談の話も受け入れることはないと言ってきた」
「あれはラウル様の醜聞にならないように書いただけだわ。わたしとの結婚が醜聞になるなんてあるわけないわ!愛し合っているんだからみんなに祝福されて幸せになるのよ」
「……アイリス……お前はわかってない」
「わかってないのはお父様よ!ラウル様に聞いてみて、わたしを愛しているって言ってくれるから」
74
お気に入りに追加
4,546
あなたにおすすめの小説
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
稚拙ながらも投稿初日(11/21)から📝HOTランキングに入れて頂き、本当にありがとうございます🤗 今回初めてHOTランキングの5位(11/23)を頂き感無量です🥲 そうは言いつつも間違ってランキング入りしてしまった感が否めないのも確かです💦 それでも目に留めてくれた読者様には感謝致します✨
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
あなたには彼女がお似合いです
風見ゆうみ
恋愛
私の婚約者には大事な妹がいた。
妹に呼び出されたからと言って、パーティー会場やデート先で私を置き去りにしていく、そんなあなたでも好きだったんです。
でも、あなたと妹は血が繋がっておらず、昔は恋仲だったということを知ってしまった今では、私のあなたへの思いは邪魔なものでしかないのだと知りました。
ずっとあなたが好きでした。
あなたの妻になれると思うだけで幸せでした。
でも、あなたには他に好きな人がいたんですね。
公爵令嬢のわたしに、伯爵令息であるあなたから婚約破棄はできないのでしょう?
あなたのために婚約を破棄します。
だから、あなたは彼女とどうか幸せになってください。
たとえわたしが平民になろうとも婚約破棄をすれば、幸せになれると思っていたのに――
※作者独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。
【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる
kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。
いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。
実はこれは二回目人生だ。
回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。
彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。
そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。
その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯
そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。
※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。
※ 設定ゆるゆるです。
「あなたの好きなひとを盗るつもりなんてなかった。どうか許して」と親友に謝られたけど、その男性は私の好きなひとではありません。まあいっか。
石河 翠
恋愛
真面目が取り柄のハリエットには、同い年の従姉妹エミリーがいる。母親同士の仲が悪く、二人は何かにつけ比較されてきた。
ある日招待されたお茶会にて、ハリエットは突然エミリーから謝られる。なんとエミリーは、ハリエットの好きなひとを盗ってしまったのだという。エミリーの母親は、ハリエットを出し抜けてご機嫌の様子。
ところが、紹介された男性はハリエットの好きなひととは全くの別人。しかもエミリーは勘違いしているわけではないらしい。そこでハリエットは伯母の誤解を解かないまま、エミリーの結婚式への出席を希望し……。
母親の束縛から逃れて初恋を叶えるしたたかなヒロインと恋人を溺愛する腹黒ヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:23852097)をお借りしております。
恋人に夢中な婚約者に一泡吹かせてやりたかっただけ
棗
恋愛
伯爵令嬢ラフレーズ=ベリーシュは、王国の王太子ヒンメルの婚約者。
王家の忠臣と名高い父を持ち、更に隣国の姫を母に持つが故に結ばれた完全なる政略結婚。
長年の片思い相手であり、婚約者であるヒンメルの隣には常に恋人の公爵令嬢がいる。
婚約者には愛を示さず、恋人に夢中な彼にいつか捨てられるくらいなら、こちらも恋人を作って一泡吹かせてやろうと友達の羊の精霊メリー君の妙案を受けて実行することに。
ラフレーズが恋人役を頼んだのは、人外の魔術師・魔王公爵と名高い王国最強の男――クイーン=ホーエンハイム。
濡れた色香を放つクイーンからの、本気か嘘かも分からない行動に涙目になっていると恋人に夢中だった王太子が……。
※小説家になろう・カクヨム様にも公開しています
【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。
112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。
愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。
実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。
アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。
「私に娼館を紹介してください」
娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──
【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。
やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。
落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。
毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。
様子がおかしい青年に気づく。
ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。
ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
最終話まで予約投稿済です。
次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。
ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。
楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。
側近という名の愛人はいりません。というか、そんな婚約者もいりません。
gacchi
恋愛
十歳の時にお見合いで婚約することになった侯爵家のディアナとエラルド。一人娘のディアナのところにエラルドが婿入りする予定となっていたが、エラルドは領主になるための勉強は嫌だと逃げ出してしまった。仕方なく、ディアナが女侯爵となることに。五年後、学園で久しぶりに再会したエラルドは、幼馴染の令嬢三人を連れていた。あまりの距離の近さに友人らしい付き合い方をお願いするが、一向に直す気配はない。卒業する学年になって、いい加減にしてほしいと注意したディアナに、エラルドは令嬢三人を連れて婿入りする気だと言った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる