9 / 89
わたしのお父様
しおりを挟む
シャノンは19年前、スティーブ・ロスワート侯爵23歳、ジョアン20歳の二人の間に生まれた。
サラサラの銀色の髪は母。
真っ黒い瞳は父の瞳と同じ。色白で美しく整った顔立ちは母に似ている。
3歳の時に母が流行病にかかり半年ほど寝込んだ末に亡くなった。
幼すぎたわたしにとって母との思い出はあまりない。
悲しくて辛いとまでは思わなかったが、母がいれば寂しい時嬉しい時一緒に思い出を作れたのかなと思ってしまうときはあった。
でも、ノエル様といると、もし母がいたならこんな感じだったのかしら?
あんなに優しく愛おしげにわたしを見てくださるのかしら?とつい思ってしまう。
父はあまり邸に戻ることのない人だった。侯爵家は王都にも邸を構えているが、南方に広大な領地を持ち、農業と鉱業とかなり栄えているため、いつも忙しく領内を回っている。
邸に戻っても執務室からあまり出てこないので、わたしにとって父は遠い存在である。
たまに会うと
「勉強はどうだ?」
「侯爵令嬢として恥ずかしくないように」
「成績は落とすな」
など厳しい言葉しか言われない。
「お話があります」と
伝えると
「忙しい、無駄なことに時間は取れない」
と怒られる始末。
わたしは良い子でいた。
我儘を言わないで迷惑をかけないように過ごした。
ただ父に褒められたいと勉強もピアノもダンスもマナーも頑張って勉強した。
父の領地運営に少しでも役に立ちたくて、家令に少しずつ教わって忙しい父のフォローをしたいと思っていた。
家令のクリスは、父に内緒でわたしにも仕事を振ってくれてわたしも父にほんの少しでも近づいた気分になっていた。
◇ ◇ ◇
15歳になったある日わたしは父におしゃれをして一緒に出かけるように言われて、いつも以上にロニーたちに着飾ってもらって父と出かけた。
それが、政略結婚をするためのお見合いだとも知らずに。
ベルアート公爵家に行って、ラウルに出会った。
ラウルは学園を卒業したばかりの18歳。
もともと騎士団に入隊していて学生と騎士と両立して朝から晩まで頑張っていた。
学園を卒業後、公爵家後継者として領地運営などの仕事も精力的に覚えているところだった。
彼は騎士なのにとても細くて背が高くてがさつさなどなく、優しい顔立ちで見つめることが出来なくてドキドキした。
帰りに馬車に乗った父は不機嫌に一言。
「お前が出来ることは侯爵家のためになることだ、わかっているな?」
(お父様は絶対断るなと言いたいのね)
「はい、かしこまりました」
◇ ◇ ◇
わたしは結婚式の日に満面の笑みを讃えて、父に最後の挨拶をした。
『ロスワート侯爵様、もう二度とお会いすることはないでしょう、さようなら』
と……
そう、わたしは父を捨てたのだ。
何度も何度も父の愛情を求めたけど返ってきたのはキツい言葉と冷たい目線。
一度も笑ったことがない、優しく話しかけられたことがない、熱が出ても喘息で苦しんでも入院しても一度もわたしに会いにきてはくれなかった。
わたしは侯爵家の一つの駒でしかない、モノなのだ、離縁されればただのゴミ。
今頃、ロスワート侯爵はわたしが離縁されてゴミ屑と化したことに怒り狂っていることだろう。
もしかしたらわたしのことなんてどうでもいいのかもしれない。
わたしは離縁された時に、何の価値もないゴミになったのだから。
サラサラの銀色の髪は母。
真っ黒い瞳は父の瞳と同じ。色白で美しく整った顔立ちは母に似ている。
3歳の時に母が流行病にかかり半年ほど寝込んだ末に亡くなった。
幼すぎたわたしにとって母との思い出はあまりない。
悲しくて辛いとまでは思わなかったが、母がいれば寂しい時嬉しい時一緒に思い出を作れたのかなと思ってしまうときはあった。
でも、ノエル様といると、もし母がいたならこんな感じだったのかしら?
あんなに優しく愛おしげにわたしを見てくださるのかしら?とつい思ってしまう。
父はあまり邸に戻ることのない人だった。侯爵家は王都にも邸を構えているが、南方に広大な領地を持ち、農業と鉱業とかなり栄えているため、いつも忙しく領内を回っている。
邸に戻っても執務室からあまり出てこないので、わたしにとって父は遠い存在である。
たまに会うと
「勉強はどうだ?」
「侯爵令嬢として恥ずかしくないように」
「成績は落とすな」
など厳しい言葉しか言われない。
「お話があります」と
伝えると
「忙しい、無駄なことに時間は取れない」
と怒られる始末。
わたしは良い子でいた。
我儘を言わないで迷惑をかけないように過ごした。
ただ父に褒められたいと勉強もピアノもダンスもマナーも頑張って勉強した。
父の領地運営に少しでも役に立ちたくて、家令に少しずつ教わって忙しい父のフォローをしたいと思っていた。
家令のクリスは、父に内緒でわたしにも仕事を振ってくれてわたしも父にほんの少しでも近づいた気分になっていた。
◇ ◇ ◇
15歳になったある日わたしは父におしゃれをして一緒に出かけるように言われて、いつも以上にロニーたちに着飾ってもらって父と出かけた。
それが、政略結婚をするためのお見合いだとも知らずに。
ベルアート公爵家に行って、ラウルに出会った。
ラウルは学園を卒業したばかりの18歳。
もともと騎士団に入隊していて学生と騎士と両立して朝から晩まで頑張っていた。
学園を卒業後、公爵家後継者として領地運営などの仕事も精力的に覚えているところだった。
彼は騎士なのにとても細くて背が高くてがさつさなどなく、優しい顔立ちで見つめることが出来なくてドキドキした。
帰りに馬車に乗った父は不機嫌に一言。
「お前が出来ることは侯爵家のためになることだ、わかっているな?」
(お父様は絶対断るなと言いたいのね)
「はい、かしこまりました」
◇ ◇ ◇
わたしは結婚式の日に満面の笑みを讃えて、父に最後の挨拶をした。
『ロスワート侯爵様、もう二度とお会いすることはないでしょう、さようなら』
と……
そう、わたしは父を捨てたのだ。
何度も何度も父の愛情を求めたけど返ってきたのはキツい言葉と冷たい目線。
一度も笑ったことがない、優しく話しかけられたことがない、熱が出ても喘息で苦しんでも入院しても一度もわたしに会いにきてはくれなかった。
わたしは侯爵家の一つの駒でしかない、モノなのだ、離縁されればただのゴミ。
今頃、ロスワート侯爵はわたしが離縁されてゴミ屑と化したことに怒り狂っていることだろう。
もしかしたらわたしのことなんてどうでもいいのかもしれない。
わたしは離縁された時に、何の価値もないゴミになったのだから。
115
お気に入りに追加
4,512
あなたにおすすめの小説
あなたが私を捨てた夏
豆狸
恋愛
私は、ニコライ陛下が好きでした。彼に恋していました。
幼いころから、それこそ初めて会った瞬間から心を寄せていました。誕生と同時に母君を失った彼を癒すのは私の役目だと自惚れていました。
ずっと彼を見ていた私だから、わかりました。わかってしまったのです。
──彼は今、恋に落ちたのです。
なろう様でも公開中です。
【完結】これからはあなたに何も望みません
春風由実
恋愛
理由も分からず母親から厭われてきたリーチェ。
でももうそれはリーチェにとって過去のことだった。
結婚して三年が過ぎ。
このまま母親のことを忘れ生きていくのだと思っていた矢先に、生家から手紙が届く。
リーチェは過去と向き合い、お別れをすることにした。
※完結まで作成済み。11/22完結。
※完結後におまけが数話あります。
※沢山のご感想ありがとうございます。完結しましたのでゆっくりですがお返事しますね。
〖完結〗旦那様が愛していたのは、私ではありませんでした……
藍川みいな
恋愛
「アナベル、俺と結婚して欲しい。」
大好きだったエルビン様に結婚を申し込まれ、私達は結婚しました。優しくて大好きなエルビン様と、幸せな日々を過ごしていたのですが……
ある日、お姉様とエルビン様が密会しているのを見てしまいました。
「アナベルと結婚したら、こうして君に会うことが出来ると思ったんだ。俺達は家族だから、怪しまれる心配なくこの邸に出入り出来るだろ?」
エルビン様はお姉様にそう言った後、愛してると囁いた。私は1度も、エルビン様に愛してると言われたことがありませんでした。
エルビン様は私ではなくお姉様を愛していたと知っても、私はエルビン様のことを愛していたのですが、ある事件がきっかけで、私の心はエルビン様から離れていく。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
かなり気分が悪い展開のお話が2話あるのですが、読まなくても本編の内容に影響ありません。(36話37話)
全44話で完結になります。
妹に一度殺された。明日結婚するはずの死に戻り公爵令嬢は、もう二度と死にたくない。
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
恋愛
婚約者アルフレッドとの結婚を明日に控えた、公爵令嬢のバレッタ。
しかしその夜、無惨にも殺害されてしまう。
それを指示したのは、妹であるエライザであった。
姉が幸せになることを憎んだのだ。
容姿が整っていることから皆や父に気に入られてきた妹と、
顔が醜いことから蔑まされてきた自分。
やっとそのしがらみから逃れられる、そう思った矢先の突然の死だった。
しかし、バレッタは甦る。死に戻りにより、殺される数時間前へと時間を遡ったのだ。
幸せな結婚式を迎えるため、己のこれまでを精算するため、バレッタは妹、協力者である父を捕まえ処罰するべく動き出す。
もう二度と死なない。
そう、心に決めて。
あなたの妻にはなりません
風見ゆうみ
恋愛
幼い頃から大好きだった婚約者のレイズ。
彼が伯爵位を継いだと同時に、わたしと彼は結婚した。
幸せな日々が始まるのだと思っていたのに、夫は仕事で戦場近くの街に行くことになった。
彼が旅立った数日後、わたしの元に届いたのは夫の訃報だった。
悲しみに暮れているわたしに近づいてきたのは、夫の親友のディール様。
彼は夫から自分の身に何かあった時にはわたしのことを頼むと言われていたのだと言う。
あっという間に日にちが過ぎ、ディール様から求婚される。
悩みに悩んだ末に、ディール様と婚約したわたしに、友人と街に出た時にすれ違った男が言った。
「あの男と結婚するのはやめなさい。彼は君の夫の殺害を依頼した男だ」
それでも、私は幸せです~二番目にすらなれない妖精姫の結婚~
柵空いとま
恋愛
家族のために、婚約者である第二王子のために。政治的な理由で選ばれただけだと、ちゃんとわかっている。
大好きな人達に恥をかかせないために、侯爵令嬢シエラは幼い頃からひたすら努力した。六年間も苦手な妃教育、周りからの心無い言葉に耐えた結果、いよいよ来月、婚約者と結婚する……はずだった。そんな彼女を待ち受けたのは他の女性と仲睦まじく歩いている婚約者の姿と一方的な婚約解消。それだけではなく、シエラの新しい嫁ぎ先が既に決まったという事実も告げられた。その相手は、悪名高い隣国の英雄であるが――。
これは、どんなに頑張っても大好きな人の一番目どころか二番目にすらなれなかった少女が自分の「幸せ」の形を見つめ直す物語。
※他のサイトにも投稿しています
理想の女性を見つけた時には、運命の人を愛人にして白い結婚を宣言していました
ぺきぺき
恋愛
王家の次男として生まれたヨーゼフには幼い頃から決められていた婚約者がいた。兄の補佐として育てられ、兄の息子が立太子した後には臣籍降下し大公になるよていだった。
このヨーゼフ、優秀な頭脳を持ち、立派な大公となることが期待されていたが、幼い頃に見た絵本のお姫様を理想の女性として探し続けているという残念なところがあった。
そしてついに貴族学園で絵本のお姫様とそっくりな令嬢に出会う。
ーーーー
若気の至りでやらかしたことに苦しめられる主人公が最後になんとか幸せになる話。
作者別作品『二人のエリーと遅れてあらわれるヒーローたち』のスピンオフになっていますが、単体でも読めます。
完結まで執筆済み。毎日四話更新で4/24に完結予定。
第一章 無計画な婚約破棄
第二章 無計画な白い結婚
第三章 無計画な告白
第四章 無計画なプロポーズ
第五章 無計画な真実の愛
エピローグ
毒家族から逃亡、のち側妃
チャイムン
恋愛
四歳下の妹ばかり可愛がる両親に「あなたにかけるお金はないから働きなさい」
十二歳で告げられたベルナデットは、自立と家族からの脱却を夢見る。
まずは王立学院に奨学生として入学して、文官を目指す。
夢は自分で叶えなきゃ。
ところが妹への縁談話がきっかけで、バシュロ第一王子が動き出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる