【完結】浮気された私は貴方の子どもを内緒で育てます  時々番外編

たろ

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★高等部3年生⑫

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卒業式まではシャーリーとイザベラと一緒に過ごしたくて学園に通った。
殿下とは顔を合わせたくなくて図書館やランチルームで三人で過ごした。

今日は学園の卒業式。

卒業式では殿下が代表でを挨拶をした。

わたしは久しぶりに殿下の声を聞いた。
わたしは殿下が好きだったんだと今更ながら気づいてしまった。最後の3年生はわたしにとって殿下とあまり過ごせない一年だった。
というか今までがあまりにも近くにいすぎたんだと思う。
そばに居て当たり前の存在だった。

殿下を好きだと気づいた時にはわたしの初恋は終わっていた。
何だかなぁ、わたしってズレてるよね。
気がつくのが遅すぎるよね。どれだけ殿下と一緒にいたと思ってるの。
気がついたら嫌われていて距離を置かれていてさすがにへこんでしまった。

それにシルヴィ様ともうすぐ結婚するらしいし。この前シルヴィ様が態々わたしに会いに来て仰ったわ。

陛下は違うって言ってたけど、3ヶ月王都から離れている間に殿下は結局婚約者としてシルヴィ様に決めたらしい。
初恋ってあっけないものだったんだ。

そしてわたしの悪い噂がさらに広まっていた。

学園で歩いているとわたしをチラッと見てヒソヒソと話している声が聞こえた。
「ほらあの人よ、伯母様が牢に入られているらしいわ」
「あの人の父親は浮気したらしいの、その相手も犯罪者なんですってよ、あの人の周りは犯罪者が多いみたい、怖いわ」
など、聞こえてくる。

でもわたしは何も恥ずかしいことはしていない。
だから学園では堂々と最後の時間を過ごした。

そんなことを考えていたら卒業式は終わってしまった。

(あ……泣けなかった……)



◇ ◇ ◇


卒業パーティーでは殿下に笑顔で話しかける予定だ。最後なのに嫌な思い出は残したくない。いくらわたしが嫌でも今まで友人だったんだから話くらいはさせてくれるはず……たぶん……自信はないけど……

卒業式が終わり一旦屋敷に戻りドレスに着替えた。
わたしのドレスはゴールドのシルクのドレス。アクセサリーはブルーダイヤモンドのイヤリングとネックレスを付けた。
髪は全てアップにしてもらい大人っぽく夜会巻きにしてもらった。
メイクも念入りにしてもらいわたしが見ても、この人エイミー?と疑問に思うくらいに美しく化けた、はず。

シャーリーと馬車に乗りパーティー会場へ向かった。
わたしのエスコートはお義父様がしてくれた。

「エイミー、綺麗だよ。卒業おめでとう」
わたしの頬に優しくキスをしてくれた。

「お義父様、ありがとう」
わたしはとても嬉しくてお義父様に抱きついた。

「まだまだ甘えん坊のエイミーでわたしは嬉しいよ」

わたしは世間から醜聞なのだと言われたけどボガード家の娘になれたことをとても幸せだと思っている。もちろんお母様とレオ様の娘であることもハディッド家の血を受け継いでいることも恥ずかしいとは思っていない。だから堂々と卒業パーティーに参加する。

会場に入るとすぐに音楽が鳴り始めてファーストダンスをお義父様と踊った。
そのあとアランと踊り、続けてクレインと踊った。

殿下はクラスメイト達と次々踊っていた。
わたしも殿下のそばに行って
「殿下、わたしと踊っていただけませんか?」
と恐る恐る聞いた。
殿下は少し戸惑っていたが
「エイミー、ぜひ踊ろう」
と言ってわたしの手を握り踊り始めた。

「……僕はエイミーに嫌われてもう話すことは出来ないと思っていた」

「殿下ごめんなさい。あの時はさすがに嫌われていると知らずに仲良くしていたから驚いたけど今日は殿下と会うのも最後だから気持ちよくお別れしたかったんです」

「……お別れ……」

「はい、卒業したら会う事もないでしょうから安心してください。もうこれからは無理しないで大丈夫です。気がつかなくてごめんなさい、わたしが勝手に友達だと思い込んでいただけなのに、殿下にはいつも迷惑をおかけしました。今日はお詫びを言いたくてダンスに誘ったんです」

「お詫びなんて……」

「殿下、今までありがとうございました。一緒に過ごした時間はとても素敵な思い出になりました」

曲が終わり殿下の手を離すとわたしは微笑んで離れた。
殿下は何か言いたいことがまだあるみたいだったがわたしはこれ以上話すと泣いてしまうので急いで離れた。
そしてお義父様に頼んで早めに屋敷へ戻った。

今夜はレオ様とお母様の屋敷に一晩泊めてもらうことにしていた。
お義父様も一緒に泊めて貰い、ダンスパーティーの後ゆっくりと夜更けまで四人でお茶をした。

「エイミー、君のことは確かに社交界でも噂になっている。悪意のある噂を流しているのはシルヴィ嬢達だ。みんな君のことをよく知っているから本気にはしていない。それにスチュワート公爵、ベルアート公爵、アンブライト公爵、ロスワート侯爵、ボルガード侯爵、ヴァロマ公爵、グランデ侯爵を纏めて敵に回す貴族はいないよ」
お義父様は笑いながら言った。

「うん、確かにシルヴィ嬢のところは侯爵家だし皇后様とは親戚だが王族ではないしそこまでの力はないよ。それに親は関係ないところで言って回っているようだ。彼女本人がこのままでは大変なことになると思うよ」

「大変なこと?」

「うん、嘘を吐いて回っているということは貴族にとっては信用をなくしているのと同じことなんだ。彼女は社交界で生きていくことは出来なくなるよ」

「どうしてハノン伯母様は生き残れたのかしら?」

お母様は困った顔をして言った。
「姉様は表ではとても優しくて良い人だったの、誰も彼女の裏の顔に気が付かなかったのよ、メアリー様はあまり社交界には出ていなかったわ、レオと結婚してからレオが必要に迫られた時だけ出ていたの。普段のメアリー様は低位貴族の人達の中で女王様のように振るまっていたの。高位貴族の人達はメアリー様を避けていたのよ」

わたしはこれから社交界で生きていかないといけないのに面倒な世界で生きるのはもう無理だなと思ってしまった。




◆ ◆ ◆
補足です

スチュワート公爵(シャーリーの父)
ベルアート公爵(ラウルのこと)
アンブライト公爵(ダンの実家、マリアンナ様の旦那様)
ロスワート侯爵(シャノンの実家、ダンのこと)
ボルガード侯爵(お義父様)
ヴァロマ公爵(イザベラの父)
グランデ侯爵(レオ様)

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