【完結】浮気された私は貴方の子どもを内緒で育てます  時々番外編

たろ

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★高等部3年生⑪

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ハディッド領では農業が盛んだ。
今はボガード家とグランデ家の協力で農地改革や新しい葡萄園を作りワイナリーを作って名産物を増やして税収を確保出来る様に目指している。

わたしは幼馴染の家々を周り挨拶がてら農地を見て周った。
久しぶりの馬で周るのは楽しかった。

わたしは6年以上この土地から離れていた。でもここはわたしを優しく受け入れてくれる大好きな場所。

なんで忘れていたんだろう、王都の都会の暮らしに慣れすぎてここの良さに見向きもしなかった。

わたしは馬を休ませて草の上に寝転がって空をボーっと見上げていた。

(癒されるー!)
わたしは殿下が嫌いになった訳ではない。
ただわたしと距離を置きたかったくらいわたしが嫌だったと知らずに甘えていたのが恥ずかしくて悔しくて情けなかった。

それなら話しかけないで欲しかった。優しくしなければわたしだって甘えたりしなかった。

やっと殿下への気持ちに名前を付けられると思っていたのに、わたしは完全に蓋をして閉じてしまった。

殿下から手紙が届いたが開けていない。
シャーリーやイザベラ、クレインにアランも手紙をくれたがまだ読んでいない。

ハディッド領に戻って1ヶ月が過ぎた。

あと2ヶ月で卒業式がある。

ドレスはお義父様とお義母様が用意してくれている。
アクセサリーはレオ様が贈らせて欲しいと懇願されたのでお願いしている。

わたしはハディッド領にあるもっと北の邸にしばらく住むことになっている。
そこには昔からの葡萄園がありワイン作り用ではなく食す用でとても甘くて美味しい特産だ。

それをハディッド家自身が作り育てている。
今は収穫時期ではないので木の手入れをしている。
暇なのでそこへ行ってみんなのお手伝いをする予定だ。
忙しければ何にも考えないで済むので明日は馬を走らせて行く予定だ。

「さあ、帰ろう」

邸に帰ると美味しい食事が待っていた。お祖母様と使用人のみんなと一緒に同じテーブルで食事をするのがここでは当たり前。だからお祖母様も一人でいても寂しくはないのだ。
わたしも子どもの頃からみんな一緒にいるので話が弾んだ。

「明日からしばらく北の邸に行くのなら、ライアンも連れて行きなさい。一人で移動は危ないわ、それにライアンはこっちと向こうをいつも行ったり来たりしているから慣れているわ」

「わかったわ、ライアンよろしくね」

「エイミー様、お任せください」

「ふふ、ライアン。ここではエイミーで大丈夫よ。様を付けられるとなんだか恥ずかしいわ」
ライアンとわたしは幼馴染でいつも野山を駆け回っていた。今はハディッド家の使用人として働いているんだけどわたしはまだ「様」を付けられるのに慣れない。

「では二人の時だけは辞めておきます。でも普段は「様」を付けさせてください」

「わかったわ、ではそれでお願いね」

そしてわたしとライアンは北を目指した。
馬車なら二日かかるが馬で移動すれば近道を走って行けるので一日で着く。

わたしもライアンも乗馬は得意なので夕方には着いた。

「みんな久しぶりです、しばらくお世話になります」
わたしは幼い頃よく来ていたので顔見知りの人も沢山残っていてくれて楽しく作業に没頭できた。
ライアンには幼馴染達の話を聞かせてもらって楽しかった。みんな大人になって結婚した子もいた。
わたしは赤ちゃんが産まれた友人に会いに行ったり結婚式に参加させてもらったりした。
結婚したのはライアンともう一人の幼馴染のミリアだった。
二人の幸せな姿を見てわたしまで幸せな気分になった。

そして3月になるとわたしは重たい気持ちでボガード家へ帰って行った。

「エイミー、全く手紙も寄越さないで心配したんだぞ」
「本当よ、司書官になるのでしょう?それとも夢は諦めてハディッド領で暮らすの?」
義両親に怒られた。

「わたしは司書官になります。ごめんなさい、気持ちの整理をしていました」
わたしは素直に謝ると
「エイミーももう大人になったのよね。色々なことがあると思うわ、でもね逃げないで、貴女はそんな弱い子ではないわ」

わたしは誰にも伝えていないけどわたしがハディッド領に帰った理由を知っているのかもしれないと思った。
優しい義両親はわたしに何も聞かずに暖かく迎えてくれた。

そして、シャーリーの屋敷に帰るとシャーリーから本当に痛い拳骨を貰った。

「シャーリー、痛い!」

「当たり前でしょう!ずっと心配したのよ、帰ってこないかと思ったわ」
わたしを抱きしめて泣いた。
「ごめんなさい、やっと気持ちの整理がついたの、わたしの話を聞いてくれる?」

イザベラとメイも泊まりに来て4人で夜を過ごした。
わたしは図書館であったことを話した。

3人は詳しいことは知らなかったけど殿下が暗かったので何かがあるのは気がついていたらしい。
それにシルヴィ様が毎日のように殿下に会いに来ていたらしい。
殿下は冷たくする人ではないのでいつの間にか二人は婚約しているのではないかと噂がさらに広がっていると聞いた。

「犯罪者の血?」
「何を言っているの!て言うか何言われているの!」
シャーリーとイザベラがかなりのお冠だった。

「二人とも怖いわ」
「「怖くないわ!」」

「殿下ったら何の言い訳もしなかったの?」

「わからないわ、だって手紙読んでいないんだもん」

「読んでいない?」

「うん、みんなのも読んでない。殿下の読まないのに他の人の読むのはおかしいかなと思って誰のも読んでいないの」

わたしが言うと3人はさらに怒り出した。
「エイミー、わたし達の手紙を読んでいないの?だから返事が来なかったのね」

「姉様はわたしのことを忘れたのかと思っていたわ」
メイがシュンとしていた。

「ごめんなさい」
わたしは3人にひたすら謝った。







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