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★高等部3年生⑩
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殿下が帰ってきた。
わたしはそれだけで嬉しかった。
教室の隣の席に殿下がいる。
「殿下、おはようございます」
朝の挨拶が出来るのが嬉しい。
殿下とお昼に一緒に食事を出来るのが嬉しい。
放課後一緒に帰って王宮の図書館へ行くのも嬉しい。
「エイミー、今日は一日僕のそばから離れないけどどうしたんだい?」
「だって気づいたらいなくなってたら困るから、目を離さないようにしています」
「大丈夫だよ」
図書館でいつもなら本を読むのに心配で殿下の服を掴んでいた。
「カイル、お帰りなさい、会いたかったわ」
突然現れて殿下に抱きついたのはシルヴィ様だった。
可愛い顔に可愛い髪型、わたしの大好きな可愛い姿なのにどうして?
胸がギュッて痛くなった。
殿下はシルヴィ様に笑顔で
「シルヴィ、ただいま」と言ってシルヴィ様からそっと離れた。
わたしは横で服を離さないでいた。
シルヴィ様はわたしをチラッと見て睨んだ。
「あら?貴女には言ったわよね。カイルともうすぐ婚約するの。だからカイルとは話さないでと頼んだはずよ」
「はい、聞きました。でも陛下に確認をとったところ婚約の話など今のところない。わたしが言ったと伝えていいからねと、言われました」
「陛下が仰ったって……あ、貴女陛下とお話したことがあるの?陛下はお忙しい方なのよ、そんな簡単に話せるお方ではないわ。ねえカイルこの人嘘つきなのね」
「エイミーは父上と仲が良くてね。僕が留学している間もよく二人で会っていたと思うよ。父上からエイミーの話が手紙で書かれていたからね。それに僕はシルヴィと婚約するなんて聞いていないよ。それは君の父上が勝手に言ったことだろう?」
シルヴィのお母様が皇后様の妹に当たる。
なので陛下とは直接血が繋がっている訳ではないのでシルヴィ様は殿下と従兄妹だが、陛下とは親しいとまではいかないらしい。
というかシルヴィ様は陛下に会うと緊張するみたい。
「どうして貴女なんかが陛下と仲が良いの?信じられないわ、貴女はご両親も伯母様も問題を起こしていて社交界では醜聞が出回っているんでしょう?恥ずかしい存在じゃない!!」
わたしは恥ずかしい存在??
わたしは初めて知った自分の立場に呆然としていた。
「シルヴィ、君は何を言っているんだ!エイミーにはそんな噂なんか立っていないよ!」
「あら?わたしが調べたら伯母様は犯罪者でしょう?貴女の実の父親だって犯罪者の奥さんと結婚していたのでしょう?」
「………事実です」
「ほら!貴女は犯罪者の血なのよ、そんな人がカイルと仲良くしないで!」
「シルヴィ、いい加減にしなさい!」
「カイルこそいい加減に本当のこと言ったらいいじゃない。この人が嫌で留学したんでしょう?距離を置きたかったって言ってたじゃない」
わたしは殿下の顔を見た。
殿下は否定しなかった。
わたしは「失礼します」と言って図書館から急いで立ち去った。
どうやって帰ったのかわからない。
気がつけばシャーリーの屋敷に戻っていた。
足がパンパンだったので歩いて帰ったんだと思う。
ベッドに横になって泣いた。
わたしのことを馬鹿にするのは仕方がない。
でも、両親のことまでひどく言われた。
お母様もレオ様もやっと幸せになったのに……
それに殿下の留学の理由がわたしから距離を置きたかったと聞いてショックだった。
わたしのことがそんなに嫌だったんだ。
わたしはそれから卒業式まで学園には行かないことに決めた。
もう卒業資格はクリアしているし、来月からは卒業式まで自由登校になる。
だから、学園は卒業式まで行かなくても大丈夫。
わたしはそのままシャーリーには手紙だけ残して何も言わずハディッド領へ帰った。
ハディッド領の屋敷には今お祖母様だけが残っている。
「お祖母様、ただいま。卒業式までゆっくりこちらで過ごしてもいいかしら?」
お祖母様は突然帰ってきたわたしを抱きしめて
「お帰りなさい、エイミー」
と言って何も聞かずに受け入れてくれた。
◆ ◆ ◆
『内緒で死ぬことにした ~いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を~』
7月30日から新連載スタートです。
よろしければ読んでみてくださいね。
よろしくお願いします。
わたしはそれだけで嬉しかった。
教室の隣の席に殿下がいる。
「殿下、おはようございます」
朝の挨拶が出来るのが嬉しい。
殿下とお昼に一緒に食事を出来るのが嬉しい。
放課後一緒に帰って王宮の図書館へ行くのも嬉しい。
「エイミー、今日は一日僕のそばから離れないけどどうしたんだい?」
「だって気づいたらいなくなってたら困るから、目を離さないようにしています」
「大丈夫だよ」
図書館でいつもなら本を読むのに心配で殿下の服を掴んでいた。
「カイル、お帰りなさい、会いたかったわ」
突然現れて殿下に抱きついたのはシルヴィ様だった。
可愛い顔に可愛い髪型、わたしの大好きな可愛い姿なのにどうして?
胸がギュッて痛くなった。
殿下はシルヴィ様に笑顔で
「シルヴィ、ただいま」と言ってシルヴィ様からそっと離れた。
わたしは横で服を離さないでいた。
シルヴィ様はわたしをチラッと見て睨んだ。
「あら?貴女には言ったわよね。カイルともうすぐ婚約するの。だからカイルとは話さないでと頼んだはずよ」
「はい、聞きました。でも陛下に確認をとったところ婚約の話など今のところない。わたしが言ったと伝えていいからねと、言われました」
「陛下が仰ったって……あ、貴女陛下とお話したことがあるの?陛下はお忙しい方なのよ、そんな簡単に話せるお方ではないわ。ねえカイルこの人嘘つきなのね」
「エイミーは父上と仲が良くてね。僕が留学している間もよく二人で会っていたと思うよ。父上からエイミーの話が手紙で書かれていたからね。それに僕はシルヴィと婚約するなんて聞いていないよ。それは君の父上が勝手に言ったことだろう?」
シルヴィのお母様が皇后様の妹に当たる。
なので陛下とは直接血が繋がっている訳ではないのでシルヴィ様は殿下と従兄妹だが、陛下とは親しいとまではいかないらしい。
というかシルヴィ様は陛下に会うと緊張するみたい。
「どうして貴女なんかが陛下と仲が良いの?信じられないわ、貴女はご両親も伯母様も問題を起こしていて社交界では醜聞が出回っているんでしょう?恥ずかしい存在じゃない!!」
わたしは恥ずかしい存在??
わたしは初めて知った自分の立場に呆然としていた。
「シルヴィ、君は何を言っているんだ!エイミーにはそんな噂なんか立っていないよ!」
「あら?わたしが調べたら伯母様は犯罪者でしょう?貴女の実の父親だって犯罪者の奥さんと結婚していたのでしょう?」
「………事実です」
「ほら!貴女は犯罪者の血なのよ、そんな人がカイルと仲良くしないで!」
「シルヴィ、いい加減にしなさい!」
「カイルこそいい加減に本当のこと言ったらいいじゃない。この人が嫌で留学したんでしょう?距離を置きたかったって言ってたじゃない」
わたしは殿下の顔を見た。
殿下は否定しなかった。
わたしは「失礼します」と言って図書館から急いで立ち去った。
どうやって帰ったのかわからない。
気がつけばシャーリーの屋敷に戻っていた。
足がパンパンだったので歩いて帰ったんだと思う。
ベッドに横になって泣いた。
わたしのことを馬鹿にするのは仕方がない。
でも、両親のことまでひどく言われた。
お母様もレオ様もやっと幸せになったのに……
それに殿下の留学の理由がわたしから距離を置きたかったと聞いてショックだった。
わたしのことがそんなに嫌だったんだ。
わたしはそれから卒業式まで学園には行かないことに決めた。
もう卒業資格はクリアしているし、来月からは卒業式まで自由登校になる。
だから、学園は卒業式まで行かなくても大丈夫。
わたしはそのままシャーリーには手紙だけ残して何も言わずハディッド領へ帰った。
ハディッド領の屋敷には今お祖母様だけが残っている。
「お祖母様、ただいま。卒業式までゆっくりこちらで過ごしてもいいかしら?」
お祖母様は突然帰ってきたわたしを抱きしめて
「お帰りなさい、エイミー」
と言って何も聞かずに受け入れてくれた。
◆ ◆ ◆
『内緒で死ぬことにした ~いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を~』
7月30日から新連載スタートです。
よろしければ読んでみてくださいね。
よろしくお願いします。
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