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★高等部3年生③

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シャノン様とダン様にお会いして色々な話を聞けた。
お互い休みの時は交代で子育てしていること。もちろん屋敷の使用人の人達も手伝ってくれているし、仲の悪かったお父様とも仲直りして一緒に手伝ってくれているそうだ。

そして何より殿下のわたしの知らない顔が見れたのが楽しかった。
ダン様に対して殿下が怒ったり拗ねたりしている姿はわたし達と変わらない同じ歳頃に見えた。
いつもはわたしの一歩もいや十歩程先を行っているのに、ダン様といる殿下はわたしと変わらない。
身近に感じてとても嬉しかった。

そんな時、殿下の部屋に突然人が訪ねてきた。

「カイル!お帰りなさい」
突然女の子が殿下に抱きついてきた。わたし達は呆気に取られて座っていたら、ダン様が嗜めた。

「シルヴィ、突然ノックもしないで入ってきて駄目だろう。それに挨拶もしていないだろう」
シルヴィという女の子はダン様を見て口を尖らせて言い返した。
「叔父様はうるさいわ、わたしはカイルに久しぶりに会えて嬉しかったのよ」
よく見るとわたし達より少し幼く見える。

「この娘はシルヴィ・アンブライト15歳、マリアンナ姉上の次女なんだ」

「皆さま初めまして。わたし最近まで留学していて今年から高等部1年生になりました。皆さんの後輩になります」
とても可愛らしい笑顔で思わずじっーと見てしまった。

「か、可愛い!」
わたしは周りに年下はメイしかいないのでこの娘がとても可愛くて、思わず抱きしめた。
「な、何をするの、止めて!」

「エイミー、止めなさい。突然抱きしめたら犯罪よ」 
シャーリーに叱られてハッとした。
慌てて抱き締めるのを止めると、シルヴィは真っ赤になって怒っていた。
「貴方一体誰?わたしになんてことをするの!信じられないわ」

「ごめんなさい。あんまり可愛い生き物だったから思わず抱きしめてしまいました」

「生き物って失礼よ!」

「ブハッ、エイミー!」
殿下が笑い出した。

「本当にごめんなさい。だって突然現れた女の子が絵本から出てきたお姫様みたいで可愛かったんだもん」
わたしは焦って謝った。
(怒らせるつもりも馬鹿にするつもりもなかったのに……どうしよう…可愛すぎるんだもん)

わたしがシュンとなっていると、ダン様が助けてくれた。
「シルヴィ、抱きつかれたことは謝っているんだし、可愛いって言われているんだからもういいだろう」

「仕方ないわね。許して差し上げるわ」

わたしはホッとしてダン様を見て頭を下げた。
(もう絶対馬鹿なことはしないようにしなきゃ)

「カイル、わたしずっと会いたかったの。ねえ向こうで二人でお話ししましょう、もうこちらは終わったんでしょう?」

「シルヴィ、まだみんないるだろう。失礼だよ」

「あら?もう皆さんお帰りになるわよね。長居するなんて失礼だわ、それに殿下の留学先のことも色々教えてあげたいし、ね。早く行きましょう」

「……留学?」
わたしはその言葉を聞いて意味がわからなくてキョトンとした。

「カイルは、わたしが留学していたテスチュー国に留学するのよ、貴方達お友達なのに知らなかったの?」

「……………」
わたしは教えて貰えなかった事がショックで答えられなかった。

シャーリーとイザベラは知っていたみたいで
「「知っていたわよ」」
と答えた。

何故わたしだけが知らないのか……謎だ。

わたしはその謎を解くため殿下をジーっと見ていたら殿下が頭をぽりぽり掻いていた。
「エイミー、ごめんね。君が色々大変だったから言えなかったんだ」

「ふうん、そうなんだ。気を遣わせてすみませんでした。わたしは殿下とは友情があると思い続けていましたが、実はそんなものはどこにもなかったのですね、長居してすみませんでした、帰ります」

わたしだけが知らなかった事に腹が立って帰ることにした。
「シャノン様、ダン様本日はお忙しい時間を割いてわたしのためにいろいろなお話しを聞かせて頂いてありがとうございました。殿下、陛下にも後日お礼を言いたいと思っておりますがよろしくお伝えください。では失礼します」

わたしは挨拶を終わらせるとシャーリーとイザベラと三人で帰ることにした。

「エイミー……」
殿下の声が聞こえたけど振り返るのも癪でそのまま馬車に乗り込んだ。

「エイミーは知らなかったのね」
「ごめんね、わたしが話しておけばよかったわね」とシャーリーが言ってくれたが、わたしは人から聞くのではなくて殿下本人から聞きたかった。

何故こんなに腹が立つのかよく分からないが友情があると思っていたのはわたしだけだったんだと思うとなんだか悔しい。


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