【完結】浮気された私は貴方の子どもを内緒で育てます  時々番外編

たろ

文字の大きさ
上 下
72 / 94

★高等部3年生①

しおりを挟む
わたし達は最後の学年になった。

お母様に会う前にレオ様に会う。
わたしはアランを捕まえた。

「アラン、大事な話があるの、少しだけ時間もらえるかな?」

「あー、もう、わかったよ」
アランは最近わたしを避けている。
伯爵家の問題でハノン伯母様に多少操られていたメアリー様の件もありわたし達はお互い無意識に話題を避けていた。

放課後、学園の庭園のベンチに座った。

「アラン、わたし貴方のお父様に一度お会いしようと思っているの」

「それって君の父親だろう?」

「わたしのお父様はボガード侯爵よ。今更レオ様を父親としては見れないわ」

「父上は君たちをずっと見守ってきたんだ、流石にその一言はきついと思うよ」

「それは勝手にしてきたことだと思うの、わたしはほとんど話したこともないしどんな人なのかも知らないわ」

「……そうだな、俺もラウル様に対して同じだもんな。今更父親としてみろと言われても難しいよ」

「ごめんなさい、ハノン伯母様がわたし達の人生を狂わせたのよね」

「違うよ、俺の母上もラウル様も父上もみんなが少しずつ間違った選択をしたんだと思う。それが拗れて……犯罪にまでなっていったんだ。エイミーこそ被害者だ、謝るな。俺はお前に対してずっと当たっていたんだ、その髪の色が父上と同じで羨ましかった。まさか実の娘だとは思っていなかったけどね」

「レオ様はまだお母様のことを思っているらしいの……知ってた?」

「……うん……俺は……出て行くべきだと思ってはいるんだ、ただ……ごめん、ずるいよな、君の家庭を駄目にしたのに父上の息子でいたいと思ってしまう」

「え?駄目なの?わたしはボガード家の娘で居たいわ、だってわたしのお父様よ。お母様は確かに二人いるけどその二人も大事なの。だってそうやってその環境で育ったのよ?そこは変えれないわ」

アランの気持ちはわかる。でもわたし達はそれぞれ、その環境で育ったんだもん。何も悪い訳が無い。

「エイミーはいつも真っ直ぐで……俺はずっと捻くれてた」

「あら?やっと認めたの?貴方の捻くれ方は中々のものよ、でもあの環境の中でよく頑張って育ったと思うわ、エライ、エライ」

わたしはアランの頭を撫でてあげた。

「ハァー……君といると俺が色々悩んでいるのが馬鹿らしくなってしまう」

「そんなに悩むことがあるの?」

「だから、ルディア様と父上が再婚するなら俺は邪魔だろう?」

「ああ、そうね、邪魔でしょうね。わたしと三人で本当の親子になるのがベストなんだと思うわ」

「…………わかってる」

「でもお母様は他の人と領地の立て直しの為に再婚するらしいわ」

「え?」

「たぶん受け入れられないんだと思うの。貴方を息子として扱うのも、レオ様とメアリー様が過ごした年月も、だからレオ様と戻ることはないんだと思うわ」

「俺たち親子がルディア様に辛い思いを未だにさせているんだ」

「うーん、そうだけどそうではないわ。お母様が弱過ぎるのよ、もう過去なんだから変えれないのに拘っているのよ、あの性格を変えない限り仕方がないわ」

「……君は父上を許せるのか?」

「許すって言っても何もされていないから許しようがないわ。レオ様と話してみたいの。どんな人なのか知りたいと思うの。でも、貴方に隠れて会うのは嫌だったから今日話そうと思ったの」

「俺がとやかく言う事ではないから好きに会えばいいと思うよ」

「うん、ありがとう、アラン、貴方はレオ様の息子だと思うよ。だって18年間そうやって育ってきたの、わたし達のことなんか気にしないでいいと思うわ、お母様が再婚したいなら誰とでもすればいいと思うの」

「そんなこと言っていいの?」

「だって二人はすれ違ってきたんだもん、それを元に戻すかどうかは本人次第だわ」

わたしは子どもみたいなお母様に対して少し腹を立てていた。アランに対して母親になれないって気持ちは少しならわかるけど、再婚しても別にいい母親になる必要なんてないと思うの。

「アラン、話を聞いてくれてありがとう、またいつものように話せるようになったら嬉しいわ、お互いちょっと避けてたから」

「ごめん、君とどう接するべきかわからなくなっていたんだ」

わたしとアランはお互い笑って別れた。


◇ ◇ ◇

(エイミーごめん、俺お前に惹かれていたんだ。だから兄妹になるかもしれないと思うと嫌だったんだ)

俺はエイミーと別れてから邸に戻った。
この邸は母と暮らした邸で今は使用人達と俺だけが住んでいる。

偶に父上が会いに来てくれる。

そしてもう一人の父親であるラウル様とは剣術を教わり師匠と弟子のような関係になっている。
厳しく教えてくれる人、今は父親と言うより尊敬する人へとなり彼を超えてみたいと思うようになってきた。

今日はラウル様が邸に来て剣術の鍛錬をした。

「いつもと違うが何かあったのか?」

「すみません、大した事ではありません」

「このまま練習をしても身につかない、今日は止めよう」

「……すみません」

ラウル様は俺が話すのを待って隣で黙って待っていてくれた。

俺はハノン様のことからルディア様のこと、エイミーのことも話した。

こんな風に自分の心の中を全て話すのは初めてだった。

俺はいつの間にか泣いていた。

好きな子に好きと言えない。
苦しめるだけなんだとわかっているから。

最近は少し離れてそっと見ているしかなかった。
俺には何も言う資格はなかったから……

「アラン、もし君が今の現状が辛いならわたしはいつでも君を受け入れる準備はしている。君が自分の意思で好きに決めなさい。侯爵家に残ってもいいし公爵家に来ても良いんだ。わたしは父に公爵を返したが本当はそろそろわたしが爵位をもう一度継がなければいけない、その後の後継者として君がなってくれるなら嬉しい」

俺はすぐに返事が出来なかった。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます

冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。 そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。 しかも相手は妹のレナ。 最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。 夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。 最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。 それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。 「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」 確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。 言われるがままに、隣国へ向かった私。 その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。 ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。 ※ざまぁパートは第16話〜です

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

冤罪を受けたため、隣国へ亡命します

しろねこ。
恋愛
「お父様が投獄?!」 呼び出されたレナンとミューズは驚きに顔を真っ青にする。 「冤罪よ。でも事は一刻も争うわ。申し訳ないけど、今すぐ荷づくりをして頂戴。すぐにこの国を出るわ」 突如母から言われたのは生活を一変させる言葉だった。 友人、婚約者、国、屋敷、それまでの生活をすべて捨て、令嬢達は手を差し伸べてくれた隣国へと逃げる。 冤罪を晴らすため、奮闘していく。 同名主人公にて様々な話を書いています。 立場やシチュエーションを変えたりしていますが、他作品とリンクする場所も多々あります。 サブキャラについてはスピンオフ的に書いた話もあったりします。 変わった作風かと思いますが、楽しんで頂けたらと思います。 ハピエンが好きなので、最後は必ずそこに繋げます! 小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。

交換された花嫁

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「お姉さんなんだから我慢なさい」 お姉さんなんだから…お姉さんなんだから… 我儘で自由奔放な妹の所為で昔からそればかり言われ続けてきた。ずっと我慢してきたが。公爵令嬢のヒロインは16歳になり婚約者が妹と共に出来きたが…まさかの展開が。 「お姉様の婚約者頂戴」 妹がヒロインの婚約者を寝取ってしまい、終いには頂戴と言う始末。両親に話すが…。 「お姉さんなのだから、交換して上げなさい」 流石に婚約者を交換するのは…不味いのでは…。 結局ヒロインは妹の要求通りに婚約者を交換した。 そしてヒロインは仕方無しに嫁いで行くが、夫である第2王子にはどうやら想い人がいるらしく…。

もう一度あなたと?

キムラましゅろう
恋愛
アデリオール王国魔法省で魔法書士として 働くわたしに、ある日王命が下った。 かつて魅了に囚われ、婚約破棄を言い渡してきた相手、 ワルター=ブライスと再び婚約を結ぶようにと。 「え?もう一度あなたと?」 国王は王太子に巻き込まれる形で魅了に掛けられた者達への 救済措置のつもりだろうけど、はっきり言って迷惑だ。 だって魅了に掛けられなくても、 あの人はわたしになんて興味はなかったもの。 しかもわたしは聞いてしまった。 とりあえずは王命に従って、頃合いを見て再び婚約解消をすればいいと、彼が仲間と話している所を……。 OK、そう言う事ならこちらにも考えがある。 どうせ再びフラれるとわかっているなら、この状況、利用させてもらいましょう。 完全ご都合主義、ノーリアリティ展開で進行します。 生暖かい目で見ていただけると幸いです。 小説家になろうさんの方でも投稿しています。

この度、双子の妹が私になりすまして旦那様と初夜を済ませてしまったので、 私は妹として生きる事になりました

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
*レンタル配信されました。 レンタルだけの番外編ssもあるので、お読み頂けたら嬉しいです。 【伯爵令嬢のアンネリーゼは侯爵令息のオスカーと結婚をした。籍を入れたその夜、初夜を迎える筈だったが急激な睡魔に襲われて意識を手放してしまった。そして、朝目を覚ますと双子の妹であるアンナマリーが自分になり代わり旦那のオスカーと初夜を済ませてしまっていた。しかも両親は「見た目は同じなんだし、済ませてしまったなら仕方ないわ。アンネリーゼ、貴女は今日からアンナマリーとして過ごしなさい」と告げた。 そして妹として過ごす事になったアンネリーゼは妹の代わりに学院に通う事となり……更にそこで最悪な事態に見舞われて……?】

あなたの愛が正しいわ

来須みかん
恋愛
旧題:あなたの愛が正しいわ~夫が私の悪口を言っていたので理想の妻になってあげたのに、どうしてそんな顔をするの?~  夫と一緒に訪れた夜会で、夫が男友達に私の悪口を言っているのを聞いてしまった。そのことをきっかけに、私は夫の理想の妻になることを決める。それまで夫を心の底から愛して尽くしていたけど、それがうっとうしかったそうだ。夫に付きまとうのをやめた私は、生まれ変わったように清々しい気分になっていた。  一方、夫は妻の変化に戸惑い、誤解があったことに気がつき、自分の今までの酷い態度を謝ったが、妻は美しい笑みを浮かべてこういった。 「いいえ、間違っていたのは私のほう。あなたの愛が正しいわ」

絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので

ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。 しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。 異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。 異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。 公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。 『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。 更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。 だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。 ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。 モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて―― 奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。 異世界、魔法のある世界です。 色々ゆるゆるです。

処理中です...