【完結】浮気された私は貴方の子どもを内緒で育てます 時々番外編

レオの後悔

ルディアとの話し合いは、決別で終わった。

彼女は僕を「グランデ侯爵」と呼んだ。

もうあの声で「レオ」と呼んでくれることはない。

ルディアと呼ぶのも断られた。

「ハディッド夫人」………

彼女が再婚したら……考えるだけで気が狂いそうになる。

僕はメアリーと再婚して17年間も夫婦でいたというのに……
彼女が再婚しなかったことの方がおかしい話なのに……

ハノンが裏で色々としていたとしてもそれにのせられていたのは自分だ。メアリーとだって別れられたはずなのに決断出来なかった。
自分の欲と弱さがルディアを苦しめた。
苦しめたくせにまだ元に戻れるかもかもしれないと欲を出した。
勝手にまた期待していた。

ルディアの涙を見た時、もう終わりなのだと悟った。

僕は彼女が部屋を出ていくのを呆然と見ていた。

ガチャ、扉を開ける音が聞こえた。

「レオナルド、追いかけろ！今なら間に合う、ルディアは伯爵家の借金返済のために噂のよくないシトリュク伯爵と再婚するつもりだ。いいのか？」

「え？あいつは最低な奴だ」

「だからいいのか？わたし達は借金などいつでもいいと言っているのに彼女はエイミーのためにも借金を残したくないと言っているんだ。あいつは自分を犠牲にするつもりなんだ」

僕はルディアを追いかけるのを躊躇った。

だってそれが彼女の決めたことならこれ以上何も言えない。

「はあ、レオナルドはいつも最後に肝心なところで諦めるんだな、ルディアとの離縁だってもっと嫌がって頑張れば回避できたはずだ。メアリーとの再婚だって拒否できるはずだった。メアリーとの離縁だってもっと早くに出来るはずなのにしなかった。
君はいつもすぐに逃げるんだ、ずるい奴だ」

「クラーク、君に何がわかるんだ！愛する人から拒絶され続けて…再婚が彼女の幸せになるならしかたがないだろう！」

「シトリュク伯爵がルディアを幸せにしてくれると本気で思っているのか？」

シトリュク伯爵は金持ちだが強欲で女性に対してもだらしないことで有名だ。

「ルディア……」
僕は急いで彼女の元へ行った。

彼女は馬車に乗って帰ろうとしていた。

「ルディア！ルディア！僕は君を愛している、ずっと18年間君だけを想い続けてきた。メアリーのことは確かに妻として迎えた。でも一度も彼女と結婚してからは閨を共にはしていない、確かに君と婚約したばかりの時に彼女と何度かそういう関係になった。でも他の女性とは付き合ってもすぐ別れたから何もしていない。そのことは変えようがないから言い訳はしない。でもその後はずっと君だけを愛してきた。ハノンがいくら言い寄ってきてもずっと断り続けた、ハノンとは一度も体の関係になったことはない。喧嘩ばかりで何もなかったんだ」

レオは何を言っているんだろう。今さらこの人の関係を持った人達のことを聞いてどうするというの？

わたしは驚いて
「グランデ侯爵様、今さら何を言いたいのですか？」
と首を傾げた。

「あ……再婚して借金を返したいのなら僕としないかい？あんなへんな奴と再婚するより僕の方がマシだ」
僕はもうプライドなんか捨てて彼女に縋った。

「どちらも変わらないわ、浮気する男なんだから」

「もう二度と浮気はしない、君だけを愛しているんだ」

「グランデ侯爵様、わたしはもう貴方への愛情はないわ」

「それでもいい、君が借金の為に再婚するならそれを僕は受け入れる。どんな理由でもいいんだ、君を他の人に取られたくない、愛しているんだ、僕を利用してくれ、お願いだ」
僕はルディアが好きなんだ。
領地にいる彼女とエイミーを何度こっそり見に行ったかわからない。
遠くからしか見れない辛さ、話しかけられない辛さ。
迎えに行きたくてもまだメアリーと結婚している現実。
何度も二人を抱きしめたくて我慢をしたかわからない。
愛しているんだ。

「貴方にはアランという息子がいるわ。わたしはアランの母親にはなれないわあまりにも因縁が深過ぎるの。貴方と再婚するなんて最初からあり得ないわ」

僕はまた何も考えていなかったのか。
アランはわが侯爵家の後継だ。
ルディアと再婚すれば息子になる。エイミーは今はボガード家の娘だ。

確かに四人で親子になるのは難しい。
かと言ってアランを捨てるなんて出来ない。

「さようなら、グランデ侯爵」
ルディアは今度こそ帰って行った。