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ルディアとレオ

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姉様の事件から半年が過ぎた。
エイミーは高等部3年生になり、最後の学生生活に入った。
あの子は司書官になるための試験勉強に励んでいる。

まだまだ女性が仕事に就いて一生働くのは難しい。
それでもエイミーは夢を諦めないで努力をし続けている。
わたしの娘、エイミーは誇りである。

そんな娘に恥ずかしい態度ばかりを続けてきたわたし。
変わらないといけない。
まずはお父様と一緒に伯爵家の立て直しを始めた。
あまりにもずさんな領地運営で資金は底をついていた。
国へ納める税金の支払いも滞納されていてとにかく売れるものは売った。
宝石もドレスも不要な絵画も。
そして農産物の新たな販売ルートを見つけ売り出すことに成功した。

葡萄畑も更に大きくしてワイナリーを作りワインの販売も始めることになった。

全てスチュワート公爵とクラークお兄様のおかげだ。

でもクラークお兄様にレオが影で動いていたことを後で聞いた。
わたしはレオを避け続けていたのに彼は助けてくれた。

わたしも姉様の呪縛から解き放たれ、少し周りを見る事が出来る様になった。

一度レオと話さないといけない。
ずっと逃げてきた。
もう愛などないはずなのに会うのが怖かった。
エイミーを奪われるかもしれない。お前の顔など見たくないと言われるかもしれない。
否定的なことしか思い浮かばなかった。

でも今はエイミーのためにも会わないといけないと思っている。

クラークお兄様にお願いして会うための席を用意してもらった。

もちろんクラークお兄様も一緒にいてくれることになった。

ボガード家の応接室で三人で会うことになった。

まだエイミーには知らせていない。

「ひさしぶりだね、ルディア」

「お久しぶりです。グランデ侯爵」
わたしは名前で呼ぶのは躊躇われたので正式名で呼ぶことにした。

レオは少しショックを受けていたみたいで顔が引き攣っていた。

「二人とも僕は隣の部屋にいるからゆっくり話してくれ」

「え?」

クラークお兄様はそう言うと隣の部屋へ行ってしまった。

「………ルディア、今まで本当にすまなかった。僕は最初から間違えていたんだ。君を妹みたいに思っていたはずなのにいつの間にか君を女性として好きになっていた。でも気付いた時には僕は婚約していながら浮気をしていてもう取り返しはつかなかった。それでも君を好きになってからは浮気はしていない。君だけを愛したんだ。その気持ちは離縁してからも変わらない」

「グランデ侯爵、もう謝罪は結構です。もう18年以上前の話です。終わったことです、気になさらないでください」

「もう僕の名を呼んではもらえないんだね」

「申し訳ありません、わたしのことも名前で呼ぶのは辞めていただきたいのです」

「………わかった……ハディッド夫人、君の娘の話しをさせてもらえるかね」

「………はい、エイミーはグランデ侯爵様の娘です。一度お会いしていただけるならと思っております」

「会ってもいいのかい?」

「はい、エイミーが会いたいと言うのならこちらからお願い致します」

「わかった、そちらからの返事を待たせてもらう」

「よろしくお願い致します」

「………ハディッド夫人、僕はもう君に振り向いて貰うことは出来ないのか…」
レオは小さな声で乞うように呟いた。

わたしにはわからない、レオに対しての想いはあの時全て捨てた。
もうあんな辛い想いはしたくない。
この人はアランという息子との家庭がある。メアリー様とだって17年間の夫婦生活があった。いくら別居していても夫婦だったのだ。わたしと1年しか暮らさなかった夫婦とは時間が違いすぎる。

「今更何をおっしゃっているの?わたし達にはもう何も残ってはいないわ。わたし伯爵家の事が落ち着いたらある方の後妻になる予定なんです」

わたしは今縁談が来ている。それに応じるつもりでいる。

「縁談?」

「はい」

「君はエイミーを捨てるのかい?」

「捨てる?何をおっしゃっているの。違います、彼女の意思を尊重しているのです。そしてわたしも新しい人生を歩んで行きたいのです、後ろばかりを見て嘆き悲しんで過ごして出来ましたがこれからは前を見て進んで行きたいと思っています」

「……そこには僕は…必要ないんだね……」 

「ごめんなさい」
わたしは何故涙が出るのだろう。
もう決めてきたのだ。
レオと会ったらエイミーと会ってもらうことだけを話して今までのことはもう気にしないと伝えると決めていた。

だから、これで終わり。
終わりなのに涙が溢れて止まらないのは何故なのかしら?
あの苦しかった日々を思い出したから?
レオを愛していた日々を思い出したから?

「グランデ侯爵様、さようなら」
わたしは部屋を出た。



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